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【三浦大知】Nao’ymtさんと小島秀夫さん、この2人が交わったら、すごいものができるだろうと、いちファンとして思って

三浦大知
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【三浦大知】Nao’ymtさんと小島秀夫さん、この2人が交わったら、すごいものができるだろうと、いちファンとして思って

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ニューシングル「Horizon Dreamer / Polytope」をリリースした三浦大知さん。今作はPlayStation 5用ゲーム 『DEATH STRANDING 2 : ON THE BEACH』挿入歌として書き下ろされた作品になります。ゲームへの楽曲提供について、また各曲の制作についてなど、いろいろと伺いました。

奇跡的なタイミングでつながっていった「Horizon Dreamer」

──ゲームへの楽曲提供は、どのような経緯で決まったのでしょうか。

三浦 もともと、僕が小島(秀夫)さんの大ファンだったんです。幼少期に『メタルギア』シリーズから小島さんの作品に触れていて。とあるタイミングで対談企画があって「今お話ししてみたい人いますか?」というお話しをいただいたので「小島さん、対談を受けてくれるかな」みたいな。当時小島さんは、ちょうど独立された時期だったんです。コジプロ(Kojima Productions)を新しく立ち上げて、『DEATH STRANDING』を作っていたタイミングで。今思うと大変なときにオファーを出してしまったなと。

──なるほど。

三浦 ダメ元で聞いてみたら受けていただけて。モノづくりというかクリエイターとしてシンパシーを感じるところもあったり、誕生日が一緒だったんですよ。それで『DEATH STRANDING』のときに、「三浦さん、もしよかったらフェイスキャプチャーして、ゲームの世界に出ませんか?」と言っていただいて。最初は恐れ多くて断って家で泣こうかなと思ったんですけど。でも、こんな機会ないだろうって、出させていただきました。そのときから「次はより深く一緒に出来たらいいですね」と言ってくださって今回に繋がりました。

──『DEATH STRANDING』、『DEATH STRANDING 2』とは、三浦さんにとってどのようなゲームになりますか。

三浦 小島さんも言われてましたけど、ゲームっていわゆる武器となる“棒”のゲームが多い。攻撃、対戦だったり、どうしても自分が主人公で、対する敵対勢力がいたりすると、闘いになってくる。ある種の警鐘じゃないですけど。今は、SNSとかも含めて分断され始めている世の中だからこそ、緩い繋がりを持った“縄”のゲームを作ろうっていう。小島さんは『メタルギア』もそうでしたが、新しいものを常に生み出しているんですね。やっぱり『DEATH STRANDING』も『メタルギア』も、この世に無いものだったとゲームファンとして受け取ってます。

──最新曲「Horizon Dreamer」も、めちゃくちゃカッコいい曲に仕上がりましたよね。

三浦 ありがとうございます。Nao’ymtさんには、毎回本当にお世話になってます。

──どんな話からこういう楽曲の形になっていったんですか。

三浦 基本的に、別のクリエイターの方と一緒にやるときは、本当に0→1。「最近こういう音楽を聴いていて」とか「こういうのを作りたいと思ってて。こういうテンポ感で、こういうサウンドで、スネアがここに入ってて、ここに展開があってっていうのをやりたいんですよね」っていって0から一緒に作っていくパターンもあれば、Nao’ymtさんの場合は、僕はNao’ymtさんの世界に入りたいんです。

──ああ、Nao’ymtさんの世界観を表現するということですね。

三浦 Nao’ymtさんが生み出した世界を、いかに自分が表現するというか。どちらかというと、表現者として、Nao’ymtさんの世界を表現したい。自分が媒介になりたいと思っています。なので、Nao’ymtさんに対して「今回こういう曲をやりたいんですよね」みたいなことを言わないのが、マイルールとしてあります。

──徹底してますね。

三浦 なので、今回も「こういう曲を作りたいです」みたいな話は一切していなくて。ただ今回は、繋がるべくして繋がったと思うんですけど。そもそも小島さんと「音楽でも何か一緒にできたらいいですね」みたいな話をしていたときに、小島さんが「今、『DEATH STRANDING 2』を作っている」と。「今回は船が出てくるんです。その船に主人公のサムが乗って、旅=配達をしていくんです」みたいな話をして、「そうなんですね。楽しみです」って話していたら、同時期に、Nao’ymtさんから「デモを作ってみたんだけど、聴いてみてくれませんか?」と、曲が届いて。それに1文あって、Nao’ymtさんが書かれていた文章が「この楽曲のイメージとしては、とある男が海の上に浮かんでいて、そこに一艘の船がやってきて、その船に男が乗り込んで新天地を目指していく。そういう楽曲です」とあったんです。

──それは鳥肌が立ちますね。異なるクリエイターが三浦さんを媒介にシンクロしていた瞬間だ。

三浦 なんだこれは、と思って。Nao’ymtさんと小島さんは会ったことすらないのに、完全にシンクロしていて。この2人が交わったら、すごいものができるだろうと、2人のいちファンとして思って。いつかこの2人が繋がる架け橋に、自分がなれたらいいなと思っていたんです。なので、「3人で、やらないですか?」と、話をさせてもらいました。

──奇跡的なタイミングだったのですね。

三浦 そのときのデモが「Horizon Dreamer」の原型になっています。

──ダンスミュージックとして、壮大かつカッコいい作品になりました。

三浦 そうですね。『DEATH STRANDING』という世界観も、身ひとつで荷物を担いで、人と人を繋げていくっていうゲームですし、三浦大知としても歌って踊ってという原始的な、身体的な部分があるので。ブルーグラス調を取り入れた土着感のある、土埃を感じるサウンド。大地を一歩一歩踏みしめながら、まだ見たことない新天地を目指して歩いていくというプリミティブな感じが、「Horizon Dreamer」とリンクすると感じました。

──ボーカルがグルーヴを加速させていくというか。ダンスミュージックとしてのフィジカル感やプリミティブさが、見事に表現されてます。

三浦 Nao’ymtさんは、三浦大知のことを理解してくださっているので。毎回、サウンドは丸投げなんですけど。「Nao’ymtさんが作りたいやつを好きなように作っていただけたら」という感じで。でも、Nao’ymtさんは「この時代に三浦大知が歌うなら、こういうものだろう」みたいな作品を全力で投げてくださるので、本当にありがたいなと思います。

──繋がる感じが歌詞にも表れていました。フックとなるサビパートでコーラスが厚く重なっていくところもパワーをもらえますよね。

三浦 当初から、繋がっている感じがあったんです。孤独を感じながらも祝祭感があって、この世界をたったひとりで生きているんだけど、同じように感じている人が、きっとどこかにいるという希望が、同時に見えるというか。そんなバランス感覚と言葉選びと楽曲、サウンド、メロディーなど含めてNao’ymtさんにしか生み出せない1曲だなと思います。

──『東京ゲームショウ2024』での発表のとき、ゲームキャラクターと一緒にパフォーマンスされたのも、すごいことですよね。

三浦 そうですね。今回初めてモーションキャプチャーを全身でやらせていただいて、ダンサーもいて。すごく不思議な感じです。ゲームなので自分とドールマンが踊ってるところを下から観たいなと思えば、スティックを倒せば下から見えるし、後ろから観たいと思ったら後ろから観れるし。ゲームじゃないとありえない形で実装してくださっているので。すごい経験をさせていただきました。

──新しいポップカルチャーの形として、ゲームは世界中に人気が広がっていますよね。『DEATH STRANDING 2 : ON THE BEACH』、そして「Horizon Dreamer / Polytope」には常に新しいものを生み出そうという気概を感じられます。

三浦 それはたぶん、Nao’ymtさんも聴いたことのない新しい音楽を常に模索されている方だし、小島さんも「この世にあるものを作ったらダメでしょ」というか。誰も見たことのないものを妥協なく作り続けているクリエイターなんです。

──刺激を受けますね。

三浦 お二人ともとんでもないクリエイターなので、たくさんの影響を受けています。

──歌詞で好きなところは。

三浦 Nao’ymtさんの言葉はどれも好きなのですが、2番のBのところに、Nao’ymtさんらしさとわかりやすさがあって。〈右手で庇を作るふりして / 視界をふさいだ〉という部分はすごくNao’ymtさんらしいし、人間っぽい表現で好きです。そのあとの〈なぜみんな / ないものねだり / あるもの腐らせてしまう〉という言い回しも含めて。それって、すごくあるあるというか。みんな、ないものねだりしちゃうし。そんな世の中で、どんなときも歌って踊っているというか。一歩一歩歩みを止めないというか。新天地に向かって、歩き続けている。孤独であり、でも誰かを感じられる希望もあって。そんな感じが、端々にみてとれる感じはすごく好きですね。

CDには5月のライブ映像が特典収録! 「パフォーマンスまででこのコラボが完成」

──両A面、もう1曲の「Polytope」は「Horizon Dreamer」から派生した曲になるのでしょうか。

三浦 基本的には、この2つは同時進行で生まれたものなんです。デモでいうと「Horizon Dreamer」のほうが早かったんですけど、ほぼ同時期にできた楽曲。もともと小島さんとNao’ymtさんと僕と3人で話をさせていただいて、その当時の『DEATH STRANDING 2』の開発状況だったりとか、「今こういうムービー作ってます」みたいなものをちょこっとだけ先に見せていただいて。

──ファン冥利に尽きるクリエイティブですね。

三浦 そうなんです。まず小島さんが言ってくださったのは「今回は三浦大知が三浦大知として『DEATH STRANDING』の世界に存在しているので、『DEATH STRANDING』に対して曲を書くというよりかは、三浦大知の新曲として成立している楽曲にしてほしいです」というのを1番に言われたんです。それで生まれたのが「Horizon Dreamer」なんですよ。もちろん、「Horizon Dreamer」は、「DEATH STRANDING」とリンクしているところもたくさんあるんですけど、どちらかというとポップスとしての強度が、かなり高い状態を保ったまま昇華されている楽曲だと思っていて。

──たしかに。

三浦 ただ、そのときにいろいろ話を聞いて、僕の感覚としては「たぶんNao’ymtさんは、3人での会話からいろんな景色が見えたんだろうな」という感覚があって。「もし他にも見えたことがあったり感じたことが音になりそうであれば、僕はいちファンとして聴きたい気持ちがあるから、遠慮なく楽曲を作っていただけたら」みたいな話をしたら、「Horizon Dreamer」が出来たちょっと後くらいに「こんなのもできました」って。これは、「小島さんから見せていただいたいろんなものを深く取り入れて生まれた楽曲で」と、それが「Polytope」だったんです。

──スペーシーかつプログレ感のある曲でカッコいいですよね。

三浦 そうですね。Nao’ymtさんの楽曲は、デモを聴いた段階で言葉にできない感動があるんですよ。「また、とんでもないものを作っているな、この人は」っていう。その感動を1番に味わえるのは特権だなと思っています。

──細胞レベルの躍動を感じられる、ひとつのジャンルに定義できない曲ですよね。

三浦 そう思います。小島さんもNao’ymtさんも僕もそこを目指したいと思っています。枠組みとかジャンルみたいなものでは言い表せない新しいものを生み出し続けているからこそ、今回もこういう楽曲が生まれたんだろうな思ってます。

──「Polytope」を聴いてどのようなイメージが広がっていきましたか。

三浦 Nao’ymtさんの楽曲は、できるだけ解釈しないようにしようと思っているんです。レコーディングで歌ってみて「こうかな、どうかな」って。そこに自分の「きっとこうなんだろう」みたいな意図を歌うのではなく、ただ届いた音に対して不純物なく自分がフィルターとなって、アウトプットできる表現とはどんなものなんだろうって。宇宙のように大きい得体のしれない何かに包まれて浮遊している感覚はありましたけど。「こういうシチュエーションなんだろうな」みたいな細かい解釈はせずに、この音の世界に自分を投げ入れて、そこから出てきたみたいなものを表現したいと思っています。

──なるほど。では歌入れで大変だったところとかはありますか。

三浦 全部ですね(笑)。Nao’ymtさんの楽曲は全部大変。そもそもNao’ymtさんも、シンガーなので、デモで届いた段階のクオリティが、とんでもないんですよ。「これ、このままリリースしたら買います」みたいな。その仕上がったもの、寸分の狂いもなく作り上げられたものに対して、自分がどう入っていけるんだろうというか。蛇足にならずに、どうこの作品に自分が溶けこんでいくのか、みたいな感じなので全部が難しいですね。毎回、難しいなって思いながら。答えがないと思いながら、「こうなのかな」って飛び込む感じです。

──そして、CDには特典としてライブ映像が入ると。

三浦 そうなんです。5月にやったライブを映像化しました。普通はミュージックビデオが付くんだと思うんですけど、自分が当初思っていたよりもゲームとの結びつきがドンドン強くなってきて、ゲームのなかでも「こんな風に流れるんだな」とか「こういう感じなのか」となったときに、「Horizon Dreamer」や「Polytope」は、ビジュアルとして紐づいているのはゲームのなかの世界であるべきだなと思いまして。

──ああ、たしかにね。

三浦 ミュージックビデオではなく、三浦大知を200%表現してるものってやっぱりライブだよなって。ここにライブ映像が入ることで、『DEATH STRANDING 2』という小島さんが作られたゲーム、Nao’ymtさんが生み出してくださった「Horizon Dreamer」と「Polytope」という楽曲。それをステージで表現する、演出して振り付けしてパフォーマンスしてる三浦大知っていう。それが、今回のコラボレーションの完成形になるんじゃないかなと思ったんです。

撮影 長谷英史

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ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

ライター

ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)

Yahoo!ニュース、Spotify、FMヨコハマ、ROCKIN’ON JAPAN、ミュージック・マガジン、リアルサウンドなどで書いたり喋ったりプレイリスターしてます。『キラキラポップ:ジャパン』など担当。著書『ソーシャルネットワーク革命がみるみるわかる本』〈ダイヤモンド社〉