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【祝成人?!】 笑いあり、感謝あり、思い出話あり...MONKEY MAJIK 20年の歴史を振り返る。

2021.01.13
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インタビュー
2020年に20周年を迎えたMONKEY MAJIK。その記念として、70曲入りのベストアルバム『20th Anniversary BEST 花鳥風月』が20日にリリースされる。ファン投票で選ばれた楽曲を4枚のCDに収録したこのベスト、そしてそこに収録されている新曲2曲について、メンバー4人にいろいろと伺いました。また、この20年の活動についても興味深いお話をたくさんいただいていますので、たっぷりとどうぞ!

暖かい雰囲気の中で行われたクリスマス配信ライブ

──まずは12月23日に配信で行われた「Amazon笑顔を届けようプロジェクト」のライブについてお聞きしたいと思います。Amazon JAPANと同じく20周年ということでアンバサダーに選ばれてのライブでしたが、短い時間ながらベスト選曲でしたね。いかがでしたか?

ブレイズ 楽しかったね。すごく雰囲気のいいライブだったし、クリスマス感もすごく出ていたと思います。クリスマスソングは「A Christmas Song」1曲でしたけど、新曲の「gift」にはホリデー・シーズンの気持ちが入っているし、ここで歌えてすごくよかった。今回の映像はここ何年も一緒に仕事をしている監督さんの作品で、それも素晴らしかった。ちょっとサプライズだったね。

メイナード ああいう環境でライブをやることがすごくよかったし、今の時代、ファンの前で直接ライブができないのは残念だけど、今回は新曲もやれたし、ハッピー・ホリデー・メッセージを交えながらやれたのはよかったと思います。

TAX 2020年は僕らMONKEY MAJIKも20周年ということで、ライブの予定をたくさん、何年も前から計画していたんですけど、コロナ禍の中で全部やることができなかったんですよね。ファンのみんなもすごくガッカリさせちゃったし、僕ら自身も区切りの年ということでお祭りをやりたいなという気持ちがあったので、Amazonさんといい巡り合わせがあってライブをやらせていただいて、すごく感謝していますね。

ブレイズ いい答え(笑)。

──改めて、無観客ライブというのはいかがですか?

DICK 俺は基本的にお客さんがいないライブだと、3曲ぐらいまでは集中力がもつんだけど、その後はちょっともたないなというのがあって(笑)。でも今回はスタッフが合計で40~50人ぐらいいて、無観客ライブじゃないみたいだったので、すごくよかったです。

──その上、今回はフリートークの時間もあったので、集中力的にはバッチリだったということですかね(笑)。

TAX ライブ中に4人で話をするということもあんまりないので、ちょっと違った雰囲気だったし、クリスマスということもあって本当に皆さんに楽しんでもらえるようなことをしっかり考えて作れたという感じでしたね。

ブレイズ そうね、すごく楽しかった。今までの配信ライブは、例えば9月の「定禅寺ストリートジャズフェスティバル LIVE AID STAND UP!SENDAI2020」なんかもそうだけど、ずっと世の中を盛り上げていくためにやりました。みんなつらい状況だけど、少しでも楽しんでもらえればいいなと。お客さんはいなかったけど、楽しいよね。僕らも指を使ってないと、これからのライブもできなくなるから(笑)。今年はライブもあまりできなかったから、4人プラス・サポートメンバーでライブできたのは最高でした。

──先ほども少し出ましたが、ここで新曲「gift」を発表できたことについては?

TAX この機会を与えていただいたってこと自体がうれしいことでしたし、そこに合わせて新曲を作るというのもプロジェクトとしてあったことなので、そういう機会がなければ曲自体を作ろうという気持ちにもなってなかったと思いますからね。全てがうまくつながって、こういう状況で僕ら自身とファンの方たちのモヤモヤしている部分を少しでも拭い去ることができたかなという部分で、感謝しかないですね。

DICK ライブアレンジで初めて聴いてもらったんですが、いつもならライブ会場の限られた空間だけど、今回は全世界同時に聴いてもらえたってことだからね。そこがよかったと思います。

──一方で配信だと、お客さんのリアルタイムな反応は得られないという面がありますが……。

TAX そうですね。リアルな反応があればそれに越したことはないですけど、後からゆっくり皆さんの反応を見るということも、それはそれでこの状況じゃないとできないことなので、全てのことにおいてポジティブにとらえた方が、その先にいろいろつながっていくんじゃないかと思っています。僕らはこの状況になってから、何事もそうとらえるようにしていますね。

DICK ライブチャットのコメントを後から見てみたら、新曲の「gift」の時だけ発言がすごく少なくなったんだよね。「ああ、今聴いているんだな」って(笑)。

TAX ああ、ちゃんと聴いてくれているってことだよね。

──「gift」の曲自体も、前向きでポジティブな内容になっていますよね。

TAX やっぱりワクワク感というものを、曲の中に閉じ込められたらいいなと思っていて。大人も子供もこの曲のイントロが流れてくると、何かちょっとほっこりするというか。そんな曲が作れたらなあと思って作りました。やっぱりプレゼントって、もらう側もあげる側もうれしいじゃないですか。そのワクワク感がキーワードというか、大事なところかなと。


20年の歴史の中での「重大事件」とは?

──さて、今回のベストアルバム『20th Anniversary BEST 花鳥風月』はタイトルにもある通り20周年記念としてリリースされるわけですが、まさに20年前、皆さんの頭の中を一番占めていたのはどのようなことだったでしょうか?

DICK 20年前か……難しいな(笑)。俺の場合は、何か一つが大きく占めていたということはないかもね。もちろん、音楽をどういう風にやっていこうかということは考えていたし、わりと大きな割合だったとは思うけど、そればっかり考えていたわけでもないしね。何だろう……ちょっとパス(笑)。

TAX 僕は、20年前も今も実はあんまり変わらないんですけど、いつも心の中で思っていたのは、「何か楽しいことないかな」ってことでしたね。今はこういう仲間もいるし、すごくいい環境の中でやらせていただいているので、楽しいことを口にすることで、それを形にすることが可能になってきました。昔は「楽しいことないかな」と思いつつも、「その楽しいことって何なんだろう?」って探している段階で、思いついてもなかなか形にすることができなくてモヤモヤしていました。でも、今も昔も変わらないのは、「何か面白いことないかな?」って心の中でつぶやいていることです。刺激を求めているというか。

ブレイズ 僕も20年前と今で、気持ちはそんなに変わってないね。もちろん、最初に音楽を作りはじめた頃はただのヤング・ガイズで、家の中で「いろんな面白い曲を作って、誰かが好きになってくれればいいな」と思ってた。夢はもちろんありましたけど、自分の気持ちを出すことしかできなくて。その頃から考えると、音楽の作り方とか、何のためにこういう活動をしているかという気持ちはだいぶ変わりました。家族のためだったり、今の子どもたちが聴いているような曲をもっと作った方がいいとか……制作システムもガラリと変わって、最初の頃はDATテープとかが主流だったし、CDがすごく売れている時代だった。CDが少なくなってダウンロード、そしてストリーミングが出てきて……曲の作り方も変わったけど、もともとのキー・メッセージは変わらないと思います。。あとお酒(笑)。20歳の頃と今のペースが同じというのはどうかと思うんだけど(笑)。まあ、基本的なところは20年前も今もそんなに変わってないですよ。世界の方が変わった(笑)。



メイナード 僕も変わらないかな。昔は自分が何をしたいのか今イチ分からなくて、でも確かに面白いことを探してた。それは今も探しているし、ブレイズが言うように表現の仕方で悩んでいた時期でもある。今も常に、新しいチャレンジに対して一歩一歩解決していっているんですけど、それは「何をしたいのか分からない」ということでもあるじゃないですか。僕がどういうアーティストであるべきかというのも分からなかったし、今も分からないけど……ビジョンがハッキリしてる人っているじゃないですか。そういう人には憧れますね。まあ一番変わったのは、ファンがたくさん増えたことによって、やってきたことが間違ってないのかな、と思えるようになったことですかね。僕たちの曲を聴いて、人生の何かが変わったり、助けられたことがあったという話を聞いたり、ライブの時にみんな笑顔で楽しくしている様子を見たりすると、何をやればいいかは分からない中でも、きっと間違ったことはやってないのかなと思えます。ごめんなさい、もっと軽い話がよかったのかな?

──いえいえ、大丈夫です(笑)。

DICK さっきの続きです! 20年前を思い出してみると、難しいことを考えていたわけじゃなくて、“オジサンたち”に憧れを持っていたなというのを思い出しました。仙台にも音楽をやっている先輩とかはたくさんいて、ラーメン屋に飲みに行って、ラーメンを食べないで帰るような人たちもいたんですよ。それがカッコよくて「すげえ!」って憧れて、今はすっかり同じことをやるようになりました(笑)。寿司屋に行って寿司を食べないで飲んで帰るっていうのにも憧れるんですけど、寿司はまだ食べちゃうんですよね(笑)。

──それは仕方ないと思います(笑)。この20年間の出来事を順を追って伺っていると何時間あっても足りないと思うので、無理矢理ですが「MONKEY MAJIKの重大事件ベスト3」を決めさせていただければと思います。まずお一人ずつ、自分の中での1位を伺えますか?

DICK 絶対入りそうだなと思うのは、天皇・皇后両陛下(現在の上皇・上皇后両陛下)の前でライブができたこと。しかもカナダで。あれは光栄なことだと思う。

──2009年の出来事ですね。

メイナード あれはすごい経験ですね。普通はできないから。

ブレイズ あとはスティービー・ワンダーと会ったことね(笑)。

メイナード 2010年のサマーソニックに出た時に、大阪のアップルストアで、スティービー・ワンダーとバッタリ会ったんですよ。思わず声をかけて、思わずiPadの話で「これ、いいっすよね!」とか盛り上がって(笑)。その時、「最後にいろんなアーティストをステージに呼ぶから、ぜひ一緒に歌いましょう」って言われて、「おお~、いいねえ。スティービーと一緒に歌いたいな!」と思ったんだけど、出番が終わったらついつい飲みすぎていろんなアーティストのライブを見に行ってしまって、スティービーの時は遠くから見てた(笑)。最後にいろんな人が出てきて、「ああ~! ステージに上がればよかった!」って。

──それはもったいない!(笑)

ブレイズ 世界も回ったし、レコーディングで音楽業界のいろんな面白い人とも会って、飲みながらいろんな歴史を聞いたのも楽しかったし。普通ではできないことがたくさんあって、そのたびに感動しますね。ソウルに行った時も、野球のスタジアムでマリリン・マンソンとかDeath Cab For Cutieとか、好きなアーティストがたくさん出ている中で出演して、スタジアムでキャッチボールもやったり。あと、仙台でライブをやった時、お父さんをステージに呼んだのも思い出しますね。あの時、お父さんは75歳ぐらいだったけど、元々ミュージシャンで。僕たちのステージでジャズを歌ってもらって……それも感動しました。一緒にステージができたことは最高でした。いっぱいあって止まりません(笑)。

メイナード ベスト3は決まりそうにないね(笑)。


バンド名がつないでくれた不思議な縁

──了解しました(笑)。ではTAXさんとDICKさんには、バンドに加入した当初の思い出を伺えればと思います。

TAX さっきも言ったように「何か楽しいことないかな」ってさまよっていた時に出会って、「面白そうだな」って思ったんですね。ただ漠然と「面白い何か」を探していたんだけど、神様がプレゼントをくれたみたいな、それぐらいラッキーな出会いでしたね。音楽はもちろん、人としてもすごくいい人たちなので、そこがやっぱり長く続けられる理由なんだろうなと思います。

DICK 仙台もそんなにバンド・シーンが大きいわけではないので、加入する前から彼らの活動は知っていて、元々は知り合いの知り合いみたいな感じだったんです。最初の活動は、レコーディングだったのかな。インディーズでの最後のアルバム、「eastview」の。「MONKEY HOUSE」っていう、当時みんなが一緒に住んでいたところに行ったんですけど、古い一軒家みたいなところに一緒に住んでてね、たぶん周りの人は、不良外国人が住んでる変な家があると思ってたと思うんですけど(笑)。

ブレイズ・メイナード ハハハハハ!

TAX その頃の漠然とした夢で、「日本全国、47都道府県全部に行ってみたい」というのがあって。日本人だったら何となく思うじゃない?うっすらそう思いながら何年も生きてて、こういう仲間と出会って、それをバンドで実現できたっていうのが、僕にとっては夢のような話なんですよ。その行った先で、「僕らの曲なんて知っている人いないでしょ」「お客さんなんて入らないでしょ」というような場所もあると思っていたわけ。だって、仙台で徐々に広がっていくのだってすごく大変なことだったのに、全く知らない土地にポンと行って、お客さんは来てくれるんですかね?みたいな。そう思っていたけど、やればやったで常にライブハウスにたくさんのファンの方がきてくれて、「47都道府県ツアー」をやった時には、こんなに幸せなことはないと思いましたね。

ブレイズ さっきの「バンドの思い出」の話、それもあるよね。全都道府県を回って、名物を食べて。

TAX ほとんど刺身ね(笑)。

ブレイズ 刺身と餃子(笑)。ホントに楽しかった。あれは人生で1回しかできないでしょう。

──20年経った今、「MONKEY MAJIK」というバンド名について思うことは?

メイナード ゴダイゴさんの「Monkey Magic」は坂本九さんの「上を向いて歩こう」以来の、日本で作られて海外で売れた曲ですよね。偶然、いろんな共通点があることに気づいたんです。彼らは日本人とアメリカ人で組んでるバンドだし、英語と日本語両方で歌っているし。そしたら『西遊記』のドラマがリメイクされることになった時に、インディーズ時代に夜中の3時ぐらいにTVで流れていたMVを、たまたまプロデューサーの方が見ていて、「MONKEY MAJIK」というバンド名に引っかかったらしいんです。それで「あれ、面白いな」となったらしくて。そこからつながって主題歌を担当させてもらうことになったんですが、そこは名前のパワーしかないよね。その時見ていた曲がよかったとかMVがよかったとかもゼロではないんでしょうけど、やっぱり引っかかったのは名前でしょうから。

──しかしそれもすごい偶然ですね。

メイナード 狙っていたわけじゃないんですよ。ただ、バンドを始めた頃に頭の片隅にちょっとだけ、「だいたい30年で、昔、人気があった番組はリメイクされるよね。そうなって、ウチらが主題歌やったりしたら面白いよね」って……ま、あり得ない話として。でも、そのあり得ない話がリアルになって、この名前にしてよかったなと。これはウチらを広く知ってもらうきっかけになったから大きいんですけど、あとはみんなが大好きなゴダイゴさんと会うこともできて、憧れの先輩と共演もできて、それが一番、バンド名のおかげだと思うんですよね。ブレイズは最初、「何それ?」って感じだったけどね(笑)。

ブレイズ ホントにこの名前のおかげだよね。全部バンド名のおかげ。


-Photo by クドウ イッテツ

──いえいえ(笑)。改めて、ここまで長く続けられた理由って何だと思いますか?

メイナード 8時間以上寝ることです。

一同 (笑)

DICK スタミナの問題?(笑)

メイナード 実際は、ファンのおかげでしょうね。99%はファンのおかげだと思います。あとの1%は何だろう? ミラクルチームができて、いろんな方に応援してもらえること。ファンがいないと、20年間続けられないよね。何がやりたいか分からない自分が、ファンに助けられることも多いので。その前に運かな。運はもともといいから。運があって、そこにファンができて、ウチらも仲良くできていて、魅力を感じるバンドになって最高級のスタッフがついて、その全部がループして。

ブレイズ 僕らもちょっとだけ働きました(笑)。

メイナード 本当に天才的なアーティストがいっぱいいる中で、何で僕たちが?って思いますから。悲しくなるぐらい、、すっごい才能のあるアーティストでも全然売れなかったり、食べていけなくてすぐにやめざるを得なくなるケースが多いんですよ。その中で20年間やってこれたというのは、「自分の才能」なんて言っちゃいけないと思います。自分の中でタブーになっていますね。それを言った瞬間、終わるというか。運、そしてファンですね。

TAX そうだね。

メイナード 自分たちのことだから分からなくなるけど、他の人たちのサクセスストーリーを見ると、すごい出会いがあるんだなと思うから、自分たちもそうなんだと思います。英語で「Right place, right time」ということわざがあります。「タイミングよくその場に居合わせる」というような意味なんですが、日本語で言うと「一期一会」という言葉が近いのかな。その積み重ねで運のいい出会いがあって、僕ら4人が大きな受け皿を用意していろんなことにチャレンジしたということがあると思います。

ブレイズ そして、周りのスタッフが僕らの作った曲をみんなに聴かせたがったから、みんなすごく仕事を頑張ってくれました。ホントにデカいチームがあるからこそ、20年続いてますね。

メイナード バンドのネバーエンディング・テーマって、作るのは難しいけど、長く見ているとだんだん見えてくるよね。「このバンドはこういうことが言いたいんだな」って。MONKEY MAJIKについて、僕が一つあると思うのは、「感謝」。大人になってからデビューしたというのもあるかもしれないけど、感謝の大事さはすごく感じます。他のバンドを見ると、ポリティカルなテーマを掲げているところもあれば、「自分を愛することが大事」という人たちもいるけど、僕たちは「お互いに愛し合うことと感謝し合うこと」をすごく大事にしてるのかなと。それが結果なのかな。

ブレイズ 僕たちは自分たちのことしか分からないから、そこに誰かがコネクトしてくれたら最高だよね。

メイナード この前も、取材の中で「バンドにとって大きな出来事」の話をしていて、東日本大震災のことは一切言ってなかったんですよ。ライターさんから「それもあったのでは」って言われたんですけど、それはもちろんそうなんですよ。でも震災はみんなが体験したことで、僕たちだけのものではないし、すごく難しい。


ベストアルバムの選曲がファン投票になった理由とは?

──今回のベストアルバムはファン投票で収録曲が決定されています。そうなったのも、ファンへの感謝という部分が大きかったんでしょうか。

ブレイズ そうですね。

メイナード あと、シンプルに「選べなかった」というのもあります。自分のセレクションを見ると、「ベスト」というのがどういうものなのか、分からなくなってきたんですよ。自分の好きなものを選べばいいのか、「誰が見てもベスト」というものを選んだ方がいいのか。僕はそこですごく悩んでいて、ファンだったらたぶんピュアに「一番好きな曲」を選んでくれるだろうと思ったんです。感覚が一番ピュアなのはファンなのかなと。だから、そうすれば一番リッチな4枚組になるかなと思いました。

ブレイズ 普通はベストアルバム=シングルスということになるじゃないですか。ファンから見たら別の世界が出てくるんじゃないかと思って。その結果を見たら、ビックリしました。そして、マネージャーさんが今までの曲全部のリストを作った時に、「見たくない」と思ったんですよ。

──えっ、どうしてですか?

ブレイズ 全ての曲が、全然色が違うから、もうこれから先アイデアが生まれてこないんじゃないかと思って(笑)。「もう全部やっちゃったかも!」ってパニックになって、「いや、見せないで」って言いました(笑)。20年で約240曲ほどあったんですよ。すごいなあと思いました。



──昨年11月に、メンバー4人が3曲ずつセレクトしたベストが「MONKEY MAJIK BEST - Special Selection Edition by Maynard, Blaise, TAX & DICK -」として配信リリースされましたが、そこで選ばれていた12曲は今回の4枚組に全部入っていますよね。

メイナード 最初、みんなの選曲がかぶることがあったんですよ。「この曲は全員が選んでしまった」とか。例えば「TAXはきっとアレを選ぶよね」と思って、あえてそれは外したりもして。僕の場合は「留学生」とか、わりとフレッシュな曲を中心に考えました。

ブレイズ みんな自分のコンセプトした曲を選んだ感じがありますよね。

メイナード 意外だったのは、DICKが「Eden」を選んだこと。「何で?」っていうんじゃなくて、「何かエピソードあったっけ?」と思って。

DICK 「好きな曲を3つ選んでみて」って言われて、やっぱり最近の曲が好きだから。

メイナード そうなんだよね。

ブレイズ 好きな曲というのでなくても、例えば「Livin' in the sun」を作ったことでその後に何曲生まれたとか、「Delicious」を作ったからあの曲とあの曲ができたとか、「空はまるで」がなかったら「Together」や「ただ、ありがとう」はなかったとか、そういうターニングポイントというのは考えましたね。僕は、その3つの曲のおかげで、後にいろんないいメロディーが生まれたというコンセプトで選びました。

TAX 僕は……何だろう? 単純に、かぶらなさそうな曲(笑)。あと、体力的にこの先もやれそうな曲(笑)。

一同 (笑)

TAX 時々思うのね。「あの曲、またライブでやりたいな」とかって思うじゃない。でも「この先の人生で、何回あの曲をステージの上でできるんだろう?」って考える時があって。最近は腰も痛めてるから。でもファンの人たちも僕たちと同じく年を重ねているから、激しめの曲というよりは穏やかな曲をしっとり聴かせる方にシフトしていくのかなあ……と思いつつも、新しいファンの人で「小さい頃、お母さんに連れてきてもらってたんですけど、高校生になって、初めて自分のバイト代でチケット買って来ました」って言ってくれる子とかもいて。そうすると、その子たちって刺激を求めて来る部分もあるわけじゃないですか。だから「あの時のあのままの状態を、ちゃんとパフォーマンスとしてやっていかなきゃいけないから、頑張らなきゃ」って(笑)。

DICK KISSのライブだって、みんな「あのころに戻りたい」と思って来るわけじゃん(笑)。

TAX 年齢層がすごく高かったけどね(笑)。

メイナード KISSのライブで初めて、自分のブラジャーを取ってステージに投げるオネエチャンを見て、「ここは特別な日本だ」と思ったよ(笑)。

TAX だからステージには、そういう意味でもみんなの夢が詰まっているし、ファンの人たちみんなの人生がそこにあるんだなあって思えて。その気持ちがぶつかってくるから、必ずしも年齢とともに穏やかな曲をというわけじゃなくて、過去に作ったエネルギッシュな曲もちゃんとプレイできるように、自分たちの体力も維持していかないといけないなあと、改めて思いましたね。

メイナード ただ好きな曲を選ぶと、申し訳なくなる時があるよね。ラジオ番組とかで「この曲が一番好き、今は」という話をすることがあるんですけど、「今はこういう感じ」というのは選べるけど、「ベストアルバムのために選んでください」となるとすごく責任を感じるんですよ。「俺が本当に今一番好きな曲を選んだら、誰も聴かないよね」みたいな(笑)。コアなファンは面白がるかもしれないけど。すごく悩むんだよ。だからファンに任せるのが一番いいんだよね。

──先ほど、ブレイズさんが「投票結果を見てビックリした」とおっしゃっていましたが、実際、結果についてはいかがですか?

ブレイズ でもけっこう票は割れてたよね。

DICK ダントツに票が多かったのは4曲ぐらいだよね。

メイナード そうだね。4曲が多くて、あとは割れる感じで。票が少なかった曲はあるラインから落とさざるを得なかったですけど、「どっちにしようか」とか悩んだりはしないで、できるだけ純粋に投票数だけで決めました。

ブレイズ このベストには「gift」とか「Believe」という新曲も入っているし、懐かしい曲もあれば近年のMONKEY MAJIKも入っているから、みんな楽しめると思います。


瑛人とのコラボ曲「Believe」、驚きの制作過程!

-Photo by クドウ イッテツ

──ちょうど話が出たところで、新曲として収録されている「Believe」についてお聞きします。瑛人さんとのコラボだそうですが……。

ブレイズ 今僕たちが大好きなアーティスト、例えば小田和正さんとか稲垣潤一さんとか、最高な声のアーティストともコラボしてきました。あとはサンドイッチマンさんとかとはすごく面白いコラボができて。今回の瑛人さんはニュー・アーティストで、そんなに多くの曲は出してないけど、彼のセンスがすごく素晴らしくて、声もすごくピュアでイノセント感がすごく出ていて、いいなと思って。彼はすごく忙しい中で引き受けてくれて、すごく楽しみにしていました。そこから仮のメロディーが出来上がったんだけど、コロナでみんな移動が難しかったから、携帯のボイスメモで曲を作り上げました。

──そうだったんですか!

ブレイズ できたメロディーをボイスメモに入れて瑛人さんに送って、彼が考えたメロディーとか歌詞の世界とかをまたボイスメモで送ってくれて。そこにまたMONKEY MAJIKの色を入れて……というやりとりを何度もして、面白かったですよ。彼のメロディーセンスや歌詞のセンス、それからスピード感がすごくて、そこもビックリしました。少しずつ面白い曲になっていって、「Believe」が出来上がりました。

──アルバム・ジャケットの「ハイブリッド下駄」が面白いですね。

メイナード みんなで履いてみたんですが、「一本下駄はやっぱり難しいね」って話しました。

──あっ、実際に履かれたんですね。

ブレイズ ウソですよ(笑)。僕らはデザイナーさんがグラフィックで作ったものを見せてもらっただけです(笑)。(注・下駄そのものは、京都の老舗で仕立てられたものとのこと)「すごくMONKEYらしくて、最高じゃん!」とみんな思って、すぐ決まったよね。ナイス・ハイブリッド!

メイナード 和洋折衷のバンドなので、下駄にNIKE Airが付いているのがぶっ飛んでる感じでよかったよね。

ブレイズ 「ENGLISH BEST」(2012年)の時は寿司プレートにナイフとフォーク、小田和正さんとの「A Christmas Song」の時は盆栽がクリスマス・ツリーになっていたり、その流れもあっていいよね。

──2020年はライブもなかなかできないという年でしたが、今年、状況がよくなったらどうしたいですか?

メイナード リベンジ・ライブをやりまくりたいね。

ブレイズ そうだね。それと、ソング・ライティングも。今回はベストアルバムですけど、オリジナル・アルバムは1年前の「northview」以来なので、どんなメロディーと歌詞が生まれてくるか、僕ら自身も楽しみです。

──20周年の記念ライブも中止だったので、ファンもリベンジ・ライブを楽しみにされていると思います。では最後に、改めてこのベストアルバムのおすすめポイントをいただけますか?

TAX 本当だったらこのアルバムを引っさげて、皆さんと20年の歴史を振り返りたいなと思っていたんですけども、ライブはしっかりと状況が好転してから開催したいと僕らも思っていますし、中途半端な状態で開催して皆さんを不安にさせたくもないですし、こうやって自分たちのペースを保ってこられたというのが、僕らが20年間やってこられた理由でもあると思うので、まずはしっかり僕らの20年をアルバムで楽しんでいただいて、その先には状況を見て、大きいお祭りをやりたいなと思っています。

ブレイズ 昨年の20周年は絶対に忘れられないよね。今までMONKEY MAJIKが作った曲を、家でリラックスしながら聴いて、もっと好きになってくれたらいいな。

メイナード 音楽とかどんなアートでも、その時代のレビューになるものが多いじゃないですか。「あの頃はこういうのが流行ってたんだよね」と思い出させる力があるというか。20年間のベストというだけでなく、その歴史を5年ごとに時代別のディスクにまとめた形になっているので、そうやって楽しむのも面白いんじゃないかな。「20年前にこんな音楽をやってたということは、MONKEY MAJIKはこういうことを楽しんでいたのかな」とか。ファンの方も自分の中の20年を思い出したりできるアルバムにもなっているかなと思います。純粋に音楽だけでも楽しめると思うんですけど、なかなか70曲を続けて聴くことはないだろうと思うしね(笑)。自分たちも恥ずかしながら、最初の5年間の曲も出しているので。恥ずかしながらというのは、今みたいなチームも予算もなかった中で、という意味でね。そういう4枚組セットにもなっているので、SNSなどで「あの曲が発売された頃、自分はこうだった」みたいなことも聞かせてください。

ブレイズ あと一ついいかな? 僕たちが今まで作った曲を、タイムレスな気持ちで聴いてほしいですね。

DICK ベストアルバム自体ではないんですけど、DVD、Blu-ray付きバージョンの方では、本来なら昨年のアニバーサリー・ライブの模様をお届けしたかったんですよ。でも、それを上回る面白コンテンツを、仙台で「成人式芋煮会」というテーマで20年の歴史を振り返るトークを収録しましたので、それをぜひ見ていただきたいと思います。面白いの、できたよね?



TAX うん。だから、DVD、Blu-ray付きバージョンの方がオススメだよね。

メイナード 全部NGになりそうな、ギリギリのところだったということを理解してほしいね(笑)。

DICK 危なかったね!っていう(笑)。

TAX 時代も時代なので、もう隠す時代じゃないですから。全部を知ってもらった方がいいかなということで、思い切りました!

──その内容も楽しみですね。ありがとうございました!



BEST ALBUM
『20th Anniversary BEST 花鳥風月』


2021.01.21 on sale

MONKEY MAJIK × 瑛人『Believe』配信スタート


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高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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