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大森靖子

【ナナ週連続インタビュー第2弾!】「逃げちゃダメだ」から「逃げてもいい」へ【「うんめー」(ゆるめるモ!)】

2021.05.28
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音楽
インタビュー
大森靖子さんデビューナナ周年記念ナナ週連続インタビュー企画第2弾! 今回はゆるめるモ!に提供された「うんめー」について伺います。当時、大森さんが何を思ってこの曲を書いたのか、ゆるめるモ!についてはどう感じていたのか、そしてその曲を今歌う気持ちはどうなっているのか……その全てが明らかに!


「少し遅れて生まれてたらこういうことをしていたかも」な、ゆるめるモ!への思いとは?


──7週連続の配信シングルについてナナ週連続のインタビュー企画ということで、すでに1週目「Rude」では三谷三四郎さんと対談してもらいました。今週配信の「うんめー」からは、大森さんの単独インタビューを毎回お届けできればと思います。さっそくこの曲について聞きたいところですが、前提としてまず、今回セルフカバーアルバム『PELSONA #1』に収録することになった楽曲のセレクト方針について伺えますでしょうか。
 
大森 依頼されて提供した曲ですが、自分っぽいと思えるものですね。人に書いた曲だからこそ、「自分で書こうと思っても書けない自分」が書けた、っていうことがあるんですよ。
 
──他人を通して出会い直した自分、まさにペルソナですね。
 
大森 だから依頼された楽曲ではあるんですけど、たんに仕事というだけじゃなく、ちゃんと自分にとってのワンシーンというか、人生に残る曲になっているものを選びました。今週の「うんめー」もそうです。
 
──では、その「うんめー」について聞いていければと。2017年にアイドルグループ「ゆるめるモ!」に提供された楽曲ですね。つくったときのコンセプトは覚えていますか。
 
大森 メンバーと打ち合わせたときに、一人一人から「こういう曲を歌いたい」「こういうふうになりたい」「こういうふうにしていきたい」っていうのをそれぞれ聞いたんです。たしか4人体制になって、「このメンバーでやっていくぞ」という意識も高い時期だったかなと。なので、結束感を高めつつ、同時にそれぞれの自己肯定感も強まる曲にしてあげてたらいいのかな、と思いました。
 
──当時、ゆるめるモ!というグループについては、どうご覧になっていました?


 
大森 彼女たちの世代って、ちょうど「なにかやりたい」っていう女の子が、「アイドル」をやりはじめた世代なんですよね。私の世代はギリ違って、「なにかやりたい。じゃあ、アイドルになろう」っていう発想はまだなかったし、アイドルになるのは、「キラキラしたい」とか「自分を変えたい」とか、そういう人たちだった。でも、いつのまにか、「あれ? アイドルがライブハウスにいるぞ」みたいな状況になってきて。当時、「なんで私、アイドルと対バンしてるんだろう?」ってキョドッた記憶があります(笑)。ゆるめるモ!は、そういうなかで台頭してきたライブアイドルでした。
 
──プロデューサーがライターの田家大知さんなのも新鮮でしたね。
 
大森 そう、運営もメンバーと一緒になってなにかやらかそうっていうアイドルグループが増えて(笑)。田家さんしかり、BiSの渡辺(淳之介)さんしかり、ホントは自分でもバンドをやりたかった人たちっていう感じがしました。でも、自分ではやれなかったからこその情熱がアイドルへと向かって、ライブアイドルという存在を生み出した気がする。そんなふうに運営も女の子もみんな、自己実現なのか承認欲求なのかよくわからないけど、とにかく「何者かになりたい」っていう熱が重なり合ってできたシーンなんですよね。
 
──歌詞の中に「境界線」というフレーズがありますが、まさにバンドとアイドルの境界線が揺らぎましたよね。
 
大森 実際、そういうアイドルたちと対バンする機会がめちゃくちゃ多くて。そういう渦の中に自分もいたな、と思います。だから、ゆるめるモ!とかを見ていて、少し遅れて生まれてたら、私もこういうことをしていたかもしれないなって。それが今になって、ZOCの活動にも繋がってるのかもしれないです。
 
──振り返れば大森さんも、2013年にアイドルフェスである「TIF」にシンガーソングライターとして出演して、弾き語りでインパクトを残しましたよね。このときは、逆にアイドルシーンのほうへと「境界線」を越えるかたちではありますが。
 
大森 そうそう! 弾き語りで浮いて、逆に目立つことができたんですよね(笑)。
 
──さらに「境界線」で言うと、「ネットもアニメもドラマも/ただの現実の拡張」という歌詞も象徴的だなと。現実とネットやフィクションが地続きになる感覚は、いまや自然なものとなりつつあります。この曲はゲーム番組(「勇者ああああ~ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組~」)のエンディング曲でもありましたが、そういった拡張現実について、曲をつくる際にお題として意識はしたんですか。
 
大森 いや、ゲーム番組に使われるとかはまったく知りませんでした。彼女たちって、たしかにネットですごいバズってて数字も持ってるけど、軸はやはりライブアイドルだと思うんです。私は、物をつくったり、歌っている人は神様だと思ってるんですけど、ライブアイドルとしてステージに立つ以上、神様でも生身のなにかをさらけ出さないといけないわけじゃないですか。崇めたてられる対象でもあるけど、ステージに立てば、客席もすごく近い。その距離感のなかで、あちら側/こちら側と突き放すのではなく、手を伸ばして一緒に行こうとしている感じが、特にゆるめるモ!のライブにはあったと思います。


「この曲の感じでステージに立てるときが、もしかしたらいちばん楽しいのかも」

──まさしく、歌詞には「こちら側なんてないんだから君もおいでよ」という一節もありますね。ちなみに「運命」という言葉も出てきますが、これを平仮名にして、「うんめー」というタイトルにしたのは?
 
大森 平仮名だったんですよねえ。基本的になにかを発信することって、しゃべったり、それこそ曲を書くでもいいですけど、とても怖いことじゃないですか。人を傷つけるかもしれないし、救うかもしれないし、場合によっては殺してしまうことだってあるかもしれない。でも、それでも「なんかやるほうがマシ」と思ったから、アイドル活動とかを始めるわけで。その時点で、自分から運命のかき乱し役を買って出てるわけじゃないですか。そういう責任についてどう考えてるのかな? ホントに逃げてもいいのかな? って。
 
──「逃げてもいい」がゆるめるモ!の活動テーマでしたからね。
 
大森 だいたい、私ってエヴァ世代じゃないですか。
 
──なるほど、「逃げちゃダメだ」が刷り込まれている(笑)。


 
大森 すぐシンジくんの声で聞こえてきますからね(笑)。だから、アイドルが「逃げろ」って言うの、けっこう衝撃だったんです。ぜんぶ自分で選んで背負うからこその業があるわけじゃないですか。それでも選ぶことをやめないっていう覚悟がないと、人前で顔なんか出せないし、ネットにも晒せないんじゃないのかなっていう。だから、まだ「運命」とまでは書けなくて……。
 
──漢字はまだ早いと(笑)。
 
大森 そう(笑)。でも、ステージに立つことでそういう覚悟をつかみつつある、というニュアンスもあります。
 
──その曲を、いま大森さんが自身で歌うのはどんな気持ちなんですか。
 
大森 何周かしちゃってるから、ここに立ち戻るのは逆に心が洗われる気持ちがします(笑)。この曲の感じでステージに立てるときが、もしかしたらいちばん楽しいのかもしれないなって。ほら、峯田(和伸)さんがいま銀杏BOYZで若いバンドと対バンするじゃないですか。峯田さんの立場を思うと、胸がちょっとギュッとなる。外から見ててですけど、対バンのほうはだいたいバンドとしてキラキラしてる時期なんです。かたや峯田さんのほうは、自分以外のオリジナルメンバーは全員いなくなっちゃって、また新しいメンバーと、そこも変わったりしながら、一人で背負ってるっていう。峯田さんは、若いバンドを見て、憧れじゃないけど、「すごくいいな~」と思ってるんだろうなって……そういう感じです、私が「うんめー」を歌うっていうのは(笑)。
 
──わかる人にはよくわかる喩えをありがとうございます(笑)。
 
大森 ホントもう「わかる~!!」っていう(笑)。……いや、ホントは峯田さんのことなんて、私では全然わかってないんだとは思いますけど。
 
──今回、他の曲にも言えることですが、大森さんバージョンになってサウンドプロダクションはアップデートしつつ、基本的に曲調は、原曲に忠実な印象があります。
 
大森 そうですね。ただ、私が歌っているという時点ですごく変わりますから(笑)。
 
──「うんめー」について言えば、ゆるめるモ!のバージョンも、ところどころ歌い方が大森さんチックに感じました。
 
大森 この曲だと、あのちゃんがだいぶ寄せてくれましたね。そこはリスペクトを込めて歌ってくれたんだと思います。
 
──あのちゃんはもともと大森さんの「勹″ッと<るSUMMER」でも一緒に歌ってますよね。
 
大森 音楽という表現に対して、すごく真面目な人なんですよね。「ビバラポップ!」(2018年)でいろんな方とコラボして「非国民的ヒーロー」を歌ったんですけど、あのときも、あのちゃんがいちばん仕上げてきていました。自分のやりたいことをはっきり提示して、ちゃんとやりきる人なんですよ。
 
──最後に、私がこの曲でいちばんグッときた「僕は誰よりも愛が上手いんだ」という一節についても聞かせてください。
 


大森 その自覚がないと、アイドルなんかやっちゃダメじゃないですか?
 
──やっぱり「愛」ですか。
 
大森 それがない人って、なんのためにステージに立つんだろうって思ってしまうんです。下手でもいいけど、「上手いんだ」って自分に言い聞かせるみたいところがないと……ねえ? 人を導くわけですからね、歌う人っていうのは。
 
撮影 長谷英史


「うんめー」
2021.5.26 デジタルリリース




 

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応募締め切り 2021年7月7日(水)23:59


<7(ナナ)週連続配信情報>
5月19日(水) 「Rude」(新曲)
5月26日(水) 「うんめー」(ゆるめるモ!)
6月2日(水)  「瞬間最大me」(相坂優歌)
6月11日(金) 「夢幻クライマックス」(℃-ute)
6月16日(水) 「EIGAをみてよ」(道重さゆみ)
6月23日(水) 「°*。:° (*'∀`*) °:。* ぴかりんFUTURE °*。:° (*'∀`*) °:。*」(椎名ひかり)
6月30日(水) 「GIRL ZONE」(雨ノ森 川海)
 
<アルバムリリース情報>
タイトル:PERSONA #1(読み:ペルソナシャープワン)
発売日:2021年7月7日(水)
 
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https://oomoriseiko.info/news/detail.php?id=1090837
 
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九龍ジョー
WRITTEN BY九龍ジョー
ライター、編集者。大森靖子の著作『超歌手』『かけがえのないマグマ 大森靖 子激白』(最果タヒと共著)をはじめ、編集を手がけた書籍・雑誌・メディアなど多数。最近はYouTubeチャンネルの監修も。著書に『伝統芸能の革命児たち』、『メモリースティック』ほか。
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