スタートから3年目、新たなスタートの年として初の試みである「コラボ公演」を行う劇団4ドル50セント。他団体や他劇団との公演を通じて演劇界を盛り上げていきたいという意気込みの元に行われる第1弾は、人気劇団「柿喰う客」とコラボしての「学芸会レーベル/アセリ教育」。2本両方に出演する前田悠雅さん、福島雪菜さん、岡田帆乃佳さんの3人に語っていただいたんですが、終盤は意外な展開に……?
聞いても聞いてもどんな話、どんな役だか分からない?
──「劇団4ドル50セント」としては2度目の登場になりますが、前回は9人のキャストに少しずつお話をいただいた形だったので、改めて自己紹介をいただけますか?
前田 前田悠雅、21歳です! 千葉県出身です。
福島 福島雪菜、21歳、大阪府出身です。
岡田 岡田帆乃佳です。23歳、愛媛県出身です、よろしくお願いします!
──今回、柿喰う客とのコラボ公演、「学芸会レーベル」/「アセリ教育」ということなんですが、えーっとですね……資料をいただいて内容というかあらすじも見させていただいたんですが……「ん?」と(笑)。
岡田 ですよね(笑)。内容説明が「西暦20XX年──」からから始まってるから、わけ分かんないですよね(笑)。
──最初に確認なんですが、この2本には関連はないんですよね?
福島 そうです、そうです(笑)。
──最初に作品に接したのは、台本を読んだ時?
福島 そうですね。まだ配役とかは決まってない段階で台本をいただいて、読み合わせっていうのを去年の年末にやったのが最初です。それで年が明けて初稽古の日に、「じゃあ配役発表しまーす!」みたいな感じで決まっていきました。
──最初にお話に接した時ってどういう風に思われました?
前田 「は?」って(笑)。
岡田 正直ね(笑)。でもめっちゃ面白かった。私はおうちで、声出して笑いながら読んでました。
福島 面白かった~。
岡田 馬鹿馬鹿しくて面白かったです、ホントいい意味で。
前田 初めてみんなで読み合わせをした時から、もう笑いが絶えない状態で。
岡田 本当に読み合わせは爆笑でしたね。
前田 本当に、演出家で脚本を書かれてる中屋敷法仁さんも「何なんだこれは?」って言いながら一緒にやってるみたいな(笑)。本人自体もよく分かってないっていう(笑)。
──そうですか(笑)。
岡田 中屋敷さんが十年前ぐらいに書いた脚本らしくて。
前田 どちらとも再演なんですよね。
岡田 「俺、これ書いた25~26の頃って何考えてたんだろ?」って言ってました。でもメッチャ楽しいし面白いです。
──コメディなんですよね?
岡田 コメディですよね……うん……。
前田 だよね……?
福島 柿さんっぽいよね。新ジャンルみたいな感じで。
岡田 うん、コメディだと思います。
福島 冷笑が起きるような感じだよね。お客さんがさ、ちょっと「フフン」みたいな。
前田 シュールな笑いだよね。
──皆さんは両方に出られてるということなので、それぞれの役柄ものを簡単に説明していただけますか? まずは「学芸会レーベル」の方から。
前田 私は「しょうこせんせい」っていう、幼稚園の先生です。すごく個性的な先生ばかりがいる中で、唯一常識を持った一般人というか(笑)。お客さんが舞台を見てて「は?」って感じるところで、私も舞台上で一緒に「は?」って言っているみたいな。でも繰り広げられてる情景が、意味が分からないことばっかり過ぎるので、ハテナがいっぱいになって、誰にもそれを共有できないから一人で「は?」「は?」となって終わるっていう、モヤモヤした役です(笑)。
福島 私も同じく先生役で、「みゆきせんせい」という役なんですけど、あらすじにも出てくる「伝説の女」です。
──ああ、「学芸会を求めて帰ってくる」という「伝説の女」ですね。そう聞いても何だか分かんないですが……。
福島 分かんないですよね? やってても分かんないですから(笑)。ただ、前半は幼稚園をかき乱すというか、「伝説の女」感があるんですけど、後半になってくると出演者全員が「私が主人公だ!」みたいな感じでメインづらをしてるから、もう誰を中心に見ていいか分からない感じになっちゃってるんですよ! だから、お客さんには何回も見てもらって、いろんな人の視点から見てもらうと楽しいんじゃないかなって思います。
岡田 後半の十分ぐらい、ずっとユッキーは大変なんですよ。捌くのが大変なぐらい、みんなのボケが渋滞してるので。そこは見どころだと思います。
──なるほど(笑)。で、岡田さんは?
岡田 私は、「えまちゃん」っていう幼稚園児の役なんですけど、これは今回作ってもらった役なんです。
福島 新キャラだよね(笑)。
岡田 初演の時はなかったみたいで。すごい江戸っ子口調の、40歳ぐらいのオバさんみたいな幼稚園児で、まあ私みたいな感じなんですけど(笑)。
前田 でもそれは、自分でキャラ作りをしたからそうなったんじゃないの?(笑)
岡田 確かに、本読みの時点で自分に寄せちゃった(笑)。ちょっとそこは楽しみにしてほしいです。
──もう、聞いても聞いても分からないです(笑)。では「アセリ教育」の方は?
前田 こちらは「ゼロ」っていう役柄なんですけど、お勉強をできる社会を作っていこうという国家のお話なんですね。で、その中から落ちこぼれてしまったバカの集団の中の最強のバカっていう役です(笑)。最終的にそのバカが、国家で最強の頭がいい人に対して「俺と勝負してくれ!」って言ってどうなっていくかっていう話になるんですけど(笑)。
──何だかやたらと強そうな役柄ですね(笑)。
前田 態度は常にデカいんですけど、基本的にバカでしかないので、中身は薄いんです(笑)。
岡田 でも、すごく重要な役なんです。
福島 私は白眉毛ヨシコっていうすごい名前なんですけど(笑)、まず「アセリ教育」自体が“王道バトル漫画”みたいな感じのストーリーになってて、主人公の男の子に向かってどんどんライバルが挑んでいくっていう感じなんですね。私はそのライバルの一人の女の子で、みんなそれぞれ必殺技みたいのを持ってるんですけど、私も色仕掛けと、あともう一つ、ちょっとそれは見てもらってって感じなんですけど。
──すごい技があるんですね。
福島 そう、すっごい技があるんですよ、素晴らしい技が。そこを見どころに、ぜひ見にきてほしいです(笑)。
岡田 私はですね、「生徒」っていうどうでもいい役名なんですけど(笑)、最初は生徒で出てきて、次はお役人さんとかで出てきたり、何かすごいピストルを持って出てきたりと、いろんな役をやるアンサンブルみたいな感じです。はい、適当に楽しんでます(笑)。
福島 「チーム・コント」なんだよね。
岡田 そう、「チーム・コント」という5人組で、いろんなところに出てくる集団です。
──役名は「生徒」と素っ気ないですけど、ただ教室にいるだけじゃないと。
岡田 はい。前半はすっごく忙しいんですよ! 出てははけて、早着替えしてまた出るみたいな。
楽しすぎる稽古の中で行われた、謎の罰ゲームとは?
──本当に聞けば聞くほど、何だか分からないですね(笑)。さて、今回は同一期間中にこの2本を上演するわけですよね。1日に両方やる日もあったりしますが、これについては?
前田 私たちも初めてなんですけどね。稽古も常に、今日はアセリ教育、今日は学芸会レーベルっていう風に交互にやったりとか、同じ日にこっちを何時間、またこっちを何時間という感じで割り振られたりとかしてて、でも結局は体力勝負……かな?
──体力勝負、ですか。
前田 物語としてはどっちも意味が分からなすぎるので、入り込みすぎないように、ちょっとタフに構えてっていうのを心がけてやってるので、感情的にはどうにかなるかなって思うんですけど、単に体力勝負ですね。自分でギアを思いっきり上げて「ワーッ!」って叫ばなきゃいけないとか、自分でどうにか持ってかなきゃいけないっていうシーンがけっこう多かったりするので、そういう意味で疲れないように頑張ろうかなっていうところですかね(笑)。
──2本でテンションも違いますよね?
岡田 「学芸会レーベル」の方は、本当に学芸会なんですよ、ずっと。ちょっと浮足立つというか、ちょっと軽めで臨んでおかないとしんどくなっちゃう感じで。「アセリ教育」の方はもっと踏み込んでるというか、つかこうへいさんみたいなカッコいいムードなんですね。重心も全然違うので、どっちも楽しめてはいます。
──そんなお話を、柿喰う客とのコラボで、キャストも交じる形でやるわけですよね。そのあたりはいかがですか?
前田 他の劇団の方と、どっちも大人数というのは初めてで。前回、オムニバス公演というのをやらせていただいてて、その時も柿喰う客さんの脚本で中屋敷さんの演出だったんですけど、その時はもうほぼほぼ4ドルに客演の方が2人っていう状態だったんです。今回は半々で、どっちもの色があるという感じで。でも、中屋敷さんの脚本・演出で、ほぼほぼ柿喰う客さんなんですよ。だからその中に4ドル50セントをどういう風に入れ込んでいくかっていうのが課題ですね。普段から、「4ドル50セントって何だろう?」っていうのを考えながらやっていて、まだそこが見つかってない状態でもあるので。
──そうなんですね。
前田 柿喰う客さんは色味があるというか、もう十年間やられてて一定の色味が付いてる状態で、そこと対峙した時に、「4ドルって何だろう?」って改めて考えさせられてるなっていうのは、今感じます。
岡田 そういう意味では自分たちを客観視できたというか、中屋敷さんが田代明に歌のパートを作ってくれたり、踊れる子には体で表現できる部分を作ってくれたりして、4ドルにできることを通じて引き出してくれている感じがあって。「4ドルのエンタメ性ってここなのかな」とか思って、この期間中で客観的に自分たちを知れました。
福島 私たちのことをすっごく調べてくれてたんだよね。
岡田 うん、2日に1回ぐらい、YouTubeで「新しき国」とか「ピエロになりたい」を見てくれてるらしくて。4ドルらしさを忘れないようにっていうのを、中屋敷さんの中でも思ってくれてるみたいです。
──すごく気を使ってくれてるんですね。
岡田 そうですね。たぶん、柿色にならないようにはしてくれてるのかなって思います。
福島 最初、柿さん側に男性メンバーが多かったんですよ。だからちょっと怖くて。4ドルからは女子しかいないし、「初めて会う男性の方がいっぱいいる、わーどうしよう」みたいな感じで、初日は稽古場の隅でみんなで固まってました(笑)。でも皆さん優しいので、すぐに打ち解けて仲良くはなれたですけど、やっぱり稽古してると、柿の皆さんは中屋敷さんがパッと言ったことにもすぐ反応して、すぐなんかギアを変えてパッとできるんですよ。でも4ドルは、一回飲み込んで消化して、整理を付けてからやるという感じで、テンポが遅いなというのを、ひしひしと感じてきちゃってはいます。
──柿喰う客のスタイルの中でも、中屋敷さんが意識して皆さんの持つものを引き出そうとしてる感じですね。それはやりやすい? それともやりづらい?
前田 私は半々ですかね。自分のやりたいスタイルもありつつ、でも中屋敷さんの演出であり、柿さんの色が強い作品でもあるから、そこも飲み込まなきゃいけないしっていう……どっちを優先したらいいんだろうというところがありますね。
福島 (他のメンバーに)ユキはバカだからさぁ、なんか柿さん見てて「何かすごいなあ、ユキもなりたい!」と思ってさ。で、中屋敷さんもメッチャ笑ってくれるでしょ? めっちゃ反応してくれるから、「あ、スベってもいいんだな」「これぐらいでもいいんだな」みたいな、そこで救われてる部分もあるから、やりにくいとかはないかもしれない。
岡田 私も、柿さんのお芝居の気持ちよさというか、スカーン!ってやってくれるのがすごく爽快感があって、そういう芝居をできるようになりたいなと思ったんです。だから染まれるようにと思ってメッチャ真似してるというか。もちろんできてないし、だけどやりたいやりたい!っていう気持ちで、楽しんではいます。
──伺っていると、稽古場はけっこう楽しそうですね。
岡田 メッチャ楽しいです! 少なくとも私はメッチャ楽しんでます。「学芸会レーベル」の日なんて、私は幼稚園児の役だから本当に幼稚園に通ってるんじゃないかぐらいの楽しい感じで、「今日もみんなと会える~」みたいなテンションで行ってます(笑)。稽古、どうですか?
福島 楽しい!
岡田 先生役でも楽しいんだ(笑)。本当に楽しいですよ! しかも中屋敷さんが、稽古の途中にギャグを披露する時間を急に作るんですよ!
──ん? どういうことですか?
岡田 柿さんの劇団員に「お前、ちょっとギャグやれ」って(笑)。
前田 昨日が怖かったよね(笑)。
岡田 しっかり時間取るんだよね(笑)。
前田 4ドルのメンバーが、各自一発ギャグみたいなネタを考えるんですよ。で、それを柿さんの一人ひとりに与えて、柿さんにやってもらうっていう(笑)。
──あ、自分でやるのではなくて。
前田 そうなんです。だから私たちはスベっても痛くも何ともないんです(笑)。
岡田 昨日、下北沢でティッシュ配りの勝負をしたんですけど、4ドルが早く配り終わったらしくて、その罰ゲームで、私たちのクソつまんないネタをやってもらって。
前田 スベるのは全部柿さんっていう(笑)。
岡田 もしかしたら動画が公開されるかもしれないので、ちょっと見てほしいです(笑)。
前田 そういう時でもメンタルが強いというか、とことんスベりに行くっていうのは本当にかっこいいなと思いますね。
岡田 やりきるからね。
前田 絶対そう。「ムリ! やりたくない!」って人は絶対にいないもんね。
岡田 なので、稽古は楽しいです。結論として(笑)。
前田 自分がやってるっていうよりも、皆さんがやってるのを見てるのがすごく楽しいですね。
岡田 贅沢な時間だよね!
──勉強になるってだけじゃなくて単純に面白いんですね。
前田 普通にお客さんとして、この作品を見に行きたいなって思う感じです。
目標は「チャッカマン」?
──聞いていると、中屋敷さんはかなり楽しい方なんですね。
岡田 楽しいです! 変わってるよね、ホントに。
前田 「役者が大好き、俳優が大好きだ」って言ってて、「自分の書いた作品で自分が演出して、自分の好きな役者を呼べて、こんな幸せな環境はない。だからみんなが何をやっても、俺は俺が面白いと思ってる人たちだから面白いんだ」って、全部を受け入れてくれてました。そんな人って、これまであんまり出会ったことなかったので。
──勝手なイメージなんですが、演出家というと怖そうな感じが……。
福島 分かります。でも中屋敷さんは怒ったことないと思います。
岡田 丸さん(丸尾丸一郎)とかも、優しいし好きなんですけど、怒る時はバーッと怒られてたので、何か怖いんですよ。今でも中屋敷さんが突然怒るんじゃないかと思ってて。でもこれまで20日間ぐらい稽古してても怒らないから、本当にそういう人なんだと思って。
前田 中屋敷さんが怒る時は、こうやって(と、福島さんの肩を掴んで)「どうしたお前~?」ってくるんだって。
岡田 ええ~っ!(笑)
前田 いつそれが出るんだろ?って思ってるんだけど、今のところ出てないよね。
岡田 大丈夫だよね(笑)。
──稽古場から配信もされてるんですね。
前田 今までもそういう配信はみんなでやったりはしてたんですけど、今回、作品のことってみんなに伝わってるのかなあ?(笑) それは分からないですけど、共演者同士のほんわかさとか、何か楽しそうだねっていうのはすごい伝わってるかなと思うんですけど。
岡田 でも作品自体は難しいよね、伝え方が。ネタバレになっちゃうとあれだし。
福島 コラボ感は全力で伝えられてると思います。対決企画とかもしたりして。
岡田 柿さんもツイキャスやってるみたいで、そこにも参加させてもらったりもして。前半戦をSHOWROOMでやって、罰ゲームはツイキャスでやりますとか、いろんなコラボをさせてもらってます。
──そんな中で課題というか、ちょっとここはもっと伸ばさないとと思っている部分はありますか? 楽しいというだけでは済まない部分もあると思いますが……。
岡田 私は逆にそこかも。「楽しい」が行きすぎてて、「舞台なんだよな?」みたいな(笑)。本当に学芸会のテンションで行っちゃうから、「お客さん入るんだよね?」「見せ物なんだよね?」「ちゃんとお仕事なんだよね」みたいなのを忘れてしまうので、ちゃんと切り替える部分を、ちゃんと引き戻さないとなって思います。いつもより緊張感が今自分には低い気がしてて。始まりとかもけっこうフワッと始まる感じなので、切り替えをある程度ちゃんとしないとと思います。
福島 まずコメディっていうジャンルも初めてだし、柿さんの舞台ってけっこう早口なんですよ。それについていくのに必死で、もう「あ、次これやらなきゃ!」「次あれやらなきゃ」みたいになって、演技している時にセカセカ焦っている状態になっているんです。これから一週間ぐらいありますけど、そこで通し稽古とかもあるから、そこでもっと気持ちを冷静に保って演技できるようになっていかなきゃなっていうのがあります。
前田 私もすごく同じですね。タフさを持って、地に足つけすぎない感じというか。柿さんは、「どうだ、俺今ふざけたぞ」っていうのも、何だかスッとした状態でやられるんですよ。私たちはふざけるっていうことに対してもすごく真剣になりすぎちゃう部分があって、そこすらも自分で面白がるっていうことはまだちょっと苦手だなと思ってるので、もっと肩の力を抜いてやりたいなって思ってます。
──そういう意味では、作品へのスタンスみたいなところでもすごく勉強になっていそうですね。ふざける度合いみたいなことについても。
岡田 そういうところが上手だよね、柿さんって。加藤ひろたかさんって方がいらっしゃるんですけど、本当にお芝居はちゃんとしてるけど絶対に面白いし、絶対ふざけてるじゃんって見えるけど白けないというか。その絶妙なこのラインが上手で、いつも見てるんですけど、習得できないですね。「チャッカマン」だっけ?
前田 中屋敷さんから見た、柿喰う客さんの男子メンバーの印象なんですけど、「チャッカマンのような男たち」らしいんですよ。こう、ポッとついてポッと消えるというか。ボーッ!と燃え続けすぎない。切り替えがすごくしっかりしてるっていう人たちっていうのが、中屋敷さんの好きな男性のイメージらしいんです。そのスタイルって、4ドルにはないなと思って。4ドルは逆にバッと燃えたらすごく燃えるタイプで、それもいいと思うんですけど、今の公演に必要なものはチャッカマンかなと思って。
岡田 いい表現ですよね、「チャッカマン」。
福島 うん、チャッカマンになろう(笑)。
岡田 目標はそれだね(笑)。
──では、2本それぞれでの自分の見どころを教えていただけますか? 「私のここに注目!」というポイントを。
前田 お客さんの方々に伝えたいのは、「え? 何これ? 分かんない分かんない!」って思ったら、私を見てほしいです(笑)。「分かんなくていいんだよ、それで正解だよ」っていうのが、私がやるべきことだと思うので。「学芸会レーベル」も「アセリ教育」も、いい意味でふざけた作品なので、みんなはずっとふざけてるんですよ。だから私も一緒になってふざけたくなっちゃうんですけど、私がやるべきことは、見ているお客さんと同じ気持ちでいることなので、「何かこの作品、大丈夫かな?」って思ったら、「私はあなたと同じ気持ちですよ!」っていう存在なので(笑)。でも後半にかけて、私も私でブチ上がるというか、頭がおかしくなるシーンは一応あるので、そこも楽しみにしてほしいです。
──「アセリ教育」の方は?
前田 個人の見どころを挙げるのは難しいんですけど、あらすじだけじゃ想像もできない世界が繰り広げられてると思うので、気負わず、何も考えずに、「どんな作品なの?」とかも考えないで見に来てほしいなってずっと思ってます。
岡田 「アセリ教育」については、私は生徒なので、早着替えとかとちらないように頑張りますというぐらいしか。でも「ゼロ」なんて本当に大事な役じゃない?
前田 振る舞いはカッコよくしてるけど、バカっぽくて中身がないんですね。だけど最終的には多分すごく熱い作品にはなってると思うので。「すっごいバカな人とすっごい頭がいい人がお客さんの中にいたら、その人たちに何かグッとくるものがあればいいな」って、中屋敷さんが言っていて。私も作品を通してすごくそれを感じているので、バカ代表としてすっごいバカな人も何かを肯定できるような作品にしたいなって思いますね。ネタバレになっちゃうのでこれ以上は言えないんですけど。
岡田 最後にメチャクチャいいこと言うんだよね。
前田 そうそう! それが刺さったらいいなと思いますね。
福島 「学芸会レーベル」は、今までユキの芝居を見てくれてた人からしたら、コメディーもやったことなければツッコミっていうのもなくて、どっちかって言うとずっとなんかワチャワチャしてるというか、ギャーギャーうるさいみたいな役しかなかったと思うんです。でも今回は、地に足はついてるんですけど、でも周りをかき乱してゴチャゴチャして、ちょっと失笑が起きるみたいな感じをするのは初めてなので、そこを新鮮に見てほしいし、初めて見る人にも「何だコイツ?」って思ってもらえたら、もう勝ちだなって思ってます。
──「アセリ教育」は?
福島 うーん、バトルシーンかな? あとは謎に恋愛みたいなシーンがあって、そことかは箸置き程度に見ていただけたらいいかなと思います(笑)。
岡田 私は今まで、「組合長」とかけっこうドッシリした役とか、使命感の強い女みたいな役が多かったんですけど、今回のえまちゃんっていう役は本当にお前、ふざけてんのかっていうような役なので、何か岡田ふざけてんなーって、でも楽しんでる姿を見てもらえたらと思います。「アセリ教育」も生徒なので、人一倍汗かいて頑張ってるので、そこを見ていただきたいなと思います。とにかく楽しんでほしいです。絶対元気もらえると思うので、どっちの作品も楽しんでほしいです。
──作品同士の関わりはないですけど、もちろん両方とも見てほしいですよね。
岡田 どっちも見てほしいです! メッセージ的には本当に中屋敷さんのあの温かい感じが、最終的には寂しい子だったり、心に何か闇がある子とか、ちょっとなんか元気ない人とかに見てもらいたいと思います。めっちゃポップな話だけど、実は本当に深い話だったりするので。
前田 どっちの作品も、愛がすごくあると思います。
「前田悠雅、泣く!」 その理由とは?
──では、劇団の活動のこともお聞きしたいと思います。ここまで2年半やってきて、現状の手応えというのは?
岡田 最初は、それこそ本当にみんなで(円陣を組むような仕草で)ガチッ!ってなって、「絶対離れんなよ!」みたいな暑苦しい感じでやってたんですけど、最近ちょっといい意味で大人になってきて、「うん、ちょっと離れようか」「自分で頑張ろうよ」みたいになってきてるんですね。そういうところが大人になったと感じるし、その一粒一粒の力がもっと上がっていけば、4ドルはよりよくなるんじゃないかなと思います。でもそのガチッとした時間があったからこそ、みんなで分かり合えてる部分は絶対にあるので、すごい大事な時間ではあったなと思います。
前田 私もそうだと思います。個々の目標だとか、4ドルに対してどうこうっていうよりかは、最近は個人個人が何をしたいのかっていうのが、2年前よりもすごく明確になってきてるかなっていう感覚はあるので、それはいいことだなと。2年前は「個人個人が何をやりたいのかを考えなさいって言われても、そんな分かんないよ~」みたいな。「それより4ドルのこと考えなきゃ! どうするどうする?」みたいな感じだったんですけど、2年経つとわりといろんな景色が見えてきて、吸収するものも増えてきたので、個人がしっかりしてきたっていうことだと思います。
福島 私は逆に、ちょっと何か寂しいなって思ってて。個々がすごくみんなしっかりしてるから、それはすごくいいことなんですけど、この前、中屋敷さんと話してた時に「劇団4ドル50セントのキャッチフレーズってないんですか?」って言われて、あ、そういえばないなと思って。柿さんだったら、圧倒的フィクションでちょっとお客さんを冷笑させるとか、そういうのは鹿殺しさんも悪い芝居さんも、何となくあるじゃないですか。その劇団のキャッチフレーズというか特徴とかモットーとかが。でも私たちって、「秋元さんがプロデュースしててエイベックス所属で、18歳以上の若手演劇集団です」っていうだけしかないなと思って。まあそれは、固定の演出家の人とか代表の方がいないからというのもあるからだと思うけど、何か「劇団4ドル50セントの強みって何だろうな」って考えだしちゃって、今日も朝の4時ぐらいまでずっと友達と考えてて。
──そうでしたか。
福島 でも結局分かんなかったんです。だから今年とか、まあ2年後ぐらいでもいいけど、何か強みを見つけたいなと思います、劇団自体の。
──ただ劇団の成り立ちからして、それを作っていく作業が活動みたいなとこありますよね。
岡田 それはありますね。秋元さんって、成長を見せるというか、アイドルさんでもそうですよね。それの劇団バージョンなんだなと私も最近は思ってて。一人ひとりとか一つの集団がどう形になっていくのか、みたいな成長過程も楽しんでもらえたらいいんじゃないかなって思ってます。やっぱり今ある劇団さんは完結してるものを世に出してるけど、私たちはその成長過程すらも楽しんでもらえたら。でもそのためには、一人ひとりの人間が面白くて魅力的じゃないと、見ようとも思わないから。それこそ一人ひとりが今自分のやりたいこととかを見つけられてるのは、その途中の通過点としていいことなのかなとは思います。うん、分からんけど!
──その意味では特に最近、個人の活動も活発になってきてますよね。その部分の手応えはどうですか?
岡田 私は去年、カムカムミニキーナさんという劇団さんに出させてもらったんですけど、何というか自分の色じゃないですけど、「強い女性」って見られたりとか、普通にいるだけなのにホントにバカだから「オモロいなお前」みたいなのでかわいがってもらえたりするんですね。そうやって外に出ることで分かる自分のよさだったり悪さだったりが見えてきて、ちょっと自分の色が分かってきつつあるのかなと。でもそれに縛られたくないし、いろんな自分、柔軟な自分でいたいとは思うけど……外に出て分かることはいっぱいありますね。
福島 演技は、もともと劇団に入っていろいろ教えてもらって、「あ、好きなのかな?」とか「頑張りたいな」とはずっと思ってたんですけど、この前、舞台「フラガール」に出させてもらって、総合演出の河毛俊作さんに「キミ、本当に演技好きだね!」って言われたんです。「あれ、演技好きなんだユキ」って、そこで思って。「フラガール」で共演した吉田智則さんとか周りの先輩方からも「何でそんなに演技好きなの?」「演技ハマっちゃったね!」とかめっちゃ言われて。ユキ、そんな演技ハマっちゃったんだと思って、自分でそんな意識してなかったけどすごく言われて。「演技見てるとけっこうしっかりしてるのかなって思ってたけど、実際本当にボケッとしてるね」ってメッチャ言われて(笑)。「あ、そっか、ユキってボケッとしてるんだ」みたいな、ユキってこんな人間なんだ、みたいな気づきはいっぱいありました。
前田 私は「恋愛ドラマな恋がしたい」っていうAbemaTVの作品に出させてもらって、その作品はドラマもやるっていうのがあったので、けっこうな人数の方にお芝居を見てもらうっていうのが初めてだったんですよね。そこで「前田悠雅ってお芝居する人なんだ」っていうのを多くの方に知ってもらえたっていうのが、去年はすごく大きかったことですね。私としてはお芝居もやりたい、歌も歌いたい、ファッションの仕事もやりたいと、いろんなことに対して自分の表現をこ広げていきたいと思ってるんですけど、その中でも軸でありたいのはやっぱりお芝居だったので、それをいろんな人たちに見てもらえたのはすごく大きかったですね。やっぱり恋愛リアリティーショーって、女の子がすごく見てる作品なので、女性の方から自分をたくさん知ってもらえたことに対して、そこから「ファッションもっと知りたい」とか「もっと見たい」って言ってもらえたのはモチベーションにもなったし、もっと磨こうと思ったきっかけだったので、すごくよかった1年だったと思います。
──すごくいい場所に出られたわけですね。
前田 本当にそう思います。しかも普通にドラマ出演だと、その役しか見られないじゃないですか。この子はこういう役だった、意地悪な役だった、いい役だった、みたいな。でも「ドラ恋」の場合はそのお芝居を練習してる風景とかドキュメンタリーのシーンも全て撮られてるので、その役に対して自分がどういう風にのめり込んでるのかっていうところも見られるんですよね。そこで人間性というか、この子はどういう子だったんだっていうのを知ってもらえるっていう意味でも、すごくプラスだったなと思ってます。
──そういった部分も踏まえ、舞台の本番も始まるタイミングですが、この2020年はどうしたいですか?
岡田 今年はコラボ公演だけでなく、4ドル50セントとしての舞台数も増えていくと思うので、もっとシンプルに、よりたくさんの人に見てほしい、知ってほしいっていうのはあって。その中でコラボ公演が増えていくということで、いろんな方と4ドル50セントの面白さを世に出していけたらなと思ってます。あとはやっぱり、演劇界の人たちにまずは認めてもらえる劇団、かわいがってもらえる劇団になれたら、もっと伸びていけるんじゃないかな、応援してもらえるようになるんじゃないかなって思います。なので、この2020年は舞台数を増やして、一個一個地に足つけて真剣に引き続き頑張りたいなと思います。いかがでしょうか?
福島 同じく!
岡田 わー!(笑) 「新しき国」を夜な夜な見てね、アレ大好きなんだよね。
福島 そうそう! 「アセリ教育」の方に出る劇団の隅田杏花ちゃんと仲がいいんですけど、昨日の帰り道にちょっとしゃべってたらしゃべり足りなくなっちゃって、一緒にご飯食べたら杏花ちゃんの終電がなくなっちゃったのでウチに来て、まず杏花ちゃんの携帯でYouTubeで配信してる「新しき国」のダンスと歌パートだけ見て「ああ、いい歌だったよね」って意味分からず涙流して。で自分もちょっと見たくなってユキの携帯でも見て「あ、もう2時じゃん。寝ようよ」ねえよって2人で一緒にベッドに入っんですけど、ウチにプロジェクターが置いてあるんですよ。それで何となく「新しき国」見始めちゃって(笑)。
──「何となく」じゃないと思います(笑)。
福島 2時間ぐらいずっともう涙タラーって流しながら見てて(笑)。「ああ、あの時の夢はどこに行ったんだろう?」「今何してるんだろう?」みたいな。何か一つ一つの言葉が刺さったんですよね。「どんなやつでも夢が見られる、夢が叶う、そんな新しい国を作るんだ」っていうセリフがあって、それメッチャいいなと思って。今って「さとり世代」って言われたりとか、あんまり“熱量”みたいな感じじゃないじゃないですか。今はオリンピックとかがあるから「みんなで日本盛り上げよう!」みたいになってるけど、それが終わったら日本って、若い人たちってどうなるんだろうなって思って。そしたら何か、もっと劇団でできることってないのかなと思ったりしたんですよね。もちろんいろんな人に見てほしいけど、若い人たちにもっと……「劇団4ドル50セントの公演を見に来たら夢が叶うよ、夢見られるよ、夢見せてあげるよ!」みたいな。何かそういう劇団になっていけたらなって思います。
岡田 (拍手)
福島 よっしゃ!
前田 何かウルウルしちゃいました(笑)。本当にそうだなって思います。えー、泣きそう(涙ぐむ)。
岡田 いいじゃん! あ、ごめんなさい。ウチら、涙もろいんです(笑)。
──いえいえ、大丈夫です。
岡田 いろいろあったね、この2年。これからも頑張ろうよ。
前田 (涙が止まらず)あー、ヤバいヤバい(笑)。
福島 ティッシュくださーい!
岡田 いいセリフがいっぱいあったんだよね、「新しき国」って。
福島 そうそう! 携帯でメモ取ったんだよ!(と、携帯を取り出す)
前田 やめてやめて!
福島 (朗読し始める)「誰でも夢が見られる新しい国。どんなやつだって夢が見られる、どんなやつの夢もかなう、どんな夢も見捨てやしない、どんな夢も尊重する」って言って歌が入って、でまた「故郷のドア」が終わってからあゆごん(谷口愛祐美)が「夢は必ず叶う。バカになってその言葉を信じてみなよ。全てが叶うとは思っていない。必死にそう信じて希望を持とうとしている」って言ったよね。
前田 (涙を流しながら)ちょっともういいです(笑)。(カメラマンに)今撮るとこじゃないです。
岡田 どんどん撮りましょう! すごくいい!(笑)
福島 見出しだ!
岡田 見出しだ! 「前田悠雅泣く」。
福島 泣いちゃった(笑)。
岡田 2020年はどうですか?(笑)
前田 そうですね。4ドルはいいとこいっぱいあると思うので、見返してやりたいですね(笑)。去年の紅白とかレコード大賞とかいろいろ見て、秋元さんファミリーのアイドルさんをいっぱい見ていて、何か凄く悔しいなと思う部分があったんですよね。最近は楽曲をみんなで披露することが少なくなってきて、公演中も歌のシーンとかがあんまりないんですよ。私は自分たちの楽曲がすごく好きで、それを通して自分たちの熱量がバン!と放出されるみたいな瞬間がすごく自分は好きだったので、今年それを披露できる場がまた改めて増えたらいいなっていうのは思っています。
福島 よっ!(拍手)
前田 という意味で、見返す1年にしたいと思います!
──よーく分かりました! 今年の飛躍に期待してます!
劇団4ドル50セント×柿喰う客 コラボ公演
『学芸会レーベル』『アセリ教育』
作・演出 中屋敷法仁
日程:2020年1月30日(木)~2月9日(日)
会場:DDD青山クロスシアター
(東京都渋谷区渋谷1-3-3 ヒューリック青山第2ビル B1F)
詳細はこちら:https://www.4dollars50cents.com/news/detail.php?id=1079343
劇団4ドル50セント
official website:https://4dollars50cents.com/
Twitter:https://twitter.com/4d_50c
Instagram:https://www.instagram.com/4d_50c/
Blog:https://ameblo.jp/4dollars-50cents/
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCNLQJJy4LMc5dFV6hmalPZg
前田悠雅
Twitter:https://twitter.com/ygm1019
Instagram:https://www.instagram.com/ygm1019/
福島雪菜
Twitter:https://twitter.com/yukina_fukusima
Instagram:https://www.instagram.com/yukina_fukusima/
岡田帆乃佳
Twitter:https://twitter.com/okada_honoka
Instagram:https://www.instagram.com/okada_honoka/
ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。