昨年10月にYouTube Liveでの「記者会見」というカタチで決意を表明。今年3月5日(日)に東京LIQUIDROOMで自身最大規模のワンマンライブを行うと発表したFAKY。「FAKY Road To 800」を掲げ、ストリートライブでチケットを手売りしながら、当日に向けてひた走ってきた5人は、どんな気持ちで当日を迎えるのか。ライブのリハーサルに潜入して、今のFAKYをキャッチしてきました!
ライブのクオリティーを支える綿密な下準備を目撃!
2月某日。都内某所。リハーサルスタジオの赤い扉を開けると、FAKYの5人が3月5日のワンマンライブに向け、汗を流していた。
「そこはこうした方がいいと思うんですけど」
ライブの演出家に向けたLil’ Fangの声が、扉を開けてすぐに耳に飛び込んでくる。
ネタバレを避けるため楽曲タイトルは伏せるが、5人がそのとき行っていたのはある楽曲「A」のダンスブレイク部分の確認だった。目指す動き方はこうだ。
①センターで歌っているAkinaが後方に下がる
②入れ替わるようにLil’ Fangが低い姿勢でフロアに入る
③サイドからHinaが入りLil’ Fangの隣に立つ
④逆サイドからMikakoがターンしながらLil’ Fangの前に入る
⑤同時にLil’ FangとHinaは二手に分かれて後方に下がる
⑥Mikakoの真後ろにスタンバイしているTakiがセンターにいるMikakoと入れ替わる
文字にすると長いが、これで8カウント×4つ分。時間にすると10秒ちょっと。ライブ全体で考えるとほんの一瞬の動作だが、5人は念入りに動き方を考え、試し、実践していた。
わずかずつだが5人が順番にソロダンスを披露する場面なので、Lil’ Fangが「ひとりずつがしっかり目立った方がいい」と意見を出す。それを受けて5人は、体をどう動かしながら、どのタイミングで入れ替わっていくべきか、細かく確認していく。
たとえば、Lil’ Fangがフロアに入ったときの頭の高さ。首の振り方。隣に立つHinaとのコントラストをつけるため、なるべく低い姿勢が良いけれど、あまりに低いとLilが目立たなくなってしまう。そのLil’ Fangと入れ替わるMikakoは、どんなステップを踏みながら、どのカウントでLilの前に入るのか。やや後方から入るのか、真横辺りから入るのか。5人は何度も何度も動きを繰り返しながら、それぞれの軌道を細かくチェックしていく。
このダンスブレイクのムーヴはAkinaが考案したそうで、途中、AkinaがMikakoにタイミングやステップ、回り方などを指示する場面も。そうしてある程度、全員が動きを掴めたところで、今度は音を流して一連の動作を確認。一度やってみたところで「私は勢いよく回転して入るから、Lil’ Fangの位置をもう一度確かめておきたい」と、LilとMikakoは音がない状態で再度、動き方や重なるタイミングを確認していた。
「じゃあ、これで一度、撮っておきましょう」。
スタッフが声を出し、音に合わせて全員で踊る動画を撮影。この動画を各自が見直し、自主練してライブに備えるのだ。
ここまで要した時間は10分以上。繰り返すが、このパートは時間にして10秒ちょっと。それを5人は、これだけ丁寧に念入りに注意深く確認していくのだ。FAKYのライブは、5人が躍動しながらスルスルッとシームレスに立ち位置を変えていくダンスムーブが見どころのひとつ。こうした綿密な準備が、ライブのクオリティーを高めているのだとリハーサルを拝見して痛感した。
続いて、5人は楽曲「B」から楽曲「C」への繋ぎの部分をリハーサル。楽曲が切り替わるときに、5人が大胆に動いて立ち位置を変える。その動線の確認だ。Lil’ Fangが「私はこう動くから、Akinaはこう動いて、そのときTakiはこう動いて」などと指示を出していく。やっかいなのが、Lil’ FangとAkinaとTakiが舞台中央でクロスするタイミングがあること。お互いがブツからないように移動するには、少し円を描くように動くべきか、直線的に動くべきか。曲の「ワン、ツー、スリー、フォー」の、どのカウントでそれぞれが動き出すのか。実際に体を動かしながら調整していく。じゃあ、一度やってみようということで音を出して動いてみたところ、Akinaがタイミングを間違え、Lil’ Fangとブツかりそうに。「うわぁぁぁ」というAkinaの声に全員が笑い出し、一瞬、場の空気が和らいだが、本番でそれは禁物。再度、全員で動き方を確認&調整し、この部分のリハーサルを終えた。
ここで撮影されたパートは10分以上のメニューで、かなりハードな動き。撮影後は全員、水が置いてある場所にダッシュして、がぶがぶ飲んでいた。
給水タイムを挟んだあとは、演出家の指示のもと、ライブのオープニングの動き方や楽曲「D」の立ち位置などを確認。これらはこの日、初めてリハーサルするもので、全員がじっくり動き方を頭に入れたあと、確認用の撮影をして、長めの休憩となった。
その休憩中にLil’ Fangに尋ねたところ、3月5日に向けたリハーサルは、この日が3回目とのこと。リハーサルは毎回10:30から19:30まで行っているそうで、食事は各自が合間を縫って済ませる程度で、時間を惜しんで練習を重ねているという。さらに、今回はこうしたリハーサル以外にもボーカルレッスンや細かいダンスレッスンを取り入れて入念に下準備をしているそうだ。
リハーサル後の5人をキャッチ!「最後まで観ていただければ、この先の道も感じられるはず」
この日、リハーサルに打ち込む5人の表情は真剣そのものだった。時折、笑いがこぼれる場面があっても、部屋には絶えず緊張した空気が流れていて、本気度が伝わってくる。そんな5人に、3月5日に向けた今の気持ちを訊いた。
──3月5日 (日)は、昨年の「FAKY LIVE TOUR 2022 -ALIVE-」以来のワンマンとなります。会場になったLIQUIDROOMの収容人数を目標にした「FAKY Road To 800」というスローガンは、いつ頃決めたんですか?
Lil’ Fang 「Road To 800」を決めたのは、「ALIVE」ツアー中だったよね?
Hina そう。大阪だった。
Lil’ Fang 「ALIVE」ツアーを始める直前に「ツアーを終えたら何する?」という会議が私とスタッフさんの間であって。「次はこのくらいのキャパでやりたい」「それを売り切るためにはどうすればいい?」という話になったんです。これはメンバーも知らないんですけど、そこで最初に挙がった目標は600だったんです。でも、私はもっと上を目指したいと思いました。
──だったら、目標数値を敢えて高めに設定しようと。
Lil’ Fang そう。今の私たちでは売り切れないかもしれない数字にチャレンジすべきだと思って。それで目標を800にして、LIQUIDROOMのSOLD OUTめざすことにしたんです。「ALIVE」ツアーを頑張ってる最中、メンバーに「次は800という数字を掲げて、みんなでチケットを売りに行こう」と伝えました。「ALIVE」はツアーということで私たちを待ってくださっているファンに会いに行けたけど、次は自分たちの力でどれだけの人たちの心を動かせるのか?というところに進まないとねって。なので、これまでFAKYがやってこなかったことにもアプローチしていくべきだと。アイドルの方たちと一緒に出るイベントに積極的に出て行こうとか、自分たち以外を目的で見に来ている人たちにもFAKYを好きになってもらえるのか?とか、そういう挑戦をしていこうと話したんです。
──それが2月のストリートライブに繋がるんですか。
Lil’ Fang そうです。しっかりとした照明や音響設備を用意できないストリートライブで、どれだけ自分たちの力だけで勝負できるのか。地で持っている個々のパフォーマンス能力でどれだけ通用するのか。いや、通用させないといけないよねって。
──通りがかりの人たちも惹きつけなきゃならないわけだから。
Lil’ Fang そういう方たちにもFAKYを知ってもらって、好きになってもらうためのライブ。もっと見たい!って思ってもらえるようなライブにしないとダメだと思いました。
──ストリートライブではチケットを自分たちで手売りしました。
Lil’ Fang 手売りと聞いたら、事前に買ってもらったチケットのお渡し会を想像するじゃないですか。私たちは「ここで売ってます。よろしくお願いします!」っていう声出しから全員でやったので。本当ゼロから、本当の手売りをさせていただきました。
──AkinaやTakiは、ストリートライブと聞いても想像がつかなかったんじゃないですか?
Akina 私はストリートライブとかストリートパフォーマンスと聞くと、マジシャンとかそういうイメージが強かったから。ラスベガスとかにいる人。
──大道芸人さんみたいな。
Akina そう。でも、やってみたら、すごく距離が近いから、私たちの気持ちを届けられてる!っていう実感があって。距離が近いぶんだけファンの方々と心が通じやすくて、もっともっと頑張りたいという気持ちが高まりました。
Taki 私も、最初は「どうなるかな?」って不安でした。ストリートダンスは見たことがあるんですけど、ストリートで歌って踊るダンスボーカルグループは見たことがなかったから、5人がストリートに立ってる姿が想像できなくて。振り付けも激しいから踊れるスペースはある?とか、ヒールを履くから道のデコボコはどうなの?とか。車が通ったらどうするの?とか。
──車は来ないですよ。RoadじゃなくてStreetだから(笑)。
Lil’ Fang あはは。どんなところでやると思ったの?(笑)
Taki でも、それくらい最初は想像がつかなくて。でも、やってみないとわからないから、まずはやってみようと。そしたら「今日初めて見ました」「ワンマン気になりました」などと言ってくれる方がいてくれたんです。そこからストリートライブがめっちゃ楽しくなっちゃって、ずっとHappy Go Lucky!って感じでした。
──Mikakoはストリートライブにどんな手応えを感じましたか?
Mikako お客さんからもらうエネルギーがすごく強くて。私は3月5日に人生をかけているんです。ストリートライブに駆けつけてくれる方の中には仕事を休んで来て下さる方もいて、それってある意味、その方も自分の人生をかけてくれている訳じゃないですか。こうやって何かひとつのことに対して、みんなで頑張っていることが本当にあり得ないことだなと思って。だから、みんなに負けないように、みんなにもっともっとエネルギーが届け!っていう思いで、今はすべてのことをやっています。
──3月5日の本番まで、2週間を切りました。今、どんな心境ですか?
Taki 今は毎日、ワンマンライブのことしか考えていないので。朝起きたらリハーサルの映像を見返して音源を確認して……呼吸が全部ワンマンになってるくらいだから、今から緊張してます。私、緊張しちゃうと負けちゃうタイプだから、“ワンマン当日になったらどうなるかTaki”に負けないようにしなくちゃなって。あのステージに立つのは本当に楽しみだから、緊張に負けないようにしようと思います。
Hina こんなにたくさんのファンの方を巻き込んで1つのライブに向かっていくことは初めてだから、みんなに感謝を返したいというのが一番にあります。でも、実は”Road To 800”を始めてから悔しいこともありました。「そんなにフォロワーがいるのに800人集められないの?」みたいなことを言われてたり。”Road To 800”が始まってからの期間は決して楽しいだけではなかったから、そういう部分も含めてライブを絶対成功させたいです。成功がそういう悔しさを浄化させることになると思うから。マジで頑張ります!
──Akinaは今の気持ちを記者会見のときのように四字熟語でお願いします(笑)。
Akina ん? よじ…? アレ、なんでしたっけ?(笑)……(しばらく沈黙)
Hina (とうかせいせい)
Akina あ、冬夏青青! それですよ、それ!(笑)
──普通の言葉で話すと?
Akina 今はすごく良いプレッシャーを自分に与えています。今までで一番責任を感じてるライブなので。本当にこれを成功させないと、と思っています。「もっと行けた」という感じには絶対なりたくない。そしてHinaが言った通りで、このライブを発表した日からFAKY MANIAと一緒に歩いてきている道だから、全力の5人のパワーをFAKY MANIAに返したい、見せたいっていう気持ちが一番あります。
──Mikakoはどうですか?
Mikako 私は楽しみでしかないです。余裕とかそういうんじゃなくて、”Road To 800”を掲げてファンのみんなとここまで1つになって進んできたから、1人じゃないなっていう思いがあるんです。それって本当にありがたいことだし、すごいことだなと思うから。私はその日、今までのFAKY人生で経験してきたことをFAKYの曲に乗せて、すべての感情を乗せて、自分の言葉で「本当にありがとう」ということを伝えたい。それが100%できるようにリハーサルに挑んでいますし、当日に向けて気持ちも持って行っています。
──Lilは、3月5日をどんな日にしたいですか?
Lil’ Fang 本当にその日が来るのかな?って。うるう年的な感じで、3月5日が来ないっていうのはないですかね?(笑) 3月4日の次は3月6日みたいな(笑)。
──来ますよ(笑)。
Lil’ Fang 正直、まだ準備がたくさんあって、やらなくてはならないことが山ほどあるんです笑。その上でですが、やっぱり「次は何しようかな」っていう気持ちが大きいですね。
──3月5日の先ということですね。
Lil’ Fang いつも「次は何しよう」って考えているから。
──3月5日がゴールじゃない、ということですよね。
Lil’ Fang そうなんです。ゴールにしたくないという思いが一番強いですね。”Road To 800”を掲げたけど、そのRoadはすべてに繋がる道で。これから先も私たちの道は続いていくし、この道をどうやって歩んでいくかが大事だと思っています。800を経て、何に向かって歩いて行くかを3月5日にみなさんと決められたら良いなと思っています。
当日は「私はまだFAKY MANIAじゃないし…」と思う方もたくさんいらっしゃるかもしれません。だからこそ、そんな、まだFAKY MANIAではない方々も巻き込んで、これから歩んでいけたら良いなと思っています。その気持ちが一番大きくて、とても楽しみでもあります。
──最後に、当日の見どころ、注目して欲しい部分を教えてください。
Akina ネタバレしちゃダメですよね?
Taki じゃあ、Takiは喋らない方がいいね。ネタバレ担当だから(笑)。
Akina 私、ちょっと言ってみます。ダメだったらカットしてください(笑)。私、今回のセットリストの中で一番好きなポイントはド頭で……。
Lil’ Fang それ、ダメです。ネタバレです(笑)。
Akina あぁ、ダメか(笑)。
Lil’ Fang さっき”Road To 800”から先も道は続いていくと話しましたけど、「じゃあ、私たちはどこから始まったんだろう」と振り返ると、2018年から始まったと思うんです。
──5人体制になったお披露目の場が2018年のLIQUIDROOMでしたから。
Lil’ Fang そこから始まって、現在までの道も全部繋がっているんだよと。その答え合わせがこのライブを観て頂くとわかると思います。で、ライブを最後まで観て頂ければ、これからの先の道もきっと感じて頂けるんじゃないかと思うので、ぜひそこに注目してください。
【東京】LIQUIDROOM「FAKY ONEMANLIVE 2023 -FEEL IT ALL-」※SOLDOUT※
日程︓2023年3月5日(日)
会場︓【東京】LIQUIDROOM
https://www.liquidroom.net
開場︓16:00
開演︓17:00
※開場・開演時間は変更になる可能性がございます。
※政府による段階的緩和措置のガイドラインに基づいた対策をとらせていただきます。
【FAKY 公式サイト】
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ライター
猪又 孝
1970年生まれ。音楽ライターとして国産のR&B/HIPHOP/歌モノを中心に執筆。日本の著名ラッパーが作詞術を語る単行本「ラップのことば」「同2」を企画・編集・執筆。安室奈美恵、三浦大知、東方神起、ナオト・インティライミなどのオフィシャルプロダクツにも関わる。HIPHOP専門ラジオ局「WREP」に放送作家/ディレクターとして参加した他、ラジオ/TV/配信コンテンツの構成も多数手掛ける。