大森靖子さんデビューナナ周年記念ナナ週連続インタビュー、第5弾!今回のテーマは道重さゆみさんに提供した「EIGAをみてよ」。自身が「ファン」と公言してはばからない道重さんへの提供楽曲を書くにあたって、大森さんの中には果たしてどのような心の動きがあったのか?そしてその曲を改めて自分で歌ったことによって生じた効果とは?今回も深い話が展開されます!
「道重さんの〈かわいい〉は、そんじょそこらの〈かわいい〉と一緒にしてはいけない」
──ナナ週連続インタビュー、5週目となる今回の配信曲は、大森さんが「一生道重さゆみ」と宣言してはばからないほどファンである道重さゆみさんに提供した「EIGAをみてよ」です。道重さんのショウに合わせて何曲か提供しているうちの1曲ですね。
大森 はい、『SAYUMINGLANDOLL』っていう10日間ぐらいの公演を、道重さんが東京駅そばの「COTTON CLUB」っていうライブレストランで何度かやられてまして。正直、モーニング娘。を卒業したときは、道重さんがその後こんなにも音楽活動をやってくれるとは思ってもいなかったので、嬉しかったです。しかも、公演のたびに新曲も披露されて、そこで私も毎回、1曲ぐらいずつ書かせてもらっているという状況で。
──曲のオファーはどんなふうにくるんですか。
大森 ある程度ショウの流れを脚本化したものをいただくんです。脚本といっても、道重さんは芝居をするわけではないので、歌でその役割を果たしてほしい、と。解釈というか、膨らませ方は任せてもらえます。私としても、脚本とは別に、道重さんにこういうことを表現してほしいっていうのはあるので、単にオファーに応えるというよりは、そこから毎回溢れるものがあるという感じで(笑)。
──「EIGAをみてよ」は、2018年の公演『SAYUMINGLANDOLL~宿命~』のために書かれた曲ですね。このときはいかがでした?
大森 公演のテーマが〈かわいい〉を背負った宿命を描きますっていう回だったんです。道重さんの〈かわいい〉って、質量感があるんですよ。誰かと比較しての〈かわいい〉ではなくて、それ自体に重さがあるっていうか。「私は私でかわいい。だってこれだけ努力をしてきたし、自分と向き合い続けて練習も積み上げて、だからかわいい。それを信じている……いや、信じられない日もあるけど、でも、信じてここに立つ」っていう、そういう〈かわいい〉なんです。つまり、道重さんの〈かわいい〉は、もう作品なんです。そんじょそこらの〈かわいい〉と一緒にしてはいけない。その点をいただいた脚本に盛り込ませてもらった感じですね。
──具体的にはどのあたりを盛り込んだんですか。
大森 脚本は「映画じゃなく、私ばっかり見ててほしい」っていう視点だったんです。でも、いやいや、そこは「もっと映画を見てよ!」でしょ? って(笑)。
──まさに「この映画のさきに/わたしを映して欲しいの」ということですね。かつて大森さんは、音楽を愛しているとして、「音楽を止めるな」ってストレートに伝えるよりも、「音楽を止めろ!」と言ったほうが人は立ち止まってその意味を考えるっていう趣旨のことをおっしゃっていました。それにも通じますね。
大森 つまり、めっちゃ私の曲になっちゃってる(笑)。でもやっぱりこれは道重さんの曲なんです。初めから自分の曲だったら書けなかったと思うし。道重さんの生き様を体現する歌を書かなきゃいけないからこそ、そのために道重さんの〈かわいい〉について突き詰めて考えなければならない。私は未熟な人間なので実生活ではちゃんとできていないことがたくさんあるけど、歌では絶対にできるっていう自覚はあるので。
──大森さんからすると、「EIGAをみてよ」ならぬ「道重さんをみてよ」ということですね(笑)。
大森 そう、私を見るってことは、その先に道重さんがいるってことですから(笑)。
──曲づくりにあたって、道重さんとのやりとりっていうのはあったんですか?
大森 いえ、ディレクターさんとはありますけど、道重さんはできあがった状態の歌を完璧にやってくださるっていうだけです。私は、どう歌われてるとか、どういうレコーディングをしたのかもわからないまま、イチ観客として公演を見に行って、そこで初めて聴いて、「あ、こうなったんだ!」っていうのを知ります。めちゃくちゃ楽しいですよ。
「ただのファンなのに曲を書いてることの怖さとわからなさ!」
──タイトルで「映画」を「EIGA」とアルファベットにしたのは?
大森 漢字だと生活感が出すぎるんですよね。普通の恋愛の中にもありそうな場面を描いてますけど、でも、そういうレベルの話じゃないんだよなって。もうちょっと突き詰めて純度の高まった感じ。
──セリフパートには大森さんっぽさが感じられますね。
大森 空いてると詰めてしまうっていうか、こういうセリフパートけっこうやっちゃうんですよね(笑)。最初は書いてないんです。アレンジが上がってきてから、最後に「この曲に足りないものはなんだろう?」「まだ表現しきれていないことは?」っていうのを考えていくうちに、だいたいレコーディングの日にワーッて書くんです。この曲も、たしか仮歌入れの日に書いたと思います。
──セリフで足したいことがあったわけですか。
大森 まあ、私が道重さんに言われたいことですよね(笑)。「ポップコーン噛む音 うるさいんだよね」とか、猛烈にめんどくさいけど正論、っていう感じがかわいくないですか? あと、「わたしの人生に触ってよ」っていうのは、言ってほしいというよりは、道重さんに言われたらこちらが困ってしまう言葉を言わせてしまう、みたいな感じですかね。やっぱりファンなので一定の距離を保とうとしてしまうんですよ、こちらは。ぜったいに触れちゃいけない部分っていうのはある、っていうマナーで生きている人間なので。でも、道重さんがそこを飛び越えてくる瞬間みたいなのがあって、こちらもどうしていいかわからなくなる体験が何度かあって。それって「ありがとう」でもないし、もう「ワーッ!」としか言えないんです(笑)。ただのファンなのに曲を書いてるなんて一見羨ましいと思われるかもしれないし、自分でもすごいことだとは思うんですよ。でも、そのことの「これ、どうしたらいいの!?」っていう怖さとかわからなさって、めちゃくちゃあるじゃないですか。
──ファンだからこその畏れをちゃんと持っている。でも、仕事としては一歩超えなきゃいけないってことですよね。
大森 そうですよ。だって、絶対スベれないし。距離感だって保ちたい。でも、携わる以上は、絶対にいい曲を書かなきゃいけない。私のファンでもたまにいるんですけど、「自分と運命のやりとりをしない大森さんを見ていたいから、ぜったい直接関わりたくない」っていう、その気持ち、よくわかるんです。私だって、道重さんは道重さんの輪廻の中にいてほしくて、「私なんかを関わらせちゃいけないような気がする」みたいな感覚はあるので。でも、こうやって携わらせてもらうのも、またカルマというか。その怖さを、私を羨ましいと簡単に思うような人たちに、ちょっと感じてみてほしかったんです。「わたしの人生に触ってよ」って道重さんに言われてみろよ! と(笑)。
──まじビビるから! って(笑)。今回、ご自分で歌ってみていかがでした?
大森 逆にだからこの曲って私すぎるところもあって、道重さんが歌ってるほうが、少し違和感があっておもしろいんですよね。私だと整合性が取れすぎているというか、表現がしっくりきて、すんなり入ってきちゃう。まぁ、それはそれでハマッてていいのかなとも思いますけど。あと、単純に何回も公演に通ってるので、道重さんが歌うのを何度も見ているんですね。こういうときにこういう顔してたなとか、細かいところまで頭に入っているので、同じ歌でも、私は私なりに違う角度で表現しなきゃなって。ただ、それについても、自然と違いは出るものですけど。
──具体的にはどのあたりに違いが出ますか。
大森 道重さんは、すべての言葉に同じ量の生命エネルギーみたいなのを入れ込むことができるんです。だから、一文字一文字がぜんぶ重いんですね。私は、どちらかというと抜きをめちゃくちゃつくって、ダイナミクスで聴かせるタイプなんです。そこはけっこう違いますね。きっと道重さんの場合、たくさんメンバーがいるなかで、少ない文字数に自分のエネルギーを詰め込む必要があったから、そういう歌手になられたんだと思います。たった一文字でも「あ、道重さんだ」ってなるから、凄いことですよ。
──サビの「駄目駄目 BOY」もけっこう印象が違いますね。
大森 だめなボーイについては、たぶん私の周りのほうが多いでしょうしね(笑)。
「EIGAをみてよ」(道重さゆみ)
2021.6.16 デジタルリリース
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キャンペーン期間:2021年5月21日(金)~ 2021年7月7日(水)
応募締め切り 2021年7月7日(水)23:59
<7(ナナ)週連続配信情報>
5月19日(水) 「Rude」(新曲)
5月26日(水) 「うんめー」(ゆるめるモ!)
6月2日(水) 「瞬間最大me feat. の子(神聖かまってちゃん)」(相坂優歌)
6月11日(金) 「夢幻クライマックス feat. MIKEY(東京ゲゲゲイ)」(℃-ute)
6月16日(水) 「EIGAをみてよ」(道重さゆみ)
6月23日(水) 「°*。:° (*’∀`*) °:。* ぴかりんFUTURE °*。:° (*’∀`*) °:。*」(椎名ひかり)
6月30日(水) 「GIRL ZONE」(雨ノ森 川海)
<アルバムリリース情報>
タイトル:PERSONA #1(読み:ペルソナシャープワン)
発売日:2021年7月7日(水)
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https://oomoriseiko.info/news/detail.php?id=1090837
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ライター
九龍ジョー
ライター、編集者。大森靖子の著作『超歌手』『かけがえのないマグマ 大森靖 子激白』(最果タヒと共著)をはじめ、編集を手がけた書籍・雑誌・メディアなど多数。最近はYouTubeチャンネルの監修も。著書に『伝統芸能の革命児たち』、『メモリースティック』ほか。