7月10日(木)よる10時からフジテレビ系木曜夜10時枠でスタートするドラマ『愛の、がっこう。』<初回15分拡大よる10時~11時9分>。『白い巨塔』『昼顔』他の脚本・井上由美子、演出・西谷弘コンビが手がけ、木村文乃さんとラウールさんが初共演ということで話題になっていますが、そこにメインキャストの一人としてNo.1ホスト「つばさ」役を演じるのが、荒井啓志さんです。「日本一の大学生」から俳優としての道を歩み始めている荒井さんに、このドラマへの意気込み、将来の夢などをお聞きしました!
「No.1ホスト」役にどう向き合っているか?
──2022年に『CAMPUS BOYS 2022』でグランプリを獲得して「日本一の大学生」になり、一昨年から舞台やドラマ、映画などに出演されていますが、そこからここまではいかがですか?
荒井 もう事あるごとに勉強だなと感じる、学びの場ですね。濃い3年間です。
──舞台、映画、テレビドラマと、仕事によっていろいろと違うと思いますが、その違いについてはどう感じていますか?
荒井 今回、連続ドラマを本格的にやるのは初めてなんですけど、改めて連続ドラマならではの難しさと戦っています。役作りの期間も長く、撮影が空くこともあって、そうするとまだ慣れてない部分もあるので、また一から役作りをする工程に戻るというか。そこが難しいかなと思いますね。
──しかも今回、『愛の、がっこう。』ではメインキャストとなっています。決まった時はどう思いましたか?
荒井 素直に嬉しかったです。連絡をいただいた当初は驚きの方が大きくて実感みたいなものはまだ湧いてなくて。オーディションに受かって、西谷弘監督の作品に出られるんだということがまずうれしかったですね。あとは近づくにつれてだんだん緊張感もあったり、実際現場でセットに入って緊張感がどんどん上がってきました。
──荒井さんが今回演じる「つばさ」はホストクラブ「THE JOKER」のNo.1ホストという役柄ですよね。自分の役柄に接しての印象は?
荒井 一番は、ラウールさんが演じるカヲルとすごく絡みの多い役なんですよね。ホストクラブの店内では、そのカヲルよりもホストとしては一歩二歩、頭が抜けている存在なので、すごく大事な役をいただいたと思いました。
──荒井さん自身、学生時代にホストをされていたんですよね? 実際に経験があるホストの役を演じるということについてはどう思いましたか?
荒井 そういう風に言われることもあるんですけど、意外と何というか……また演技となると別世界なんですよね。自分もホストクラブという世界にいたのは確かなんですけど、つばさというのは『愛の、がっこう。』という世界の背景がある中でホストをやっている一人の人間なので、どちらかというと、「ホスト」というより「人間」として見ている感覚なので、自分がやっていたこととの結びつきはあんまり考えていない感じです。
──なるほど。つばさの人格的なところには、あまりそこを結びつけて考えていないということですね。
荒井 そうですね。ただ、実際にホストをやっていたという経験があるので、例えばホストクラブのNo.1というのはこれぐらい余裕がある人物なんだとか、そういう「No.1ホスト像」みたいなところでは、自分の経験が役に立っていると思いますし、そういう引き出しみたいなところがあってよかったかもしれないですね。
──立ち振る舞いが分かっているという点でも役に立ったところがあるのでは?
荒井 それはありますね。その経験がなかったら、きっとNo.1の歩き方とかも分かってなかったと思うので。僕の経験上では、ホストさんは、店内ではポケットに手は入れないイメージでした。おもてなし精神が重要なので。でもNo.1だから、ポケットに手を入れていても許されることもあるんです。そういう細かいところでは、自分がやってきたことによってイメージもしやすかったですし、実際それが役作りの中で生きている部分はありますね。
──つばさの性格についてははどうイメージしていますか?
荒井 台本を読んでいくと、最初に抱いたイメージからずいぶん変わってきてるんですよ。
──そうなんですか。
荒井 まず、つばさというのは完璧主義な人間なんです。自分が徹底して覚悟を持っていろいろやってきたものが、今、つばさに関わっている人間が見ているつばさ像としてあって。だけど、本当はつばさっていうのは、ドラマのテーマにもありますけど、本当にしっかり「愛」を持った人間だし、本当に人一倍いろんなことを経験して、いろいろやって乗り越えてきて今がある。だけどたぶん、その過去を周りの人間に見せない主義なんです。だから周囲からは「つばささん!」「つばささん!」って憧れられて、完璧な人間と思われがちなんですけど、物語が進むにつれて、彼には彼の人間らしい部分があることが、垣間見えてくるんです。
──なるほど。そこは見ていくうちに印象が変わってくるわけですね。
荒井 はい。そしてつばさは、そういう面を持っているからこそ、自分と相反したものを持っているカヲルという人間が鼻につくんです。自分にないものを持っているので。だからつばさの特徴としては、本当に完璧主義で何でもできちゃうけど、でもちゃんと努力してきた背景が彼にはあって、もしかしたらこの作品の登場人物の中で一番まっすぐなのはつばさかもしれないぐらいまで、僕は思ってます。
──つばさは現役大学生ホストということで、学歴をちょっと鼻にかけているような場面もありますよね。序盤はそういう登場の仕方だったので、ちょっと嫌な人っぽく感じられたんですが、そういう印象からだんだん変わってくるわけですね。
荒井 これは僕の見解なんですけど……確かに、第1話を見てもイヤなことを言ったりはしてるんですよ。だから確かに性格が悪いように見えるんですけど、「悪いヤツ」だから「まっすぐな人間」じゃないとは言い切れないと僕は思っていて。確かにイヤなヤツのように見えるけど、まっすぐな人間なんです。僕も作品の後半がどうなるかはまだ知らないんですけど、たぶん最後まで、しっかり「イヤなヤツ」ではあると思います。ただ、しっかり「まっすぐなヤツ」でもあるので、そこを楽しみにしていただければと思いますし、僕自身もこの先の撮影で楽しみにしている部分でもあります。
──そういうつばさのキャラクターって、自分に似ているところはありますか?
荒井 はい、実は似ている部分があると思っていて。僕もけっこう「何でもできちゃうよね」って見られたいと思う部分が多少あるんです。できないことがあるというのを知られたくない部分というか。つばさもそういう人間なんですよ。自分のちょっと泥臭い部分だったりとか、ここまで来た背景とかは知られたくない。つばさはきっと、悩み事とかも誰にも相談せずに一人で乗り越えて今の位置があるんです。だけど周りはそこに行き着くまでの背景を知らないから、何でもできると思ってしまう。だからつばさは人に対して壁を作るし、でもそれはあえて作ってしまっている部分もあるんです。
──そうなんですね。
荒井 僕の場合は、壁まではいかないけど、でも自分の弱い部分は見られたくないと思ってしまいますし、相談とかもあまりできないタイプの人間なので、気持ちは理解できるなと思います。だから、もしつばさが友達だったら「話聞くよ」って言ってあげたいんですよね(笑)。そういう理解はできますね。
ラウールさんとは火花を散らすホスト同士!「必死に頑張ってしがみついてます」
──初のメインキャストというのはかなり大きなチャレンジだと思いますが、こうして伺っていると、自分の役の分析はかなり綿密にできていますね。
荒井 そうですね。そこは西谷監督やプロデューサーの栗原彩乃さんと話して、分からない部分はすぐ聞くようにしています。その都度いろんなご意見をいただくので、それを参考にしながら「自分はこう思ってるんですけど、どう思いますか?」という話をさせていただいています。
──一番絡みが多いというラウールさんと、実際に演技をしていて、どう感じていますか?
荒井 圧倒されています。本当に丁寧にお芝居をされていて、役作りもしっかりとこなされていて。木村文乃さん演じる愛実とカヲルの会話のシーン、それから自分との絡みのシーンでも、つばさが嫉妬してしまう対象だなということがしっかり身にしみて感じられるんですよ。そこがもうラウールさんのすごいところで、真面目に役作りをされてきているんだなというのをすごく感じて勉強になります。
──木村文乃さんに関してはいかがですか?
荒井 木村さんとの掛け合いのシーンもあるんですけど、役作りを徹底して分析されてきているんだとお芝居を通して身に染みて感じます。役柄もあるのかもしれないですけど、ギラギラしてるわけではなくて、すごくドッシリと構えているというか。演技を見ていても、存在感みたいなところはやっぱりすごいですね。圧倒されます。
──そういった方たちと、キャリアではかなりの差がある中でも、演技では渡り合っていかないといけないわけですよね。その時に一番心がけているのはどういうことですか?
荒井 当たり前の話ですけど、つばさという人間に荒井啓志は関係ないんですよ。そこをしっかり切り離さないと、荒井啓志にとっては木村さんとかラウールさん、それ以外の出演者の方たちも含めて、「テレビで見てた存在」じゃないですか。そこに荒井啓志が入ってきちゃうともちろんダメなので、撮影前は常にしっかりつばさを思い出して、つばさ100%で挑める準備はしています。
──手応えありそうですね。
荒井 いやいや、全然です!(笑) 本当にもう、頑張ってしがみついてるって感じですね。本当に自分一人の力では絶対にできないので、分からないことがあったら常に西谷監督、栗原さん、ラウールさんに聞いてます。やっぱり撮影が始まったら「ラウールさん」とは切り離して、カヲルとつばさでいないといけないし、そもそもホストクラブの店内では僕の方が上で、余裕を持ってないといけない立場ですからね。プライベートなども一切出ないように、ラウールさんとかに相談して「こうでいいと思いますよ」とかご意見をいただいて、やるようにしています。
──必死ですか。
荒井 必死ですね! もう本当に頑張ってしがみついている感じです。
──撮影現場はどんな雰囲気ですか?
荒井 同年代の男性のキャストが多いので、みんな休みの時間にはおしゃべりしたりとかしてますね。ラウールさんも木村さんもすごく物腰が柔らかくて、いい意味でフレンドリーに接してくださるんですけど、撮影が始まるとまたしっかりと存在感を出していくというタイプなので、お休みの時間とのギャップがすごいなと思います。でも木村さん、ラウールさんはセリフ量も多いので、休める時は極力休んでほしいし、セリフの確認とかもあると思うので、邪魔にならないように気をつけてます。
──でもこのキャリアで、そういった方たちとガッチリ絡めるというのはすごい経験ですよね。
荒井 本当ですね。数年前の自分では考えられなかったので。実際に今も撮影現場に入ると圧倒されてしまう部分はやっぱりどうしてもあるんですけど、圧倒されてちゃいけないなと思って。僕がそういう気持ちでいると、相手も演技に支障が出ちゃうと思うので、一切隠してやるようにしています。
最大の武器として身につけたいのは、やっぱり「演技力」!
──ところで、この「avex portal」には初登場ということもありますし、ご自身のこともお聞きしたいと思います。学生の時のオーディションから芸能活動が始まったと思いますが、その際に目指していたものは何だったんですか?
荒井 その頃から役者を目指してました。大学生と並行しながらホストをやっていた期間がありましたけど、大学4年生の時に俳優になろうと決めました。そのきっかけは、僕の友人がずっとバスケをしていて、今はBリーグのチームに入団してプロになったんですね。彼の試合を見に行った時に、すごく感動させられたんですよ。その時に、自分も感動を与えられるような存在になりたい、もっと具体的に誰かを幸せにできるような仕事につきたいと思って。
──大きな刺激を受けたんですね。
荒井 その試合で感動させられた自分がいる。自分も人の心に何かを届けたいと思ったんですけど、その時に自分は本当に何も武器を持ってないなと思って。そこでもしかしたら演技という力を磨いて、自分ではない作品の中の役を通したら、僕らが映画を見て泣いたり笑ったりするように、自分も誰かに感動を与えられたり笑わせたりできるんじゃないかと思ったんですね。それが役者に挑戦しようと思ったきっかけです。そこから、俳優になるために『CAMPUS BOYS』に応募して、「これが終わったら俳優になるために事務所に入って目指そう」と思ってて。
──その『CAMPUS BOYS』では、グランプリまでいけると思ってましたか?
荒井 いけるというか……「いく」って言ってました。いけるかどうか、というところで疑問を抱いてしまったら、自分の可能性をそこで決めてるようなものだと思うので。「いけるかな? いや、いけないかな?」とかって思ってたら、絶対いけないじゃないですか。だからもう、何が何でも通らなきゃと思ってました。
──演技に関して、憧れていた役者さんとかはいたんですか?
荒井 最初の頃って、演技についてはもうド素人ですよね。やったことがなかったので、何がすごいのかが分かってなかったんですよ。なので、逆に憧れの役者さんとかは分からなかったですね。顔が好きな俳優さんとかはもちろんいたんですけど、仕事として見た時に、自分が何ができて何ができないかすらも全く分かってない全くのド素人だったので、役者さんを見ても、その人は何が強いのかということも分からなかったので。今は実際に自分でやってみて「こういうのが難しいんだ」とか「自分はここまでしかできないんだ」というのも分かるし逆に「この人はこれができるのか」というのも、だんだん分かってきました。だから最近は、テレビで見る俳優さんたちのお芝居を勉強して見てます。
──見る人見る人、全部学べる状態ですね。
荒井 学べますね。もう何でも、見たものは全部吸収しようと思ってバーッと見てますけど、本当に全員が本当に尊敬できますね。
──以前のインタビューで、「視聴者に嫌われる役をやりたい」と話していましたね。
荒井 そこは今も変わらないですね。僕自身がけっこうキレイな感じに見られがちなので、そこの壁を壊していきたいなと思って。いろんな役をやりたいので、その過程で壁を壊していって、アングラな不良映画だったり、ちょっとアウトローな感じの役なども、機会をいただけるなら頑張って演じて、自分の壁をどんどん壊して役の振り幅を広げて生きたいと思っています。
──現時点の自分が持っている最大の武器って、何だと思っていますか?
荒井 何ですかね? 難しいですね……。僕は役者としてのスタートが遅いので、焦って行き詰まっちゃったりすることも多いと思うんですよ。でも僕は遅いスタートだった分、覚悟とか熱量みたいなものは負けないつもりでいます。これを職業として選んで飛び込んできたので、そこに対して自分に嘘をつきたくないし、最初の目的を忘れずにやり遂げる、そういう熱量ですね。もちろん尊敬する人はいっぱいいて、「この人は熱量がすごいな」と思う人はたくさんいるんですけど、僕もそういう熱はしっかり持ってますということは、伝えておきたいです。
──その上で、これから武器にしていきたいものというと?
荒井 それはもちろん、演技力です。最終的に行き着く先は、演技で評価をしてもらうことなので。今は必死にしがみついてしがみついて、常に学んでいる状況なので、いろんな現場とかで場数を増やして、いろんな経験をして演技力を高めて、鈴木亮平さんみたいに、いろんな振り幅の演技ができる役者になれたらうれしいですね。トリッキーな役柄や医療もの、任侠ものもやればCMでもいろんな顔を見せて。本当にそういう風になれたら、もう醍醐味ですよね。
──あと、これだけは叶えたいという究極の夢は?
荒井 それこそ去年の年末に掲げた今年の目標が「連続ドラマ」と「仮面ライダー」だったんですよ。連続ドラマは今回ありがたいことにいただいたので、仮面ライダーのお仕事もいただけたらうれしいなと思いますし、色んな過程を通して僕が直近で目指せる最大のものは、やっぱり日本アカデミー賞の主演男優賞ですね。
──そこには、できるだけ早く辿り着きたいと思いますか?
荒井 自分の性格で言うと、できるだけ早く駆け抜けていくと言いたいところなんですけど、でもある程度焦らずにやりたいなという気持ちはあります。焦らず着実に。やっぱり、それほど簡単な世界じゃないなと思ったからこそ、そう思いますね。本当に道のりは長いなと思っているので。
──「仮面ライダー」については、どんな役柄がいいですか?
荒井 やっぱり仮面ライダーになりたいですよね。本当にちっちゃい頃から見てますから、みんななりたいですよ。
──ちなみに、一番熱中したライダーはどの作品ですか?
荒井 『仮面ライダー電王』かな。あとは『仮面ライダー龍騎』とか。よく変身のシーンを真似して遊んでました。ライダーは本当にやりたいです。また、それがやれたらすごく自信につながると思いますし。
──では最後に、改めて今回のドラマ『愛の、がっこう。』の視聴者の方、ファンの方に向けてメッセージをお願いできますか?
荒井 今回の作品はタイトルの通り「愛」をテーマにしているんですが、愛の形というのは人によってたくさんあると思うんですよね。愛実とカヲルという、交わるはずのなかった2人がひょんなことから出会ってしまって、お互いに全く違う環境にいて。いろんなしがらみもあり、いろんな事情も抱えている2人が、そういうものを超えて結びつくラストをみんな予想すると思いますけど、それが「愛」なのか、それともお互いの幸せを願って、一緒にいなくても「元気でやってね」って離れることを選んだとしても、それも愛の形の一つだと思うんですよ。「どうせ結びつくんでしょ?」じゃなくて、たぶん実生活とかでも、相手の幸せを願ってあえて別の道を行くということも、きっとあるじゃないですか。そういういろんな愛の形がきっとあるはずだから、最後の最後まで予想して、考察しながら、毎週楽しみに見ていただけたらと思います。
そして、僕が演じるつばさという人間も、イヤなヤツですけど、愛を持った人間だと思っていて。そこが後半にかけて垣間見えてくるシーンがきっとあるはずなので、そういうところも注目して見てもらえたら、すごく面白いかなと思います。登場人物みんな、しっかり愛を持って、愛を追いかけている人たちばかりなので、ぜひ楽しんで見てください!
──ありがとうございました!
撮影 長谷英史
フジテレビ系木曜劇場『愛の、がっこう。』
▼7月10日(木)スタート 毎週木曜よる22時00分~ ※初回15分拡大
ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。