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【Novel Core】二十歳の自分を丸々切り取ったアルバム『A GREAT FOOL』

2021.12.15
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インタビュー
2020年9月にSKY-HI(日高光啓)が立ち上げたマネジメント/レーベル「BMSG」に第一弾アーティストとして加入したNovel Coreが、メジャーファーストアルバム『A GREAT FOOL』を完成させた。もともとは今春のリリースがアナウンスされていたものの、心のバランスを崩したことで制作が一時ストップ。そこから仕切り直して日の目を見た本作に、彼はどんな思いで向き合ってきたのか。BMSG加入から1年を経た心境や、アルバムタイトルに込めた思いなどを明かすと同時に、Novel Coreのラッパーとしての矜持や人生観も浮かび上がるロングインタビューとなった。


恐れを知らない大馬鹿者……『A GREAT FOOL』のメッセージとは?



──「BMSG」に加入して1年が経ちました。どんな心境の変化がありますか?
 
Novel Core もともと一匹狼タイプだったんですけど、「THE FIRST」があって、BE:FIRSTとかAile The Shotaとか仲間が増えたので、少し肩の荷が下りてる部分はあります。でも、みんなが自分にとって刺激であるぶん、自分もみんなの刺激になれるような状態でなければならないとも思ってます。自分の成功がレーベルの成功に繋がるように頑張らなきゃっていう緊張感も強まった1年ですね。
 
──加入したときはプレッシャーが大きかったですか?
 
Novel Core 最初は目の前のことに取り組んでいくしかなさすぎて、気持ち的に追いつけきれませんでした。BMSGという舞台でやれる準備が正直できていない状態だったところもあって、心のバランスを崩し、今回のアルバム制作中に3ヶ月くらいお休みを頂いたんです。
 
──それはいつ頃?
 
Novel Core 今年の1月末から4月頃までです。でも、お休みを頂いてから、自分がやるべきこととか、やりたいこととかがはっきりしたので、今はちゃんと前を向けています。
 
──今回のアルバムは、どんなプランで作り始めたんですか?
 
Novel Core 作り始めたのは2020年末だったんですけど、そのときはまだふわっとしていて。ジャンル無視で自分のやりたいことをひたすらやるアルバムにしようと思ってたんですけど、実際にどういう曲を並べていくかとか、コンセプトとかは決まり切っていなかったんです。でも、休んだ3ヶ月で、自分が何のために音楽をやってるんだろう?と立ち返った結果、数字とか利益といったもの以前に、人の人生に何かしらの影響を与えるものをつくりたいということが一番に出てきたんです。
 
──めざす方向が見えた。
 
Novel Core 大人になると、いろいろ経験していくぶん、賢くなっていくと思うんです。そういう中で大きな夢を語ることが怖くなる瞬間があると思うんですけど、自分の中に大馬鹿者を一匹飼っておいて、馬鹿を見てもいいから自分らしく生きることを諦めないで欲しい。そういうことをメッセージするアルバムにしようと思って作って行きました。
 
──それが『A GREAT FOOL』というアルバムタイトルに繋がっているんですか?
 
Novel Core そうです。「恐れを知らない大馬鹿者であり続けろ」っていうコンセプトで、このタイトルにしました。
 
──それくらいワガママでいいと?
 
Novel Core いろんな人と関わってきて改めて思うのは、生きてたら人に迷惑をかけちゃうのはしょうがないんじゃないかって。逆に、迷惑をかけられたときに「いいよ」って言える人間になることの方が大事じゃないかなって思うんです。「WAGAMAMA MONDAIJI」はまさにそういう思いで書いた曲。我が儘というのは、自己中心的で周りを傷つけるというよりは、自分の中で譲れないものとか守るべきものがあるんだということ。同様に、周りの人たちにもそれがあるんだっていうことを受け入れて生きていくことだと思うんです。

 
──考え方がオトナ(笑)。WREPの構成作家としてCoreくんのことは17歳から知ってるけど、当時は年齢の割に甘え下手という印象でした。
 
Novel Core あはは。最近、甘えられるようになりました。自分の弱い部分も受け入れて人に言えるようになりましたし。昔は弱いところは隠してナンボというか、強がるしかないと思ってた。
 
──そのぶん余計に攻撃的になっちゃって……。
 
Novel Core で、敵を作っちゃう、みたいな。素直じゃなかったんです。
 
──意地っ張りというか。
 
Novel Core まさに!それはありました。WREPに出てたときはそうだったと思います。怖かったんだと思うんですよね。最近になって、そう思えるようになりました。
 
──Coreくんはインディーズ時代に『WCMTW』というアルバムを作っているので、アルバム制作は1回経験しています。前作と今作で、制作面にどんな違いがありましたか?
 
Novel Core メジャーレーベルでチームのスタッフさんと一緒に作って行くことが初めての経験だったのて、最初はわからないことだらけだったし、どうしよう?という迷いもありました。インディーズのときは自分主体でやっていたので。でも、この1年でチームプレイに慣れたというか。「俺」ではなくて「俺たち」が一人称になった感じはアルバム制作を通してずっとありました。それが一番大きな違いだし、変化です。
 
──「PERIOD.」ではスタッフさんの名前を次々にネームドロップしていますね。
 
Novel Core この人たちにすごくお世話になってるっていうスタッフさんの名前を片っ端から並べていきました。けど、多すぎて全然シャウトしきれませんでしたけどね(笑)。幸せなことだと思いました。
 
──名前を挙げられたスタッフは嬉し泣きでしょうね。まあ、そこで「俺の名前、入ってねえじゃん!」って言われても困るでしょうけど(笑)。
 
Novel Core そうなんですよ。入りきらなかったことが自分にとっては意味があるというか。昔と違って、それくらいたくさん、本当に心から自分のチームだと言い切れる人たちがいるよっていう。そういう思いで作った曲なんです。
 
 
「咳払いには死ぬほどこだわりました(笑)」
 
 

──本作のサウンド面は全体的に煌びやかな印象を受けました。ギラギラしてるところもあるし、ポップな顔も見せているし、躍動感もある。自身ではどんな仕上がりになったと感じていますか?
 
Novel Core 「こんなのをやってみたい」「こんなのを作りたい」っていうのはたくさんあったんですけど、それをアウトプットする手段やスキルが今までなかったんです。でも、いろんな制作の形を経験して、この1年でボーカル面も作詞面も随分スキルアップしたと実感しているので、今、自分が作りたい音楽を一枚にできた手応えはあります。
 
──一方、リリックは吠えているものが多いなと思いました。
 
Novel Core まさに吠えてますね。でも、吠えてる対象が変わったと思います。以前は、世間から言われたことに対して「違うし、こうだし」って反発してた感じなんです。
 
──ヘイターに向けて吠えていた?
 
Novel Core そう、明確に誰か対象がいた感覚がある。でも、今は、誰かじゃなく、自分の中に潜んでいる弱さとか常識に囚われている感覚とか、そういうものをぶち壊したいっていう吠え方になってるんです。


──そうやって吠えている歌詞をCoreくんからの挑発だと表層的に捉えて、「何言ってンだよ、うっせぇよ」と返す声が増えるかもしれない。
 
Novel Core それでも全然大丈夫です。今回は一人称がNovel Coreじゃないんですよ。「俺たち」の曲、「俺たち」のアルバムにしたかったので、人それぞれの受けとめ方があるほうが大正解なんです。
 
──「俺たち」というのは同世代という意味ですか?
 
Novel Core 世代は関係ないです。たとえば「THANKS, ALL MY TEARS」で歌っていることは、大人でも同じような感覚を抱く人たちがたくさんいるんじゃないかと思っていて。その人たちが「これは自分のことを歌ってるのかな?」と思えるような曲になっていたら嬉しいんです。
 
──不平不満を抱えてるとか、自己嫌悪に陥ってるとか、そういう人たちに共振できると嬉しいアルバム?
 
Novel Core そうですね。そういう気持ちを持っている人たちもそうだし、生きていく上で何かに負けそうになったり、社会に潰されそうになっていたり、自分らしく生きていくことに難しさを覚えている人たちには聞いてもらいたいなって思います。
 
──タイトル曲「A GREAT FOOL」は、THE ORAL CIGARETTESの山中拓也さんのプロデュースです。どのように作って行ったんですか?
 
Novel Core アルバムタイトルが先にあって、だったらそういう曲を作ろうということでヤマタク(山中拓也)さんにお願いしました。ロック寄りのものが作りたいということもあったんですけど、それ以上に、メジャーファーストシングルの「SOBER ROCK」でヤマタクさんにギターで参加してもらったので、そこで張った伏線を回収するという意味でアルバムに参加していただくことが自分にとっての大きな財産になるんじゃないかなと思ってお願いしました。
 
──ヤマタクさんとはどのように作業を進めていったんですか?
 
Novel Core 日高さんとヤマタクさんが「Dive To World」という楽曲でスタジオに入っていたときに遊びに行かせて頂いて、レコーディング後にヤマタクさんと「こういう曲がやりたい」ってテーマとコード感を共有させてもらったんです。で、1回トラックを作ってもらったんですけど、行き詰まって歌詞が書けないままレコーディング当日を迎えちゃったんです。それでヤマタクさんに「スタジオで1からセッションは可能ですか?」って相談したら「やろう、やろう」と言ってくださって。当日スタジオでセッションしながら、フリースタイルでメロディを乗せていったんです。
 
──もともとヤマタクさんが用意してくれたトラックとは別物になったんですか?
 
Novel Core まったく違うものになりました。もともとイメージしていたコードの世界観は残しつつ、別のコードを弾いてもらっているし、ビートも全然違います。
 
──結果、フレッシュな気持ちで制作に臨めた。
 
Novel Core そうですね。今回のアルバムは、そうやってスタジオに入ってセッションしながらフリースタイルで作って行ったものが多くて。日高さんとの「PANIC!」もそうだったんですけど、そっちの方がその時の自分の感情が素直に乗っていて。作業的になっちゃうのが嫌だったんですよね。感覚に身を任せて作る方が良かったんです。
 
──「どんな曲にしよう」「どう書こう」と考え過ぎちゃうんでしょうか。
 
Novel Core テーマは明確にあるんです。でも、作詞作業って自分と向き合うことだから、書いていけばいくほど、何を本当に書きたいのか、わからなくなってきちゃう状態に陥っちゃうんです。
 
──いろんなことを詰め込もうとしちゃうのかな。
 
Novel Core それはあると思います。詰め込み過ぎてるっていう。それで7割くらいにセーブすることをアルバム制作中に身につけました。
 
──言葉を削いで整理していく感じなんですか? それともコア=核にあるものを抽出する感覚なんですか?
 
Novel Core 後者ですね。本質的なメッセージがどこにあるか探していく。こういう文章やこういうフレーズが欲しいっていうのはわかるけど、結局何が言いたいんだ?っていうことに立ち返るっていう。そのためには現場でセッションして作った方が素直な言葉が剥き出しで出てくるっていうことに気付きました。
 
──「A GREAT FOOL」は1曲目に置かれていますが、その前に10秒程のイントロを作っています。そのイントロのドラムの鳴りや咳払いの音にもすごくこだわりを感じました。
 
Novel Core 咳払いは死ぬほどこだわりました(笑)。今回のアルバムは全体を通してライブを意識して作っていたんです。そう考えると圧倒的に「A GREAT FOOL」が1曲目だなと。アルバムを1つのショーとするなら、俺がどうやって登場したらカッコイイか、この曲の勢いが伝わるかと考えたときに、ドラムだけ鳴ってて咳払いで曲が始まるのがいいなと思って。スタジオでそういう話をしてあのイントロを作ってもらったんです。
 
──コンマ数秒のことですが、バッチリな咳払いだなと思いました。
 
Novel Core 不満な感じもこもりつつ、行くぞ!っていう勢いも出ないと意味がないと思ってたんで、アルバムの1発目にふさわしい咳払いにするために30回くらい録りました。途中から、ただの風邪を引いた人みたいになってましたけど(笑)。
 
 
このタイミングに意味がある……AK-69とのコラボ実現!
 
 

──今回のアルバムでは、初めてのコラボとなるYackleさんをプロデューサーに迎えています。
 
Novel Core Yackleは同い年で僕からリクエストしたんです。アルバム制作に入ったタイミングで、Yackleが主宰するイベントにライブで呼んでもらって、そこで繋がりました。他のプロデューサー陣は年上の方々なので、同い年だからこそできるものがあるんじゃないかな?と思ってYackleに声を掛けたんです。
 
──Yackleが作る音のどんな部分が刺さったんですか?
 
Novel Core めちゃめちゃキャッチーなものを作れるんですけど、ドラムがめっちゃ尖ってるとか、背景色にこだわりが強いイメージがあって。
 
──背景色?
 
Novel Core 後ろでジージー、ノイズっぽい音が鳴ってるとか、「そんなの混ぜてるんだ?」みたいな。聞こえるか聞こえないかくらいなんですけど、「面白いな」って。リスナーにまっすぐ届けられるようにキャッチーなものを作ることは意識してるんですけど、キャッチーに振り切るだけだと単にポップな楽曲になって終わってしまう恐れがある。なので、要所要所にちょっとしたギミックが入ってくるYackleと作ったら面白いことになるんじゃないかなと思ったんです。
 
──Yackleがプロデュースした「LOVE SONG feat. SG」は、軽快なピアノのリフとドラムンベース調のビートが印象的でした。
 
Novel Core ドラムンの進化版というか、ドラムンを絶妙に崩した感じというか。この曲は、Yackleを家に呼んで、こういう跳ねたピアノが欲しいよね?とか、そういうところから一緒に機材を叩いて作っていきました。その中で、サビはドラムンっぽいヤツが面白いんじゃない?っていう話になって。
 
──恋したときのウキウキ感をテーマした曲だから、ドラムンの疾走感がマッチしてます。
 
Novel Core 疾走感とか「楽しそう!」っていう感じを前面に出したい曲だったんです。あと、ちょっとコミカルなテイストも少し入れたくて。そう考えたときに、ああいうドラムパターンの方が面白いんじゃない?って。
 
──SG(ソギョン)さんの起用理由は?
 
Novel Core SGくんは歌声が素敵だなと思って、TikTokのカバー動画をよく見ていたんです。そしたら「Lily」というオリジナル曲をリリースして。それを聞いたときに、Novel Coreとソギョンは絶対相性が良いでしょ、みたいな直感が働いて、インスタをフォローしたら向こうからも「一緒にやりたいです」と連絡が来て。それで今回参加してもらいました。
 
──高音域の声の質感が似てますよね。
 
Novel Core そうなんです。微妙にハスキーなところがあったりとか。なんか単純に相性がすごく良さそうだなと思ったんですよね。
 
──先述した「PERIOD.」もYackleプロデュースです。これはどんな思いから作った曲ですか?
 
Novel Core もともとは、2020年の4月に『WCMTW』を出した後、すぐにステイホーム期間になっちゃってライブもキャンセルになって何もできなくなったときに、原型になる曲を作っていて。過去の自分にピリオドを打って1つ前に進もうと思ってたんです。
 
──前に進むために、過去と決別するっていう。
 
Novel Core そう。そのとき作ったものは、今回の曲よりセンシティブというか、より具体的な内容だったから、僕以外の人間には絶対聞かせないと思ってたんですけど、今は環境も変わって仲間も増えて、これからまた新たなステージに挑んでいくタイミングだったので、今までの心境と今の心境を明確に区切る曲をもう一回作って、アルバムに入れるべきだと考えたんです。
 
──未来への思いがテーマにありつつ、同時に自己紹介ソングにもなっていますよね。高円寺のサイファーとか中板橋の家とか、経歴や生い立ちがわかる内容になっている。
 
Novel Core 時系列で書いているから、確かに自己紹介曲になってますね。今まで感じてきたことと、今思ってることを本当ありのままに書いた曲なので。いろいろ思い出しちゃってブースで泣きながら録ったんでしんどかったですね、レコーディングは。
 


──本作にはAK-69を迎えた「WIN feat. AK-69」が収録されています。これまでに何度も会っているでしょうけど、楽曲でコラボするのは初めてですね。
 
Novel Core AKさんとはいつかやりたいと思っていたんですけど、このアルバムを作り始めた段階では、AKさんの名前が横に並んだときに恥ずかしくないレベルにまだなれてないと思っていたので、オファーをためらってたんです。でも、休んだ3ヶ月でアルバムに対する思いが強くなって、逆に今、このタイミングでやることに意味があるんじゃないかと思って、AKさんに直談判して参加して頂きました。
 
──楽曲を作るにあたり、どんな話をしたんですか?
 
Novel Core 自分たちにはすでに確固たるものがあるから周りの連中に何を言われても全然構わないっていう内容にしたいとAKさんに伝えました。「DOG -freestyle-」は噛みつくというか、攻撃的な姿勢なんですけど、「WIN」はちょっとおちょくる感じにしたくて。AKさんとやるからこそ、そういう曲が良いんじゃないかと思ったんです。

──ヘイターに向けて書いたんですか?
 
Novel Core ヘイターというより、同業者とかラッパーですね。打ち合わせのときにAKさんと話していたのは、歌モノとか、メジャーで音楽をやっていることに対してよく思わない人たちはたくさんいると。ただ、僕もAKさんもやりたいことをやっていった結果そこにいるというだけで。お金のためとか数字のためにそこに行ったわけではない。それをセルアウトとか、ポップかぶれだっていう言い方をして攻撃してくる人たちよりもラップに向き合っているし、ヒップホップに向き合っているよっていうことを改めて作品にしておきたかったんです。
 
──相手をおちょくって挑発するぶん、スキルフルなモノを作らないとブーメランを喰らってしまう。その点はどう考えていましたか?
 
Novel Core まさにそうですね。でも、そこはラフに考えてました。Novel Coreとしては、少なくともこの曲で投げかけてる人たちから何かを言われることはないだろうなと思っていて。口に出したことはやってきた自負があるし、ラップスキルにしても「じゃあ、実際、俺とお前のラップ比べてどうなん?」みたいなところは正直あったんで。それはAKさんも同じ思いがあったみたいです。AKさんと話している中で、どのテンションでやっても別に負けっこないよねっていう気持ちがお互いあって。「もっと変則的なフロウしなきゃ」とか「よりハイスキルで」とか、そういうのはなかったですね。それよりもビートに対して、自分たちの中で正解のアプローチをちゃんとして、言いたいことを言うっていうことを大事にして作りました。
 
 
一人一人の目を見て音楽をやり続けていく!
 
 
──本作にはボーナストラックがたくさん入っていますが、アルバムの締め曲は10曲目「THANKS, ALL MY TEARS」だと思います。これはどんな思いから書いたんですか?
 
Novel Core 最初はオーケストラサウンドで壮大なものというか、ライブのフィナーレとしてやるような楽曲を作りたいと思ってたんです。だから、めちゃめちゃシンプルに超ポジティブな楽曲にしようと思って歌詞を書き始めたんですけど、そのタイミングで活動休止に入って、3ヶ月空いて……。
 
──そこから書き直した?
 
Novel Core そうなんです。最初は超ネアカというか、“楽しい”に振り切ってる曲で、「LOVE SONG」のような“希望しかない!”みたいな曲だったんです。だけど、休んでる3ヶ月間で、そういう曲じゃないなと思って。今の自分が感じてる歯痒さとか、デカい壁にぶつかって絶望してる気持ちとか、そういうのはこれから先もきっとあるだろうから、またそれが訪れたときに、自分が書いた曲に助けてもらえるような、未来の自分に向けたファイトソングにしようと思ったんです。
 
──楽曲タイトルは、“流したすべての涙に感謝”と訳せますが、過去の涙を糧にしていこうということですか?
 
Novel Core 人生の中で挫折する瞬間とか絶望する瞬間とか、どうしようもなく悩んで死にたくなるようなときって、僕にもあったし、誰にでもあるんじゃないかと思うんです。そういうときに僕は、自分の人生を1本の映画に例えて乗り越えてきたんです。映画の主人公が超無敵で何もトラブルがなく平凡に暮らしてるだけだったらドラマチックな物語にならない。映画のエンディングをより感動的で素晴らしいものにするために、挫折するシーンや絶望するシーンが今の自分には必要なんだと言い聞かせて乗り越えてきたんです。そのマインドを楽曲にしたいとずっと思っていたし、それが今なんじゃないかと思って、この曲を作りました。


 
──今回のアルバムは二十歳を迎えたタイミングで作ったわけですが、「二十歳」という年齢は特別なものでしたか?
 
Novel Core 20歳から21歳になるまでの間に作ったアルバムなので、子供のままでいたい気持ちもあるし、大人にならなきゃいけないという部分もあるし、そのジレンマにヤラれている感じはありました。「二十歳か。向き合わなきゃ」みたいな。そういう焦りもありましたし。
 
──どんな二十歳になれるんだろう?とか自問を繰り返してた。
 
Novel Core そう。ポジティブとネガティブが入り交じり過ぎて、その処理に追いつけなかったっていう感じですね。未来に対するワクワクがとんでもない大きさであって、同時に不安も同じくらい大きくて、どうすりゃいい?っていう状態だったんです。それで体調を崩したって感じです。でも、それをそのまま作品に刻んでおきたかったし、二十歳の自分を丸々切り取ったアルバムになりました。
 
──子供の頃は早く二十歳になりたいと思っていたタイプですか?
 
Novel Core 子供の頃は大人に憧れてましたけど、マイクを握るようになってからは大人になるのが怖かったですね。今も怖いです。
 
──どんなことが怖い?
 
Novel Core なんていうんだろ……言葉が難しいんですけど、賢くなるのが怖いっていう感じです。いろいろ経験して、いろいろ知って、何かをやろうとしたときに頭の中で「あのとき失敗したから…」とか計算が始まるのが怖い。目の前にあるものに対して素直にまっすぐぶつかりたいので、考えて動くようになりたくないっていうか。
 
──大人になると計算もするし、ずる賢くもなりますからね。
 
Novel Core それがすごく怖いんです。だから、大人になりたくないというよりは、子供の心を忘れたくないっていう感じですね。
 
──そんな意識を持ちつつ、この先、アーティストとして大事にしていきたいことを最後に教えてください。
 
Novel Core 一人一人の目を見ながら音楽をやるっていうことです。ファンの人がどれだけ増えても、関わるスタッフの数がどれだけ増えても、一人一人の目を見て、たとえば100万人と向き合うとしたら、1対1を100万回やるっていうスタンス。そこはぶらさず続けていきたいです。

 
撮影 長谷英史
 
 
 
Major 1st Album『A GREAT FOOL』
2021.12.15 ON SALE

 

 
 
【Novel Core オフィシャルサイト】
https://novelcore.jp/
 
【Novel Core Instagram】
https://www.instagram.com/iamnovelcore/
 
【Novel Core Twitter】
https://twitter.com/iamnovelcore/
 
【Novel Core Music】
https://novelcore.lnk.to/MUSIC
 
【Novel Core YouTube】
http://www.youtube.com/c/NovelCore
 
【BMSG】
https://bmsg.tokyo/
 
猪又 孝
WRITTEN BY猪又 孝
1970年、新潟生まれ。音楽ライターとして国産のR&B/HIP-HOP/歌モノを中心に執筆。24時間HIPHOP専門ラジオ局「WREP」に放送作家/ディレクターとして参加中。共著に15人の著名ラッパーが歌詞の書き方を語る「ラップのことば」「同2」(SPACE SHOWER BOOKs)。
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