FAKY、Fans、Female、Family、Fashion、Four、Fiveなど、FAKYにまつわる英単語の頭文字をタイトルにした、FAKY待望の1stフルアルバム『F』が完成した。本作には現在の5人体制になって初めて出した「GIRL GOTTA LIVE」以降の全シングルを収録。そこにファン公募によって命名された重要曲「five+」もプラスされ、FAKYの基礎(Fundamentals)と足跡(Footsteps)を辿ることができる。今回のインタビューでは、アルバム先行配信曲となった「Diamond Glitter」「Choco Fudge」「My Story」の制作背景をたっぷりトーク。スタッフに制作過程を明かさず、5人でイチから作詞作曲した「five+」に込めた思いも明かしつつ、今後の展望も語ってもらった。
夢が叶った! 本当に待望の1stフルアルバム!
──FAKY初のフルアルバム『F』が完成しましたー!(パチパチパチ)
全員 できましたー!(パチパチパチ)
Taki やっと出せることになってとても嬉しいです! 日本に来てアーティスト活動を始めることになったとき、アルバムを出すことが私のひとつの夢だったから。スタッフさんからリリースできるって聞いたとき、部屋の中でひとり、喜びのダンスをしてました(笑)。
Hina やっと盤でアルバムを出せることがすごく嬉しいです。サブスクで音楽を聴く時代になり、CDをリリースする機会が少なくなっている中で、手に取れる形で自分たちの作品を出せるのは、目標というか、どうしても実現させたいことだったから嬉しい気持ちでいっぱいです。
Akina リリースを発表したときに、海外のファンの人たちからメッセージがたくさん届いたことも嬉しかったです。直接ライブを観に来られないぶん、「ようやく手元に届くもの、CDを作ってくれてありがとう」みたいな。私も海外にいたことがあるから、その気持ちがすごくわかるんです。
──結成から9年経ちます。オリジナルメンバーのMikakoは、このアルバムをどんな人たちに届けたいですか?
Mikako 私たちは今までジャンルを決めずに音楽をやってきたから、聴いてくれる人を特定したくないです。全然FAKYのことを知らない人に向けて「FAKYです。聴いてください」と言っても、これだけジャンルの違う曲が並んでいたら、どれか1つは刺さるだろうという自信もあるから。FAKYを知ってる/知らないに関係なく、このアルバムを聴いて欲しいです。
──同じくオリジナルメンバーのLilにとって、今回のアルバムは「まとめ」とか「集大成」みたいな位置づけになるんでしょうか。
Lil’ Fang このアルバムに関しては、この5人による3年間の歩みという気持ちが強いです。集大成というよりは、自己紹介っていう方が私はしっくりきます。5人になってからの成長をすごく感じるアルバムになりました。
──アルバム先行第一弾シングルとなった「Diamond Glitter」には、FAKYの王道という印象を受けました。この前に出している「ふたこ糸」の路線をリセットして、改めてFAKYらしさを求めていく方向に舵を切ったように思いました。
Lil’ Fang 本当にそうです。コロナ禍が少しずつ落ち着いてきて、ライブができるようになったねっていうときに、私たち自身も再スタートして進化していきたいという気持ちがあったんです。「GIRLS GOTTA LIVE」が5人で出した初めての曲だったんですけど、そこから3年経て、どう成長したかっていう部分を表現したかった。たぶん「GIRLS GOTTA LIVE」の段階で、この曲を出していたら、もっと気合いを入れないと成立しなかったと思うんですけど、今だからこそ少し肩の力を抜いても私たちの色が出せるようになったと思うので、「GIRLS GOTTA LIVE」の3年後っていうところはすごく意識して作っていきました。
──この曲を最初に聞いたとき、どんな印象を持ちましたか?
Mikako この曲も含めて、たくさんのデモを聴いたときに、私が一番歌いたかった曲がコレでした。今の5人のタイミングにハマるんじゃないかと思ったんです。スタート感じゃないけど、ライブでこの曲を一発目でやりたいというか、大きい会場でこの曲で登場しているFAKYがすごく想像できたので、歌いたい!という気持ちが先走りました。
──楽曲制作にあたり、作詞を担当したSUNNY BOYさんにはどんなリクエストをしたんですか?
Lil’ Fang キラキラした私たちというか、求められているFAKY像。女の子5人が集まって楽しそうっていう部分を表現したいと伝えました。最初はパーティーチューンみたいな歌詞を頂いたんですけど、ちょっと違うねって。夜というよりは昼だねっていう話から、爽やかで再スタートが切れる疾走感があるものがいいなと。あと、パッと聴いたときに「楽しそうな曲だな」っていう感想が一番に来るような楽曲にして欲しいとオーダーしました。
──「Diamond Glitter」のMVのコンセプトは?
Hina 監督の新保(拓也)さんのアイデアをベースにしてるんですけど、何か1つのテーマというよりは、いろんなアイデアがあって、その良いとこ取りをさせてもらった感じです。
そもそもアルバムからの先行3曲はすべて新保さんにお願いしたいというのがメンバーの意見としてあったんです。
Lil’ Fang 私たちとしては、アルバムに向けて、というところを一番大事にしたかったんです。なので、3曲の映像に連動性を持たせたりとか。
──「Diamond Glitter」の最後に写るチョコレートが、次の「Choco Fudge」のヒントになっているとか。
Lil’ Fang そうです。そういうギミックを使いたいっていう。そっちの方の意見が私たちからは強かったです。
──続く「Choco Fudge」はどのように作っていったんですか?
Lil’ Fang まずはアルバムまでに3曲出すことが決まって。「Diamond Glitter」と「Choco Fudge」に関しては最初の会議の段階で、なんとなく曲の方向が見えていたんです。そのときにTakiちゃんがChoco Fudgeというワードを出してくれて。「そのワード、いいね」「だったら(もう1つは)Diamondじゃない?」って感じで、Choco Fudgeというワードが一番先に決まった。だから、「Diamond Glitter」のMVでチョコレートを出すこともできたんです。
──TakiはどんなところからChoco Fudgeというワードを思いついたんですか?
Taki コレを言うのは恥ずかしいんですけど、その日たまたま久しぶりにチョコファッジを食べてたんです。で、ミーティング中に「どういうタイトルがいい?」って訊かれて、自然とちっちゃい声で「チョコファッジ」ってつぶやいていて。それが「いいね!」ってなって、「あにゃ!?」ってびっくりして。
Lil’ Fang あにゃ、だって。カワイイ(笑)。
Taki そのときにチョコファッジってFAKYに似てるなと思って。チョコファッジは固めのチョコケーキだけど、チョコが溶ける部分もあって二段階で味わえるんです。それって強いんだけど悲しんでる部分もあったりするFAKYだなって。たとえば「Sayonara My Ex」みたいに、メルトというか、ちょっと溶けるとき、弱っているときもあるから。でも、その溶ける部分を食べ終わると強い部分しか残らない。それをディープな感じではなくて明るい感じで表現できたらいいんじゃないかと思ったんです。
Lil’ Fang 思ったより深いね(笑)。
Akina あはは。あと、裏テーマとして、ちょっとエロくてかっこいい曲を作れたらいいねっていうアイデアもあったんです。海外だとFudgeがちょっとエロい意味のスラングになるから、そういう海外カルチャーを取り入れるのもFAKYらしいねって。
──歌詞は、2016年に出した「Candy」と繋がっているとか。
Lil’ Fang 今、TakiとAkinaが話した2つのアイデアがある状態で、スタッフさんと「大人っぽいエロってなんだろ?」って話してるときに、「Candy」では“続きは夢で会いましょう”と歌ってると。じゃあ、夢で会っちゃいましょうということになりまして(笑)。
──キャンディーとチョコというお菓子繋がりにもなるし。
Lil’ Fang そう。もともと「GIRILS GOTTA LOVE」から3年後というのも意識していたし、「Candy」のその後というのも面白い。「Candy」は、いまだに「FAKYといえば……」という曲だし、だったら、そこからいろいろ経た私たちが、もう一回、同じようなテーマで歌ったらユニークなものができるんじゃないかと思ったんです。
──この曲の作曲にはFAKYもクレジットされています。
Lil’ Fang 実は2年くらい前に、今とは違うテーマで、私とAkinaでこのトラックを使ってデモを作っていたんです。今回、「Choco Fudge」を作るにあたり、トラックをどうするかってスタッフさんと話していたときに「いや、待って」と。2年前に作っていたあのトラックで「Choco Fudge」を作るのは面白くないですか?って。そこからSUNNY BOYさんにテーマを伝えて、トラック自体をアレンジして頂いたんです。プリプロでは、私とAkinaとSUNNYさんで仮歌を録りながら、歌詞を詰めていく作業をしました。最初はもう少し具体的な言葉が並んでいたんですけど、もうちょっとヴェールに包みたいということで出来上がった歌詞なんです。いい案配にエロとキャッチーが混ざったなと思ってます。
──「Choco Fudge」のMVは、色気だだ漏れのビジュアルにびっくりしました。どういうコンセプトで作ったんですか?
Hina 女の子だけで夜にこっそり集まって秘密の会話を楽しんでる様子。だけど、パーティ-じゃなくてっていう。そういうガールズナイトの世界観にしたいっていうところから始まりました。だから、衣装もホームパーティー、パジャマみたいな感じにしたいねって。
Mikako 衣装はスタイリストさんと私で話し合って決めました。テーマはFAKYによる女子会。異性を意識しちゃうと変わってくるけど、女性だけだから脱げるよね。だったら今回は肌を見せちゃおうって。年齢も重ねてきたし、いやらしい方向のエロさはFAKYにないから。全然ヘルシーにいけるから、おしゃれな感じも出しつつ、この5人でリアルな感じを表現したいということで、あの衣装になりました。
──衣装選びでこだわったポイントは?
Mikako 私が個人的にメンバーの好きなところをポイントにしました。Akinaはおしりを出したいとか、Hinaはタイトに行っていいんじゃないかとか、Lilは見せられるところは全部見せちゃおうとか。Takiも見せた方がいいんじゃないかというところをちゃんと見せる。意識したのは、同性が見てキュンとくるエロさ。それはFAKYにしかできない表現だと思っているから。
──スタイリッシュなエロさというか。
Mikako 今まで、肌を露出するときは、スポブラとかスポーティなものを着せてたんです。でも、今回はそっちじゃないと思って。5人だけで部屋で話している、恋バナをしている、ちょっとアブない話をしているというイメージがあったから、あえてレース素材を選んで、透け感のあるような女性らしい雰囲気を大事にしました。
「My Story」の詞に込められた物語とは?
──第三弾先行シングルとなった「My Story」の作詞はLilとAkina。作曲は2人とSUNNY BOYさんとの共作になっています。
Lil’ Fang 私とAkinaとSUNNYさんのコライトでゼロから作っていきました。アルバムまでに3曲出したいというところから、「Diamond Glitter」と「Choco Fudge」は決まった。じゃあ、もう1曲はどんな曲を歌いたい?ってみんなで話したときにいろいろな意見が出たんです。パーティーチューンがいいんじゃないかとか、めちゃくちゃダンスする曲がいいんじゃないかとか。だけど、見てみたいと思われているFAKY像を2曲やったと思ったので、あとは等身大のFAKYじゃないかと思ったんです。芯から出る言葉を歌いたいなって。
──歌詞は「Sayonara My Ex」とリンクしているそうですね。
Lil’ Fang これは私のわがままで書かせてもらいました。「Sayonara My Ex」は、別れを経てそれぞれ前に進んでいく歌詞だったけど、前に進めるようになるまでって、本当に苦しいじゃんと思って。……っていうか、どこまで話していいんだろ?(笑)
──洗いざらいお願いします(笑)。
Lil’ Fang 19歳のときの私の話です。今から10年前。
Akina おおーっ。それ言う?
Mikako これは聞いた方がいい話です。
Lil’ Fang 19歳のときにめちゃくちゃ好きな人がいたんです。その人を忘れるのに1年半以上かかったんです。結局その恋はかなわなくて、お付き合いもできなかった。その手前で終わってしまったというか、自分の中で葛藤していただけだった。それを経て「Sayonara My Ex」を書いたんですけど、別れて「いい思い出だったね」って言えるのって、あのときの苦しさを知ってるからだと思って。相手に届いた思いなら浄化させてあげられるけど、届かなかった思いってこんなにも焼き付くんだって。そういう経験って誰にもあると思うんです。その境地に向かうまでは辛かったよね、っていうことが言いたくて書いた歌詞なんです。
──ということは、Lilがベースになる歌詞を書いて、Akinaに補足していってもらった?
Lil’ Fang そうです。英語の部分はAkinaに手伝ってもらいました。
──Lilの実体験から生まれたこの曲を他のメンバーはどう聞きましたか?
Taki 涙が出ました。その話は聞いていたし、こういう曲調で、こういう感じで歌詞を書いてみるねっていうのも聞いていたので、すぐ涙が出て。「最高、ありがとうございます!」しか言えなかったですけど、もうギュッと来ました。
Lil’ Fang 私の中で、プリプロの段階でHinaが食らってくれた曲は、いい曲になるというジンクスがあるんです。歌詞としてちゃんと作る前にHinaに読んで聞かせるんですよ。今回も朗読したら「食らったー」って(笑)。
Hina 食らいまくりました。今回は特に食らいました。
──「わかる、わかる」って感じ?
Hina 「わかる、わかる」だし、それをこんなストレートに歌っちゃうんだっていうのがまた新しくて。しかも、曲調は明るいじゃないですか。なのに、歌ってる内容は心の奥でぎゅーっとなることだから、そのギャップが余計に苦しくて。
──歌詞を書く上で一番こだわった部分は?
Lil’ Fang 最後まで救われないということは意識しました。あと、自分でどうにかしようと独り言のように話してるっていうのもめっちゃ意識した。それと、サビ前のパートはAkinaが書いてくれたフロウが素晴らしかったので、それを崩さずに、でも聴いたときに何と言っているかすぐにわかるようにするっていうのはめちゃくちゃ大事にしました。
──そのパートの最後がTakiのセリフで締められているのが、エモさ増し増しでした。
Akina そこは最初、セリフじゃなくてメロディーだったんです。
Lil’ Fang でも、その前のフロウが美しすぎるから、最後までメロディーで行ってサビに行っちゃうと、その良さが流れちゃうなと思って。サビ前で一瞬ビートも止まるので、一回、時を止めたいと思ったんです。そのときにTakiがセリフを言っているのが想像できたので、Takiに言って欲しいことを幾つか書き出して、それを組み合わせていったんです。
──このインタビューの時点で「My Story」のMVは未見ですが、どのような内容になっているんですか?
Hina なんか天国みたいです。
Akina マジ天国です。
──観てないので天国のようなビデオと言われても全然想像できないです(笑)。
Hina あはは! でも天国なんです。今回はオールロケで、天国みたいなシーンは、5人で集まって日の出のタイミングで、海の浅瀬を歩いてるんです。一人一人のシーンはそれぞれみんな違う場所で、辛い感じ、苦しい感じを演技してるんです。
──これまでのMy Story、昔の自分を思い出してる感じで?
Hina そう。最初はそれぞれのソロシーンだけで作る予定だったんですけど、アルバムの先行リリースの最後の曲になるし、歌詞は切ないけど曲調は明るいので5人のシーンも入れたいと思って。それをどういうふうに撮るか考えていたときに、メンバー車で移動中に、洋楽の失恋ソングを流しながらみんなが大合唱しているのを私は一番後ろの席から見ていたんです。その光景がすごく良くて。女の子たちがみんなで失恋ソングを歌ってる画とか超いいじゃんと思って、こういう感じも入れたいですって監督に伝えて。だから、海のシーンはちょっとみんな楽しそうな感じなんです。
──それを朝日と共に撮ったということは、ちょっと幻想的な感じなんですかね。
Lil’ Fang めっちゃ幻想的ですね。それがまるで天国みたいなんです。
Hina だから、それぞれみんな辛いことがあったけど、この5人で集まって楽しく前を向いていこうよっていう流れになるんです。日が昇るっていうのもいいし、ここからこの5人がどこに行くんだろうっていうのも伝わったらいいなと思って作りました。
──そもそも先行シングルをこの順番で出そうというのは、どんな考えからなんですか?
Lil’ Fang 順番は考えました。「My Story」がめちゃめちゃ明るい曲になるんであれば、2番目にしてもいいんじゃないか?という案も出ていて、そうすると「Choco Fudge」が3番目かって結構ギリギリまで悩んだんですよ。
──このリリース順にした決め手は?
Lil’ Fang 「Diamond Glitter」を出して、次に何が聞きたいかな?と考えたときに「Choco Fudge」のサウンド感は面白いだろうなというのが一番の決め手でした。私たちが聴いてて「うぇーい。かっこいいねー」ってなるようなことを一回見せたいねって。みんなに寄り添うというより、ウチらが楽しいことを見せたいと思ったんで、「Choco Fudge」が2曲目だなって。
──そうして最後にグッと距離を縮めると。
Lil’ Fang そうです。今まで嫌だったんですよ。可愛い子たちが切ない失恋ソングを歌っても、「どうせ可愛いじゃん」と思っちゃう派なので、私。
Akina 昔からずっと言ってるよね、それ。
──リアリティがないということ?
Lil’ Fang なくないですか?FAKYとして2年前に失恋ソングを出したいと制作スタッフに言われたことがあったんですけど、お断りしてるんですよ。いや、ちょっとまだじゃないですか?って。AkinaやTakiは19歳とか20歳だったから、そこで失恋って言われてもピンと来ないんじゃないかと。
Akina 可愛い感じになっちゃうよね?
Lil’ Fang そう。「へー、そうなんだ。かわいそうだね」ってなっちゃうのは違うなと思って。「Sayonara My Ex」は、「こんなことがありました」という報告みたいな感じだし、前に向かって行くからいいかなと思ったんです。メンバーとは普段からいろんなことを話していますけど、最近「みんな、経たな」と思ったんです(笑)。経たからこそ、今なら失恋ソングを歌っても大丈夫だなって。あなたたちと同じなんですよっていうことを、芯を持って伝えられるんじゃないかと思ったんです。
これからは……とにかくライブをやり続けたい!
──アルバム曲「five+」は、今年2月の「FAKY LIVE 2022 #nofilter」で初披露され、その後のライブでも歌って育ててきた曲です。5人で初めてゼロから作詞作曲した楽曲ですが、何故そういう楽曲を作ろうと考えたんですか?
Lil’ Fang 5人で初めての有観客ワンマンになった「#nofilter」というライブにどんな意味を持たせるべきか、それって何だろう? じゃあ5人で曲作る?みたいな(笑)。そのくらいライトに考えて始まったものが、あれよあれよと進んでいった感じです。
──タイトルをファンから公募するというアイデアは当初からあったんですか?
Lil’ Fang 私の中にはありました。そしたら、それぞれのプロデュース公演をやれることが決まって、5ヶ月連続だったから、まさにそこで進めていけるじゃんって。
──「five+」はどのように曲作りを進めたんですか?
Akina ファンも含めたFAKYチームの関係性が今すごく良いんです。お互いを助け合えてて、絆が強くなったから、それを表せたらいいねっていうアイデアから始まりました。FAKYチームの絆、そして私たちがお互いに思ってることをみんなで歌えたらいいねって。
Lil’ Fang トラックのディレクションは私がしたんですけど、なるべくシンプルなループで遊びがあるようなモノをお願いして。メロディーはHinaにピアノを弾いてもらいながら、Hinaと私とAkinaで作りました。
Hina 2人がトラックに合わせて口ずさんだものを私がピアノで弾いてみて、その中から良いものをどんどん録っていったんです。
Lil’ Fang 歌詞は、MikakoとTakiにテーマを考えてもらって、こういうことをこういうふうに言いたいということを私がヒアリングして、まずは私がベースになるものを書きました。で、プリプロのときに5人で集まって、「こっちの言い回しとこっちの言い回し、どっちがいい?」って感じで全員の意見を聞きながら修正していきました。だから私が一人で書いたところはひとつもないですね。「こんなんと、こんなんと、こんなんがありますが、どうですか?」みたいな。
Akina 選び放題でした(笑)。
Mikako この曲では、「ありがとう」という感謝の思いをしっかり伝えたかったんです。歌詞に「シンプル」という言葉が結構出てくるんですけど、それは事前にLilに伝えていました。「ありがとう」というのはシンプルな言葉だけど、思いは強いし、私はわかりやすい言葉を並べたいと思っていたんです。そしたらLilがそれを汲み取ってくれて。普段自分たちがやってるようなこと……「おつかれさまです」とか、自分たちの普段の声が音楽になっちゃった感じで曲作りはとても楽しかったです。
──Takiはどうでしたか?
Taki 曲を作ること自体が初めてだったから、どこから始めればいいかわからなかったし、逆にアイデアが出すぎて困りました。まとめ方がわからなかったけど、こういう言葉で、こういうワードプレイで、こういうことを歌いたいって、アイデアを書き留めていって。私はちょっと遊びがあって、冗談っぽくて、軽い感じにしたかったんです。そういうのは今までのFAKYにあまりなかったから。5人で作るからこそ、オフなFAKYというか、いつも通りに喋ってる感じを曲に出したかった。それをLilにパスしました。
Lil’ Fang Takiがそう言ってくれたので、途中のラップパートが生まれたんです。 “シンプルにSinging with me”というフレーズはAkinaがポロッと言った言葉で「お、いいね!」って、そのまま取り入れて。
Akina 本当に楽しかったですね、作っていく作業は。
──公募したアイデアの中から、「five+」というタイトルに決めた理由は?
Lil’ Fang いろいろなタイトル案がたくさん来て、本当に面白いものもあったんです。「幸」と書いて「さち」と読むとか、「シンプルでいいんじゃない♪」とか。この曲はFAKYチーム全員で作る曲だと思ったので、私がひとりずつに「どれがいい?」って聞いて回ったんです。そしたら全員、答えがバラバラだったんですよ(笑)。
──それじゃ決まらない(笑)。
Lil’ Fang そう。「やばい。決まらない。どうしよう」と思って。でも、面白いと思ったのは、「これこれ、こうだから、これにしたい」っていう、タイトルを選ぶ理由はみんな一緒だったんです。思いが共通していることはわかったから、だったら多数決にしようと。それで「five+」になりました。
──「five+」は各々のプロデュース公演で歌ってきましたが、プロデュース公演での手応えや勉強になったこと、気づいたことなどを教えてください。
Hina もう学びしかなかったです。どうやったらメンバーの良さを100%伝えられるかな?とか、ファンの方はどういうFAKYが見たいかな?とか、外から見たときのFAKYのことを考えてライブを作ったんです。で、実際にやってみて、来てくれたお客さんのリアクションを見て……という一連の流れを初めて経験したから。プロデュース公演をやってから、FAKYのことを以前より客観的に見られるようになったと思います。
Akina 私はメンバ-へのリスペクトがすごく高まりました。これまではお互いのバランスを見ながら、ひとりひとりが自分の役割をする感じだったんですけど、プロデュースライブになると違う人の役割も自分でやっていかないといけないから。みんな、いつも、こんなに大変なことをやってるんだって思ったし、「いつも、これをやってくれて本当にありがとう」って改めて感謝の気持ちが生まれたライブでした。
Taki 私はセットリストを考えるのも初めてで、すごく大きなチャレンジだったけど、楽しかったです。特に私は、私が入る前の昔の曲をセットリストに結構入れたので、こういう思い出があるんだとか、こういう思いがあるんだとか、そういう話をもう一回聞けたのが良かったです。あとは、曲に込める思いも変わるんだっていうことにも気づきました。「この曲はこういう曲だと思ってたけど、今はこういう思いも込められるんだ。なるほど」みたいな。もっと曲をみんなと共有できるようになったし、メンバーのことをもっと深く知ることができました。
Mikako 人の気持ちが乗っかる音楽は改めて素晴らしいなと思いました。私の公演は、人の気持ちを大事にすることをテーマにしていたんです。人ってマイナスな部分をなかなか他人に見せないけど、私は今回のライブをデトックスする場にしたかったし、あえて超ストレートにマイナスなことをMCで話して、そこから「ANTIDOTE」に行ったんです。そしたら「ANTIDOTE」でこんなに泣くんだ?っていうくらい泣いてるお客さんもいて。音楽って気持ちを込めないと共有できないものなんだなって改めて実感しました。
──Lilは普段からFAKYのライブ作りに参加していますが、今回のプロデュース公演はどうでしたか?
Lil’ Fang 今回、メンバーがひとりづつ闘ったなと思っていて。私たちはグループで動いているから、良くも悪くも誰かが失敗しても誰かがカバーしてくれるんです。けど、今回、ひとりで闘うことを全員経験したことで、「ここでこの子は闘いたいと思ってるんだ」っていうことがすごく浮き彫りになって。これからライブを作っていく上で、もっとその部分をわかってあげないといけないと思ったし、そこで闘わせたいなという思いもあったので、私の公演は、全員ソロで何かをするという内容にしたんです。闘う力がそれぞれ付いたなっていうのが一番良かったことだと思います。
──最後に、今回のアルバムリリースを経て、今後どんなFAKYを見せていきたいか、教えてください。
Mikako しつこいくらいライブをやっていきたいです。5人のFAKYになって3年ですけど、コロナ禍で会いたいのに会えない、直接届けたいのになんで?っていう悔しさがあったから。プロデュース公演や全国ツアーをやって思ったのは、やっぱり直接届けないと限界があるなって。届くモノも届かないと思ったから。もちろん作品も大事だし、リリースもたくさんしたいけど、曲を直接届けるということが今後のテーマ。ライブをとにかく大事にしたいです。
Lil’ Fang さっき話した、ひとりひとりについた闘う力を5人で闘う力に変えていきたいです。冒頭で、Mikakoがアルバムをどんな人に届けたい?って訊かれたときの答えもそうだったけど、私たちって、ここに置いておくから好きに取っていってねっていう姿勢が多かったと思うんです。けど、そうじゃなくて、しっかり自分たちの手で届けていく。今、これだけ多くのアーティストがいて、これだけ気軽に音楽が聴ける環境で、しっかりひとりずつに向けて丁寧に届けていく作業は闘いだと思うんです。受け取ってもらえない場合もあるわけだから。でも、そこに挑んでいきたいという気持ちがすごくあります。私たちが思っていることを、否定されたとしても、届け続ける。それが私たちがもう1つ成長するために大切なことだと思っています。
1stフルアルバム『F』
2022.10.19 ON SALE
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ライター
猪又 孝
1970年、新潟生まれ。音楽ライターとして国産のR&B/HIP-HOP/歌モノを中心に執筆。24時間HIPHOP専門ラジオ局「WREP」に放送作家/ディレクターとして参加中。共著に15人の著名ラッパーが歌詞の書き方を語る「ラップのことば」「同2」(SPACE SHOWER BOOKs)。