初のソロアルバム『STYLE』をリリースしたKAZさん。GENERATIONSでの「数原龍友」とはまた違い、個人として表現したいもの、やりたいことを前面に押し出し、周りの仲間たちの力も借りながら仕上げた作品になっています。そんなKAZさんに、アルバム収録曲についてや制作時のエピソード、これからへの思いなどについて、タップリと伺いました!
『STYLE』は1年ぐらいかけて、のんびりと作っていったアルバム。
──ソロ活動を始められてから、年月も経ってきたと思いますが、グループとはまた全然違うと思います。どういうところに一番違いを感じますか?
KAZ グループ活動をやっていく上では、自分の思いや考えだけではもの作りとか表現ができない部分ですね。それはネガティブな意味ではなくて、GENERATIONSという形が何なのかっていうのを常にみんなで模索しているからこそぶち当たる、それはパフォーマー、ボーカル問わず、みんなが感じている部分だと思っています。今の世の中にどういうものが必要なのかとか、どういったパフォーマンスをGENERATIONSとして視覚的に楽しんでもらうように仕掛けていくのか。そうなってくると選ぶ楽曲はどういうものがいいのか、いろんな作戦をより緻密に考えて、戦略的にエンターテイメントを作り上げていく感覚があると思うんですけど、1人だとそれがあまり必要ないというか。自分が感じたもの、見たものを、そこから「これを表現したいな」、「こういうことを残しておきたいな」と思ったものを全部できるというのは、グループとの大きな違いかなと思うんですけど……大前提として、それはやっぱりグループがあってこそ初めてできることだなということは、ずっと忘れちゃいけないことなので、自分の中で何となくルールを決めてソロ活動をしています。GENERATIONSというグループがあるからこそ、ソロのプロジェクトも成立しているという、そのバランスはあるのかなと思いますね。
──どちらがいいということはないですよね。
KAZ はい、どっちもいいなと。いろんなことができる場所はたくさんある方がいいなと思います。
──今回の『STYLE』というアルバムは、既存曲はDisc2に7曲入っていて、アルバムとしては新曲9曲で構成されていますよね。勝手な考えなんですが、7曲あったら既存曲を盛り込んで作ることもできたのではと思ってしまいまして。その中で新曲9曲で勝負するというのは、気合いが入ってるなと思ったんですが……。
KAZ 「アルバムを作りましょう」って言って曲を作り始めたというよりは、今、GENERATIONSのライブでもすごくお世話になっているギタリストのSho Kamijoさんとの本当に何気ないやり取りから始まったんですよ。Shoさんは、一緒にストリートライブをやらせてもらったり、それこそBillboard Liveでのステージも一緒に立っていただいたり、曲作りとかも一緒にしたりするんですけど、「こういう曲やりたいんですよね」とか「こんな曲を書きたいんですよね」とか、自分がいいなと思った曲・アーティストを、お互い交換してる中で、Shoさんがいろんなデモを上げてきてくれるんですね。「じゃあこれ、今度ちょっと歌詞書いてみます」とか、「この世界観で、僕と相性がよさそうな人って、いたりしますか?」みたいな、そういう本当に細かいやりとりをしながら、気づいたらけっこう曲ができていきました。「もうアルバムには新曲をいっぱい入れて、Disc2を今までの既存の曲にしましょうか」となった感じだったので、そんなにメチャクチャ焦って制作期間や納期のことを気にしたり、力んで気合いを入れて作ったというよりは、ずっとやりたいことをのんびりやっていて、気づいたらこうなったという感じなんです。
──そうなんですね。
KAZ はい。全部、自分でメロディーを書いたものもあるんですけど、作家の方にお願いしたものも、自分と繋がりがある方とか、自分を知ってくれている人たちに、自分の抱いている葛藤とかを赤裸々にお話したりして、出来上がった一枚です。
──では実質8曲、ざっくりどれぐらいの期間でできたものなんですか?
KAZ どれぐらいかなあ? だいたい1年ぐらいのんびりやっていて……最初、本当は「夏にリリースしようか」みたいな話があったんですよ。グループとしても「上半期は個人の時間にしましょう」となっていたので、そこで制作して、夏にリリースみたいなことを大枠のプランとして考えていたんですね。でも、この12~13年活動してきて、まとまった時間をもらったこともなかったので、今後、より充実したアーティスト生活を送っていくためにも、ゆくゆくは海外でも楽しく音楽ができたらなと思うので、まずは英語を勉強しようと思って、留学に行くことにしたんです。それでアルバムをこの冬にずらしたという感じで、制作期間もそれだけたっぷり取れました。アメリカにいたのは3ヵ月という短い期間でしたけど、「Pacific Love Memories」と「No Matter What」は、ロサンゼルスとヒューストンでレコーディングしてきて、結果、行ってよかったなと思いましたね。だから制作期間というと1年ぐらい、のんびりやれましたよ。
──冬を目がけた感じのアルバムではないなと何となく思ったんですが、そういうことだったんですね。
KAZ そうですね。イントロで波の音とか使ってるんですけど、今はライフスタイルの中で、海がある生活というのは、もう絶対に切り離せないもの、欠かせないものなんですよね。だから「Second Wave」というタイトルが入ってきたり、イントロ部分で波の音が聞こえる。ある意味、それが自分のスタイルなのかなと思いますね。だから別に、冬だからウィンターソングをというわけではなくて、焦らず作っていった結果というか(笑)。「それをひっくるめて自分のスタイルなんですよね」っていう1枚なんです。
──『STYLE』というアルバムタイトルはそこから?
KAZ まさに。あとはやっぱり、今は「スタイル」というものが、すごく大事なことなんじゃないかなと。ちょっとでも目立つものって、悪目立ちしてしまうような世の中の風潮がありますよね。でも、だからといって真面目に、敷かれたレールの上だけを走っていくような人生は、それはそれで退屈なんじゃないかなという価値観で生きています。もちろん人に迷惑をかけないようにですけど、自分の「スタイル」っていうものを出していかないといけないと思ってます。これだけ今は情報社会で、飽きも早いじゃないですか。流れるような情報が毎日入れ替わりますし。でも音楽だけは絶対そうであってほしくないなという自分の願いがあるんですよ。それはグループで活動している時も、自分が作り出す音楽とか、放っていく言葉は絶対に「流されたくないな」、「残していきたいな」と思っています。「スタイル」や「個性」がないと今は本当に、気づいてもらえないというか、流れてしまう。そんな時代だと思うので、「これが自分のスタイルです」という集大成でもあり、名刺代わりのような思いを込めたタイトルになっています。
──では収録曲について、1曲ずつ伺っていければと思います。1曲目は先ほども出た「Second Wave」。すごく明るく、勢いよくスタートする楽曲ですが。
KAZ これはデモをShoさんが上げてくれた時に、自分はアルバムの中でも1曲目に向いているというか、オープニング感がある曲だなと思いました。そのため、長くデモとして温めておいたんです。せっかく自分のソロ初アルバムということなので、リリックとトップラインは和田昌哉さんにお願いをしました。和田さんはGENERATIONSの楽曲でも本当にたくさんお世話になった方で、すごく自分たちのことを知ってくれた上で、ニュアンスを掴んでくださるので、ぜひ和田さんにお願いしたいです」ということでお願いをしました。実は、この曲、最初は「Restart」という仮のタイトルがあったんですよ。でも、自分としてはそんなに「リスタート」ということでもないのかなと思ったりもして、「違うタイトルがいいです」という話をしたら、この「Second Wave」というタイトルを提案していただきました。曲の中でも、自分で歌いながら「これはきっと、自分のことを書いてくれてるんだろうな」と思える部分があって、サーフィンをしてて、「いい波が来た!」と思ってガツガツいったら人に乗られて、「あちゃー」って落ち込んでいたら、次に来たセカンドウェーブの方が実はいい波だった、みたいな。そういう時に「人生もそういうことってあるよな」っていうのをすごく感じたりした経験があったので、最初「Second Wave」というタイトルが上がってきた時は「おお!」ってなりました。自分の価値観がメチャクチャ要約された、そんな1曲ですね。
──オープニングで、1回短く途切れてから始まりますよね。あそこがすごくいいなと思いました。
KAZ ちょっと意表を突くというか。最近はイントロが短かったりとか、いろんな巧みな技で聴かせてくるミュージシャンの方とか作家の人もいると思いますけど、こういうゴスペルの匂いもするような楽曲というのは、今の日本のミュージシャンでアプローチしようという人は少ないんじゃないかなと思ってて。そこでShoさんと和田さんのタッグは、かなり自分にとって心強いペアだなと思いましたね。そういう、海外のゴスペルのルーツがあるお2人なので、今後もまた機会があったら、ぜひお願いしたいですね。
英詞への挑戦に込められた思いと、そこから生まれた行動とは?
──2曲目からはわりとスローでメロウな雰囲気になりますよね。
KAZ メロウな感じですよね。2曲目の「Hush hush」は、R&Bが大好きなので、そういう自分のルーツに近い音楽も入れたいなと思い、styさんにお願いしました。styさんって、世間的にはEDMとか、エッジの効いたサウンドが得意だと思われてると思うんですけど、自分はstyさんの作るR&Bの大ファンで、絶対いつかR&Bをstyさんに作ってほしいなと思ってたんです。「2000年台初頭の頃の、ちょっと懐かしさのあるR&Bの感じ、できないですかね?」とお願いしたところ、快く受けてくださって。自分の中にあった心変わりとか、自分が今、抱いている葛藤、心境の変化みたいなところを赤裸々にお話して、書いていただいた楽曲です。
──KAZさんが作詞にクレジットされていない曲も、そうやって作家さんとお話しされて、それがベースになっているわけですね。
KAZ そうですね。だから、丸投げで「このトラックにこれをお願いします」というものはないです。
──全部がそうやって出来上がった曲ということだと、それだけ楽曲への思い入れも強くなりそうですね。
KAZ もちろんです。自分の見せたくないところとか知ってほしい思いとかを、こんな風に汲み取って、こうやって表現してくれたんだなという嬉しさもありますし、「こんなにオシャレな言い方もあるんだ!」と勉強にも当然なります。ただ作るのが上手とか、流行っている人に「お願いします!」って頼むのも一つだと思いますけど、それは自分のスタイルじゃないなというか。ちゃんとディスカッションして、「今こんな感じなんですよね」とか、時にはあんまり言いたくないようなことを話すということも大事だなと思いました。そうすることによって自分の息がかかって、自分の表現にできるんだなっていうのは、今回のこのアルバムを作っていく中で感じたことですね。
──なるほど。そして次の3曲目、「Pacific Love Memories」は、作詞に共作としてKAZさんのお名前も入っていますね。
KAZ これはShoさんがトラックを作ってくれて、それにトップラインとリリックを自分が乗せました。この曲は、自分がやっているYouTubeチャンネル(ひとまずマイクおいてみた。by数原龍友)のBGMとしてずっと使っていて、その時からもう決めてたんですよ。「ゆくゆくはこれに歌詞を付けて、メロディーをつけて曲にしたいので、ちょっとトラックを作ってください」という形でお願いしていて。ずっとYouTubeでも流しながら、それにトップラインと、まずは日本語で歌詞をつけて5割ぐらいの状態にしておいたままアメリカに持っていったんですね。向こうにCandaceっていうゴスペルシンガーの女性がいるんですけど、レコーディング前日に、その方に一緒にスタジオ入りしてもらって、ディレクションと練習をして。次の日もスタジオに来てもらって、一緒にレコーディングをして、本人にコーラスパートとかも録ってもらいました。日本から見た「パシフィック・オーシャン(太平洋)」。と、ロサンゼルスとかサンディエゴの街から見た「パシフィック・オーシャン」って、「同じ海なのにこんなにも景色が違うんだな」とか、いろんなことを感じた上で、どちらからも見た景色を思い描きながら、日本で歌詞を書いて、アメリカで録ってくるという。そんなストーリーを自分の中で準備して実現できた、本当に自分にとっても、パシフィック・オーシャンの思い出がたくさん詰まった1曲です。
──では、9曲目に入っている日本語バージョンの歌詞の方が、先にできていたということですか。
KAZ そうですね。「Pacific Love Memories」が配信されて世の中に出た時に、日本語バージョンを聴きたいという声が多くて。日本語で書いた歌詞もすごくいい世界観で仕上がったなという手応えはあったので、だったらちょっとアレンジを変えてボーナストラックとして、Japanese Versionも入れることになりました。
──今回、この曲と「No Matter What」の2曲は全編英詞になっていますが、英詞を歌う時に意識したのはどんなことでしたか?
KAZ 意識するところだらけでしたね。もちろん発音からスタートして、「これはネイティブの発音じゃないから、ここを変えよう」みたいなことも実際に発生して、現地でメロディーとか譜割りを変えましょうということも本当にたくさんありました。やっぱり、日本でのレコーディングとは全く違いましたね。ゴスペルシンガーの方とかにもお願いしていたんですけど、時間に限りがあったので、日本でレコーディングする時みたいにたっぷり時間を使うことはできなかったです。今仕上がったものを聴いても、「もっとこうできたな」ってすでに思えるぐらい、いろんな思いが蘇ってきますね。
母国語じゃないから当然、難しさはあるんですけど、ゆくゆくは自分の好きなアメリカの町でも、日本でやってるみたいに楽器を持って、気楽に音楽をやっていくっていう、そんな人生が送れたらいいなと思ってます。だから、少しずつの勉強や経験という意味も込めて、英語詞の楽曲は今後もトライしていこうかなという、そんな意思表示であります。
──この時点では、留学の成果への手応えはどれぐらいあったんですか?
KAZ いやもう、ここに英語の楽曲を入れますという決断をした時点で、だいぶ変わったかなと思いますね。やっぱり、英語を話したりとかっていうのは難しいなあとか抵抗があったんです。でも、そんなことを言ってたら自分の夢とか未来のことなんて形にならないなと思って、ここで少しずつでも挑戦していこうと思えている時点で、留学に行って正解だったなと思います。
──これからもっと増えていきそうですね。
KAZ はい、楽曲もそうですし、行けるタイミングがあったら日本から出て、いろんな景色を見ていろんな感性を磨いていかなきゃなと思いますね。
──4曲目の「Go Your Way」は、ギターでちょっとメロウに始まったなと思ったら、そこにラップが乗ってきて。
KAZ これもYouTubeチャンネルの方で、「Pacific Love Memories」を1年使ったら、次はこのトラックにしましょうということで作ってもらったものですね。これも自分がメロディーを書いて曲を書きますという約束のもと、Shoさんに作っていただいたトラックで、日本を出る前には7~8割完成させていきました。歌詞の中身としては、旅に出るとか、何かに挑戦しようという人の最後のひと押しができるような曲になればいいなと思っていました。あとは「細かいことを気にせず、もうやっちゃえばいいじゃん!」っていう。それは自分に向けたメッセージでもありましたし、アメリカで実際に、日本で録ったこの曲の仮歌を聴いて、自分自身が励まされる部分もありました。帰ってきて、「やっぱり行って間違いじゃなかったな」と思いながら本RECに挑んだ記憶があります。だから悩んでいる人とか、挑戦しようにも年齢が……とか、ネガティブに思ってる人がいたら、この曲を聴いてもらって、「そんなことないよ」っていうメッセージが伝われば嬉しいですね。
“まさかの”カバー? 「ハリケーン」を選んだ理由とは?
──5曲目が「F.L.L.~4y~」。これは「First Love Letterの略なんですよね。サビが歌い上げる感じの曲ですが。
KAZ これは、確か4~5年前かな? GENERATIONSの楽曲をたくさん集めていた中にあった1曲だったんですよ。デモではもうちょっとロック調だったんですけど、すごく素敵な曲だなと思ったので、「あの曲、歌詞入れていいですか」っていうのでずーっと置いてあった曲なんです。今回、アルバムに収録するとなった時に、ちょっとリアレンジして、リリックももう一回ちょっと詰めてみますねということで仕上げたら、やっぱりいい曲だなって。これだけちょっと、熱く歌い上げるというか。楽曲を並べてみた時にそういうタイプのものがなかったので、ぜひ入れましょうとなりました。
──この曲だけ歌い上げ感があるので、印象に残りますよね。
KAZ いわゆるJ-ROCKというか、バンドっぽさが、一番出ているのかなと思いましたね。やっぱり自分の好きなものとしては、アメリカンなものとか、R&B、ゴスペルが好きななんですけど、その中でこれだけ分かりやすいメロディーと、分かりやすいバンドサウンド、ロックサウンド感みたいなものは、一つのフックになるのかなと思ったので、収録しました。
──6曲目の「My Love」はダンサブルな感じですね。
KAZ すごくクールな曲ができたなと思います。これもShoさんがデモを作ってくださったんですけど、その時はちょうど自分が抱えてるものも多くて、「ちょっとトップラインは難しそうです。でもリリックは書きたいんですよね」という話をしていて。そしたらShoさんが、もともと繋がりのあった川口大輔さんを紹介してくださいました。自分もトラックを聴いた時に懐かしさみたいなものを感じたんです。それこそ自分が聴いていた2000年代とかの音楽が持つ雰囲気とか懐かしさみたいなのをすごく感じました。川口さんもその時代を席巻していた1人と言っても過言ではないぐらい、いろんな方に楽曲提供されていたので、みんなの狙い、みんなが見ていたものがすぐ近いところにあるなと感じたんですよね。そこで、今だったらあんまり言わないような歌詞の言い回し、オシャレな言い回しをしたりしてみました。「愛を深めることできるかも 棘が抜ければね」とか、ちょっと古臭いっていうか、そんな言い方絶対しないと思うんですけど。
──ちょっと歌謡曲の匂いがするというか。
KAZ そうです、そうです。みんなにボンヤリと見えていたものの答え合わせがしっかりできるような世界観で書けたらいいなと思って、書かせていただきました。若い子たちにとっては、「へー、こんな言い方もあるんだな」っていう新しい気付きみたいなことになってくれたら嬉しいです。自分世代とか、ちょっと上の方たちにも「なんか懐かしいな、この曲。でもドライブの時に聴きたい」みたいな、そんな1曲に仕上がったらなと思って、書かせてもらいました。
──その次が、「ハリケーン」ですね。ラッツ&スターのカバーですが。
KAZ まさかの。
──自分なんかはリアルタイムで聴いたので、「うわ、懐かしいな」と思いましたけど、これは81年の曲なんですよね。92年生まれのKAZさんは、もちろん懐かしさは感じないと思うんですが。
KAZ リアルタイムじゃないですからね。これは、単純に好きな曲だったんですよ。学生の頃とかもカラオケで歌ったりしていて。でも、「知らない」人も聴いたら盛り上がるというのが自分の中でもあって、「GENERATIONSでカバーするのも面白いんじゃないかな」と思ったことも、実はあったんですよ。
──そうなんですね。
KAZ カバーという点では、Disc2の方にも「最後の雨」(中西保志のカバー)とかも入ってますし、何か1曲ないかなと。ライブでラストに向けて駆け上がっていく時に、カバーとかどうかなと思っていたんですね。去年のBillboard Liveとか1人でライブをやったりする時に、『ONE PIECE』が好きで、「ウィーアー!」という楽曲を歌うと、いつもすごく盛り上がるんですよ。それをカバーするのも面白いのかなと思ったんですけど、それはもう聴いたことある人がいっぱいいるので、そうじゃない別の曲でとなった時に「ハリケーン」が浮上したんですよね。このタイミングで歌いたいなと思ったので、すごくライブのことをイメージして作りました。なので、アレンジもShoさんに「疾走感があって、ライブで最後に向けてメッチャ盛り上がっていく感じのアレンジがいいです」とお願いして、この仕上がりになりました。
──原曲とは全然イメージの違うアレンジになっていますよね。
KAZ そこが狙いでした。「ライブでみんなで盛り上がれる」、そんなイメージをして作ったアレンジカバーという意図が、実はありました。
──それこそ、どの世代も盛り上がれますよね。
KAZ ですよね! 世代問わず盛り上がれるよなと。原曲を知らなくても、何となくメロディーもすぐ覚えられるというところが、昔の曲のいいところかなと思いますね。ライブで盛り上がるという狙いのもとに制作を始めた楽曲だったので、早く披露したいなという、そんな思いがあります。
──アルバムの流れとしては、次の「No Matter What」がエンディングになりますよね。
KAZ はい。これも同じく、Shoさんにまずデモを上げていただきました。「ライブとかアルバムの最後になるような、ちょっと壮大な楽曲を制作したいです」とお伝えしたところ、「ちょっとゴスペルっぽい壮大な楽曲なんてどうだろう」とアイデアをいただいたんですよね。「ぜひトライしてみたいです」ということで、アメリカのヒューストンに住んでいるパーシー・バディさんっていうゴスペル界の素晴らしい作家さんに制作していただきました。このパーシー・バディさんは、ご本人も歌うんですけど、主に制作側でグラミー賞とかでもノミネートされたりするような作品に携わっていたりする方で。ゴスペルってクリスチャンの方の文化なので、自分も勉強しなきゃなと思ってShoさんと一緒にロサンゼルスの教会に行かせていただいたりしました。生のゴスペルというものを実際に体験してみて、本当に素晴らしいものだなと思いました。いろんな経験をした上で、ヒューストンまで行ってレコーディングさせてもらって、パーシー・バディさんがお抱えのクワイア・チーム(教会の聖歌隊)がいるんですけど、一緒に混ざって歌わせてもらいました。本来、自分は入る予定はなかったんですけど、見ていたらやっぱり入りたくなっちゃって。その場で彼らがやってるのとか、パーシー・バディさんがレクチャーしてるのをメッチャ集中しながら聴いて、迷惑にならないようにと思いながら混ざらせてもらい、歌ったりしました。
──それはすごくいい経験だったんじゃないですか?
KAZ いやあ、とてもいい経験でしたね。教会に行って毎週お祈りが行われていて、それで救われたりとか元気になれたりという人がいるってことが、すごく素敵なことだなと思ったんですよね。そんな思いも抱いて、パーシー・バディさんが作ってくれた歌詞の世界観とかも壮大で、まさにアルバムの最後にピッタリな曲に仕上げていただきました。自分は、歌詞を聞いてくださる皆さんとか応援してくれる皆さんに対する大きな愛だと思って歌っていく、そんな曲にできたらなというのを、実際にアメリカでいろんなものを見て、感じました。なので、これから応援してくださる方にも、感謝とか、皆さんの愛があって自分は今ここに存在してるんですとった思いを込めて歌っていく曲なのかなと、自分では思っています。
──お話を伺っていると、映画『ブルース・ブラザーズ』の教会のシーンで、ジェームス・ブラウン演じる神父が歌って、みんなですごく盛り上がるシーンを思い出しました。
KAZ 分かります。本当に、超貴重な経験をしましたね。そこからゴスペルをすごく聴くようになりましたし、いいきっかけでしたね。
──より理解が深まった感じですね。
KAZ 深まりましたね! あとは、リードボーカルの大切さを目の当たりにして。これからも、いろんな音楽に触れて、いろんなものを見ていかないとなって思いました。そういう思い出も蘇る曲ですね、「No Matter What」は。
最高の1年だった2024年。でも来年は……!?
──アルバム全体としては、「Second Wave」でオープニングらしく始めて、「No Matter What」で壮大にエンディングらしく締めるという流れは、オーソドックスな印象ですね。
KAZ そうですね。自分もずっとGENERATIONSというグループでやってきて、エンターテインメントに携わってきたので、起承転結というか、これが自分の心地いいエンターテインメントのあり方なのかなと思うので、最初のアルバムですし、「これが自分のスタイルですよ」という意味で、こういう流れにしたっていうところはありますね。
──全曲について伺ったところで、特に気に入っている瞬間というのは?
KAZ いやあ、もういっぱいあるんですよね。今、楽曲についてお話しした中で、伝わっていたらうれしいなと思うんですけど。本当に仲間というか、近い人たちみんなで作ったアルバムなんですよ。ジャケットも、自分はアメ車とかハーレーとかも大好きで、実はこれ、自分の愛車なんです。
──そうでしたか!
KAZ このグラフィックアートは、fustyworksのKen Sugiharaさんと、Love ear artのgenさんが描いてくれたんですけど、すごくお世話になっている大先輩たちでなんですね。「今回ちょっとアルバムを出すので、ジャケをお2人に書いていただきたいんです」というわがままを叶えていただいたもので。「自分はこんな感じのものを書いていただきたいんです」って言ったら「ああ、分かった分かった。あれでしょ?」みたいな(笑)。みんな共通しているものがあるんですよね。なので、楽曲面もそうですけど、ジャケットとかに至るまで、本当にみんなで作り上げた作品だし、このKAZというプロジェクト自体も、そうやって自分に携わってくれる人たちみんなが、自分のやりたいこととか、自分の目標とか夢を形にする場所にできたらなと思いますね。
──プロジェクト名というか、ソロ活動での名義は「KAZ」だと思うんですが、「Pacific Love Memories -JP Ver.-」作詞のクレジットが「数原龍友」になっていますよね。
KAZ よくお気づきで! いや、あれはミスではございません。あの曲を書いていた時はもう別にKAZだの何だのじゃなく、「数原龍友」として書いてたなと思って。日本語の歌詞に関してはもうそのままでいこうという、ちょっとアーティストぶったこだわりですね(笑)。
──いやいや(笑)。それはむしろ、「KAZ」というものがキャラクターでありプロジェクトであり、という思いが逆に強いということですね。
KAZ はい。これはもちろん僕1人の活動ではあるんですけど、みんなのプロジェクトです。携わってくれる人たちとか、これからもきっと仲間が増えていくと思いますし、みんなで作り上げていくもの、それが僕のスタイルっていうことなんですよね。
──さて、もちろんこれからもソロ活動は続けていかれると思いますが、この活動の中でどうしたいというのはありますか?
KAZ このKAZというソロプロジェクトで、ドームのステージに立ちたいかって言われたら、決してそんなことはなくて。やっぱりそういう派手なこととか大きな目標とかは、どちらかというとグループの方で考えていきたいという気持ちは変わらないです。先ほどもお話しした通り、このKAZというプロジェクトはみんなで作り上げていくものなのかなと思います。それこそ語学留学もそうですけど、これからも英語の勉強を続けて、日本でストリートライブをやっているように、アメリカとかで楽器を持って旅しながら、モーテルに止まってその下のバーで音楽を奏でる。それぐらい楽にやりたいです。
──いいですねえ。
KAZ やっぱり長く活動していると、大好きなことだった音楽とかグループ活動っていうのが、ちょっとしんどいなと思う時も正直あったりはしたんです。でも、それもグループとしての歩みであり、軌跡だと思うんですよね。そういう経験をしたからこそ、このKAZというプロジェクトは、肩の力を抜いて、おじいちゃんになってもやっていたいというか。そんな、旅するようなプロジェクトみたいな感覚で、のんびり自分がやりたいこと、やりたい表現が出てくればやるし、今は何もないっていうんだったら、しばらく動かないだろうし。そういうプロジェクトなんですよね。
──それこそルート66で。
KAZ アメリカ横断とか、それは夢ですよね、本当に。そこに楽器を持ってなのか、仲間を連れてなのか、どうなのか分かんないですしね。ミュージシャン仲間を連れて行って、音楽旅にするかもしれないですし。しかも別に、1回限りっていうルールもないわけで、2回行ってもいいし……とか、まだまだいくらでも選べるので。それよりも、その時にやっぱり自分の引き出しがたくさんないとキツいかなと思うので、グループ活動と並行して、1人でものんびりいろんな景色を見ながら、いろんなことを経験しながら、深みのある人間、深みのあるアーティストに、KAZとしてなっていけたらなと思っています。
──その視野も広がってきた感じですね。
KAZ ですね。凝り固まるのもよくないなと思いますし、音楽って、ルールってあってないようなものなので、そういう感覚を忘れないように、今後もやっていきたいなと思います。
──ちょうど、このアルバムが今年の締めくくり的な感じでリリースされますが、2024年はKAZさんにとってどういう年でしたか?
KAZ いやあ、人生で一番楽しい年だったかもしれないですね。本当に超楽しい1年でした。その締めくくりに、こうやって自分のアルバム、自分のやりたい表現ができる。なおかつ、仲間も協力してくれて、こんなに最高の作品が仕上がって今後ないくらいの幸せです。でも、これ以上の幸せを目指して生きていくことが大事だと思います。
今年1年を振り返ったら、もう最高でしたね。夏も長かったし、サーフィンもいっぱいできたし最高の1年でしたね。
──その上で、2025年はどうしたいですか?
KAZ もう、忙しそうです(笑)。「どのタイミングでまた留学に行ける?」って聞いたら、「無理だ」って言われてます。そんな忙しいんだ!と思って。まあそれも幸せなことなので。合間を縫って、日本でもやれることはいっぱいありますし、2024年に経験したことを生かしながら、いろんなチャンネルを自分で使い分けながら、いろいろ表現していけたらと思ってます。それに、楽しみもたくさんあるので。もうすでに、悪巧みするかのように、作戦を練っていますから。
──ではそれが成功することをお祈りしております(笑)。ありがとうございました!
撮影 長谷英史
『STYLE』
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ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。