昨年エイベックス内新レーベル 『+WHAX』に移籍をし、新たなスタートを切った6人組ダンス&ボーカルグループ・WATWING。そんな彼らが、移籍後第一弾EPとなる『uNi』を3月26日にリリースする。昨年12月25日に配信リリースした「365」を始め、最新曲の「memories」、映画『他人は地獄だ』の主題歌「HELL FIRE」などのシングル曲と新曲2曲を含めた全5曲が収録されている同作は、グループの魅力やアイデンティティを高め、飛躍を込めた作品とのこと。6人は同作にどう向き合って制作を進めたのだろうか。グループの現状なども含め、本人たちにたっぷり語ってもらった。
「わざとありのままにする」のではなく、「本当のありのまま」を意識
──移籍後初のEP『uNi』のリリース、おめでとうございます。今までリリースしてきた作品と比べて変化もあるのではないでしょうか。
八村倫太郎(以下、八村) 個人的には変わっていないことの方が多い気がしていて。特にサウンド面でそう感じています。+WHAXレーベルに移籍しましたが、今までの僕らの曲の良さを感じ取ってくださっているからこそだと思うのですが、良いところをそのまま出すことができたな、と。なので『uNi』を聞いて「いつもと違うぞ」と思うファンの方はあまりいないんじゃないかなと思っています。
──なるほど。個人的に今までのWATWINGの曲は、「DANCE NOW」などブラックミュージックの要素を感じる曲が多いなと思っていて。例えば『uNi』収録曲の「365」はWATWINGらしさがありつつも、爽やかさを感じたりもしました。
八村 あぁ、なるほど! そういう部分はあるのかもしれません。『uNi』を制作するにあたってチームで会議をした時に、「WATWINGの良さはチーム感や仲間感だから、今までのWATWINGのグルーヴを残したままポップスに昇華してみようか」という話も挙がったんです。
──そうだったのですね。それがWATWINGのまた新しい一面につながっていたりも?
髙橋颯(以下、髙橋) 「365」ではより等身大の自分たちを届けたいと思ったんですね。「練習中に雑談している時の楽しい様子や仲の良さを閉じ込めて、蓋を開けたらそのままのWATWINGが飛び出てくる」というような楽曲に仕上がったので、そういう意味では今までに見せていない僕らが見えていると思います。なので、レコーディングの時も張り上げたり、太い声で歌ったりするのではなく、こうやって会話しているノリやくつろいでリラックスしている感じで声をリズムに乗せました。すごく楽に歌ったのですが、それがメンバーと一緒にいる時と似ているなと感じましたね。
古幡亮(以下、古幡) 僕もそうですね。しかも、「わざとありのままにする」のではなく、「本当にありのまま」。その感覚でレコーディングやパフォーマンスに臨めています。ただ、「365」のサウンドに関しては僕も今までの楽曲と違いを感じていて。もちろん今までのテイストは残っているのですが、一段と洗練された感じがするんですよね。今まではいい意味でフレッシュさやガムシャラ感、ワチャワチャ走っているイメージがありましたが、「365」は整ったサウンド。+WHAXレーベルの皆さんが新たな風を吹かせてくれたんだと思います。なので、既存のWATWINGと新たなWATWINGがバランスよくミックスされたなと感じました。
──そして、「365」は「社会の価値観に惑わされず、本当の自分を見つけることの大切さを込めた」とのこと。みなさんはどんな時に「本当の自分を見つけた」と感じますか?
鈴木曉(以下、鈴木) 僕はまだ本当の自分が見つかっていません。それを見つけるのが人生だと思っていて。でも、追い求めていくのが大事だとも思うので、常に見つけようと模索しています。
福澤希空(以下、福澤) 僕はライブをしていると楽しいと感じることが多いので、ライブ中に「自分が出ているな」って思いますね。
桑山隆太(以下、桑山) 本当の自分かぁ……。やっぱりオフの時ですね。
一同 それはそう(笑)!
桑山 (笑)。僕は自分の個性がわからなくて、自分探しみたいなことをしていた時期があったんです。メンバーやスタッフさんの客観的な意見を聞いて、自分の主観と照らし合わせたりもしていました。
──そんな時期があったのですね。
桑山 そうなんです。しかも、結構自分の主観と重なる部分が多くて。その時に思ったのが、WATWINGを通すことで自分の好きなもの──例えばファッションブランドのDIESEL、を再確認できたというか。自分の主張や芯をを強く感じることができました。
──となると、もはやWATIWINGにいる時も本当の自分なのかもしれませんね。では2曲目の「Echoes」についても質問させてください。「Echoes」はロックナンバーですが、皆さんはどんなシーンに合う曲だと思いますか?
八村 この曲って、『uNi』の中で一番日常に馴染みやすい楽曲だと思っていて。シーンを問わない魅力があると思うんですね。ただ、デモを仕事の帰りに車で聴いた時はめっちゃ良いと思いました。なので、ドライブに合うのかなって。速度感がいいんですかね。
古幡 わかる。
八村 よくメンバーと話すのですが、とはいえ「Echoes」はどんな時に聴いても寄り添ってくれる楽曲なんです。世の中にはすごくいい楽曲なのに聴くのに勇気がいる曲、再生するまでが重い曲があるんですよ。多分、楽曲が持っているパワーみたいなものだと思うのですが、楽曲のパワーや真剣さがあればあるほど、リスナーも姿勢を整えなきゃいけない。一方で今「イージーリスニング」という言葉があるように「とりあえず聴こう」で聴ける曲もあって。「Echoes」はそういった意味でも聴きやすい楽曲なのかなと思います。
──たしかに通勤・通学のような、日常の中でテンションを上げたい時に聴きたくなる曲ですよね。
八村 そうなんです。自然と口角が上がるんですよね。サウンド感もそうだし、最初の希空の突き抜けるような歌から始まっているのもそうだし、自然と気持ちを上げてくれる良さがあるんですよね。
鈴木 それでいうと、僕は高校3年生の夏の大会前、自転車をこいでいる時に聴きたい! 青春感がありません? 1年生、2年生で頑張って培ってきたものを3年生の夏で出し切るというイメージにも合うのかなと思います。
説得力を増すために「遅取り」を意識した「memories」
──「過去の記憶や言葉が未来へと繋がっていく」という楽曲のテーマとも重なりますよね。そのテーマにかけての質問です。WATWINGの皆さんは新しいスタートを切りましたが、これまでの歩みの中で今のWATWINGにつながっていると思う出来事を1つ挙げるとしたら?
鈴木 繋がっている、かぁ。倫太郎の顔を見ているとですね、だんだん眉毛が繋がっていく気がしていて。
八村 バカか(笑)! 葛飾区、じゃないのよ!
鈴木 あ、亀有前じゃないか。
八村 そっちの繋がるじゃないから!
福澤 僕がちゃんとした答えを言いますね(笑)。デビュー当初は声変わり中だったからなのか、声が出なかったんですよ。高い声が出なくて歌う時に苦しくて、苦しくて。そんな時に曉くんが「俺もそういう時期があったし、絶対出るようになるから大丈夫だよ」と励ましてくれたり、ボイトレの先生が「高音の貴公子になるから大丈夫」と言ってくれたり。今では高い声が出るようになったので、あの時の励ましが今に繋がっているなと思います。
鈴木 それは希空の努力あってこそだよ。じゃあ僕もちゃんとした答えを。WATWINGって自分たちで練習することが多くて、意見も言い合うんです。熱い意見だからこそ、時にはぶつかることもあるのですが、そうやってぶつかってきたからこそ今の絆ができているんだろうなと感じています。
──めちゃくちゃいい環境と絆ですね! そして3曲目の「memories」は、ファンキーなトラックが印象的です。これまでのWATWINGの楽曲にも繋がりそうだと思ったのですが、新しいチャレンジを盛り込んだりはしていますか?
八村 新しいというよりも、改めて意識したという言い方が正しいのですが、練習をしていく中で思ったことがありまして。ダンスの“基本の基”ではあるのですが、やっていくうちに抜けてしまうのが「遅取り」なんです。今回振付師の方に遅取りをリクエストされました。特にサビは「そっちに行くんだ!」という動きがあって、遅取りだとより楽曲が入ってくるし、〈季節ヒラヒラ巡り〉というフレーズも視覚的に入ってくるんですよね。なので、今回は遅取りをかなり意識してパフォーマンスをしています。
──そんな裏話があったのですね。
八村 好みではあるのですが、遅取りの方がハマって見えるんですよ。オンで取ってもいいし、あえて早取りする方もいるのですが、シチュエーションによっては早取りだと慌てて見えるし、音を感じて動きに繋がっているという説得力、「そこに行くんだ」という視覚的な楽しみがないように見えるんです。「memories」はそうならないように、遅取りを意識することで楽曲の説得力に繋がっていると思います。
古幡 遅取りをすることで、グルーヴが伝わりやすくなるんですよね。
鈴木 歌も同じですね。
桑山 「memories」はグルーヴ感がありつつも滑らかなのが特徴でもあって。ダンスにもそれは表れていて、しなやかさがとても大事なんです。これまでのWATWINGは力強さや男臭さを出すことが多かったですが、「memories」ではしなやかさを意識したダンスをしています。それは新しい感覚かもしれません。
──今後のパフォーマンスにも注目ですね。そして4曲目「STEPPIN’」もかなりグルーヴィーで魅惑的なサウンドですが、こういうタイプの楽曲が似合うメンバーはどなたでしょうか?
鈴木 声質的にちょっと低めの倫太郎が似合うなと思いました!
八村 自覚ありです。言ってくれてありがとう(笑)。君が言わなきゃ自分では言えなかった!
鈴木 あはは(笑)!
八村 この曲大好きなんですよ。僕、R&Bが特に好きなので、フロウの感じもすごくタイプでした。自分が大好きなシンガーたちっぽい歌い回しがそのまま出来たので、レコーディングでは「ウェーイ!」とテンションが上がっていました(笑)。
鈴木 あと、亮も他の曲と比べて歌い方を変えてきているイメージがあって。特に僕が好きだったのは、途中で声をひっくり返す技を入れていたところですね。
古幡 気づいてくれてありがとう。この曲はグルーヴやニュアンスにこだわりました。サビを担当させてもらったのですが、メロディーが同じフレーズが続くので全部少し変えてみたりしていて。
鈴木 頭の部分は強めに歌ってるもんね。
古幡 そうそう。ベターッとファンキーな感じで歌う時もあれば、セクシーさもある曲なのでブレッシーに歌う時もあって。自分の中でストーリーを考えて歌っています。
八村 僕、颯も良いと思いますね。ブリッジのラスト、大サビ入る前に階段フェイクのような歌い方をしている部分があるのですが、そこは颯が輝く場所だなと思いました。僕、「STEPPIN’」は僕だけ後からレコーディングだったのですが、颯のフェイクを感じたからこそ〈音に飲まれて〉がいい感じに歌えたと思っています。
髙橋 あのフェイクは、スタッフさんに無理を言って録り直させてもらったんです。朝録ったのですが、夜にもう1回いいですかってお願いして。
鈴木 だからか! もっと早く帰ろうと思っていたのに20時くらいになったもん!
髙橋 ごめん(笑)!
古幡 僕、隆太の歌い出しもいいなと思いますよ。隆太は高いところを担当しがちですけど、ロウも倍音が強くて存在感があるんです。今まで隆太のロウを活かす機会があまりなかったから、今回キャッチーなポイントで目立っていて素敵だなと思います。
──さすが、ドンドン出てくる!
鈴木 俺の〈迷う事さえも〉は?
古幡 ……。
鈴木 嘘だろ(笑)!?
古幡 嘘、嘘(笑)。そこもめっちゃ好き。あと、〈新しい色で〉でめちゃめちゃフェイクを入れているのもいいよね。
福澤 僕もそこ好き。「STEPPIN’」で一番衝撃でした。
鈴木 これ、希空に言われるのすごい嬉しいんですよ! 普段あまり言わないタイプなので。
古幡 あと、希空の〈その足で〉の「し」の発音も好き。
鈴木 細かい! でも改めて聞いてみよ。
──皆さんやっぱりこの手の楽曲がお得意なんですね。
八村 好きですね。合いの手も入れやすいし、実際入っているし。ライブでやっても盛り上がれるし、音楽を楽しめるんですよ。その良さが「STEPPIN’」にはふんだんに入っていると思います。
「365」のコレオで一番大切なのは、「きっと仲いいんだろうな」という雰囲気を伝えること
──ライブで聴けるのが楽しみです。そして最後の「HELL FIRE」は、映画『他人は地獄だ』の主題歌です。八村さんが作詞作曲されていますが、こういった作品の世界観に寄り添った歌詞を書く時はどのように進めることが多いのでしょうか。
八村 ケースバイケースですが、今回に関しては『他人は地獄だ』の撮影がすべて終わって、役を演じきってから制作に取り掛かりました。作品の世界観にどっぷり使った状態で作れたので、楽しくもあり、「これは俺じゃなきゃ書けないだろ」という自信もありました。とはいえ、映画を見ないとわからない曲にはしたくなくて。映画を見なくても聴き応えがある、映画を見たらさらによく聞こえる、という二段階にしたかったんですよね。そこにすごくこだわりました。
──作曲に関しては古幡さん、鈴木さん、髙橋さんも参加されていますが、どういう流れで進めたのですか?
八村 僕のイメージを細かく共有したところ、「いいね」と言ってくれて。そこから知り合いのKosuke(Crane)くんにも共有したら、彼も「いいね」と言ってくれてトラックを何個か作ってくれたんです。そこからみんなでスタジオに入って、マイクリレーをしながらメロディーを乗せて作っていきました。
──もともと皆さんそういう風に制作を進めていたのですか?
髙橋 あまりみんなで曲を作ることはなかったのですが、曲に対して全員で意見を出し合うことはありましたね。
鈴木 あとはユニットで自分たちの曲を作ってきたので、今回も楽しく制作できました。
八村 もっともっと歴史を遡ると、僕の家に集まって1つのトラックにみんなで歌を乗せて曲を作るってことはあったもんね。
鈴木 あったねー。TikTokをバズらせたかったんです(笑)。
──それも今回生きているんですね。福澤さん、桑山さんは出来上がりを聞いていかがでしたか?
桑山 痺れましたね~。サビの部分は曉のパートから高いのに、颯でさらに上がっちゃうんだって。それにロックサウンドは僕の好みでもあるので、世界観に入りやすかったです。ダンスも爆発させるような気持ちでできますし、歌も自分の得意とする音域なので、パフォーマンスをしていてすごく気持ちがいいです。
福澤 僕も衝撃的でしたね。僕はサビの最後の〈自分へのFake〉を歌っているのですが、「1サビ、2サビは裏声で弱めに歌って、ラスサビは地声で強く言おう」と倫太郎くんがディレクションをしてくれました。あとは、歌詞を見て「倫太郎くん、どれだけストレスを溜めてんだよ」と思いました(笑)。
八村 あはは(笑)! いや、もちろん役をやったからこその歌詞ですよ? でも誰しも「くそっ!」って思うことはあるじゃないですか。だけど、その感情を表現できる人とできない人がいるわけです。怒りの感情に蓋をしてしまう人でも、「この曲を聴いているときくらいは表現してもいいんじゃない?」という面白いテーマにしてみました。
──新しい!
八村 WATWINGは等身大で、「みんなを応援したい」というスタンスなんですね。なので、優しく寄り添って背中を押す楽曲が多くて。怒りにフォーカスした楽曲は今までなかったので、作ってみたかったんですよね。
──改めて「HELL FIRE」も要チェックですね。ちなみにWATWINGといえばダンスを大切にしているイメージがありますが、収録曲5曲のうちダンスに苦戦した曲とWATWINGのダンスの良さが出ている曲を教えてほしいです。
八村 難しいと思ったのは「365」ですね。振りがユニゾンで、ダンスに振り切れなくて。個人的な事情になるのですが、ダンスを抜くことは上手い人にしか許されていないという持論があるんです。僕はあまり自分のダンスへの評価が高くなくて。「365」はマイクを持って踊るのですが、ダンスで魅せきれず、かといってかます系のダンスでもなく。仲間感を意識したダンスなので上手く見せるのがすごく難しいです。(古幡と福澤に向かって)でも、ナイスコレオ!
古幡 難しくしたもんね? 仲良し感も意識しました。
福澤 うん。等身大な雰囲気を出すことを意識しています。
古幡 リリックを振りとして切り取っている部分はありますが、全体のノリは音楽ベースで考えました。なのでサビはシンプルが故に難しいのかもしれません。
八村 ダンスの上手さを見せるためのダンスってアプローチが簡単なんです。今まで積み重ねてきたものもありますし、僕らは得意でもあって。でも「365」のコレオで一番大切なのは、「この人たちのこの雰囲気、きっと仲良いんだろうな」、「このクルー感でやっているのって最高だな」を伝えること。なので、極論ダンスが上手くなくてもいいんです。でも上手くないと変な邪魔が入ってしまう。そこが難しいんですよね。
──なるほど。良さが出ている曲に関してはどうですか?
鈴木 「memories」かなぁ。これはMacotoくんに振り付けてもらったのですが、今回完成までがスピーディーだったイメージがあって。僕はメンバーの中で一番ダンスが苦手ですが、「memories」は早かったんですよね。
古幡 たしかに。体に入りやすかったです。それは僕らのダンススタイルにハマったからなんだろうなと思います。
八村 馴染があったね。WATWINGらしさが出ているので、ぜひパフォーマンスもあわせてチェックしてみてください!
撮影 長谷英史
uNi
WATWING
+WHAXレーベル移籍第一弾EP。 2/19配信の最新曲「memories」や12/25に配信リリースされた「SoftBank ウインターカップ2024 令和6年度 第77回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の公式テーマソング「365」、映画「他人は地獄だ」主題歌「HELL FIRE」など話題のシングル曲や、未発表新曲「Echoes」、「STEPPINʼ」の全5曲を収録。
詳細を見る+WHAXレーベル移籍第一弾EP。 2/19配信の最新曲「memories」や12/25に配信リリースされた「SoftBank ウインターカップ2024 令和6年度 第77回全国高等学校バスケットボール選手権大会」の公式テーマソング「365」、映画「他人は地獄だ」主題歌「HELL FIRE」など話題のシングル曲や、未発表新曲「Echoes」、「STEPPINʼ」の全5曲を収録。
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高橋梓
フリーランスライター。広告業界・エンタメ業界での勤務を経た後、エンタメ系サイトや雑誌にて企画・取材・執筆をしています。Twitter:@azumaMIC