エイベックスに所属する若手俳優陣が出演する「ACTORS STAND」。その第1弾作品として、4月17日~21日、赤坂RED/THEATERで上演される『無垢ども』(大野大輔/脚本・演出)の通し稽古を見学してきました。この作品が初舞台という主演の平美乃理さんや、舞台経験も豊富な中山優貴さんや高柳明音さん、砂川脩弥さんなど個性豊かな俳優たちが集う『無垢ども』。その舞台の全貌に迫ります!
主演・平美乃理さんの立ち振る舞いは、これが初舞台とは思えないほど!
稽古場に入ると、実際の衣装を身に付けた俳優たちの姿に目を奪われます。マイクなしの声でも十分なほど、稽古場に熱のこもった台詞が響き渡っています。このお話は、熟成肉に魅せられた高校一年生の遠山一華が、校舎裏にあるウサギ小屋でブロック肉をドライエイジングしていたら、動物の死骸を吊るしていると勘違いした用務員に通報されてしまいます。そこから、全学闘争委員会のリーダーや生徒会長などを巻き込んだ学内闘争に巻き込まれていって……というもの。
平美乃理さんが演じるのは主人公の遠山一華で、熟成肉の魅力にとらわれてしまった女子高生という難しい役どころ。手足の長いすらっとした長身は、舞台映えしています。「台詞を噛んでしまわないか心配」と語っていましたが、莫大な量の台詞をこなし初舞台とは思えないほど堂々とした振る舞いでした。
高柳明音さん演じる臨床心理士・松尾との交流を経て、終盤にはノビノビとした笑顔を見せていました。まさに舞台上で、平さん自身の成長を見せてもらっているような印象を受けました。遠くからでもわかるような強いまなざしは、熟成肉一筋の一華を体現していました。
平さんとは対照的に、インパクトのあるいじわるな生徒会長・神宮寺紗英子を演じているのは花音さん。舞台の見どころとなる弁論シーンでは、流ちょうな英語を披露しています。その凛とした佇まいは、本当に学校にいたら優等生で生徒会長に選ばれていただろうなと感じさせました。「頑張って嫌われたい」とインタビューでは答えていましたが、感情を爆発させるシーンは、これまでの彼女のイメージを裏切るのに違いないです。
生徒会長・神宮寺紗英子の用心棒的ポジションで、極真空手黒帯という癖のある役柄を演じるのが福山絢水さん。アクションシーンも多い久松京子という役を演じるにあたって、「空手部のエースだ!」と自分に言い聞かせているそう。細身の身体をダイナミックに動かし、男性相手に見事なキックやパンチを繰り出していました。京子は台詞が少ないものの、アクションやダンスなど見どころになるシーンがいっぱい。表現力豊かなコンテンポラリーダンスシーンもお見逃しなく。
メインキャストの3人以外にも、演技派が揃っている「ACTORS STAND」。久々の制服姿を気にしていた中山優貴さんですが、正義感溢れる委員長・伊吹亘を暑苦しいくらいに演じていました。弁論での長台詞は、説得力のあるシーンでした。さらにインタビューでも語っていた変身した姿も見ものです。
真っ白いスーツ姿に、煙草をくゆらせながら一華のカウンセリングをする高柳明音さん。周りから理解されず孤立している一華と心を通わせる役ですが、心の中には彼女自身も複雑な思いを抱えています。そんな大人の女性を自然に演じていました。ある意味、一番、予想を裏切られる役かもしれません。
鳩矢谷高校の教諭である松崎役は、松村優さん。穏やかそうな外見とは裏腹に、内心は自分のことしか考えていないという、クセの強い役どころ。にこやかな笑顔で「この人、本当に悪い人なの?」と観るものを惑わせてしまうのも、松村さんの人柄ならでは。
劇中で華麗なアクションを見せるのが、いじめっ子コンビの井岡役の桑畑亨成さんと、井本役の佐藤颯人さん。一見チャラそうに見える二人ですが、舞台を所狭しと動き回るアクションシーンは、観ている方にも緊張感が伝わってきます。
ミステリアスな猟師・徳田を演じるのは砂川脩弥さん。周りに言えないような過去がある人物の徳田ですが、ナイーブな一華を優しく包み込む演技から、理不尽なことに対して怒りをあらわにする姿まで、こちらの感情も揺さぶられました。
時折、笑いも漏れる稽古場。ステージ袖から舞台を見つめる俳優たちの視線も真剣そのもの。緊張感あふれる通し稽古が終わると、みなさんでにこやかに舞台のフィードバックを話し始めました。舞台裏からも、俳優たちの息のあった現場を感じられました。
メインキャスト3人に意気込みを直撃!
エネルギッシュな若手俳優が集まった「ACTORS STAND」。今回は、メインキャストの平美乃理さん、福山絢水さん、花音さんに舞台にかける意気込みをお聞きしました。
──通し稽古が終わって、今はどのような気持ちでいますか?
平 美乃理 私は台詞量が多いので、噛まないで言えるようにしたいという思いで精一杯でした。
──今回の舞台の台詞を覚えるのは、スムーズでしたか?
平 学生時代は計算よりは暗記物の方が得意でした(笑)。今は空いている時間があれば、台詞をブツブツと呟いています。まだ一度も台詞を嚙まずに言えたことがないので、残りの稽古で完璧に仕上げたいです。
福山絢水 通し稽古が終わって、今はすごく充実感があります。みんな台詞だけではなく、役柄もすごく入っているので完成形に近いなって思いました。ここから、大野さんの演出でどのようにブラッシュアップされていくのか楽しみです。
──福山さん演じる京子役は男性を殴るシーンもありますが、最初は遠慮をしてしまったりはしなかったですか?
福山 めっちゃありました(笑)。今でも少しはあるかもしれないです。だから「自分は強い」って思うようにしていますね(笑)。でも最初よりは、空手の型も詳しく先生に教えて頂いたので、上手くできるようになったと思います。
──花音さん演じる神宮寺紗英子という役は、明るくて強い部分と、内に抱えた心の闇も演じなければならない難しい役です。演技を見ていて、これだけ感情のふり幅が広い役だと、終わった後も役を引きずってしまって大変じゃないかと思ったのですが、実際にはどうですか。
花音 私、全く引きずらないタイプなのですよ(笑)。役になりきってしまう憑依型ではなくて、演技とプライベートはきちんと切り替える感じですね。
──神宮寺のように本当にいじわるな性格だったらどうしようかと思いました(笑)。舞台では流暢な英語も披露しているので、花音さんが神宮寺のようなタイプだと思ってしまう人もいそうですね。
花音 逆にそう思ってくれたら正解なのかなって思っていますね。頑張って嫌われたいと思って演じているので(笑)。
──では、舞台の見どころを教えてください。
花音 神宮寺は二面性のある役柄なので、その違いを見てもらって伝われば嬉しいですね。通し稽古はまだ2回目だったのですが、演じてみるといっぱい見どころがある作品だなって感じました。私のお気に入りシーンは、やっぱりアクションシーン。アクロバットが得意な佐藤さん(佐藤颯人)や桑畑さん(桑畑亨成)のアクションシーンも楽しみにしてください。私もアクションシーンを見ている時は、すごく楽しいのですよ。
──出演者それぞれの、見せ場がある作品ですよね。
平 そうなのです。私の役は熟成肉ジャンキーなので、本当に熟成肉だけをまっすぐに追い求めてしまう純粋なところを演じられたら良いなって思っています。舞台全体としては、クライマックスに向けてどんどんと盛り上がっていくので、一華の成長も含めて、もっと演技に幅をつけられるように頑張りたいと思っています。
──ちなみに、普段の生活でも熟成肉に目が奪われるようになりましたか……?
平 ははは。お肉が食べたくなることはありますね。
──福山さん演じる京子は、まさにアクションシーンが多いですが、稽古中に怪我などされたりはしなかったですか?
福山 怪我は大丈夫でした。でもコンテンポラリーダンスをやるのが初めてだったので、使ったことがない筋肉をたくさん動かして筋肉痛になりました(笑)。アクションシーンは、やっと様になってきたので、もっと強気で自信をもってやれるようになりたいです。あとは、京子は無口なので、台詞を話していない時でも、舞台上で存在感を発揮できるように頑張ります。
──みなさんにとってもいろいろな挑戦がある舞台になりそうですね。舞台の開幕を楽しみにしています!
ACTORS STAND Vol.1 『無垢ども』
日程:2024年4月17日(水)~21日(日)
場所:赤坂RED/THEATER
脚本・演出:大野大輔(AOI biotope)
出演
平美乃理
花音、福山絢水/中山優貴
松村優、桑畑亨成、佐藤颯人
瀬尾タクヤ(ゲスト出演)
高柳明音/砂川脩弥
制作:AOI Pro.
主催:エイベックス・マネジメント・エージェンシー株式会社
【ACTORS STAND WEBSITE】
https://actors-stand.com/
【ACTORS STAND X】
https://twitter.com/ACTORSSTAND
ライター
池守りぜね
趣味は子供と一緒にプロレス観戦。ライブハウスに通い続けて四半世紀以上。家族で音楽フェスに行くのが幸せ。Twitter:@rizeneration