澤野弘之率いるチームプロジェクト、NAQT VANE(ナクトベイン)が新作EP『NV』を4月2日にリリースした。昨年5月に新進気鋭のダークポップシンガー・Yunoaを加え、HarukazeとYunoaのツインボーカル体制となったNAQT VANEは、今年2月から3月にかけて、ボーカルの2名だけで「NAQT VANE Prologue Tour 2025 – DUOVERSE ep.1」という全国ツアーを敢行。太陽と月をテーマにしたツアーは、Harukazeが太陽の昼公演をプロデュース、Yunoaが月の夜公演をプロデュース。昼夜で曲順や照明、演出が異なるライブを展開し、2人のシンガーの対照的な魅力を存分にアピールした。そのツアーで披露された書き下ろしのソロ曲を含む新作EP『NV』は、既存曲をツインボーカル体制で再解釈したNVシリーズ楽曲を中心にコンパイル。ときに溶け合い、ときに対極をなす2人の歌声と世界観を改めて伝える一枚となっている。今回のインタビューではHarukazeとYunoaにツアーを振り返ってもらいつつ、セットリストの意図やソロ曲に込めた思い、NVシリーズ楽曲の聴きどころなどをトーク。ツアーを経た今後のNAQT VANE像も語ってもらった。
「今回のツアーを通じて、2人の共和や調和が高まったんじゃないかと思います」(Harukaze)
──まずはツアーを終えた率直な感想から教えてください
Yunoa すっごく楽しかったです。ライヴでVANEs(ベインズ/NAQT VANEファンの呼称)のみんなの顔を直接見られるのが初めてのエリアもあったので、その感動がすごかったです。
Harukaze ツアーは目標のひとつだったので達成できたことが嬉しかったし、東京以外のエリアではイベント出演はあったけどワンマンはなかったんです。(出身地の)札幌も初めてだったから、すごく感慨深かったです。
──今回のツアーの最大の特徴は、太陽と月をテーマにした昼夜2公演で、しかも内容を変えたことでした。そのアイデアはどんなところから?
Harukaze ツインボーカルになりました、新体制になりました、ツアーを回ります、じゃあツインボーカルの魅力をどうやったら出せるかな?というところで、2人の個性を考えた時に、性格を含めた色々な要素「対」になってるよねと。じゃあ、昼夜公演にして、それぞれがライブをプロデュースして、自分の魅力を発揮しましょうと。
──まずは、二人各々、思うままにアイディアを出したんですか?
Yunoa そうです。
Harukaze 最初はミーティングもそれぞれ分かれていたから、お互い、セトリや演出をどう決めていたか知らないんです。昼公演を“太陽”、夜公演を“月”としたのも、私たちが自己分析して対になる言葉をいろいろ提案したんです。その中に太陽と月というワードがあって。
──Harukazeさんは“太陽”の昼公演をどのようにプロデュースしようと考えましたか?
Harukaze 本名が「晴風」で“晴”という漢字が入ってるし、自分は明るい人間というのが基本にあって。周りの人を笑顔にしたり、楽しませたいという思いが小さい頃からあったんです。それって太陽が持つエネルギーと同じなんじゃないかなって。太陽の光を浴びたら元気になると言うし、セロトニンという幸せホルモンも出してくれるし。そういうのを私のライブから受け取ってもらって、活力にしてもらいたいなと考えたんです。
──セトリはどのように考えていったんですか?
Harukaze 1曲目の「Vanilla Days – NV」は私にとって朝の曲なんです。起床のアラーム音にしてたりするから。続く「NOWVERSE – NV」「Loopers – NV」もライブを最初からアゲていこうと思って序盤に入れたんです。
──その前にあるオープニングの「Harucercize」ってなんですか?
Harukaze Harukazeとエクササイズを掛けた出し物です(笑)。私がステージにひとりで出て行って、体操のお姉さんになって、みんなにライブ前の準備体操をしてもらったんです。「まずは深呼吸から」「パンチを空中でしましょう」「二の腕が細くなります(笑)」とか。そうして体温を上げてから「Vanilla Days – NV」で始めて、そのあとはいろんな入口から私たちを知ってくれた人がいると思ったので、ドラマや映画のタイアップ曲を前半に入れていったんです。最後は夜に向かっていくイメージで「NIGHTINGALE」を歌って、最後は原点に戻るということでデビュー曲のNVバージョンである「Break Free – NV」にしたんです。
──一方、Yunoaさんの夜公演は?
Yunoa 昼からバトンを受けて、最初はちょっとクラブみたいな感じで「FALLOUT (English Ver.)」で始めることにしたんです。そのあとはアゲアゲな感じで「puzzle」「Loopers – NV」に行って、そこから“さあ、家に帰りましょう”みたいなイメージ。ひとりで部屋に帰って、「Reminiscing – NV」「Break Free – NV」辺りで心を落ち着けて、その後のソロ曲で“沈んでても全然大丈夫です”、“あなたはあなたのままで大丈夫です”ということを伝えて。「NIGHTINGALE」をここに置いたところに私の情緒不安定さが出てますね(笑)。
Harukaze あはは!
Yunoa そのあとの後半は朝に向かうイメージで、またアゲていく。最後に「Dispersion」を入れたのは1stアルバムの1曲目なので。今回のツアーはepisode 1だし、まだ私たちは始まったばかりだから「Dispersion」を最後にしたんです。
──お互いのセトリに関して、どんな印象を持ちましたか?
Yunoa 私は、楽しもうっていうHarukazeの思いが前面に出ているセトリだなと思いました。実際、昼公演を歌って、そのあとで写真を見たときに私がすっごく楽しそうで。SNSでも「Yunoaが楽しそうで良かった」「こっちも楽しめた」みたいなコメントをもらったから、Harukazeの思いが伝わっているし、私自身も楽しめたライブでした。
Harukaze 夜公演はYunoaらしいセトリだなと思ったし、すごく歌いやすかったんですよ。昼公演のセトリは自分で決めたはずなのに、Yunoaの夜公演の方がスムースに自分の声が出せた。
──昼公演は最初から元気いっぱいに始めるからノドに負荷がかかる?
Harukaze そうですね(笑)。あと、SNSのコメントで「夜の方がHarukazeさんがエンターテイナーだった」って書いてあったんです。その感想をいただいたときに「確かに」と思って。エンターテイナーって人のために何かをしたり、人を元気づけるじゃないですか。Yunoaの思いがみんなに伝わって欲しいな、私も一緒に伝えようっていう気持ちが強くて、逆に私の良いところが出たのかもしれないと思いました。Yunoaも昼公演では自分では知らなかった面が出せていたのかも。だから「楽しそう」っていう声があったんだと思うし。
Yunoa 昼のライブ写真の方が映えてました、私(笑)。
Harukaze 意図せず、お互いのセトリで輝けていたというのは、お互いがお互いを見えているんじゃないかと。最後の東京公演でより強くそれを感じたので、今回のツアーを通じて、2人の共和や調和が高まったんじゃないかと思います。
「北海道で絶対、味噌ラーメンを食べたかったんです。帰りの空港でひとりで食べに行きました(笑)」(Yunoa)
──今回のツアーではカバー曲も各公演で披露しました。どんな曲を歌ったんですか?
Harukaze 8公演全部違う曲を歌いました。順番に行くと、札幌昼が「何度でも」(DREAM COMES TRUE)、札幌夜が「Fight Song」(レイチェル・プラッテン)。
Yunoa 大阪の昼は「雪の華」(中島美嘉)、夜が「Thinking Out Loud」(エド・シーラン)
Harukaze 福岡の昼が「See You Again」(ウィズ・カリファ&チャーリー・プース)、夜が「inside you」(milet)。東京の昼が「Love Story」(テイラー・スウィフト)、夜が「First Love」(宇多田ヒカル)です。
──ファンからリクエストを募って歌ったそうですが、意外な選曲もありましたか?
Harukaze ありました。リクエストで送られてきた曲が洋邦問わずバラバラで。その中に自分たちの思いも乗せなきゃいけないから選曲は大変でした。たとえば「何度でも」は吉田美和さんの地元が北海道なので札幌公演で選んで、NAQT VANEのコンセプトでもある“何度でも挑戦していく”っていう私たちの気持ちを込めたんです。シンプルに私たちが歌いたくて選んだ曲もあるけど、洋楽よりも邦楽の方のインパクトが強かったんじゃないかと思います。「雪の華」を歌ってる私たちとか想像できないだろうから(笑)。
──基本、NAQT VANEは英語詞が多いから。
Harukaze そう。miletさんは、元々Yunoaの歌声が似てると言われたエピソードもあったりして。
Yunoa それを初めて人前で披露させてもらいました。
──食事も含め、地方公演の思い出は?
Yunoa そんなに食べられなかったんですよ。あまり食べに行く時間がなくて。ただ差し入れで大阪は551蓬莱の肉まんを頂きました。
Harukaze 北海道はぎりぎりラーメンを食べられたよね?
Yunoa そう! 北海道で絶対、味噌ラーメンが食べたかったんですよ。
Harukaze でも結局、ライブの夜は食べに行けず。でも「食べる」ってMCで言っちゃってるし(笑)、食べなきゃ!って。
Yunoa 帰りの空港でひとりで食べに行きました(笑)。
Harukaze 博多は、むっちゃん万十を頂きました。ハムエッグが入ってるヤツ。
Yunoa あれ、めっちゃ美味しかった!
──ここまで食事の話しか出てないですが(笑)、ライブ自体はどうでした?
Harukaze 地方は会場がライブハウスだったのでお客さんと近いし、みんなとにかく温かくて優しかったです。たとえばMCで「何食べたらいい?」って訊くと、ちゃんと返してくれたりとか。札幌は初日だったから、Harucerciseで始めるときにどうなることやら?と思ってたんですよ。
──結構なチャレンジですよね。NAQT VANEにはクールなイメージがあるだろうから、いきなり体操は面食らうかもしれない。
Harukaze まさか体操から始まると思ってないだろうから(笑)。不安だったんですけど、札幌のみんながすごく熱心にエクササイズをやってくれたんです。みんな勢いよく立ち上がって、何の疑問もなくやってくれて、地元愛がより伝わってきました。
──今回のツアーを経験して、次はどんなライブをやってみたいですか?
Harukaze 今回、昼夜に分けて2人が「対」になっていることを見せたので、次は2人が合わさったときにどんなマジックが起こるのかっていうことを見せたいですね。
Yunoa 2人が混ざっているところね。
Harukaze セトリも一緒に考えてみたいし、二人でエクササイズをやるのかわからないけど、お互いができることを一緒にやってみたいな。
──今回のライブの感想として、ハモる2人をもっと観たかったです。
Yunoa うんうん。
──NVバージョンは、既存の楽曲にYunoaが加わる形だから致し方ない部分もあると思いますが。
Harukaze そういう面ではツイン体制になってから作った「FALLOUT」がいちばん混ざり合ってるから、私たちもパフォーマンスしていて一体感がある。ハモっているときはお互い気持ちいいし、声的にも合う声色だと思うので、もっとハモもやっていきたいですね。
「『C』は無理しないでありのままでいてくださいっていう曲です。」(Yunoa)
──ここからは最新EP「NV」について教えてください。今回はコンセプトEPと銘打たれていますが、どんな流れで作ることに?
Harukaze 新体制になったから何か作品を出したいし、まだNAQT VANEを知らない方にとっては NVシリーズがいちばん新体制をわかっていただける楽曲になっていると思うので、それを聴いていただきたいということで作りました。
──過去にシングルでリリースしたNVシリーズ楽曲も入っていますが、今回のEPで音源化されたのが「TOUCH – NV」と「Ditty – NV」になります。この2曲は原曲とどんな違いが出たと思っていますか?
Yunoa 「Ditty – NV」は澤野さんも私たちも今回のEPで押したい楽曲です。すごく好き。原曲もアゲアゲで楽しい曲なんですけど、私の早いラップが入ったので、よりアゲアゲになって。私たちの上がってきているバイブスが表現されたと思うし、なんていうんだろ、踊り狂えるっていうか(笑)。ツアー中も「Ditty – NV」のときは2人ともすごく踊ってたし、この曲を聴いて踊りながら普段のことをしてもらえたら嬉しいです。
──掃除とか洗濯とか?
Yunoa 仕事中に聴きながらカタカタPC打って欲しいなって(笑)。
Harukaze それ、仕事に集中できない(笑)。
Yunoa あはは。けど、いつでもどこでも楽しめる曲だと思うから。
──「TOUCH – NV」の仕上がりに関しては?
Harukaze 私がひとりで歌っていたときは大失恋の悲しい曲という捉え方だったんです。私がひとりで歌う「TOUCH」には辛さが入っていたんだけど、Yunoaの歌う「TOUCH」は失恋の苦しみ方がちょっと違っていて違う聴き方ができるんですよね。彼を忘れられない、やばい、死んじゃいそうみたいな私と、苦しいんだけど次に進まなきゃってちょっと俯瞰できてるYunoaの2人が「TOUCH – NV」にはいる。
──Yunoaさんは「TOUCH」をどう捉えて歌ったんですか?
Yunoa 大失恋して苦しい状態なんだなっていうのは感じてるけど、経験上、その人と二度と関わらないかもしれないという別れ方をしたときに、一度は沈むけど、そんな沈んでいても相手は戻ってこないし、自分から行きたいとも思わないし、1回沈んでハイ終わりっていうふうに持って行きたいんですね。「TOUCH」は、その「ハイ終わり」の“お”くらいまでは見えてる気がします(笑)。
Harukaze 諦めが付いている気がするの。
Yunoa そう。1回沈んだらそれで終わらせたいんですよ。恋愛だけじゃなく何にしても。もうしょうがないって。
──大失恋の渦中と事後みたいな温度差がある。
Harukaze “Just can’t get over your Touch”(あなたの感触が忘れられない)って言ってるのは私だけなんですよ。他のパートはちょっと諦めてる心境も歌ってるから。
Yunoa なんか思い出感があるかも。
Harukaze 思い出して辛いな、でも前に進まなきゃっていう。その複雑な感情が、2人で歌うことでより深く表現できたんじゃないかと思います。
──今回のEPにはソロ歌唱曲が入っています。これもツアー同様、お互い別々にアイデアを澤野さんに伝えたんですか?
Yunoa 澤野さんが、ライブを昼夜に分けるんだったら、お互いの思いがきっと強く出るだろうから、ソロ曲もそれに沿って作らない?と提案してくださったところから制作が始まったんです。それぞれの性格や、ツアーを通して何をメッセージとして伝えたいかっていうことをお互い個別にリストアップして澤野さんに伝えて作ってもらいました。
Harukaze だから相手がどういうプロセスで曲を作っていたかもあまりわかってない。スタッフさんから見た私たちの印象も澤野さんに伝えているし、歌詞はBenjaminさんとcAnON.さんの共作なので、2人にも私たちが伝えたいことを共有して作ってもらいました。
──Yunoaさんの「C」は三日月、Harukazeさんの「O」は太陽の形から取ったそうですね。
Harukaze ツアーに合わせて、太陽と月というテーマにしようということから、このタイトルになりました。
Yunoa あまり深く考えないほうがいいよねって話していて。太陽と月を象徴する形だけで行こうと。
──Yunoaさんの「C」は、どんな曲になりましたか?
Yunoa 私は、眠れない夜の辛さを高校生の頃に経験していて。悩みがあって眠れないときって無理に寝ようとしがちだけど、そうすると余計眠れなくなるから、とりあえずこの曲を聴いてぼーっとしてみたり、揺れてみたり、何かして欲しいなって。気持ちが沈んじゃったときって、自分はダメな人間だという方向に思考が行ってしまいがちだけど、そんなことはないって言いたかったんです。私たちの曲を聴いてくれている時点で私たちのことを救ってくれているから、それだけで素晴らしい人間、ヒーローなんだよって。それだけで美しいからそのままでいいんだよって。沈みたかったら一旦沈めばいいし、無理しないでありのままでいてくださいっていう曲です。
──澤野さんにサウンド面でのリクエストもしたんですか?
Yunoa サウンド面は伝えていなくて、思いだけを伝えました。「C」にはギターの音が入っているんですが、私はギターの弾き語りをやっていたのでトラックの時点でフィット感があったし、私の曲だなって思いました。
──一方、Harukazeさんの「O」はどんな曲にしたかった?
Harukaze リストにして渡した中に“周りを笑顔にしたい”って書いていて、それが“smile を頂戴”という歌詞になってたりするんです。ツアーのセトリを決めるときにも考えていたことだけど、太陽のようなエネルギーを楽曲でも与えられたらなと思っていたので、エネルギッシュな曲があがってきて嬉しかったし、自分の好きな声を出しやすい曲だったんです。
──声域として?
Harukaze 声域もそうだし、キーもそうだし、しゃくりとか裏返すところとか。お客さんと一緒になってサビの“Stay bright! Stay bright!”を歌うところも想像できたし、めちゃくちゃ私らしい曲だと思います。ずっとせわしないし(笑)。
Yunoa あはは。
Harukaze ずっと私、喋ってるから(笑)。そういうところも澤野さんが考えて作ってくださったんだなって。
──歌い癖が存分に出てると。
Harukaze 出てますね。私の歌い癖が詰まってる。
──「C」にもフロウの気持ちよさを重視するYunoaさんの歌い癖が出てますよね。
Yunoa そうですね。“私”がすごく出てる。
Harukaze 澤野さんから見た私たちというのが歌い方も込みで表現されていると思います。BenjaminさんとcAnON.さんによる歌詞も私たちの言語化がすごくて。的を射ていたというか、「うんうんうん」ってずっと頷いてました。「私が言いたいのは、これこれ」って。
「泣くときは大体ひとりで泣きます。人前で泣けない人だから、『ここは私だな』と思った歌詞があります」(Yunoa)
──歌詞にはちょっとした仕掛けもあって、“無防備なままで Free yourself”というフレーズが2曲に共通して入ってるんですよね。
Harukaze & Yunoa (声を揃えて)そうなんですよ!
Harukaze cAnON.さんがこだわってくださった部分で。でも、最初、同じフレーズがあることに二人とも気づいていなくて(笑)。
Yunoa そう、全然気づいてなかった(笑)。
Harukaze 同じフレーズなのに譜割が違いすぎて全然気づかず、スタッフさんから教えてもらって「え!? マジ!?」って(笑)。そこから思い入れがグッと増したんですけど、Yunoaも私も同じフレーズなのに、ちょっと意味合いが違うんですよ。
──Harukazeさんは、どんな気持ちでこのフレーズを歌ったんですか?
Harukaze 私の方は、「裸になっちゃえよ、みんなー!」みたいな。「人生いつ終わるかわからないし、とにかくやっちゃえ! 一緒にやっちゃおうよ!」っていう気持ちで歌ってました。
Yunoa 私は、“無防備なままでFree Yourself”のあとに“今だけ”が付いてるので、ひとりでいるときくらい自由でいなよっていう気持ちで歌ってます。ひとりで苦しんでる人に「大丈夫だよ、よしよし」ってする感じ。
──Yunoaさんの方は自己肯定感もありますよね。自分に「よしよし」みたいな。
Yunoa そうですね。私が高校生のときにしてもらいたかったことです(笑)。
──歌詞には太陽と月を表す言葉も織り込まれていて、「O」には、“Sunshine”や“Sun light”という言葉が入っている。「C」は“Wolf moon light”というワードが印象的でした。ウルフムーンはアメリカでは1月の月の呼称で、厳寒期でお腹を空かせたオオカミの遠吠えがよく聞こえることから名付けられたそうです。
Yunoa あ、そうなんですね。私が一匹狼タイプだから、ウルフを入れてくれたのかと思ってました(笑)。
Harukaze あはは。面白いね。Yunoaだからこそだと思う、その解釈は。
Yunoa あと、ひとりのときって月とか星を見るとやけにきれいに見えちゃったりして、余計寂しくなっちゃうから、そういう情景を入れてくれたのかなって。
──月明かりに照らされて心が安らいだり前向きになるんじゃなくて、余計寂しくなるんですね。
Yunoa そうなんですよ。きれいすぎて涙が出てくる、みたいな。そういう感覚があるんです。しかも、“Wolf moon light/冷たく”っていう歌詞だったから、余計に儚い印象を受けて。さみしくなって絶望してるけど、ポジティブがすべて消えてしまってるわけじゃない。灯火が自分に残っていることはどこかで感じてるからまた頑張っていこうっていう。そういう歌詞だと解釈したんです。
──それぞれの歌詞で、実体験な部分や事実に基づいているフレーズはありますか?
Harukaze “flick ya hair up”っていうフレーズがあるんですけど、私、めっちゃヘアフリップするんです。髪をさっと跳ね上げるクセがあって。それが歌詞になってる!と思って(笑)。
Yunoa 私は“静かに瞳(め)を濡らす Nowhere night”ですね。私、泣くときは大体ひとりで泣くんで。人前で泣けない人だから、そこは“私です”って感じです。
──「C」の歌詞に、“Cuz suddenly it came to me/I’d seen it in the tapestry”(だって ふと気づいたんだ/あのタペストリーの中で見たんだ)と出てくるけど、タペストリーを飾っていたりするの?
Yunoa 部屋にタペストリーはないけど、絵はありますね。アクリル板によく絵を描いていて、それを壁沿いに立てかけてありますね。
──そういう部屋だということは伝えていたんですか?
Yunoa 伝えてないです。でも、自分で描いた絵を見てひらめいたり思いついたりすることはありますね。
Harukaze 歌詞を書くにあたり、cAnON.さん、SNSとか動画とか、めっちゃ見たって言ってました。「O」の歌詞には“beat ‘em, beat ‘em all”っていうフレーズも出てくるけど、私はボクシングをやってるんで、それかもしれない(笑)。
「今年はフェスに出たい。NAQT VANEには野外で歌うのにふさわしい曲がたくさんあるんです」(Harukaze)
──『NV』のCDは、可変ジャケットになっていたり、ナンバリングがされているなど、パッケージも凝ってますね。
Yunoa ジャケットは、大きい元の絵があって、そこからランダムに拡大したり、縮小したりして切り取った図柄のカードが入ってるんです。
Harukaze なので、一枚一枚違う図柄になってるのが特徴です。元の絵には歌詞から抜粋した言葉もちりばめられてるんです。だから、もしかしたら手に取った人のジャケットには歌詞の言葉の一部が入ってるかもしれない。絵本の「ミッケ」みたいな感じですね。
──実際に一枚のパズルから抜き出したピースも封入されているそうですが、そのパズルはジャケットと同じ図柄なんですか?
Harukaze 違うんです。パズルはわかりやすくて、太陽と月をモチーフにした絵になってます。
Yunoa パズルを入れたのは、CDを手にしてくれた方みんなでNAQT VANEっていうメッセージなんです。part of us=私たちの一部だよっていうことをわかってもらえたら。可変ジャケットも、それぞれが違って、みんないいっていう意味を込めてるんですよ。NAQT VANEはチームプロジェクトなので、作品によってClassic 6(クラシックシックス)というクリエイティヴ集団も参加していたりもするんですが、それだけ視覚面のクリエイティヴにもこだわっていて。コンセプトやメッセージを詰め込んだパッケージになっています。
──先程、ライブで次にやりたいことを伺いましたが、楽曲面で今後やってみたいことは?
Harukaze アコースティックの音源を出したいです。澤野さんが私たちのツアーのAfter Talkのライブを観て「NAQT VANE、アコースティックの曲いいね」って言ってて。「いや、澤野さんが作った曲ですけど!」みたいな(笑)。そんな話をしたんですけど、澤野さんがそう思ってくれたということは実現する日も遠くないんじゃないかなと。
──それこそYunoaさんがギターで伴奏するような楽曲とか。
Yunoa そう。ライブのあと、澤野さんとアコースティックで披露する機会が増えるといいねと話していて。
Harukaze アコースティックと言ってもバラードじゃなくてね。二人でライブしたときにギター一本でもパフォーマンスできるとか、そういうシンプルな音もNAQT VANEに合うよねって。
──今回のツアーを回ってみて、もっとこういう曲調にトライしてみたいとか、そう思った部分は?
Harukaze 日本語詞だけっていう曲もやってみたいです。今回のツアーで、「Beautiful Mess – NV」は最後にラララとコーラスできる部分を作って合唱したんです。そういうアンセム曲はあるんだけど、お客さんと一緒に歌う曲が少ないから。
──お客さんとのコミュニケーションをどう図るかっていうことですよね。英語詞だとどうしても伝わりづらい部分があるし。
Harukaze 今回のツアーを見て澤野さんも新たなイメージが沸いてると思うので、今後の楽曲もとても楽しみです。新曲の制作も動き出しているので、次のアクションを楽しみにしていてください。
──ツアーとEPリリースで2025年が始まりましたが、今年さらに実現させたいことは?
Harukaze フェスに出たいです。今回ツアーをやってみて、二人の魅力はライブでいちばん伝わったんじゃないかと思っていて。音源を聴いてもらうのもありがたいんですけど、実は私たちはあまりクールじゃないという面もそうだし、NAQT VANEには野外で歌うのにふさわしい曲がたくさんあるんです。たとえば「NIGHTINGALE」は、以前、京都の映画フェスで大自然の中で歌わせてもらったときに楽曲の魅力がいちばん伝わった気がして。まったく私たちのことを知らない人たちがいるようなところにも参加する機会が増えたらと思ってます。
──今回はワンマンツアーだからVANEsが多かったでしょうしね。
Harukaze そう。VANEsのみなさんに会える機会はもっと作っていきたいんだけど、そうじゃない人たちにNAQT VANEがどう刺さるのか、どうしたら刺さるのか。それを知るためにはそういう場に出て行ってみないとわからないから。今年はもっと外に出る機会を増やしていきたいですね。
撮影 堀内彩香
NV
NAQT VANE
NAQT VANEのコンセプトEP『NV』(ヨミ:エヌブイ)が4月2日(水)にリリース決定! ▼ご購入はこちら https://naqtvane.lnk.to/NV_PKG ▼サブスク視聴はこちら https://NAQTVANE.lnk.to/NV_STDL 今回リリースとなるコンセプトEP『NV』は、昨年リリースしたファーストフルアルバム「Dispersion」収録曲をYunoaと共に再解釈した“NVシリーズ”のほか、映画『あの人が消えた』主題歌で話題となった「FALLOUT」やその他新曲2曲を含む全7曲を収録。 パッケージは1つとして同じCDがないそれぞれの個性を大切にしたユニークな特別仕様! ・一枚一枚違う絵柄のカードがジャケットになる「可変ジャケット」を採用 ・それぞれのカードにナンバリングが記載 ・実際に1枚のパズルから抜き出したピースを1つずつ封入 ぜひあなただけの一枚を手に取ってください! <予約・購入特典> 汎用特典:澤野弘之 × Harukaze × Yunoa スペシャルオーディオコメントCD「NAQT VANE’s Good Vibes Only - NV Edition - 」 ※ファーストフルアルバム「Dispersion」の際に好評だったオーディオコメントCD「NAQT VANE’s Good Vibes Only - Special Edition-」の第2弾。
詳細を見るNAQT VANEのコンセプトEP『NV』(ヨミ:エヌブイ)が4月2日(水)にリリース決定! ▼ご購入はこちら https://naqtvane.lnk.to/NV_PKG ▼サブスク視聴はこちら https://NAQTVANE.lnk.to/NV_STDL 今回リリースとなるコンセプトEP『NV』は、昨年リリースしたファーストフルアルバム「Dispersion」収録曲をYunoaと共に再解釈した“NVシリーズ”のほか、映画『あの人が消えた』主題歌で話題となった「FALLOUT」やその他新曲2曲を含む全7曲を収録。 パッケージは1つとして同じCDがないそれぞれの個性を大切にしたユニークな特別仕様! ・一枚一枚違う絵柄のカードがジャケットになる「可変ジャケット」を採用 ・それぞれのカードにナンバリングが記載 ・実際に1枚のパズルから抜き出したピースを1つずつ封入 ぜひあなただけの一枚を手に取ってください! <予約・購入特典> 汎用特典:澤野弘之 × Harukaze × Yunoa スペシャルオーディオコメントCD「NAQT VANE’s Good Vibes Only - NV Edition - 」 ※ファーストフルアルバム「Dispersion」の際に好評だったオーディオコメントCD「NAQT VANE’s Good Vibes Only - Special Edition-」の第2弾。
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猪又 孝
1970年生まれ。音楽ライターとして国産のR&B/HIPHOP/歌モノを中心に執筆。日本の著名ラッパーが作詞術を語る単行本「ラップのことば」「同2」を企画・編集・執筆。安室奈美恵、三浦大知、東方神起、ナオト・インティライミなどのオフィシャルプロダクツにも関わる。HIPHOP専門ラジオ局「WREP」に放送作家/ディレクターとして参加した他、ラジオ/TV/配信コンテンツの構成も多数手掛ける。