高校時代に自身のYouTubeチャンネルでカバー動画を発表し始めたのをきっかけにブレイク。2019年後半にデビューを果たすと、現在までに総ストリーミング数が1億再生超えするなど一気に注目を浴びたアメリカ・ヒューストン生まれのシンガーソングライター、アライナ・カスティーロさん。米メディアでは「Z世代最新のナイーブなヒーロー」と評され、昨年はBTSのメンバーが彼女の曲をオススメしたことも話題になりました。
「NARUTO」をきっかけに日本のアニメやカルチャーにもハマり、5月29日にリリースされるアルバム『parallel universe pt. 1』の中では、キズナアイさんとのコラボ曲「down 4 u feat. Kizuna AI」も実現。その楽曲について、リリースされる初アルバムについて、さらに日本への憧れについてなど、いろいろとお聞きしました!
YouTubeとSNSで大ブレイク! そこで学んだこととは?
──まずアライナさんと音楽の出会いについてお聞きしたいと思います。いつ頃、どのような形でしたか?
アライナ 最初に音楽に接したのは、かなり昔のことになります。小っちゃい頃に、母が私をコーラス隊に入れていたので、ゴスペルだったりコーラス用の曲に接するようになりました。その後、ミドルスクール(日本で言う小5~中2ぐらい)の頃から自分自身の好みが広がっていって、ポップミュージック、特にマイケル・ジャクソンやリアーナだったり、いろんな音楽を発見していきました。だから「出会い」という意味では、その頃なのかなと思います。
──その後、YouTubeでいろんなアーティストのカバーを動画で発表し、注目を浴びました。そういったカバーから学んだことは?
アライナ カバーをやっていくうちに、何を歌っても自分らしいものにすることができるようになっていきました。ちょっとしたことでも何かを足したりして自分らしさを打ち出していって。YouTubeに投稿すると「●●みたいなサウンドだね」「●●っぽいね」というコメントがつくことも多かったので、自分らしさを加えることを意識するようになりました。そこから、自分の作品を作る上でも自分らしさを出すことができるようになって、自分の好きなものが明確に分かるようになったんです。
──自分らしくすることに苦労した曲やアーティストはありましたか?
アライナ 「Put Your Head On My Shoulder(あなたの肩に頬うめて)」とか「Hey There Delilah」のような昔からある曲は、自分らしくするのは難しいかなと思っていたんです。でもあまりにも昔の曲なので、実は難しくないんだなということに気づきました。そのプロセスはむしろ楽しかったですね。
──今やそのYouTubeだけでなく、SNSでのフォロワー数も大変なことになっていますが、ネット、特にSNSで注目を浴びるようになって、どんな変化がありましたか?
アライナ 自分自身をよりさらけ出さないといけないようになりました。もともとおとなしめの性格なので、以前は「誰も私のことなんて気にしてない」と思って、1日普通に過ごしてたこともあるんですけど、SNSで活発に投稿するようになってからは、いろんな人が「アライナは今日、どうしてるのかな?」ってわざわざ見に来ることが多いので、ある意味、自分の殻を破ることができるようになりました。それがアーティスト活動など、他の面でも大きな手助けになったと思います。新曲のティザーを投稿したら、みんながどういう反応をしてくれるのかも楽しみですけど、SNSには悪い一面もあるので、注意深くなったという面もあります。自分の意図とは違うように受け取ってしまう人もいるので、あまりネガティブなものばかりに集中しないようにはしています。
──では、SNSを活用していく上では、ネガティブな声をあまり気にしないというのがうまくやる方法ですか?
アライナ そうですね。以前の方が、「どう思われているか」ということを気にしていました。今も気になるのは確かなんですが、何をやるにしてもちょっとしたひと言で、人の感じ方とか考え方とかが変わってしまうということが分かったので、あまりそれに左右されないように自分の心を保つことを心がけるようになりました。だから少なくとも、自分自身を応援してくれる人たちがいて、その人たちをハッピーにすることはできるし、その人たちによって自分がハッピーになれるので、あまりネガティブなことにとらわれないようにはしています。
──アライナさんに憧れて、YouTubeやSNSで活躍したいという人たちに、何かアドバイスするとしたら?
アライナ 一般論的な話になるかもしれないですけど……。私がやり始めた頃は皆さんからのコメントが楽しみだったので、それに返信するのもすごく楽しかったんです。みんなが思ってること、感じてることについて直接話ができるというのがすごくよくて。でもその中で、先ほども言ったように、悪いことにとらわれないようにすることは大事だと思います。何をどうしても、自分自身が感じたことや思ったことは変えられないんですよね。だからもしそういう場面でストレスを感じることがあったら、あまりそれにとらわれず、いったん深呼吸でもして、なるべく悪いこと、悲しいことに気持ちを持っていかれないようにした方がいいと思います。私も話を聞くし、サポートしてくれる友達もいるはずだから、そういう人たちに頼ってもいいと思います。
キズナアイとのコラボで世界が広がった新曲!
──では、29日にリリースされるコラボ曲「down 4 u featuring Kizuna AI」についてお聞きしたいと思います。この曲は人との絆や深い愛情について歌われたものだと思いますが、あらためて歌詞の内容について教えていただけますか?
アライナ この曲を書いた時、私はセラピーを受けてたんです。そのセラピーを通じて、ものによってはあまり集中しないとか、気持ちを違う方向に変えていくとかというやり方、それから瞑想をしたりして気持ちを落ち着かせる方法などを学びました。この歌詞は、神々しいぐらいの愛情だったり、違う惑星から届くぐらいの規模の愛について歌ったものなんです。違う周波数でコミュニケートしていてもそれは通じ合っていて、何があってもあなたを支える、そんな内容です。
──「違う周波数でコミュニケートする」という部分は、この曲であなたとキズナアイさんがコラボレートしていることとも関わっていますか?
アライナ そう思いたいですね。私と彼女がいる世界は違う周波数なんですけど、曲を通じて気持ちがつながってるということだと思います。
──キズナアイさんは以前にもあなたの曲のMVに登場されたりしていましたが、今回、曲の中で本格的に共演することができて、いかがでしたか?
アライナ 昨年、「wishlist」のMVに出てもらったんですけど、その時は彼女は歌うことができなかったので、今回はちゃんと歌ってもらっているし、彼女自身に足してもらった要素があります。それがすごくかわいかったので、うれしかったですね。
──キズナアイさんの歌は、どちらかというとアップテンポでポップな印象のものが多いように思います。今回の歌とは対照的で、それだけに組み合わせが新鮮に感じました。
アライナ その通りだと思います。そもそも私の音楽自体が型にはまりにくいというか、いろんなジャンルの言葉を駆使して説明しなければならないものだと思うんですが、さらにキズナアイが参加することによって、サウンドが変わったという点も気に入っています。
──同日には、初アルバム『parallel universe pt. 1』もリリースされますね。こちらはどのようなコンセプトで作られたものですか?
アライナ 私自身は、すごくシャイな性格なんです。シャイな人というのは、なかなか自分をさらけ出すことができず、自分の殻の中で縮こまって恐怖心と戦っていることが多いんですね。この『parallel universe pt. 1』のテーマは、「自分らしさ全開」な自分がパラレル・ユニバース……別の平行宇宙に存在するということで、そこでは自分がなりたい自分でいられる、自分が目指すものになれるということです。だから、ちょっと現実逃避したいとか、気持ちを強く持ちたいという時に聴いてもらえたらと思います。
──このアルバムで、ボーカル面で新たにチャレンジしたことは?
アライナ そういうチャレンジは常にしています。今回もいろんなメロディーやハーモニーの部分で、今までやってこなかったことを試しているので、ヘッドフォンを着けて大きな音で聴いてみてほしいと思います。よーく聴くと、今までの曲では見られなかったスタイルに挑戦していることが分かってもらえるはずです。
──アルバムの聴きどころは?
アライナ どの曲にも、イメージする言葉だったりテーマだったりがあるんですが、「stfu(i got u)」にはアニメ的な要素があったり、日本盤のみに収録される「down 4 u feat. Kizuna AI」にもちょっとした意味合いの言葉を入れています。タイトル曲の「parallel universe」もそうなんですが、それがどういう言葉なのかとか、あまり細かくここで言うことはしたくないんです。聴いてくださった皆さんに「これがキーワードかな?」というのを見つけてほしいので、楽しみにしています。
──聴いて「これかな?」と思ったら、SNSでコメントすればいいですか?
アライナ ぜひそうしてください! チェックしてますね!
──今回リリースされるシングル、アルバムともに、改めてどういう人に聴いてほしいですか?
アライナ 先ほども少し触れてきましたが、自分をさらけ出すことなく静かに過ごしている人たち、でも本当の自分を出していきたい、殻を破って出ていきたいと願っている、そんな人たちに聴いてもらえたら一番いいかなと思います。
──そういった人々について、アライナさんは同世代の人たちをイメージしていますか?
アライナ そうですね。自分自身も成長の過程の中で最近になって気づいたことがあるので、同じ世代の人たちの方がイメージしやすいのは確かです。でもそれ以外でも、もっと若い世代、それから上の世代の人たちで、何か新しいものを聴きたいという人や、気持ちの上で応援が必要だという人たちにも聴いてほしいですね。「いつでも私が味方よ」という気持ちを込めて作っているので。
日本に来て桜並木の下を歩きたい!
──アライナさんは「NARUTO」を筆頭に、日本のアニメや漫画、カルチャーが大好きだと伺っています。最初はどうやって触れたんでしょうか?
アライナ 私には兄が3人いるんですけど、最初は一番上の兄が「NARUTO」を見始めて、次に2番目の兄、やがて3番目の兄も見るようになったんですね。私自身は、実際に見る前は「うーん、どうかな? 面白いのかな?」という感じだったんですが、「まあいいや、見てみよう」と思って見てみたら、「なるほど!」と(笑)。兄たちが熱中する理由が分かっただけじゃなくて、自分自身もすごく感銘を受けたんです。アニメの中で起こっていることが、共感できることばかりで。ああいう人生を歩んでみたいとも思ったし、そこから世界中で行きたい場所のトップが日本になりました。「NARUTO」に接して得た体験が本当に衝撃的だったので、今でも「ちょっと落ち着きたいな」と思ったら「NARUTO」などのアニメの世界に浸るんです。それに、作品そのものや登場人物の美意識の部分にもすごく惹かれました。
──よっぽどハマったんですね! 日本の音楽についてはいかがですか?
アライナ 残念ながら、そこはまだ深く追究できてないんです。でも今回、キズナアイとのコラボといういい機会に恵まれたので、そこから入っていきたいと思っています。ただ、ずーっと日本のアニメなどを見続けているので、そのテーマソングなどは耳に残っていますし、Spotifyのプレイリストに入れてますよ。
──日本に来るという夢が叶ったら、まずはライブがしたいところですよね?
アライナ もちろんです! まずは日本でパフォーマンスがしたいです。そしてその後は、桜を見たいと思ってます。桜並木の下を歩いて、日本食を食べることができたら、自分としては日本で完璧な1日が過ごせると思います。
──日本に来られたら、やりたいことが多くて大変なのでは?
アライナ そうだと思います(笑)。だからオフの日を予定に入れてもらって、滞在期間を延ばしたいですね。
──特に行ってみたいところはありますか?
アライナ 私は旅行する時には、毎日の行程をしっかりプランニングしたいタイプなんです。だから本当に行けることになったらしっかり研究しないといけないですね(笑)。流行りの場所を押さえたいというのもありますが、他の人があんまり知らないようなスポットに行きたいとも思うので、皆さんのオススメがあれば教えてほしいです。でも、いつでも行く準備はできてますよ。
──日本に来るというのも当面の夢の一つだとは思いますが、アーティストとしての夢や目標というのは?
アライナ 長い間、私の最大の目標は「アルバムを完成させること」だったんです。それは叶ったので、次はツアーですね。それから、常に成長し続けることと、音楽を作り続けることが一番大事かなと思ってます。音楽を作り続けることによって自分自身が変わっていくし、音楽も変わっていくということが、自分にとっては大事です。
──いつか立ちたい舞台、ライブをしたい会場というのはありますか?
アライナ それは引っかけ問題? 「日本」って答えないといけないのでは?(笑)
──いえいえ、そういう意図はないです(笑)。
アライナ もちろん日本でのパフォーマンスも大きな目標なんですけど(笑)、それ以外にはマディソン・スクエア・ガーデン(MSG)のステージに立ちたいという夢がありますね。子供の頃から、ガレージにあったTVでよくアーティストのドキュメンタリーを見ていたんです。その中でも「やっとMSGでできる!」という喜びを語っているアーティストが多くて、私自身も、いつかあそこでやりたいなとずーっと思っていました。だから実現したら、たぶん泣いちゃうと思います。
──世界的に有名な会場ですからね。では最後に、日本のファンに改めてメッセージをお願いします。
アライナ (日本語で)アリガトウ、ダイスキ。皆さんの応援に感謝の気持ちでいっぱいだし、早く日本に行って皆さんにお会いしたいです。7日間ぐらい日本にいて、ライブもして、いろんなことがしたいですね。7日じゃ足りないと思いますけど(笑)。
──本当に早く来日の夢が叶うことをお祈りしております! ありがとうございました!
Alaina Castillo(アライナ・カスティーロ)
Born:November 16, 1999 (age 21) born in Huston in U.S.A.
1999年11月16日アメリカ・ヒューストン生まれ、LA在住21歳
Spotifyが新進気鋭のアーティストを宣伝する新たなプログラムとして立ち上げた“RADAR”の米国初の選出アーティスト。総ストリーミング数は1億再生超え。
“Gen Z’s latest vulnerable hero.”
「Z世代最新のナイーブなヒーロー」と米メディアで紹介された彼女の歌は、若者特有の繊細さや人間関係の億劫さ、恋愛関係に対する執着心などを包み隠さず表し、同世代から絶大な支持を得ている。
日本文化大ファンを自称するアライナの一番のお気に入りは「NARUTO」で、日本語を学んだり歌詞やMVにも日本文化の影響を受けているというほど。
Occupation:Singer/Songwriter/YouTuber
Alaina Castillo – i don‘t think i love you anymore 5,000,000Views (2021/4時点)
https://www.youtube.com/watch?v=PbbTiE-r9CI
SING YOU TO SLEEP ELGH 4,463,000Views (2021/4時点)
https://www.youtube.com/watch?v=s4YWdKKmjgQ
First Album『parallel universe pt. 1』
2021.5.29 デジタルリリース
※コラボ曲「down 4 u feat. Kizuna AI」を含む
1.pocket locket
https://youtu.be/sNmDwVEWNDg
2.down 4 u feat. Kizuna AI
https://youtu.be/SAg-8dFouR0
3.parallel universe
https://youtu.be/kqDvlHwp91o
4.stfu (i got u)
https://www.youtube.com/watch?v=FXhQMRJNOws
5.indica
6.make it rain
https://youtu.be/agI4O1iWRus
7.tėn cømmåndmėnts
「Kizuna AI Virtual US Tour DAY2 “Virtual Live From NY”」
5/29(土) 21:00 (現地時間) / 5/30(日) 10:00(日本時間)
配信プラットフォーム:MOMENT HOUSE(オンライン)
https://www.momenthouse.com/
出演: Kizuna AI, Alaina Castillo, Moe Shop
チケット発売中: $16.5(米ドル) / アフターパーティ付きチケット$24(米ドル)
※アメリカ以外からも視聴可能
※チケット購入はこちらをご覧ください
https://www.momenthouse.com/kizunaai
【Alaina Castilloオフィシャルサイト】
https://avex.jp/alainacastillo/
【Alaina Castillo Instagram】
https://www.instagram.com/alaina_castillo/?hl=ja
【Alaina Castillo TikTok】
https://www.tiktok.com/@alainacastillo?lang=ja
ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。