エイベックスに所属する俳優陣の集い場「ACTORS STAND」の第1弾作品として、4月17日~21日、赤坂レッドシアターで上演される『無垢ども』(大野大輔/脚本・演出)のキャスト連続インタビュー。4人目は、「鳩矢谷高校全学闘争委員会」の「委員長」(ただし、委員会は彼一人)を名乗る「伊吹 亘」を演じる中山優貴さん。舞台経験も豊富な中山さんだからこそ、現場で「こうしよう」と考えていることがあるようです。その中身とは……。
「伊吹 亘」はしっかり芯があって自信満々。「自分とはけっこう違います(笑)」
──今回の「ACTORS STAND」に参加が決まった時には、どう思いましたか?
中山 キャストが全員エイベックス所属ということで、普段たまに会社で会ったり、挨拶したりはするんですけど、他の作品で共演する以外はなかなか接点がなかったりする人もけっこういるんですよね。でもこういう機会があると、関わる機会も増えますし、他のマネージャーさんたちとも社内でより濃く会える機会が増えるので、いい企画だと思いますし、その企画に呼んでいただけてうれしいなと思いました。
──共演者で一番関わりがあるのはどなたですか?
中山 砂川脩弥は、ついこの前、昨年11~12月に『鬼神の影法師 -黎明編-』という舞台で共演したばかりでした。他はほとんど挨拶程度の面識しかないので、いろんな刺激をもらえそうだなと思ってます。
──今回の作品、『無垢ども』のストーリーについてはどういう印象ですか?
中山 いろいろ現代っぽい問題も入っているし、弁論、ディベートがメインになってくるので、セリフがすごくポンポンと展開されていくなというのは印象強いですね。あとは、けっこうみんなキャラクターの個性が強いなと思って(笑)。いい相乗効果で、お互いがキャラクターを際立たせていけたらなと思いました。
──「弁論」という点でも、「現代っぽい問題」という点でも、中山さんが演じる「伊吹 亘」はたった一人で「鳩矢谷高校全学闘争委員会」の「委員長」を名乗るということで、キーパーソンになりそうですね。
中山 そうですね。芯がしっかりある人物で、他に流されずに自分が思っていることを「こうだから」としっかり伝えられる人なんだろうなと思います。ただ、そういうキャラクターでもどこかに人間っぽさがあったりするのが面白いなと。今って、自分の気持ちをバッと言ったりすると「周りからどう思われるか」とかが気になる世の中なのに、そこで芯がある人はカッコいいなと思うので、強さもありつつカッコよさもありつつ、一方で人間っぽい弱いところがあったりとか、そんないろんな一面を出せたら、作品のピースとしてより輝くのかなと思います。そして、今回の大きいテーマである「弁論」「ディベート」の起爆剤になれるような、そのストーリーに皆さんをガッと連れ込めるような感じを、稽古でいろいろ作っていけたらと思っています。
──そんな「伊吹 亘」をご自分と比べると?
中山 いや、けっこう違いますね。僕は周りの意見が全く聞こえなくなるみたいなことがあんまりなくて、わりと聞くタイプなんですよね。僕は「あ、こう思ってるんだ」「こうした方がいいのか」というのをけっこう取り入れていきたい方なので、そこがけっこう違うかなと思います。それに、学生時代は人前に出て目立つようなことをやるタイプではなかったので。
──そうなんですね。
中山 でも、この業界に入って真逆というか、むしろ表に出る仕事になったので、そういう点では自分に通ずるとこもあったりはしますね。そういうところは重ねていけたら、やりやすくなって来るのかなとは思います。
──「伊吹 亘」は高校3年生で17~18歳ですが、その頃って何をやってましたか?
中山 高3まではずっとサッカーをやってましたね。それ以外は普通の高校生活を送ってただけだったんですけど、高3の冬ぐらいに『JUNON』のコンテストでこの業界に入りました。それまではただのサッカー少年だったので、学生生活の感じが懐かしいなとは思います。あと、中学生、高校生の頃って、変に自信満々だったりするじゃないですか。そういう根拠のない変な自信みたいなものも、この作品で出せていけたらと思ってますね。
──「伊吹 亘」は特に自信がありそうですよね。
中山 そうですね(笑)。たぶん、自信しかないんだと思います。そして、大人になったら挫折を一回するんだろうなって(笑)。そんな空気も醸し出してるんですけど、今は怖い物なしで、「俺ならいける」「俺の考えが正しいんだ」みたいなのが強いんだろうなと。
──高校生が中心の物語ですけど、演じる側はけっこう年齢がバラバラですよね。
中山 そうなんですよ、そこはしっかり埋めていきたいなと思ってます(笑)。他の共演者の方は20代前半だったり10代の方もいらっしゃるので、その子たちの、普段の芝居以外の部分を見て、「あ、今の子たちってこういう感じなんだ」っていうのを盗んでいきたいなと(笑)。しゃべり方とかも含めて。まあ、「伊吹 亘」はそこまで今どきの高校生っぽくはないでしょうけど、僕が体験した高校生時代と、今の高校生も違うでしょうし、そこらへんは見たり研究したりしていきたいなと思ってます。
──いろんな役をやられていますけど、このタイミングで高校生役というのも……。
中山 なかなかですよね(笑)。制服を着るのもけっこう久々なので、スーツに見えないように気をつけます(笑)。
──稽古期間から本番までは、どう過ごしていきたいですか?
中山 今回が初舞台という方も何人かいるみたいなんですけど、一つの作品を作り上げていく上で大事なことって、やっぱり話し合ったりとか、他の人たちの意見を聞くことだと思うんですよね。自分の考えも大事だけど、「他の人はこう考えてるんだ」とかを知るのもすごく大事だし、相手の間とかテンポ感とかもちゃんと話して合わせていった方が、お客さんもより見やすくなったりもするんですよね。テーマが「弁論」とか「ディベート」だから、そこを出せるように僕らもちゃんと話し合いをした方がいいと思うので、そこを舞台上でも出していけたらと思ってます。
──こういう役柄なので、セリフの量も多そうですね。
中山 校門の前で自分の考えを言ったりする場面があるので、ちょっと長いセリフもありますけど、やっぱりセリフが多いのはメインの「遠山一華」とか「神宮寺紗英子」あたりじゃないですかね。最終的には彼女たちがストーリーを作って持っていかなきゃならないと思うので、そこをうまく言いやすい環境にフォローしていったりはしていきたいなと思ってます。僕のセリフは、その2人に比べたら全然多くないので(笑)。
「伊吹 亘」は劇中で“何か”に変身する!? 「楽しみにしててください」
──ちなみに、セリフを覚えるのは得意な方ですか?
中山 いや、そこまでではないですね。たまにいるんですよ、5分~10分で全部覚えちゃうっていう人が。そういうのを見ると「ふざけんなよ」って思うんですけど(笑)。「こっちがどんだけ頑張って覚えたと思ってんの?」って(笑)。そういうのは全くできないので……。
──でも、それは特殊能力ですよね(笑)。
中山 そうなんですけど、たまにいるので。まあそういうのはできないし、僕は相手とやった方が覚えやすいんですよね。向かい合って目と目を合わせて芝居した方が、すぐ入ったりするので。ある程度は自分で覚えてきた上で、相手とやって仕上げたいなと思ってますね。
──ここまで役者としていろんな作品に出られていて、稽古や本番の長丁場の期間をどう過ごしていますか?
中山 現場の空気感って大事だと思うので、僕がキャストの中で年齢が上の方だったりしたら、みんなが言いやすいような空気感を作っていったりはしなきゃと思ってますね。先輩がいたら、その先輩がやってくれたりしますけど、自分が上の時ほどそこには気をつけてます。自分が入りたての頃は、先輩方がそういう空気を作ってくださってる現場って、すごく和気あいあいとしていて、でもやる時はやるという感じだったんですよ。何事も楽しい方がやりやすいと思うので。あと、やっぱり舞台は役者だけじゃできないので、演出の方を含め、いろんなスタッフの方たちとみんなで作っているという意識を、改めて持つようにするのが大事ですかね。周りの人たちもそう思えるように。
──体調管理という点ではどうですか?
中山 稽古期間に入っちゃうと、どうしてもコンビニの食事とかが多くなっちゃうんですよ。野菜を全然食べなかったり。なるべく気をつけるようにはしてるんですけど。ついこの間の舞台では少しトレーニングも始めてたので、共演者からプロテインのことも少し教わって、オススメされたヤツを今も毎日飲んでます。筋肉のためというのもあるんですけど、どちらかというといろんな栄養素が入っているのが大きいですね。
──サプリメント的な。
中山 そういうところもある製品なので。稽古してるとコンビニ弁当やおにぎりで済ましちゃうことも多いので、それで補うのを意識してますね。
──役者としても今回の作品は一つの節目だと思うんですが、役者として、「中山優貴」として、この先はどうしていきたいですか?
中山 本当にありがたいことに、舞台はたくさんやらせていただいているし、今後も予定がいろいろあるんですけど、お芝居って舞台だけじゃないし、ドラマだったり映画だったりといろんなものがあるじゃないですか。今は舞台メインでやらせていただいてるんですけど、映像だったりいろんなジャンルに挑戦していけたらと思っていて、今回の『無垢ども』がその一つの分岐点にできたらと思いますね。
──その中で、究極的にやってみたいこととかはありますか?
中山 自分でも思っているし、父からも「大河ドラマに出ているお前を見たい」って言われるので、親孝行という意味も含めて、そこは目標の一つですね。父とは坂本龍馬とかの幕末ものを一緒に見ていたこともあったし、たぶん父は龍馬が好きだと思うので、いつかはそういう役もやりたいです。あと戦国武将、特に織田信長とかも好きなんだろうなと学生の頃に思っていたので、そういうのもやれたら。
──それも楽しみですね。さて、今回の作品を見に来るお客さんには、どう楽しんでほしいですか?
中山 今の世の中にある問題とかも入ってきていたり、弁論の中で言葉が飛び交ったり、すごい勢いでストーリーが進んでいくと思うので、見てて爽快というか、スッキリする展開にもしていきたいですし、誰が見てもどこかしらで心に残るような作品になっていくと思うので、新年度一発目、「これ、見てよかったな」とか「何か心に引っかかるな」と思ってもらえるように稽古していきたいと思っています。だから、まっさらな感じ、『無垢』な感じで(笑)来ていただけたらと思いますね。
──その中で、「伊吹 亘」のここを見てくれ!というポイントは?
中山 今の段階で言えることは、校門の前でひたすらしゃべるシーンがあって、そこそこ長いセリフをまっすぐに訴えかけるので、そこにはぜひ注目してほしいです。あと、伊吹は“何か”に変身するので、楽しみにしてほしいです。
──変身するんですか(笑)。
中山 見てもらえたら、「ああ、このことね」ってなると思います(笑)。そこもぜひ、楽しみにしていただければ。
──謎の楽しみが一つ増えましたね(笑)。ありがとうございました!
ACTORS STAND Vol.1 『無垢ども』
日程:2024年4月17日(水)~21日(日)
場所:赤坂RED/THEATER
脚本・演出:大野大輔(AOI biotope)
出演
平美乃理
花音、福山絢水/中山優貴
松村優、桑畑亨成、佐藤颯人
瀬尾タクヤ(ゲスト出演)
高柳明音/砂川脩弥
制作:AOI Pro.
主催:エイベックス・マネジメント・エージェンシー株式会社
【ACTORS STAND WEBSITE】
https://actors-stand.com/
【ACTORS STAND X】
https://twitter.com/ACTORSSTAND
【中山優貴 WEBSITE】
https://avex-management.jp/artists/actor/nakayamayuki
【中山優貴 Instagram】
https://www.instagram.com/yuki_solidemo/
【中山優貴 X】
https://twitter.com/YUKI_SOLIDEMO
【中山優貴 ファンクラブ「Cafe Latte」】
https://nakayama-yuki.com/
ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。