結成20周年という節目の年を迎え、『northview』と題されたニューアルバムを発表するMONKEY MAJIK。MaynardさんとBlaiseさん(ともにVo&Gt)の故郷であるカナダで初めて制作されたアルバムは、どのような環境で完成に至ったのか? また20年という長い年月、バンドを続けてこられた理由とは? MaynardさんとTAXさん(Dr、日本語の作詞も担当)のお二人に語っていただきました。
今までとは違うクリエイティビティを刺激されたカナダ制作
──今回のニューアルバム『northview』は満を持してカナダでの制作ということですが、単純な話、日本でアルバムを作るのとは全然違うものですか?
TAX そうですね、違いましたね。まず、移動距離が長いとか(笑)。僕らが住んでいた家とレコーディング・スタジオがだいたい120~130kmぐらい離れてて。
──120kmって、東京からだと富士山も越えてしまいますね!(笑)
TAX だから作業効率化のために、スタジオのある場所で何日間か泊まったりとか、「Maynardがスタジオで作業してる間、僕は家に戻って歌詞を仕上げとくよ」って3日ぐらいでやって、またスタジオに戻って歌入れしたりという感じでやってました。そうやって、お互いが分担して効率的に進めるという意味では、国内ではなかなかないですからね。ダイナミックな距離感でもあったし、しっかりやることを決めないと終わらない状態でもあったから、新たな発見というか、よかった部分がたくさんありましたね。
──ちなみにTAXさんは、カナダに長く滞在されたことは……。
TAX MaynardとBlaiseの実家に泊まったりしたことはありましたけど、今回の3週間というのは今まででも一番長かったですね。彼らの実家は東側のオタワの方だったんですけど、今回は西側寄りのカルガリーというところで、ロッキー山脈のふもとだったんです。季節は冬で、極寒の地ということで。カナダって、そういうイメージがあるじゃないですか。「広大で、寒い」みたいな。
──確かに。
TAX そのイメージを身をもって体験できた、すごくいい機会でしたね。寒かったけど、その分景色もギュッと引き締まってたし、湖の上を歩いたりもして。そんな経験、なかなかできないですもんね。童心に返りました(笑)。
──いいですね(笑)。アルバム・ジャケットはまさにその中の一場面ということですか?
TAX これは、住んでいたところからまた車で1時間半ぐらい行ったドラムヘラーという街で撮ったものです。ここは太古から手つかずのような場所で、恐竜の骨とかがあちこちから出てくるようなところなんですよ。ものすごく巨大な恐竜の博物館があって、そこにもみんなで行きました。すごいところでしたよ。「ドラゴンボール」で悟空とベジータが戦っていた場所みたいに、風で削られた岩がたくさんあったりして。その時は雪景色になっていて、岩肌が出ていなかったのが残念だったんですが。でも見渡す限り地平線で、その下には無数の恐竜の骨が眠っているという話は聞いてて。そこをみんなで「寒い寒い」って言いながら歩いて、ドローンを飛ばしてました(笑)。その時の1枚です。
──レコーディングの中でのエピソードは何かありますか?
Maynard 僕たちが借りたスタジオが、すごくいいところだったんですよ。ビンテージの機材があったり、ドラムの種類もすごくたくさんあって。
TAX オーナーさんがビートルズ・マニアで。僕も写真でしか見たことなかったような、「これはどういう音がするんだろう?」というようなバスドラムなんかが倉庫いっぱいに並んでて。スネアドラムなんかも廊下いっぱいにバーッと並んでて、「好きなの使って!」って感じなんですよ。
Maynard 向こうのスタジオって広いから、すごかったよね。
TAX それも童心に返る感じでした(笑)。「曲のイメージと合うからこれを使おう」って叩いたものもありますし。それに、ロッキー山脈のふもとでメンバーたちとひたすら話をして、幼い頃の話とか、この季節の寒空の中でどういう経験をしたかというのを聞いたりして、そういう中から作品にしてみたりもしました。
──Maynardさんにとっては、母国での制作になったわけですよね。それはまた違うものがありましたか?
Maynard ありましたね。曲作りとかミキシングとか、クリエイティブな作業をする上で、どこにいるかというのは非常に重要じゃないですか。そういう意味では、日頃仙台ではすごく快適な場所でやってたんですけど、日本の慣れた環境とは違うから、不慣れなところもあるんですよね。いい意味でのフレッシュさと、いつものルーティンと違うことでまた違う刺激があった面はありましたね。人間って、場所が変わるとクリエイティビティも変わってくるのは面白いなあと思いましたね。
TAX 違う環境でやると、「ハマればいいけど、ハマらなかったらどうしよう?」みたいなのってあるよね。
Maynard 音作りもね、いつもの環境だったら「ここにマイクを置けばこういう音になって……」っていうのがだいたい分かってるけど、環境が変わると「大丈夫かな?」と思うし、ドラムセットなんかも部屋の響きが違ってきますからね。そういう緊張感も大事だし、何か楽しくなるよね。
「view」シリーズ完結。アルバムのコンセプトは「ルーツ」
──今回のアルバムって、2005年の「eastview」から始まる「~view」シリーズの4作目で、これで東西南北が揃ったわけですよね。それが結成20周年の今年に、ご兄弟の母国であるカナダで制作ということでキレイにハマった感がありますが、このビジョンは15年前からすでにあったんでしょうか?
Maynard なかったですね。
TAX ないですね。
──あ、そうなんですね!
Maynard 次の「westview」(2011年)から決めていった感じですね。海外で制作しようという話になった時に、Blaiseが「『eastview』があったから、『westview』にすれば面白いんじゃない?」って言い出して。僕は「そしたら『northview』と『southview』も作らなきゃいけないじゃん!」って思ったんだけどね(笑)。そんなに長くやるの?って。だから最初は、決まった形はなかったですね。
TAX 「westview」の時はギリシャでレコーディングして、ロンドンのメトロポリス・スタジオっていう有名なところでマスタリングをしたんですよ。そこでどういう風にやってるかを見たいっていうのと、みんなで実際にそこの空気を感じたいっていうのが大きくて。
──では、「15年越しの壮大なコンセプトがここに完結し、東西南北が揃った!」ということとはちょっと違うと(笑)。
TAX まあ一つの区切りではあるのかなと思うんですけど、それで終わりっていうものなのか、スター・ウォーズみたいに「エピソード1」なのか(笑)……それは分からないですけど。ただ後付けでも自分たちでそのプロジェクトを面白くしていきたいっていう気持ちがないと、創作意欲にもつながってこないし。ある程度カテゴライズというか、住み分けをしっかり自分の中でできてた方が、物事は何事も進みやすいんじゃないかなとは思います。でも難しいんですよね。若い頃は何でも欲しかったけど、年を取ると断捨離というか、必要のないものは手元に置いてなくてもいいか、みたいになってくるじゃないですか。
──分かります。
TAX 積み重ねていくと、どんどんシンプルになっていくというか、長く活動させていただいているからこそ見えてくる部分なのかなというか。どんなところでも音楽は作れるだろうし、特に今の時代は、どんなところでも表現はできるんでしょうけど、それをいかにして無駄を省きながら、より多くの人に伝えられるかということが、大事になってくるんだなあ……なんて思うし。でも、常に何かに興味を持ち続けていないと、創作ってなかなかできないですし(笑)。
──常にインプットは必要ですからね。
TAX だから……「次の20年はどうやっていきますか」っていう時に、「常に時代を見定めて、追いかけながら進もう」っていう、若い頃の考え方よりも、僕としては地球と向かい合うというか、無駄を省いていった自分の生活の中から生まれるものを大事にしていきたいというか……。MONKEY MAJIKは昔から自然体って言われますけど、だんだん“真実”が見えてきてるなあと思うんですよね。この20年間の作品を通じて、そういうものが見えてきたなあとは感じます。
──そう感じる中で作られたアルバムということですね。そして、アルバムとしてのコンセプトは「ルーツ」ということなんですが。
Maynard そんなにヘビーに掲げたというわけでもなくて、カナダで録るし、20周年だし……というところですね。だから制作中も昔から好きだったアーティストの作品を聴き直したり、何かしらインスピレーションを受けようとはしてました。5~6歳の頃から日本に来るまでの間に好きだったアーティストは全部振り返ろうと思って、いろいろ聴いたんですが、なぜかフィル・コリンズはいっぱい聴いてましたね。小学生の頃、彼はスーパースターでしたから。
カナダって、ポップスが人気ではあるんですけど、一流のポップスターってテクノロジー的にリスキーなことにもチャレンジするじゃないですか。今もそうですよね。ジャスティン・ビーバーみたいにアイドル的な人気がある人が、実は一番進んでたりして。そういうものを聴くのはすごく楽しかったですね。あとは90年代のグランジ時代に好きだったバンドを聴き直したり、80年代終盤のニュージャックスウィング系の、ベル・ビブ・デヴォーとかニュー・エディション、ボビー・ブラウンなんかもけっこう聴いてました。今、ブルーノ・マーズなんかもその頃のブラック・ミュージックをリメイクしたりしているのが面白いなあと思っていて、聴いてたら何かインスピレーションが得られるんじゃないかと思ってたんですけど、気づいたらBlaiseが先にサックスを復活させていて、「先にやればよかった……」って(笑)。
TAX ハハハ!
Maynard まあ80’sが多かったですね。スタジオに泊まって、ハイボールを飲みながら1曲ずつ聴いたりしてたんですよ。マジメにね。
TAX それはマジメなのか?(笑)
Maynard マジメですよ! 僕は普段、ドライブしながら音楽を聴いたりしないんですよ。それよりは大きなスピーカーのある部屋で、「今から聴く時間!」って決めて聴く方がいいので。「おお、このキックはいいなあ……」とかつぶやいたりしながらね。
TAX それはマジメだね。
Maynard だから今回は、久々にそういうことをやって、楽しかったですね。
TAX 僕は……普段音楽は聴いてますけど、自分の作品を作ることは全く別なので、特に影響を受けたというのはないんですよね。メロディを聴いてどういう画が浮かんでくるかとか、どういう景色が見えるかというのをまず大事にしていて、そのために車に乗って、MaynardやBlaiseが作ってくる曲のデモを繰り返し繰り返し聴くんですよ。それで何が出てくるかとか、車に乗ってて見えた景色を歌詞にしちゃってもいいかなあ、とか。それをあぶり出すという作業をカナダでもやったんですけど、日本にいた時からある程度準備はして行ったので、毎日毎日それをやってましたね。ある程度、「こういうイメージはどうかなあ?」っていう話はしますけどね。「じゃあそれで仕上げてみるね」ってなったら、また車に乗ってという感じで。
──では、「ルーツ」ということの音楽的な面では、ご兄弟のルーツの方がより濃く反映されているということなんですね。
TAX カナダの音楽博物館に行ったり、さっきも言った恐竜の博物館とかに行ったりしたことも、少しずつ反映はされてます。ロッキー山脈のふもとが僕らの生活する場所で、そこから1時間半ぐらいかけて、見渡す限り山の壁みたいなところを通り抜けた先に広大な平野が広がっていて、その先にあるのが音入れするスタジオっていう。全てがあまりにも壮大すぎて、「日本じゃの味わえないな」っていう毎日なんですよ。巨大な鹿が路上に飛び込んできたり、ホントに映画みたいな経験をしながら、その一方で体の中に抱え込んでる「人間の孤独」みたいな小さいものを詞に書くっていう、これもまた乙だね(笑)なんて思いながらやってましたね。
「Golden Road」は自分たちが戻るべき場所を確認するための一曲
──では、このアルバムの中から特にポイントになる曲について、解説をお願いできますか?
Maynard ポイントと言ったら、まずは「Golden Road」だね。
TAX 人生は、日常の小さいことの積み重ねがいかに大切か。そして日々、それを実直にマジメに積み重ねていくんだけど、思い通りにいかないことの方が多いじゃないですか。それで投げ出したい気持ちがあっても投げ出さず、目標に向かって繰り返すことっていうのが、今の自分たちが置かれている状況だったりもするし、でも時々は見失ってた時ももちろんあって、そういう時に心境的に戻れるような、そんな歌を作りたいなと思ったんですね。それで作ったのが「Golden Road」なんです。こうやって長く続けていくっていうのは1日1日の積み重ねなんだけど、人間は一人じゃ生きていけないし、感謝しながら謙虚な気持ちで日々を重ねていくことが大事だっていう。それは当たり前なんだけど、忘れがちじゃないですか。そういう自分たちの戻る場所を、この20周年という節目でしっかりと歌にして、自分たちが忘れそうな時にこの曲を聴いて「ああ、いけないいけない」と。この気持ちを忘れちゃいけないと思って作った曲です。
──歌詞の中で「笑われたって、遠回りしたって」「正直に、ただ馬鹿正直に」「清く正しく美しく」とありますが、これはMONKEY MAJIKの20年がそうだったということでしょうか?
TAX ある種そうでもあるし、でも人間ですから、その軸から左右にそれてしまうこともあるんだけど、ちゃんとそこに戻れるというか。自分への戒めというか、そうありたいし、そうあるべきという、言い聞かせというところですね。今だからこそ、いろんな人に感謝しつつ、いろんな経験があって生かされていると僕たちは思っているので、そんな中でこういう曲ってすごく大事なんじゃないかなあと思うんですよね。忘れやすいので、形にしておかないと(笑)。
Maynard ゴールデン・ロッド(Golden Rod)っていう植物があって、もともとはそれをイメージして作った曲でもあるんですよ。秋になると真っ黄色な花が咲くんですけど、それがバーッと咲いた道を歩いていくと、「Golden Road」でもあるなあと思って。
TAX だから歌詞に「魔法の杖」も出てくるんですよ。タイトルは最後まで迷ったんですが、この花が僕たちの住んでるエリアにバーッと咲くんですよ。Maynardの言うように、これ自体がGolden Roadだよね、って。でも雑草みたいなものなので、踏みながら歩いていくと、そこがまた道になって、真っ黄色に光ってて。そういう光景を思い浮かべながら、積み重ねていくっていうことが、この曲にとって大事なポイントなんだなあと思って、「じゃあGolden Roadにしよう」って。
Maynard オリンピックも近いしね(笑)。作った時は全く意識してなかったけど、「これ、オリンピックにもつながるね」って言われて、ああそうかと(笑)。
──MVもいいムードの映像に仕上がっていましたね。
TAX 肩肘張ってなくていいですよね。自然な映像で、カナダのいいところが出てるんじゃないですかね。
Maynard それからアルバム最後の「Walk Alone」は、カナダで作ったということ自体が一つのチャレンジで、目の前にあるものを歌詞にしたものですね。非常にシンプルなアレンジで、あの景色に合うし、今の気持ちに合うなあと。
TAX これが先ほど話した、ロッキー山脈を前に自分の中にある孤独を対比させたもので、どこまでも孤独な歌です。(笑)
Maynard それから「Tunnel Vision」は、TAXが曲を聴いた時に「ドライブしてるようなイメージだね」って言って、そこから半日ぐらいで歌詞ができて。
TAX そうだね。楽しみながら作れた曲だよね。
Maynard 何かにハマり過ぎて、自分の視界がトンネルの中にいるみたいにそれしか見えなくなってしまっている、というイメージですね。ハッキリしたメッセージというわけではないけど、言葉遊びも入れた楽しい曲ですね。ボーカルのスラップ・ディレイは、めっちゃフィル・コリンズ感を意識してます(笑)。
──1曲目の「Please Don’t Stop The Music」はどうでしょう?
TAX この曲の最初に入っている元気な声は、現地のエンジニアさんとかコーディネーターさん、僕らの日本でのツアーで舞台監督をしてくださっている方などの声なんです。その舞台監督の方はカナダ人で、僕らがカナダでレコーディングするって言ったら「じゃあちょっと遊びに行くよ」って来てくれて、「せっかくだから声を入れていってよ」ということで、みんなで録音したんです。その場にいる人たちみんなでお祭り感を出して、ある種、アルバムのいいスタートを切れましたね。
──「Welcome to Canada!」という声が、まさに幕開けという感じですね。
TAX これも現地のエンジニアさんの声ですね。
Maynard 日本人の方にはあまり分からないと思うんですけど、すごく訛ってるんですよ。カルガリー、ウェスタン・カナダっぽい訛りが出ていて、大げさでいいんじゃないかなと思います。カントリーミュージックでいう「イーハァ!」みたいなね(笑)。
──このアルバムの曲を中心としたライブやツアーというのはあるんでしょうか?
Maynard 7月に結成20周年記念ライブがあるんですが、その前にファンクラブ・ツアーを予定しているので、そこで披露できたらと思ってます。20周年は全部の作品からベスト選曲みたいな感じになると思うので、このアルバムの曲もどこかではやりたいよね。
20年、コンスタントな活動を続けてこられた理由は……
──その20周年なんですが、バンドの平均寿命から考えても長いと思います。それだけの期間、続けてこれた理由は、今振り返ると何だと思いますか?
TAX うーん……(Maynardに)何ですか?
Maynard 何だろうね……やる気があるから?
TAX ハハハハ!
Maynard でも結局、ファンのおかげですよね。ファンの人たちがアルバムやライブを楽しみにしてくれているおかげで、僕たちも一生懸命、いい曲を出し続けたいなという気持ちでやっているから、ここまでやってこれたのかなと。あとはあまり考えすぎないように。いろいろ考える時期もあるんですけど、基本的にはケセラセラ的な生き方で来たから、かな。バンドで20年って、なかなか難しいと思うんですけどね。
──メンバーそれぞれの思いもあるし、周りの状況なんかもありますしね。
Maynard あとはだいたい、メインボーカルがソロプロジェクトをやり始めてね(笑)。
TAX ハハハ!
──加えてMONKEY MAJIKが特徴的なのは、これだけ長く活動しているのに、アルバムのリリースがかなりコンスタントですよね。
TAX そうですね。約束を守るバンドなんじゃないですか(笑)。
Maynard あと、僕とBlaiseそれぞれが軸になって作曲をするので、2人でメロディーを作っていると、1人ずつの負担は半分ぐらいじゃないですか。だから倍速的な?
TAX 倍速(笑)。
Maynard まあ、曲を作るのが楽しくて好きだっていうのが一番かな。ヒットする、しないは置いておいて、自分が本当にいいと思えるものしか出さないし、自分でリスペクトできるものだから出してるわけで。確かにすごいペースだよね。
TAX そうだよ。(資料に掲載されているディスコグラフィーを見て)こんなに出してるんだから。
Maynard ちょっと疲れてるかもしれない(笑)。
TAX 疲れても、その疲れを抜く方法を教わってきたんですよ。この取材の前にFMの番組に出演して、LiLiCoさんから「朝起きたら『チャンス!』って思う」っていうのを教わって(笑)。生きてることが当たり前と思っちゃいけないという、ありがたいお言葉をいただきました(笑)。
──その方法で、これからもやっていけそうだと(笑)。20年という期間にはいろんなことが変化していて、その上、変化のスピード自体も速くなっていると思います。その中で、MONKEY MAJIKも変わったと思いますか?
Maynard 変わったと思いますけどね。でも変わらないところもいっぱいあるし。何が変わったと思う?
TAX 何だろうね?
Maynard 小っちゃいことを気にしなくなってるかな。それはどんな仕事でもそうじゃないですか。同じキャリアの中でも、1年目と20年目ではだいぶ違いますよね。もともとそんなに気にする方でもなかったけど、特に今は周りにもいいチーム、スーパーチームがいてくれて、任せられることもいっぱい増えてきたし。最初はインディーズだったから、いろんな細かいことも自分たちでやらなきゃいけなかったし、WEBページも自分たちでデザインしたりしてましたからね。20年前だから、今みたいにすぐ作れるツールもなくて、HTML(WEBページを作るために必要な言語)を覚えるところから始めて。
──ネットの通信速度もすごく遅かった頃ですよね。
Maynard そうですね。画像を表示するにも少しずつしか読み込まなかったから、大変だったよね。
TAX でも何でも、新しいことにチャレンジすることって大事だなあと思う部分と、ただ単純にそれを追いかけているだけじゃダメだと思う部分もあって。「何のためにそれをするのか」ということが大事ですよね。さっき言った「無駄省き」の考え方につながってくるんですけど、生活の中で生まれる音楽の大切さに気づき始めたんですよね。いろんなタイアップとかもさせていただいて、全く自分の思考にはなかったような情報も入ってくるじゃないですか。関わらせてもらう作品を、僕らの作品にどう反映させていくかということを考えないといけないので。
──タイアップが決まることで初めて接する作品もあるでしょうしね。
TAX それがなければ考える必要もなかったことだろうし、自分たちのエゴみたいなものが作品になっていくだけだったと思うんですけど、タイアップとかいろんな仕事を通じて、いろんな人のことを考えるようになったんですよね。それが作品になって演奏した時に、たくさんの人が涙を流したり、飛んで跳ねて喜んでるのを見たりとかすると、特にうれしいですよね。もともと僕は、飛んで跳ねて喜んでるのを見たくてバンドに入ったんですけど……ちっちゃなライブハウスでみんな汗だくでギュウギュウになって、プレイしている僕らも汗だくで、終わった後にみんなでお酒を飲んでっていうのが楽しくて。そんな風にやってたんだけど、いつの間にか、みんなの感情にもっと深く入っていってること、「この人の生活の一部になってるんだ」ってことに気づいた時に、音楽でもっと人の生活が潤うというか、それを支えられるのであれば、そういう作品を作り続けたいなと思うようになって。今回もそういう思いで作ってますけど、やっぱり長くやらせてもらえるっていうのは、ファンの皆さんの気持ちに応えていきたいっていう部分と、いい意味で裏切っていきたいという思いを大切にしてやってきたからだと思うんです。
──ファンの方たちにもそれが伝わっているから、支え合ってこられたんでしょうね。
TAX そしてその根本にあるのは、「地球を感じながら生きたい」ということなんです。世の中にとって本当に必要なものって何なんだろうと考えながら、作品作りに入りたいというか。……まあ、そんな仰々しいことではなく、ちょっとしたことなんですけど。そういうことも考えながらいけたらいいなあって思います。
20周年ライブの気になる中身とは?
──そうやって活動してこられた20年ですが、ではこれから先は?
Maynard 次の「view」シリーズは何にしようかな。それが今までは5年に1回のモチベーションだったので、25周年はどうなるんだろうね。
TAX そうだね。
Maynard それであっという間に時間が過ぎていくし、でもまあいつも何らかのゴールがあるから、とりあえずゴールまで行こうねっていう気持ちでやってましたよね。だから今も、次のゴールを作らないと。
TAX 何か一つプロジェクトを始めたら、2年、3年先のことを考えながらやっていかなきゃいけないじゃないですか。
Maynard 僕らもそうだし、関わっているスタッフもみんなね。今は正直、20周年関連のこと以外は、あまり考えてないかもね。
TAX そうかもね。
Maynard その後のことか……今、初めて考えたよ(笑)。……解散?
──いえいえ(笑)。
TAX でも最近は、ファンミーティングとかバスツアーとかもやって、ファンの方とすごく近い距離でお話しできる機会があって。そこで皆さんがどう思ってるんだろうということを聞かせてもらったりしてるんですね。これってすごく特別なことのように感じるけど、MONKEY MAJIKは初期の頃にも同じようなコミュニケーションをとっていたんですよね。
Maynard そうだったね。
TAX だから、ようやく20年かけて元に戻ってきたなっていうか(笑)。みんなが求めているものをその距離感でグッと吸収して、また一気に放出するっていう、そのやり方はずっと続けていきたいなって思ってるんですけどね。
──それはいい関係ですね。
TAX 最初の最初はそうだったのに、間の数年間はそういうこともなかなかできないままバタバタと駆け抜けてしまっていたんですよね。ようやく自分たちのペースで、しっかりと地に足をつけて、ファンの皆さんの声をしっかり聞ける機会を設けられるタイミングに入ってきたから、またこれからだなって気がしますね。
──その中から、「view」シリーズのようなコンセプトも生まれてくるかもしれないですしね。
TAX そうですねえ。長期的な計画もしっかり立てつつ、短期的な結果も残していければ。皆さんに楽しんでもらえる仕掛けもしていきたいですし……まずは目の前に達成しないといけないもの、20周年ライブという大きなものがあるので、それをしっかり成功させるための準備をやって、そして次のステップだよね。
Maynard そうだね。
──20周年ライブまではまだしばらくあるので、中身についてはこれからですか?
TAX ですね。ただ、今の時点で一つお話しできることは、今までいろんなアーティストとたくさん作品を作ったりしてきたので、そういうお友達と、楽しいお祭りができればいいなあということですかね。
──そう聞くと、ファンの皆さんの中では「あの人か!」というのが浮かんでいるでしょうね。
TAX そうですね。何組かはパッと浮かぶと思いますが、それが実現できるように頑張っていきたいと思います。
Maynard 僕らも楽しみだしね。
──ではニューアルバムを聴き込みつつ、その妄想も膨らませながら待てばいいということですね(笑)。ありがとうございました!
NEW ALBUM『northview』
2020.02.26 ON SALE
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ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。