32枚目のシングル「愛のホログラム」をリリースしたSKE48。2016年の「金の愛、銀の愛」以来の切ない失恋ソングになっていて、普段のSKE48とはまた違った側面が見られます。凝った映像になっているMVの話とともに、荒井優希さん、北川愛乃さん、野村実代さん、中野愛理さんの4人に語っていただきました!
自分の経験と重ね合わせても刺さる!「愛のホログラム」の切ない歌詞
──今回のシングル「愛のホログラム」は切ない失恋ソングですが、まず最初に、曲と歌詞に触れた時はどういう印象でしたか?
荒井優希 最初に曲を聴いた時は、冒頭のところからオシャレで今どきな音がたくさんあって、すごく好みだなと思っていたんですけど、歌詞を見たらすごくシリアスな失恋ソングだったんですよね。今までのSKE48の曲は爽やかだったり背中を押す系の楽曲が多くて、このタイプは全然なかったので、新しいSKE48を見てもらえそうで、すごく楽しみだなと思いました。
野村実代 この曲はホログラムを恋愛の要素にたとえて、失恋を描いてるんです。「本当に存在しているのかな?」っていう曖昧な気持ちが、すごく曲の中に表れていて、自分自身が失恋をして、今生きてる心地がしない切なさとか、歌ってる私たちもちょっと失恋したような気分になっちゃうぐらい、歌詞がすごく重くて、失恋をしたことがある方にはすごく刺さる曲なんじゃないかなと思います。
中野愛理 イントロがメチャクチャ好みで、「これは絶対私の好きな感じの曲だ」と思って聴き始めてみたら本当に好きな曲調でした。失恋ソングも好きなんですけど、今までアイドルで感じたことのない失恋ソングで、歌詞も重たいし、孤独だし、つらそうなのがすごく伝わってきました。特に、いなくなってしまった人から離れたいのに離れられない、離れきれない感じが歌詞から読み取れて、つらいけど、前を向こうとしてないというか、メチャクチャ引きずる感じが、私には分からない感情だなって、すごく思いました。
──中野さんは引きずらないタイプなんですね。
中野 分かんないですけど、たぶん引きずらないです。でもこの曲の主人公は独特の引きずり方してて、本当に好きだったんだなって。その人がいないと、この人はどうなっちゃうんだろうって思うぐらいの失恋なんですけど、私にはちょっとまだ未知の世界です(笑)。
北川愛乃 私はこの曲を聴いて、SKE48史上一番っていうぐらいの「ザ・失恋ソング」だなって思ったんですけど、大好きなその人のことを思う苦悩とか寂しさがたくさん綴られていて、失恋されたことがある方は本当に共感してもらえる歌詞だなと思います。私は恋愛経験がないので、そういう失恋とかをしたことはないけど、でもBメロの歌詞とかは、アイドル活動をしていて挫折を味わった時の心情というか、「あの時の気持ちと一緒だな」とか、「雨降ってたって気づいてない時あったな」とか、そういう共感する部分が歌詞にたくさんあるので、私もそういう思いを重ねつつ、大事に歌っていきたいなって思います。
──レコーディングで歌う時に、ここに気をつけたとか、こういうところを心がけたという点は?
荒井 けっこう言葉数が多いので、最初の方、入りの部分とかを強調して歌ったりしました。
野村 ラスサビはどんどん転調したりとかしていて、個人的には苦しさをすごく表現しなくちゃいけないなと思ったので、ちょっと息継ぎのところで強く吸ってみたりとかしました。あと歌割りとしては、一番が「光と影」っていう5文字だけだったので、そこに命を懸けて歌いました。
中野 私は初めての表題曲なので自分の声も印象に残したいし、表現もつけたくて、すごくゴチャゴチャした感情の中で録ったんですけど、やっぱり苦しい表情を歌声に乗せなきゃと思って、それをなるべく表すようにしました。でもMVは無表情で踊ったので、そこのコントラストが出るような感じで、歌ってみました。
──初選抜の嬉しさが思わず出ちゃったりとかは?
中野 抑えました!(笑) 私はあんまり低い声が得意じゃないんですけど歌割りがすごく低目のパートだったので、ちょっと苦手な分野だと思いつつも、その低い声を出しにくいところが逆に苦しさの表現みたいにできて、いい感じに録れたんじゃないかなと思います。
──特に今回の歌詞の中で、自分的にここが好き、ここが刺さるというところを教えてもらえますか?
野村 サビの「僕の人生 照らしてたのは 君という名の太陽」っていう歌詞が一番刺さりました。「自分がこう思われたいな」っていう理想です。私はアイドルをやってる中でも、ファンの人にはそう思われていたいし、やっぱりアイドルはみんなを笑顔にさせたいなと思うし、生きてる希望だって言われるべき存在だと思うので、こんな風に思われて幸せだろうなって。主人公にこう思われてる誰かはすごく幸せ者だし、私のこともそんな風に思ってほしい、と思いました。
──「その人は去っていったかもしれないですけど、私は照らし続けるよ」と。
野村 けっこう依存体質なんだろうなって思います。でもやっぱり、いい意味でファンの方って私たちに依存してくれてるので、素晴らしい歌詞だなと思って、すごく自分に響きます。
北川 本当に共感できる部分が2番にもいっぱいあるんですけど、特に私はアイドル活動と重ねた時に、「人はなぜ 孤独を怖がり 誘蛾灯を目指してしまうのだろう(群れを求め) 肩先が濡れ始めてから 傘を差してない自分に気づいたのさ」のところが刺さりました。私もどちらかというと、夢に無我夢中になっている時は人に流されないようにというか、自分を大事に生きてきたんですけど、無我夢中になってたからこそ、雨が降ってても気づかなかったみたいな経験があるんです。2番で「夜の空は 月とか星とか見えるはずもなく 期待できないとわかったんだ」ってあるんですけど、多分この人は本気でその人のことを愛してて、周りも見えないぐらい、その人のことをずっと思い続けてたけど、でも結局報われない恋だったって思ってるんですよね。そこが自分のアイドル活動をやっているときの思いとすごく重なって、特に感情移入できる部分だなって、個人的に思います。
中野 私は「目に見えるものの全ての色を失った」と「君がいてくれたら どんな日々でも もっと明るくなれる」っていうところですね。私自身、前作の選抜入りにすごくこだわってて、その理由が、大好きだった先輩が卒業してしまうかもしれないっていう感情があったからなんですね。でも入れずに先輩は卒業してしまって、一緒に選抜に入るっていう夢が叶わなくなって。その時の思いがまさにこれで、卒業発表を聞いた時に本当に夢を失っちゃって、この先どうしたらいいんだろうってお先真っ暗になっちゃって、それがこの二つのフレーズにすごく重なりました。「これ、私にも当てはまるな」って思って、その時に卒業された先輩の顔が浮かんだんです。思い描いてた未来図の色が本当にパッとなくなって目標が閉ざされた感じがして、苦しいなって思ったので、そういう歌詞にすごく共感できるなって思いました。
──今回選抜に入って、立ち直れましたか?
中野 その卒業発表を受けて1週間ぐらいは本当にどん底で、毎晩泣いてたんですけど、「1周回ってウソなんじゃないか」って思い始めて、そこから立ち直ってきました。
──それはいいんでしょうか(笑)。
中野 「現実じゃないんじゃないか」って思い始めて、そしたら卒業発表から卒業公演までがあっという間で、気づいたら先輩はもういなくなっちゃってて。でも今回、選抜に入れた時に、その先輩が連絡をくださったんです。「らぶ(※中野のニックネーム)の時代を作ってね」みたいな言葉をかけてくださった瞬間に「あ、これは期待してくださってるな」と思って、ちょっと明るくなりました。
荒井 私は1番から2番の流れがすごく好きで。最初雨が降ってほっぺが濡れて、2番ではもう肩までっていうのが、そこまで来ないと気にもならないぐらい落ち込んじゃってるっていうところですね。これは誰にでもあることだと思うし、自分も雨が全然気にならない時とかもあるので、「ああ、みんな同じなんだな」って思ったし、Dメロの「雨はいつ止むのか? 夜明けはいつやって来るか? どっちが先だって 愛は消えない」というところの、雨とか夜明けがいつどうなっても、どうでもよくなってる感じの表現の仕方がすごくオシャレだなと思って、特にここが気に入ってます。
メンバーが「最近一番切なかったこと」はお金の話が続出!?
──ではこの曲にちなんで、「最近一番切なかったこと」を教えてもらえますか? 先ほど、中野さんからは先輩の卒業というリアル切ないエピソードがありましたが。
野村 あります! お年玉がもらえなくなったんです。20歳になっちゃったから、大人になったからもらえなくなって。0でした……。(一同、笑) もともと、おばあちゃんしかいないので毎年おばあちゃんからもらってたんですけど、成人祝いをドカンともらった以来もう何もなくて。
荒井 切なーい(笑)。
野村 ちょっと期待してたんですけどね(笑)。おばあちゃんの家に集まって毎年すき焼きを食べるんですけど、「もらえるかな?」ってちょっとルンルンで行ったら、「なかった……」って(笑)。
荒井 厳しい!(笑)
野村 厳しいなって思いましたね(笑)。でも、今度は私がおばあちゃんにあげたいなって思います。
中野 私もお金の話なんですけど(笑)、クレーンゲームで欲しかったものが6000円使っても取れなくて悔しかったんですけど、両替に行って1000円から100円玉10枚にしてきて、次の100円入れたら取れたんです。それで残り900円、財布がメッチャ小銭でパンパンになって(笑)。「さっきのラスト1回で取れてたら両替しなかったのに」って、W切ないです。
北川 私もお金なんですけど(笑)。
──大丈夫です(笑)。
北川 私は今年23歳になったので、もう少し貯金していかなきゃなって思って。いっとき、ネイルにハマってたんですよ。ネイルサロンに行ってネイルをするみたいな。でもそれってお金かかってるなって思い始めて、お母さんと「やめて、貯金に回した方がいいよね」みたいな話をして、行かなくなったのが切ないです。ホントは行きたいんですけど、行けないっていうのが。
野村 今言われて気づいた!
荒井 確かに!
北川 だから、自分でできるようになりたいなって思ってます。
──でもその分、お金は貯まってるわけですよね。
野村 そうだよ!
北川 はい、そう思って。貯金大事(笑)。
荒井 私は切なかったことが本当になくて(笑)。唯一ちょっとショックだったことは、私は同期があと2人いるんですけど、その2人のスマホがiPhone15Proになったことですね。今まではずっと私の14が画質が良くて、2人から「優希ちゃん撮って!」って言われてたのに追い越されて、全然任されなくなったのが切ないです。全然役に立たなくなりました(笑)。
北川 切ない!(笑)
──じゃあ次のiPhoneが出たら仕返しするわけですね(笑)。
荒井 はい、頑張って追い越します(笑)。
野村 そしてまた追い越されて、キリがないよね(笑)。
CGバキバキなのに高所で撮影!? MV撮影秘話!
──さて、先ほどもちょっと話が出ていたMVなんですが、曲の切なさとはちょっと違って、面白い映像になってますよね。普段のMVでは、明るい歌を明るくにこやかに踊ることが多いところ、今回は無表情でちょっといつもとは違った感じですよね。
荒井 そうですね。今まではこういう表現をする曲が少なかったので。曲調とか歌詞もそうですし、CRE8BOYさんがつけてくださった振りとかもあって、パフォーマンスもできる曲だなと思っていて、私はそういう曲がすごく好きなので、すごく嬉しいです。
MV撮影の時に、メンバーの振りがメチャメチャ揃っててとても気持ち良かったので、早く見てもらいたいなと思っています。
野村 今回はみんながミニチュアになってるんですね。ちっちゃいので引きから撮ることが多くて、そうなると1人でもポーズがズレてるとすごく目立つんですよ。だからすごく神経を張り巡らせて、みんなで揃えながら撮影してました。あと、いつも感情をむき出しにして全力で踊るのがSKE48っていうイメージがすごくあって、今までそれをずっとやってきた中で、いきなり自分の感情を押し殺して、無でやるというのは初挑戦だったんです。自分の中では真顔のつもりでも、ちょっと口角が上がるみたいで、そこを直すのがすごく大変でした。ずっと「自分は人形だ」って自分に言い聞かせて練習しました。目線の動かし方ちょっとだけでも人間味が出ちゃったりもするので、なかなか大変でした。
──それは確かに大変そうですね。
野村 真剣にやりすぎて、脳が揺れるんですよ。もう顔もそうだし、「体も揃えなきゃ」とか、「しっかり伸ばしきらなきゃ」とか考えて。自分は身長もある分、もっと伸ばさなきゃとかいろいろ考えてやってたら、全身にすごく力が入るんですよ。それで1サビ2サビをやるだけで、もう脳から疲れるんです、体だけじゃなくて。気疲れみたいな感じがすごくしたんですけど、でも同時に、「やったったわー」っていう感じになって、達成感がすごくありました。
中野 MV自体はすごくストーリー性があるものになっていて、それぞれミニチュアになっていろんなパートをやっています。私は眼鏡越しにみよまるさん(※野村のニックネーム)と踊ってるんですけど、その眼鏡に垂れたしずくが涙を表しているところとか、すごく演出が細かいなと思いました。オルガンの音が鳴るところでは、私たちがオルガンの鍵盤の上で踊ってる映像になっていて、すごく面白いなって思いました。振り入れが撮影の2日前だったんですけど、普段使わない筋肉が多すぎて、内腿が筋肉痛になっちゃったんです。それで本番の撮影の時に、足を直角で上げないといけない振りがあったんですけど、痛すぎて全然上がらなくて。それもいい思い出です(笑)。
北川 書類がいっぱい積み重なってたり、ビンが積み重なってる上にメンバーが乗って踊るみたいなシーンがあって、CGなんですけど、実際に高いところに立って踊らなきゃいけなかったんですよ。だから私と原優寧ちゃんの2人だけ、2m近い高さのところで踊らなきゃいけなくて、そこはスペースも狭くて。本当に足を踏み外したら落ちちゃうみたいな。振りも下を向いて潜るような動きとかもあって、しかも私は高所恐怖症なんですよ。
中野 エーッ!
北川 下を見たら「あ、死ぬ!」と思って(笑)。私は普段、踊ってると楽曲に入り込めるんですけど、そのシーンを撮る時だけは本当に苦戦しました。本当に怖くて、生きててよかったです(笑)。
──もう2月も終わって、そろそろ春を迎える時期に来ていますが、皆さんがこの春にどうしたいかを教えてもらえますか?
荒井 私は健康に気を使える人になりたいです。私は5月が誕生日で、今年26歳になるのでもうけっこう大人なんですけど、2023年は体調を崩すことが多かったので、今年の目標は「健康」なんですよ。だから自炊とか栄養のこととかを学んで、安定した健康を春には手に入れたいです。
野村 私はちょうど21歳になったところで、まだまだ若いなとは思うんですけど、老けたくなくて。ずっとこの状態でいたいので、春になってもその先もずっと若々しくいたいなって思います。最近、若い子がいっぱい入ってきてる中で、自分もまだまだ負けないぞというフレッシュな気持ちを持って、改めて春から初心を持っていられたらいいなって思います。
──大丈夫じゃないですか?
野村 いけますかね(笑)。たぶん、ずっとこのマインドで生きてると思うので大丈夫だとは思いますけど(笑)。
中野 私は、2023年の春はすごく悔しいことがいっぱいあったので、2024年はそんな過去を忘れられるぐらい楽しんで、お仕事をいっぱいやりたいです。何か自分にしかできないようなお仕事を見つけて、いっぱいお仕事することが今年の目標なので、春までに見つけられたらいいなって思います。ラーメン巡りが趣味なので、ラーメンの仕事もしたいなって思ってます。
北川 私はやりたいことがいっぱいあって、歌も強化したいし、舞台が大好きなので演技ももっと勉強したいなと思って。舞台に出させていただく時にお芝居の勉強はさせていただくんですけど、他のプロの方は技術がすごくて、私は伴ってなさすぎて恥をかくので、演技のワークショップとかにも行ってみたいなと思います。あと読書が苦手で、本は私にはちょっとレベルが高いので、まずは漫画をいっぱい読んで本を好きになりたいし、何かそういうレベルアップをしたい春です。
──曲は切ない感じですけど、皆さんの前向きな目標とともに、この曲がガツンといくといいですよね。ありがとうございました!
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ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。