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【歌心りえ】異例の2社同時リリースでビクターVSエイベックスのエースエンジニア対決に!?

歌心りえ

【歌心りえ】異例の2社同時リリースでビクターVSエイベックスのエースエンジニア対決に!?

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昨年、日韓共同オーディション企画『トロット・ガールズ・ジャパン』に50歳で挑戦して話題となり、さまざまなTV番組でその歌唱力を評価されて話題となった歌心りえさん。4月2日にメジャーソロデビューとなるアルバム2作品をリリースしましたが、これがビクターから『SONGS』、エイベックスから『HEARTS』という、レーベルの垣根を超えた2作品同時リリースという極めて異例なもの。

業界史に残る快挙を成し遂げた彼女に、これまでのこと、アルバムのこと、そしてこれからのことなど、関係者も交えて、いろいろとお聞きしました!

50歳からの再挑戦……2社同時リリースが決まってビックリ!

──今回、メジャーソロデビューを迎えるにあたって、率直にどんなお気持ちですか?

歌心 こんな日が来るとは思っていなかったですね。1995年にデビューして、3人組から2人になり1人になり、また3人になり……みたいな感じだったんですけど(笑)、今回「歌心りえ」という名前で、ホントに大々的にデビューさせていただいて。こんなことになるとは本当に思わなかったので、感謝しかないです。正直、母親にも親孝行できないでいた自分が、ちょっとずつですけど、できているのかなとも思っています。

──先ほど言われたようにグループとしてキャリアを始められて、紆余曲折あって、50歳の時に日韓共同オーディション『トロット・ガールズ・ジャパン』に挑戦されたのが大きな転機になったわけですよね。その挑戦にはどんな思いがあったんですか?

歌心 その時は正直、50歳という年齢もあるし、「オーディションって若い子が受けるものでしょ?」とも思ってましたし、一応過去にデビューもしてここまで来てるというところで、「私に何ができるのかな」と思って、何日かいろいろ考えたんです。今まで歌ってきた中で、音楽には勝ち負けはないじゃないですか。もちろん評価というのはありますけど、その場で直に分かるということはほとんどないわけで。だとしたら、今まで歌ってきた自分の歌を評価してもらって言葉をもらえるのであれば、今後自分の歌手人生の中ですごい糧になるなと思って、それで決めました。

──その時、ご自身がそれまでやってこられたことへの自信というのは、どれぐらいあったものですか?

歌心 その時は、もう自分がやってきたことは、自信を持って1曲1曲やっていけばいいとは思ってましたね。それで評価の言葉をもらえたら、自分の中ではすごく新鮮なものになると思うし、それが今後につながっていけばいいなと思っていました。あと、オーディションには12歳の子からいたので、そういう子たちからも刺激をもらえて、すごく新鮮でしたね。

──そこで評価されてTV番組などでブレイクして、ビクターとエイベックスの2社から同時にソロメジャーデビューという形になりました。そちらにCDの見本がありますが、同じ歌手名の上に、違うマークが載ってるってすごいですよね(笑)。

歌心 本当ですよね!(笑)こんなこと……ないですもんね。いやあ、もうビックリです。

──実際、どう受け止めていますか?

歌心 エイベックスさんでは、過去にドラマの劇中歌を歌わせていただいて、それをシングルカットした時にお世話になったんですけど、ビクターさんははじめましてですし。コメントで「りえさん、日韓の架け橋になってますね」っていうコメントもいただくんですけど、日本ではレコード会社の垣根を越えて、私は架け橋を作れたのかなと、ちょっと自負させていただこうかなと思ってます(笑)。

──改めて、『SONGS』と『HEARTS』という分け方はどういうところから出たんでしょうか?

歌心 これはたぶん、レコーディングをしている時に出たと記憶してますが……「タイトルはどうする?」みたいな話をしていた時に、確かビクターさんのディレクターさんが「じゃあ『SONGS』と『HEARTS』、『歌』と『心』でどう?」と提案してくださって。それが2枚重なったときにちゃんと「歌心」ってなるといいねということですね。シンプルだなと思ったんですけど、そこに今度は『SONGS』という英語がついてきて、「それいいですね!」となって。最初は、2枚のパッケージを重ねると文字ができるとか、ハートができるというのもありですね、というお話もしていたんですが、出来上がりは「歌」と「心」と1文字ずつ入っていて、本当に分かりやすいし、本当に歌心りえが全部入ってるっていう感じで、気に入っています。

──そして、2枚のほぼ全曲がカバー曲ですよね。その選曲とか振り分けは、どのようなコンセプトなんでしょうか。

歌心 『SONGS』はビクターさんのほうから、「今までYouTubeとか歌ってきて、皆さんに聞き馴染みのあるものをメインにしてはどうですか」というご提案があって。確かに聞き馴染みはあるんですけど、映像で見ていたものが音声だけになるので、大丈夫ですかね?と不安になったんですけど、大丈夫でしょうということで。エイベックスさんの『HEARTS』のほうは、私も聴いてきた楽曲ではあるけど、初めて挑戦するというものもあって、今後の私の歌の未来みたいなものが込められているかなと思っています。私も新鮮だと感じているし、今まで聴いてきてくださった方もすごく新鮮に思えるのが『HEARTS』だなと思っています。こう分けてみると、すごくうまくできたなとも思いますね。

歌い慣れていた曲でも、レコーディングではさまざまな発見が!

──ではこの2枚の収録曲について、ポイントとなる楽曲への想いだったり、実際にレコーディングで歌ってみてというところを教えていただけますか?

歌心 『SONGS』にはオリジナル曲が2曲入っているんですけど、「おかあさんのうた」は10年以上前に作った楽曲なので、ビクターさんが気に入ってくださって、収録曲にしようって言ってくださったのはすごくうれしかったですね。ぜひ皆さんに聴いていただきたいです。

──この曲がブルース調だということに驚いたんですが。オリジナルで作る曲はブルース調のものも多いんですか?

歌心 いえ、この曲だからこそ、ちょっとブルースっぽくアレンジしようというのがあって。この曲はセリフのパートがあるんですが、海援隊の「母に捧げるバラード」がまず念頭にあって、そこからインスパイアされた感じで作ったんですけど、セリフもあってブルースっぽいアレンジがいいんじゃないかっていうのを、当時、主人とやり取りしてましたね。

──なるほど。

歌心 「恋人よ」は『トップテンショー』という韓国の番組でも歌ってたんですが、改めてオリジナルを聴いてレコーディングに臨んだ時に、リズムがすごく難しいということを再認識して、けっこう苦戦しました。苦戦した曲はいっぱいあるんですけどね(笑)。『HEARTS』のほうでは、「翼をください」はコーラス部にいて、その当時すごくよく歌ってた曲だったんです。だからそれを収録するとなった時はすごくうれしかったですね。「アレンジはこんな感じにしようと思うんだ」っておっしゃっていただいて、実際に聴いた時の壮大さには驚きました。すごく情景が見やすい感じがアレンジに入っていたので、歌う時はスーッと入れました。「ワーッ!」っていう固い集中力じゃなくて、本当に両手を広げてはばたけるようなアレンジだったので。アレンジにもすごくこだわっているので、そういうところも聴いていただきたいなと思います。

──新しい挑戦になるような楽曲が中心という『HEARTS』の中でも、一番の挑戦だったと思える曲は何でしたか?

歌心 大塚愛さんの「プラネタリウム」とか、あと「サンサーラ」はけっこう難しくて、ハードルが高かったです(笑)。大塚愛さんのブレスの位置、歌詞の区切り方が、やっぱり昭和の私からすると「ん、そこで切る?」という感じで、なかなかどうして難しかったです。

──時代的に、このあたりから歌詞の切り方がだいぶ変わってきたというか、新しくなった感じの頃ですよね。

歌心 そうですね。最初に聴いて引っかかる感じは確かにあったんですけど、聴いているのと、実際に歌うのとでは、だいぶ違うじゃないですか。そこが難しいのと、立ち位置というか、自分をどこに置いて歌うのかというところも、けっこうディレクターさんの意見もいただきながら歌っていましたね。「サンサーラ」は、「ちょっとキー合わせが難しいから外しませんか?」ってお伝えしたんですけどね(笑)。

──それだけ難しかったんですね。

歌心 たくさんの方がこの楽曲を歌っているので、そこのプレッシャーもありつつ、でもとにかくキーが高いんですよ(笑)。レコーディングでもそこを合わせるのがすごく難しかったですね。

──あれだけいろんな曲を歌われていても、やっぱり難しかったんですね。

歌心 難しいですね! メロディーの流れで高いところもポンといけるものもありますし、「そこ来るんかい!」ってものもあるので、流れによっては難しいのもありますね。

──原曲を歌っているのが男性の曲も、女性の曲も両方ありますよね。選曲する時など、その違いは意識されているんですか?

歌心 オリジナルの楽曲にはもちろんそれぞれのイメージがあるとは思うんですけど、男性の立場で作られた楽曲を女性が歌うというギャップだったり、私なりの解釈を載せやすかったりするというのはあると思いますね。あとは、「好き」。「この曲大好き!」というものは、もう男女関係ないですね。

──では『HEARTS』で、一番入れたかった曲というと?

歌心 「言葉にできない」は「これやりたいです!」ってお伝えさせていただきました。あと「Friend」はどう?って言われて、「『Friend』も大好き!みたいな(笑)。「奏(かなで)」も自分から言ったんですけど、歌ってみたらけっこう難しくて(笑)、やっぱり聴いてるのとは違うなと痛感しました。

──その点、『SONGS』は歌い慣れた曲が多かったと思うんですが、先ほどの「恋人よ」のように、今回のレコーディングで改めて何かを発見した楽曲というと?

歌心 大橋純子さんの「たそがれマイ・ラブ」は、他の候補曲があったんですけど、ディレクターさんから「こっちはどうですか」っておっしゃっていただいて「ああ、それいいじゃないですか!」って言って変更したんです。これもまたメロディーが曲者でですね(笑)、ブレスの切り方がけっこう絶妙で難しかったです。やっぱり大橋純子さんの楽曲を聴いているから、「あんな風に歌いたい」ってなっちゃうんですよね。そうなりがちなんですけど、やっぱりそこも自分のほうに寄せなきゃな、自分の色って何かな、と思いながら……でも、ほとんどの曲が苦戦してますね(笑)。

レコーディング・スタッフにも2社同時ならではの現象が!?

──全体に、原曲をすごく大事にされているという印象ですが、その中で今言われたようなご自分の色という点などについては、どのように考えられたんですか?

歌心 もちろん、オリジナルを大切にしなきゃ、メロディーラインとかは崩さぬように、という気持ちもありつつ、一方でライブでもよく歌ってきた、歌い慣れた感じというのも出てくるんですよ。レコーディング中に「それってどうなんだろうね」という話になって、1回みんなで頭をひねって。「でも、そこが歌心さんらしさなんじゃないですかね」ともおっしゃっていただいたので、自分の歌い慣れた雰囲気も、ちょっと残させてもらったりはしました。

──コンサートに来られているようなファンの方は、逆にそっちに馴染んでいるということもあるでしょうしね。

歌心 そうですよね。でもやっぱり、改めて作品として残るとなった時に、形にはまらないようにしたいと思いました。「道化師のソネット」や「雪の華」については、『日韓歌王戦』の時にアドレナリンが出まくって、緊張感もみなぎった中での歌唱を聴いていた方たちからすると「何か落ち着いちゃってないですか?」と思われるんじゃないかなとか思って、すごくそこは不安だったんですけど、でもあのステージのような感じで歌ってしまうと、作品としてはちょっと成り立たないんじゃないかなと思って、自分の中でストッパーがかかったりというのもありましたね。

──そこはやはりTPOというか、大きく違うものなんですね。

歌心 あと、レコーディングとなるとフルコーラス歌うじゃないですか。

──あ、なるほど!

歌心 番組で歌った時は半分しか歌ってないけど、それを今度は全部フルでやるとなると、表現もが変わってきますし。そのために改めてまたその楽曲を聴くと、「あ、そういうふうに言ってたのか!」って、メロディーとか言葉のつなぎ方、節回しとかに関して新たな発見もありました。は、1回歌ったんですけど、数日して別の曲をレコーディングした時に、「『瑠璃色の地球』、もう1回歌ってみない?」って言われて。私も「よかったです! 私もすごく引っかかってて」と。「やってみようよ」って言ってくれたのがすごくうれしかったし、改めて歌ったもののほうがやっぱりよくて。どこか「歌のお姉さん」チックになっていたところがあって、そこが吹っ切れた感はありましたね。

大(歌心さんのご主人) それと、どちらの会社のほうでも、エンジニアさんはそれぞれのエースの方達なので、すごくよく録ってくれていると思います。

歌心 そこは聴きどころだよね(笑)。

吉岡雄一(エイベックスの宣伝担当チーフ・プロデューサー) はい。エースの方達です!

──そう考えると、会社同士の対抗心というか、「向こうはあの人がやるのに、こっちがエースを出さないわけにはいかない」というのもありそうですね。

吉岡 それはあったかもしれないですね。(笑)

歌心 あとエイベックスさんの『HEARTS』の方で「言葉にできない」はピアノを安部潤さんという、私ももう長いことお付き合いのある方に弾いていただいたんですけど、その時は「せーの」で一発録音させてもらったりというのもあって。レコーディングのやりかたとかも、エイベックスさんの方ではいろいろカラーがあって面白かったですね。

──そういうレーベルごとの違いって、普通は移籍とかで初めて経験するものだと思うんですが、デビュー作でそれができるって、すごいですね(笑)。

吉岡 また、曲の中身がビクターさん、とエイベックスで、それぞれに合っていたところがあると思うんですよね。結果的に、ですけど。

 そこは本当に対照的で面白いです。

──そんな中で、「雪の華」は両方にアレンジ違いで収録されていますね。

歌心 この曲は、ビクターさんの『SONGS』版はオリジナルに忠実なアレンジになっているんですけど、エイベックスさんの『HEARTS』版は「-Strings Edition-」となってるように、アレンジを聴いた時に本当に新雪の中をスッ、スッと歩いていく足音が聞こえるような、木々が揺れる風の音も聞こえるような感じにしていただいて。歌入れの時にアレンジャーさんも来ていただいてて、そんなお話もさせていただいて、本当にすごく新鮮な現場がたくさんありましたね。

──聴かせていただいた印象では、『HEARTS』バージョンのほうが少し優しく歌っているように聞こえました。

歌心 おっしゃる通りですね。こちらのバージョンはテンポも遅いんですよ。けっこうテンポを落としたんだなと思って、そこでまた私の前に壁がボンッて出てくるんですけど(笑)。「どういう風に歌ったらいいですかね?」ってアレンジャーさんとも話をしながら、「お好きに歌っていただいて」と言われつつも、でもやっぱり声のパワー感とかも雰囲気に合わせたいなと思うじゃないですか。だから特にAメロの歌い出しは、より語りかけるように、ちょっと朗読するような雰囲気かなと思って歌いました。朗読となると、物語の始まりは静かに入りますよね。そういうイメージで、紙芝居を読むような雰囲気でやりました。

──物語が静かに始まるイメージなんですね。

歌心 そこから風が吹いてきてアレンジも変わってきて、ちょっと場面転換があってという感じで。

異例の事態だけに、制作過程も異例ずくめ!

──今、伺いながら単純な疑問が浮かんだんですが、ビクター、エイベックス両社で、打ち合わせとかは別々にされたんですよね?

歌心 最初だけ、全体の顔合わせ的なものがありました。制作・宣伝の方達がいらっしゃって、顔合わせして「今後よろしくお願いします」という感じで。その後もう1回、主人の店で「ウチはこんな選曲です」というのをやって、という感じでしたね。そこから個々に打ち合わせして。

吉岡 その後は、各社で決まった情報は随時下りてきていて、「ビクターさんがどんどん決まってるよね。ウチも早く曲を決めないとね」みたいな感じで(笑)。

歌心 そうでしたね(笑)。ビクターさんはけっこう進行が早くて、「これとこれとこれ、どうですか?」ってダーッと投げられるんですよ。その後にエイベックスさんからも「これでどうですかね?」というのが来て。

吉岡 けっこうプレッシャーを皆んな感じながらやってました(笑)。

──珍しいことだけに、その過程もドキュメンタリーが作れそうなぐらいですよね(笑)。

吉岡 エイベックスの立場から見ると、老舗レーベルであるビクターさんの制作・宣伝・販促におけるさまざまな動きは、本当に学ぶことばかりでした。逆に、ビクターさんからしたら、エイベックスのやり方はおそらくこれまでとは違った部分があったと思うんですよね。この作品における、表には見えないレーベル間のコミュニケーションのあり方というのは、他の作品では前例のないことだと思いますし、僕たちにとっても本当に貴重な経験で、たくさんの学びがありました。皆んなで手探りながらも、それぞれの業務を協力し合ってチームワークができてきてます(笑)


 僕から見ていても、本当に両社でアプローチが全く違って、すごく面白くて。本当に真逆みたいな感じでずっと動いてましたね。

歌心 最初は、エイベックスさんはCDでとは考えていなくて、「配信からいきましょう」という方針だったんです。でもビクターさんは「CDで!」と。あらどうしようとなって、私からするとこれって歩み寄りは大丈夫ですかと(笑)。「本当に出るのかね?」っていう話をよくしてました(笑)。

 事の始まりは私の中学の同級生のディレクターが「同じ日にバッと出して、レコード屋さんを全部歌心りえで埋めようよ」って言ってきて、そこから始まってるんですよ。

歌心 そこからあれよあれよという感じだったよね(笑)。本当にエイベックスさんもビクターさんも「手探りになっちゃいますけど」っておっしゃっていて。だって例がないことをこれからやっていくわけだから。

吉岡 その期間、歌心りえさんの日本での認知が徐々に高まったというのがすごく大きかったです。韓国でのブレイクを経て、日本でもいろいろな番組への出演によって、すごくバリューが高まってきたという実感がありました。それが「じゃあパッケージでいきましょう」という一押しになった。そこに至るまでにはいろいろな偶然が重なってると思うんですよね。

歌心 いろいろ重なってますね。私の仕事だと、今年がデビュー30周年であり、日韓国交正常化60周年があり、昭和100年があり。先日、「雪の華」の動画がYouTubeで1000万再生回数を達成したんですけど、その日は私のデビューシングルの発売日だったんです。その日に1000万回が重なって、本当にビックリしました。

吉岡 何かがあるんですよ(笑)。

──本当に、この2枚の制作過程だけでもNHKでドキュメンタリーが作れますよ(笑)。やっぱり会社の色が違うだけに、その2社が同時に同じアーティストの作品を出すとなると、いろんな違いが浮き彫りになりますよね。

歌心 だから本当に興味深い2枚のアルバムだと思います。世代も含めて。

吉岡 普通に考えて、デビュー作となると、今のように配信が主流の時代では、レーベル側はなかなかリスクを取りたがらないんです。だから、最初からパッケージでリリースするというのは、実はかなり難しいことなんですよね。それが今回は2枚同時、しかもレーベルの垣根を越えての展開というのは、通常では考えられないことで、非常に異例なケースだと思います。

歌心 その分、プレッシャーもすごいですけどね(笑)。

──ちなみに、これは1stアルバムが2枚ということになるんですか?

歌心 そういうことになりますね。どちらも1stの双子ちゃんです。

──では、次のアルバムは2ndになるんですか?

歌心 ハハハハ!

吉岡 このパターンは聞いたことがないですからね。

──そして、2ndはどちらから出るんでしょうか?

歌心 アーッ!(笑) どうなんだろう(笑)。

──でも今回の2枚って、基本的に皆さん、両方いっぺんに買いますよね?

吉岡 リリースイベントなどでも、『SONGS』と『HEARTS』をセットでご購入される方がやはり多いですね。僕はエイベックスの人間ですが、「『HEARTS』は絶対に『SONGS』に負けちゃいけない」なんて気持ちはまったくなくて、ビクターさんの『SONGS』をしっかりプロモーションしていくことが、結果的に『HEARTS』の広がりにもつながっていくんじゃないかと今でも考えています。

ファンの皆さん、家族、韓国の方々にも恩返ししていきたい!

──さて、今後のことなどについても改めてお聞きしたいんですが、その前に、歌心さんのお名前にもなっている「歌心」というものの本質って、ご自身では何だと考えていますか?

歌心 デビュー当時からずっと言っていた、歌うことに対して「歌は心で」というモットーから、自分でつけた名前なんですけど……今まで51年間生きてきた中での自分の人生経験だったりとか、うれしかったこと、楽しかったこと、悔しいこと、いろんな喜怒哀楽があって、「この年齢があるから、りえさんの歌が皆さんに響いてるんですね」って言われたこともあって。なのでやっぱり自分が気づいてきたこと、思わされたこと、思ってきたことが、一番の真髄なんじゃないかなって思っているんですね。今回のこの2社からのリリースもそうですけど、たぶんまだ経験していないこと、未知なものがあるので、またそこから私はいろんな経験をさせてもらって、新しい思いとかが生まれてくると思うんですね。それが今後、日本の名曲ってまだまだたくさんあるので、そこに何か反映できる気持ちっていうのが出てくると思うんですよ。そこでまた楽曲が歌えたらいいし、またそこで私が新しい楽曲を生み出すかもしれないので、そこをどんどん今後は伝えていきたいし、そこの一番持ってるところ、真髄にあるものを大事にしていきたいなと思いますね。あとはもう本当に、恩返ししていきたいと思います。

──恩返しというのは、聴いてくださる方にということですか?

歌心 そうですね。今まで、いろんなところで「無名」って言われてきた中でも、やっぱりコンサートにも来てくださる方がいるので。あとは故郷にいる母、姉、父親にも、いつか故郷に錦が飾れる日が来るのかなってずっとずっと思いながら歌ってきている部分もあるので、そこへの恩返しもありますね。

──そこは大きいですよね。

歌心 今回、アルバムタイトルを考える時に、エイベックスさんから「伝道師」っていう言葉が出てきたんですよ。それもまた重大な言葉だなと思いながら、でもそういう風におっしゃってくださるというのはすごくうれしくて。ということは、私はいろんな歌を歌わせてもらって、またそれを世の中に配信することで、若い人たちはそれが新鮮だったり、同じ世代から上の方にはすごく馴染み深いものだったりして、また新たな息吹が加わって皆様に届くのであれば、私は頑張って伝道師になりたいなとも思いましたね。

──そこはまた、他のシンガーの方にはない要素ですよね。さて、これがメジャーでのスタートということですが、今後はどうしていきたいですか?

歌心 日本は日本でたくさん歌を届けたいと思うし、やはり韓国で盛り上げてくださったので、韓国にも恩返しをしたいし、つながりは今後もずっと持っていきたいと思うので、韓国でのコンサートも視野に入れつつ、両方で活動していく場をちゃんと確保していきたいなとは思います。

──あと具体的に、ここのステージで歌いたいとか、ここでコンサートをやりたいというのは?

歌心 いやもう、紅白!(笑)紅白は故郷の母親への一番の恩返しかなと思うので。その日、もし本当に叶うのであれば、テレビで見ていないで、実際にNHKホールに来てもらって、同じ空気感の中で過ごしたいなと思いますね。

 あと、国歌斉唱ね。

歌心 それはずっと言ってるよね(笑)。

吉岡 SNSでも、その要望はけっこう来てますよね。

歌心 お声がかかる日を夢見ています(笑)。

──実現することをお祈りしています。ありがとうございました!

撮影 長谷英史

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記事情報

高崎計三

ライター

高崎計三

1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。