昨年7月、日本認知症予防学会学術集会でのワークショップの模様をお伝えした『リバイバルダンス』。TRFのSAMさん、ETSUさん、CHIHARUさんが考案した、認知症など高齢期の病気に備えるためのダンスプログラムですが、このたびDVDがリリースとなり、制作発表会が行われました。考案者の3人と、商品紹介映像のナレーターを務めたDJ KOOさんも参加したこの制作発表会の模様をリポート!
誰でも気軽に、身体に負担をかけずに行えるプログラム!
『リバイバルダンス』とは、高齢者にも馴染み深い1950~90年代のヒット曲に合わせて踊ることで、脳も身体も思い出も再生=「リバイバル」するためのダンスプログラムです。日本認知症予防学会の専門医らによる監修のもと、東京大学先端科学技術研究センター所属の脳科学者や、身体機能のリハビリテーションの専門家である理学療法士らと共同研究を行い、高齢者でも無理なく踊れる運動量と動きをチェックしながら、リズムを意識した振り付けや、重心移動によるバランストレーニングを盛り込んでいます。東京大学・理化学研究所との共同研究により、『リバイバルダンス』の介入効果測定を行った結果、身体機能と認知機能の両方に改善効果が確認されています。
今回発売されるDVD「リバイバルダンス」では、SAMさん、ETSUさん、CHIHARUさんが、筋肉を効果的に動かすダンスの振り付けや、ストレッチの方法をレクチャー。年齢を重ねると衰えやすい足腰の歩行能力アップを主な目的とした「運動編」と、認知機能の改善を主な目的とした「脳活性編」の2枚組となっており、それぞれ、ウォーミングアップ⇒レッスンパート⇒ダンスパート⇒クールダウンという構成の約90分のプログラムが収録されています。懐かしい音楽に合わせて自宅で踊ることで、身体と脳が健康で元気になるダンスプログラムが楽しめるというわけです。さらに、『リバイバルダンス』で使われている11曲を収録したCDも付いているため、懐かしの楽曲を存分に堪能できるようになっています。
発表会では、『リバイバルダンス』の紹介映像が披露された後、プログラム考案者であるSAMさん、ETSUさん、CHIHARUさんの3人に、商品紹介映像のナレーションを務めたDJ KOOさん、そして本プログラムを監修した東京大学先端研 特任研究員の宮崎敦子さんが参加してのトークセッションが行われました。
SAMさんへの最初の質問は、このプログラムを考案するきっかけについて。
「TRF20周年の時に、『イージー・ドゥ・ダンササイズ』という、ダイエットを目的としたエクササイズDVDを発売しました。TRFがエクササイズのDVDを出すというのが初の試みだったので、世間の反応が分からなかったのですが、思いのほか評判がよくて。そこでこういう商品のニーズがあるということが分かったのが第一段階です。そこから4年ぐらい経って、超高齢社会を向かえるにあたり、高齢者の方々を対象にしたダンスの取り組みができないかと考えて、『ダレデモダンス』という法人を立ち上げ、高齢者の方の健康寿命を伸ばすためのプログラムを企画しました。僕の実家が医者の家系ということもあって、従兄弟の心臓疾患に特化した医者とタッグを組み、彼の病院で患者さんを20人ぐらいお借りして、医師や理学療法士の監修のもとプログラムを開発しました。しっかりしたエビデンスを確認してからいろんなワークショップを開催して現在に至るのですが、高齢者の方でもダンスを楽しくやっていただけるということが分かっています。」
次に「高齢者のワークショップでの反応」を問われると、こう回答しました。
「僕らが目の前にいて『これから何をやらされるんだろう?』と最初はビクビクしていたダンス未経験の方たちが、簡単なステップに音楽をあわせるだけでダンスになるということが分かると、本当に笑顔になるんですね。中には30年ぐらい人工透析をされていて、100メートル歩いただけでゼエゼエ言っていた方が、1年間ぐらいこのプログラムをやって、『今では10キロメートル歩けます』と言ってくださったり、ずっと気持ちが塞ぎ込んで家から出られなかった人が、友達のところに行けるようになったりとか。あとは冷え性で手が真っ白だったのに、「ダンスをやって初めて手がピンクになった」と喜んでくれた方もいました。ワークショップの雰囲気自体も終始和やかで、笑顔が絶えなかったです。
70歳を過ぎた方々に『この年になって初めてダンスをやったんだけど、こんなに楽しいと思わなかった』と喜んでいただけると、僕たちまで元気をもらえます」
ETSUさんへの質問は、「『リバイバルダンス』の振り付けや選曲で、意識したことは?」というもの。
ETSUさんは「皆さんに楽しんでいただきたいという気持ちがあったので、例えば歌詞に合わせて振りをつけてみたり、楽曲のタイミングにあわせて身体を動かすということが脳への刺激になるということだったので、そこを意識して作りました。あとは“運動”にならないよう、踊っているということを意識してもらえるような、ダンサーならではの振り付けを考えてみました」と答えました。
さらに「ダンス未経験だとハードルが高いと感じる方もいらっしゃるのでは?」と問われると、「最初はそうかもしれませんが、とにかくやってみるということが大事だと思います。歌詞に合わせた振り付けは覚えやすくなっていると思うので、まずは試してみてください。あとは回数を重ねることで、苦手なところを克服することができますよ。そんなに負担になるような動きはないように、一生懸命考えて振り付けをしました」と答えました。
「有酸素運動」プラス「デュアルタスク」が認知機能に大きな効果!
CHIHARUさんは選曲について、「『この曲懐かしい!』という曲を選ばせていただいて、その曲の歌詞に合わせた振り付けを考えました。あとは、このDVDにはウォーミングアップとクールダウンのストレッチが入っています。これはお家で、そんなに広いところでなくてもできるようになっています。全部はできなくても、『これは肩こりにいいかな』とか、今までストレッチのやり方が分からなかった人も、『こういうやり方があるんだな』とか、自分にできるところだけでもピックアップしてもらえたら、健康に役立つんじゃないかなと思います。振り付けは立ってもできるし、イスに座ったままでもできるようにしてありますので、そこはご心配なく、楽しんでやっていただけたらなと思います」と語りました。
DJ KOOさんは、まず派手な衣装について司会者からの「決まってますね」の声に対して、「場違いかなと思ったんですけど、皆さんに元気を届けるというか、活性化にはいいんじゃないかと思って」とコメント。司会者から「今日はセミフォーマルでという話でしたが……」と聞くと「えーっ! 聞いてないですよ!」と大声を上げて、会場が笑いに包まれました。
その後、「収録曲で思い出深い楽曲」について聞かれると、「僕はジュリーこと沢田研二さんに憧れて音楽を始めたんですけど、今回の収録曲では美空ひばりさんの『川の流れのように』ですね。コロナ前に、日本の盆踊りを踊ろう!という親善企画でアフリカに行ったんですよ。その時にアフリカの子どもたちや、音楽と関係ない人たちも美空ひばりさんの曲で盆踊りを踊っていて、音楽の力って世界に通じるんだなと思いましたね」と、貴重なエピソードを披露。また商品紹介映像のナレーション収録について聞かれると、「最初、いつもの感じでナレーションをやったら、ディレクターさんに『すみません、もうちょっとテンションを下げてください』と言われてしまいました(笑)テンポも極力速くなく、それでいて聞いていて気持ちが明るくなるように意識して、ナレーションをやらせていただきました」とのこと。
脳科学者の宮崎さんには、「ダンスが認知機能にどんな効果があるか」という質問。宮崎さんは「ダンスは非常に優れた有酸素運動だと考えております。認知機能や身体機能はどうしても加齢によって低下してしまいます。BDNFという脳の神経を育む因子が、加齢によって少なくなっていくんですね。ところが、有酸素運動をするとそのBDNFが増加するということが分かっています。これは年齢に関係なく増えるんです。従って、有酸素運動をするということは、加齢に抗って脳を維持するのに有効だということが分かっています。ダンスをすると、有酸素運動に加えて、デュアルタスクという作業をやっていることになります。デュアルタスクというのは、一度に複数のことをやることなんですね。リバイバルダンスではTRFの皆さんのダンスを見ながら、振り付けを覚えて、模倣する。この『模倣し続ける』ということをやっています。軽度認知障害の状態では、この模倣がうまくできなくて、間違いが多くなるということが分かっています。従って、このダンスを通じて模倣し続けるトレーニングをするということは、認知機能の向上に非常に重要だと考え、有酸素運動とデュアルタスクの組み合わせであるダンスは、非常に素晴らしいトレーニングだと思っています」と回答。
続いて、「懐かしい音楽で踊ることも脳の刺激になるんですか?」という質問。これには「踊らなくても、聴くだけで前頭葉の脳活動を引き起こすということが分かっています。あと、私は重度認知症の方の研究もしているんですが、非常に認知症が進んでしまっていろんなことを忘れてしまった方でも、懐かしい曲を聴くと、その曲のことは覚えているんですね。また、音楽を聴くだけで、脳の運動を司る神経に信号を送ることができますので、音楽を聴くと踊りたくなるというのは、人間の摂理なんです。」と答えてくださいました。
その後、日本認知症予防学会理事長で鳥取大学医学部教授の浦上克哉さんが、ビデオメッセージでコメントしました。このコロナ禍の中で認知症患者が増加し、非常に深刻な状況であること。そのため予防対策が急務であり、その中でダンスと音楽が非常に効果的で、それによって多くの人とコミュニケーションを取ることによってさらに可能性が広がるということが説明されました。浦上教授は認知症対策を「長距離走」にたとえ、誰でも気軽に長く続けられる『リバイバルダンス』はそれに絶好だと強調しました。
そして再び宮崎さんから、この「リバイバルダンス」が認知機能や身体機能にどれだけ効果があるかの介入試験を実施した結果が紹介されました。
「約90名の健常高齢者の方に集まってもらって、3つのグループを作りました。一つは、ノルディックウォーキングという、高齢者向けに優れた有酸素運動と言われている運動を行うグループ。もう一つは、今回の『リバイバルダンス』を行うグループ。そしてもう一つは、今まで通り日常生活を行っていただくグループ。1ヵ月間これを在宅で行って、効果の検証をしました。
ノルディックウォーキングと『リバイバルダンス』は週3回、1回45分間やっていただきました。認知機能は、日常生活を行っていただいたグループに対して、ノルディックウォーキングとリバイバルダンスを行ったグループは、いずれも実行機能に有意な改善がみられました。さらにリバイバルダンスのチームは、全般的な認知機能が改善していました。
また身体機能についてですが、ノルディックウォーキングは歩行のトレーニングをしています。なので、このグループは歩行機能が改善するという仮説を立て、ダンスは歩行のトレーニングはしていないので、歩行機能が変わるというのは難しいかもしれない、と考えておりました。ところが結果は、『リバイバルダンス』をやったグループは10メートルの最大歩行速度(一生懸命速く歩いた速度)が有意に向上。直接トレーニングしてないのに、速く歩けるようになったわけです。歩行機能は全身を使うので、認知機能との関係性が高いと考えられています。この結果は、2021年の日本認知症予防学会で発表させていただきました。現在は海外の学術誌に論文を投稿中でございます」
TRF30周年で、小室哲哉さんからコメントも!
ここで、TRFが来年30周年を迎えるということで、ゆかりのある小室哲哉さんからのコメントが紹介されました。小室さんは「寂しいといえば寂しいですけれど、KOOちゃんやSAMも僕も高齢者の域にいよいよ入ってきているんですね。なので、認知症やいろいろな体力、足腰もそうですけれども、本当に人ごとではなく、自分ごととして捉えております。まだ音楽という職業で、何か社会に貢献できる可能性があるかと思いますので、少しずつでも頑張っていきたいと思います。というわけでSAM、CHIHARU、ETSU、僕も含めてよろしくお願いします。」とのメッセージを寄せてくれました。
このコメントに対してSAMさんは「一般的には65歳からが高齢者ということになっていますので、小室さんが今63歳。僕らもあと5年でその域なんですけど、この年まで踊れていることに、本当に感謝です。小室さんがTRFを作ってくれて、ダンスが世の中に浸透し、ダンスミュージックもエンターテインメントとしてしっかりと根付いたということもあると思っています。もともとは自分たちが見せるものであったダンスが、それを通じて健康寿命を伸ばすとか、認知症予防に貢献できるというのはすごく素晴らしいことだと思うので、そのきっかけを作ってくれた小室さんには感謝しています」と感想を述べました。
またDJ KOOさんは「TRFは来年30周年なんですけど、小室さんとの出会いがあったからこそというのがあります。小室さんはこれまでたくさんの名曲を生み出して、TMネットワークも復活し、さらに新しい楽曲も作られています。小室さんを見ていると常にいろんなところにアンテナを張って、脳を活性化させているなというのをすごく感じていますし、こういうところでメッセージをいただけるのは『うれしみ DO DANCE』です」との感想で、最後はもう一度場内を笑いに包みました。
トークセッションの終わりには、各参加者が以下のようにメッセージを送りました。
DJ KOO 「毎日働いている皆さんもそうですし、皆さんのご両親も、高齢の方がいらっしゃると思います。僕もまだできていないんですけど、今日から『リバイバルダンス』を始めようと思ってます。さらに若返っていくDJ KOOを見てもらえれば、一番説得力があると思いますので、ご注目をよろしくお願いいたします」
ETSU 「私もそうなんですけど、誰もが直面する『加齢』を楽しく過ごせるためのきっかけになればいいなと思います。それがまた、認知症の予防になったり、家族で話すきっかけになったり、運動を始めるきっかけになったりするように、多くの方に広めていきたいと思いますので、ぜひ手に取ってやってみていただければと思います」
CHIHARU 「このコロナ禍で、気軽に外出することが難しくなり、家にこもってしまうと、筋力が衰えてしまいます。衰えた筋力を取り戻すのはなかなか大変なので、こういう時だからこそ、自宅で気軽に楽しくできる『リバイバルダンス』を踊っていただくことで筋力をつけていただきたいです。そんなに激しい運動ではないですが、楽しく続けてもらうだけでも、だんだん筋力がついてくると思います。健康寿命を伸ばすことが大事だと思うので、ひとりだと寂しいという方は、娘さん、息子さん、お孫さんと一緒に楽しくやってみてください。振りは間違えても、できなくてもいいんです。真似をするとか、ストレッチもちょっとやってみるというだけでも効果があると思うので、ぜひよろしくお願いします」
SAM 「認知症を取り巻く環境というのは、認知症になってしまった本人はもちろん、その方を介護する家族の方や関係者の方たちが本当に大変なので、少しでも認知症を減らしていきたいと考えています。ダンスと音楽が認知症に一定の効果があることはもう実証できているので、あとはこれを世の中にしっかり届けていかないといけないと思っています。できればお孫さんや娘さん、息子さんや周りの人とコミュニケーションをとるということが、重要だと思いますので、家族ぐるみでこのリバイバルダンスに取り組んでいただけると、そういった介護疲れなどの予防にもなると思います。浦上先生のお言葉通り、健康に対する取り組みというのは、気がついた時に始めるというのが一番良いです。早すぎることもなければ、遅すぎることもない。だから極端な話、80歳で始めても遅すぎるということはないし、20歳で気付けばもっといい。将来自分が高齢者の域に入った時に、自分の足で歩けて、自分の身の周りのことは自分でできるという状況が作れると思いますので、そういった意識を少しでも多くの方に持っていただくのが大事だと思っております。」
DVD『リバイバルダンス』はショッピングサイト「ショップジャパン」にて、3月14日(月)より正式販売が開始されます。(現在は先行販売中)
ご自分のために、また大切な方のために、あなたも『リバイバルダンス』を始めてみませんか?
【『リバイバルダンス』販売ページ】
https://www.shopjapan.co.jp/products/RVD0-00000/
【『リバイバルダンス』 オフィシャルサイト】
https://revival-life.jp/dance/
【『リバイバル ライフ』プロジェクトオフィシャルサイト】
https://revival-life.jp/
ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。