声優として第一線で活躍しながら、アーティストの一面も持つ梶原岳人さんが、10月20日に1stミニアルバム『何処かの君に』をリリース。新曲2曲、カバー曲5曲という構成になっているこのミニアルバムについて、ご本人にタップリと語っていただきました!
友達のような会話から生まれた新曲「魔法が解けたら」
──今回のミニアルバム、『何処かの君に』というタイトルはどのように決まったんでしょうか。
梶原 まず、考えるのにすごく時間はかかりました。あまりススッと出てきた名前ではなく、僕としても悩んだんですけど、最終的にライブと並行してタイトルとしては成立させたいなという気持ちがありまして、それぞれ違うニュアンスではなくて、両方に通じるような言葉にできればればいいなと思ったんです。そう考えた時に、アルバムを通して、もともと「君」という言葉を大事にしていきたいというスタッフさんとの話し合いがあって。じゃあ「君」という言葉を入れるとしたら、「君」じゃなくてまた別の言い回しもあるのかなとかも考えて。単純に「君」とか「君に」だけでもあり得るかなとも思ったんですけどね。
──なるほど。
梶原 アルバム自体が不特定多数というか、いろんな方々にいろんな場所で、自分としては知らないところで、いろんな人が聞いてくれてるというような感覚で、その人たちがライブで一つの場所に集まって、同じものを聞いてくれるというような一つ流れができればいいかなと思ったんです。そういった意味で、ライブタイトルは「此処にいる君に」にして、それと並行して「何処かの君に」としました。「君へ」じゃなくて「君に」なのは、なんとなく「君へ」よりもそんなにカッコつけてないのかなと思って、「君に」にしました。
──英語のタイトルも考えたんですか?
梶原 英語も頭の中で一応考えたりはしたんですけど、やっぱり英語になると、どうしてもちょっとカッコつけた感覚に聞こえてしまうのかなと思ったので、自分の普段の姿とそんなにかけ離れていないものでと考えて結果、英語は使いませんでした。
──「君」というコンセプトがあったということでしたが、最終的にはどんなアルバムに仕上がりましたか?
梶原 カバー5曲と新曲2曲という構成なんですが、曲全体としての音の雰囲気だとか、歌詞の雰囲気だとか、何が突出してというのはあまりなくて、全体を通して一つの芯があるというか、聞いていて統一感というか、「一つの作品」という感覚があるんじゃないかなとは思っています。それはアレンジとかに関しても、それぞれの持ってる音の雰囲気とか、どこかしらでそれぞれがつながっているような感覚がある気がします。でもやはり、僕がいつも大事にしている等身大の姿というか、音の雰囲気にしても歌詞にしても、等身大の雰囲気を残しつつ、「作った姿」とかではなく、普段から見せられるような雰囲気を持った作品だなと思ってます。
──音の雰囲気のこだわりというか、意識している部分というのは?
梶原 僕は、キラキラした音とかはあんまり好みではないので、どちらかというと全体的に、あまり整いすぎてない音が好きなんです。がっつり、ビシッとまとまっているという感覚よりかは、箇所箇所にどこか荒っぽさがあっても成立するような音作りが好きなので、そういうところは常々お伝えさせてもらって、作っていきました。
──新曲の「魔法が解けたら」なんですが、まずSaucy Dogの石原慎也さんにお願いするようになった経緯について、改めてご説明いただけますか?
梶原 まずSaucy Dogさんは僕がずっと好きなバンドだったので、ダメ元でお願いしたいなと思っていて。そしたらまさかのOKをいただけまして、それでまず、ボーカルの石原さんと最初にお会いする機会があったんですけど、「スタッフさんを交えてではなく、2人で話そう」ということになったんです。しばらくカフェやら何やらでお話させていただいたんですが、2人だけなので特に気を遣うこともなく、友達みたいな感覚でお話しできて。タメ口で話してましたし、そんなに建前とか体裁を気にすることなくいろんな話もできて。そこで自分のパーソナルの深いところまでお話しして、自分が今まで経験してきたこととかのお話を細かいところまで。僕だけじゃなくて向こうのお話も聞かせてもらったりとか、本当に雑談の中で生まれていったような感じでした。
──最初は曲の話ということではなくて、いろんな話の中から石原さんが拾い上げてくれたわけですね。メロディーの部分などはどうやって作っていったんですか?
梶原 話してる最中に「どういう雰囲気の曲にしようか」という話になって、Saucy Dogのこの曲が好きとか、僕が好きな曲とか音の感じとかを伝えて、「こういうのがいいんだよね」みたいな話を軽くしながら、「じゃあそっち系の方向でいこうか」みたいな話になって。その後、しばらく日が空いた後に電話がかかってきて、「ちょっと、ひとフレーズぐらいできたんだけど聞いてくれない?」ということで電話越しに弾き語りで、一番ぐらいまでできたものを聞かせてもらったんです。ギター1本だけだったんですけどメチャメチャよくて、「その方向でお願いします」と。メロディーに関しては電話しながら、ここはこういう雰囲気でいこうかと思うんだけどって、それぞれ弾いていきながら、進めていきました。
──梶原さんの意図を汲んで作曲していただいたわけですね。好きなフレーズとかメロディーは?
梶原 ギター1本で聞いた時に、僕も弾き語りしたいからって言って、コードを教えてもらいながら電話でやりとりしたんです。ここのコードは何で、みたいな話をしながら2番ぐらいまでは教えてもらったんですけど、そこから先のメロディーは電話でのやりとりの段階では聴いたことがなくて。後でデモをいただいた時にびっくりしたのが、2番の後のメロディー、Dメロって言うのかな、そこのリズムがまた雰囲気が変わったものになっていて、そこが曲のアクセントになっていて、歌詞も含めて、メロディーのハマり方、歌詞のハマり方というか……口で説明するのはけっこう難しいんですけど、改めて歌いたくなるようなメロディーになっていて、僕の好きな部分ですね。
──この曲のMVについて、印象だったり、何か撮影時のエピソードなどはありますか?
梶原 今回のMVに関してはほとんど出演していないんですけど、最初からこの曲に関しては、自分の姿をあまり出したくないというか、あまり皆さんに見てもらわない方がいいなと思っていて。だから「ほとんど出なくていいです」ということはお伝えしていたんです。というのも、目を僕自身に向けてほしいのではなくて、その曲自体を見てほしいなと思っていたんですね。恋愛の曲なので男性と女性の役者さんお2人に出ていただいて、僕が曲を作る際に石原さんにお伝えした想いを演技の中に組み込んでいただいて、2人に演じてもらいたいと思ったんです。。僕はちょこちょこっとだけ出てくるみたいな感じなんですけど、でも本当に2人の姿を見てると引き込まれて、曲の世界をより深く知れるMVに仕上げていただきました。
──MVの撮影時に役者さんたちともお会いして、印象に残っていることは?
梶原 「当日、晴れてほしいな」と言ってたんですけど、結果晴れなくて、撮影時も土砂降りの時が多かったりしたんですけど、それで逆に「雨の中でも楽しんでる2人」みたいな感じがすごく出てたんですね。雨の中でも全然楽しめるっていうのは僕の理想というか、髪型を気にしてテンションが下がるとかそういうことではなくて、雨だったとしても自然と楽しくなってしまうというか。例えばその海とかに入るシーンもあるんですけど、びしょびしょになっても全然いいやぐらいの2人の感じというか、そういうのが逆に雨によって印象深く表現されていて、その雰囲気がとても素敵だなと思いました。傘をさしながら2人がすごく楽しそうにしてる姿もとてもよかったなと思いました。
ワンマンライブでは生のバンドのよさを。今後も“生”にはこだわっていきたい。
──もう一つの新曲、上野優華さん書き下ろしの「君と恋をしたいんです。」なんですが、こちらの経緯というのは?
梶原 僕がもともと、女性のボーカルの方と一緒に曲を作りたいなあという話をしていて、アルバムの中に1曲そういう曲を入れて入れていきたいなという話から「どなたにしましょうか」という話になって。上野さんは作られる曲が僕のアルバムの感覚とかとけっこう似ているように感じていて、そんなに飾らない姿というか、本当に1人の女性がポツポツと語るような歌詞だったりとか、何か1個1個すごく繊細なんですけど、着飾ってる姿ではない雰囲気を持って曲を作られていたのでとてもいいなと思って、お願いさせていただきました。
今回の曲は、もともと上野さんが作られていた曲のアナザーストーリー的な立ち位置の曲になっていて、男性目線で歌詞が進んでいく形になっているんです。、いつもの上野さんの曲の雰囲気をしっかりと踏襲されていて、その上で僕の好きなイメージの曲に仕上げて頂きました。
──レコーディングはどうでしたか?
梶原 2人で代わる代わるボーカル録りをする機会があって、それぞれハモりを入れていただく時に重なる部分をしっかりと聞くことができたんですけど、そこの部分がとても……自分で言うのも何ですけど、とても声の雰囲気がマッチしていたというか、その場で聞いて「おお、すごいな」って鳥肌が立つような感覚がすごくあって、聞いていてとても心地いいというか、耳が癒されるなという雰囲気がありましたね。
──何度も録り直したそうですが。
梶原 そうですね。ハモりの雰囲気とかをすごく考えてくださって、何回も何回も、ボーカルのマッチの具合とかを考えながらやっていただきました。
──続いてはカバー楽曲に関してなんですが、1曲ずつ、オリジナルとの違いやレコーディング時に苦労したなどをお聞きできれば。まずは「Funny Bunny」から。
梶原 僕は中学生ぐらいからギターを始めて、友達とバンドを組んだり、何かしら音楽で遊んだりとかしてきたんですね。「Funny Bunny」は、その頃ぐらいから聞いていて、とても好きだなと思っていた曲です。スタッフさんが僕に合いそうな曲としていろいろと提示してくださった中から「この曲好きだったな」と思って選びました。もともとギターサウンドというかバンドで、最少人数でもカッコよく耳にガツンとくるようなサウンドで成立してるのが好きだったので、その雰囲気はすごく今回も出ていると思います。アレンジは加わってるけど、そのよさは残ってるようなアレンジで、とても好きな雰囲気になってますね。
──次は「君ドロップス」です。
梶原 この曲はスタッフさんのイチ推し楽曲だったんですけど、歌詞とかは超ポジティブという訳ではないんですけど、でもすごく心地がいいというか、最終的に「幸せなんだよ」というフレーズで終わるっていうこともあって、うまく言葉にできないけれど、なんとなく心地よい感じというか、そういう雰囲気を持った曲だなと思ってて。メロディーとかと相まって、より爽やかさというか、ずっと、いくらでも聞けちゃうような感覚というか、そんな雰囲気を持った曲だと思ってます。原曲にはない間奏をアレンジで加えてもらったんですけど、そこがとてもよくて。もともと原曲にあったような感覚を覚えるような間奏なんですよ。それが入ることによって、こんないいアレンジになるんだと思ったので、そこの部分はぜひ注目して聞いてもらえればと思いますね。
──3曲目は「ジャスミン」。
梶原 これはもともとジャズっぽい雰囲気がある曲なので、アレンジもプラスとストリングスが足されていて、それが僕としてはメチャメチャ好きなんですよ。ゴチャゴチャした音はあんまり好きじゃないって最初に言ったんですけど、この曲に関してはゴチャゴチャとかじゃなくて、ちゃんと曲としてガツッとハマってるアレンジというか。あの音の感じがとても好きで、ボーカルもそこに加えてしっかりと立っていて、生きてるなという感じがします。またこの曲は、他の曲とはリズムの乗り方とかもちょっと違ってくるので、そこでアクセントがついて、すごく素敵な曲になってるなと思います。
──続いては、「紫陽花」です。
梶原 この曲は原曲とはだいぶ違ったアレンジになっていて、ギターとカホンとハーモニカとのボーカルという4つの音だけで作っているんですけど、収録方法が他の楽曲とは異なっていいて、楽器と歌で同時に録音しました。他の曲は最初に楽器部分を作っていただいて、そこに僕がボーカルを上乗せしていくという感じなんですけど、この曲は、一緒にせーので録ったので、最初はクリックを使ってリズムとかも一定で録ってたんですけど、でも音数が少ない分、それだとリズムをちょっと変えたいとか自分の心のノリとかでちょっと一瞬変わる所とかについていけない部分もあったりしたんですね。結局、最後に記念で、クリックとか全部抜いて、リズムも関係なく、自分たちのフィーリングでやったバージョンが完成テイクとして使われています。その雰囲気が逆にとってもよくて、うまい具合に力が抜けていて、リズムとかもそれぞれこっちが変えたら向こうも変わってくれるみたいな、呼吸しながらお互い目を見ながら合わせていくっていうような感じが、とても生きた曲になってるなと思います。
──最後は「I remember you」ですね。
梶原 これは僕が小学生の時に好きでよく聴いていたYUIさんの「CAN’T BUY MY LOVE」というアルバムの中で特に僕が好きだった1曲を歌いたいなと思って入れました。自分としては、小学生からずっと聴いてるっていうのもあってとても思い入れがあって。何が好きって具体的にあんまり言葉では言えないんですけどでも、何となく子供の頃から聴いていて残っているものというか、自分の中でもいつ聞いてもその時を思い出すような感覚が歌っている中で出せたらいいなと思って。そういう「懐かしい」と思えるような曲も歌いたいなと思っていたので、この曲は単純に「これだけは歌いたいです」と言って、自分からグイグイオファーしてやらせていただいた感じですね。アレンジもすごくいい具合にはめていただいて、僕の声の雰囲気にすごく合ってるなと感じています。原曲のYUIさんのの女性の声とはまた違う雰囲気で、よかったなと思います。
──11月28日には初めてのソロワンマンライブがありますね。決まった感想や、どんなライブにしたいかという意気込みを教えてください。
梶原 今までのライブでは、1曲2曲歌わせていただくという機会はあったんですけど、でもそういうときにいつも「1人は寂しいな」と思ってたんですね。寂しいというか、出来上がっている音を流しながら歌うよりも、やっぱり実際にその場で弾いてもらったり、バンドとして一緒に作る音楽が好きで、バンドをやっていたというのもあるんですけど。それで今回は実際にバックにバンドを入れていただいて、みんなで一緒にやっていくという形になっているので、自分としても、その姿が一番理想的だなと思ってて。というのも、やっぱりちょっとしたミスだったり、何かちょっと雰囲気が変わっちゃったなとかっていうところでも、完成した音源を流すだけだったら変えようもないし、僕がちょっと雰囲気変わったとことかにちょっと合わせてくれるみたいなこともないじゃないですか。でもそれがバンドだと逆にできちゃうというか、何でも形になってしまうというか。ミスったらミスったで、それも形になるし、逆に心にブースターがかかったらバンドもついてきてくれたりするような、本当にその場その場で音楽を作っていけるような形が魅力かなと思うので、そこが今回、すごく素晴らしい点だと思っています。その場だけでしか聴けないようなものを、皆さんに届けられればと思っています。
──では最後に、今後やりたいことを伺えますか?
梶原 より“生”にこだわっていきたいですね。今回はあまり時間がなくて、僕も楽器の方々のレコーディングにはそこまで関われなかったんですけど、できるところに関しては、自分もいろいろと入れるところはこれからも入っていきたいなと思ってます。あと自分が作詞に関わることも今までありましたけど、今までもバンドで曲を作ったりもしていたので、曲を作るとかも含めて、自分としての表現の幅を広げていければなと思っています。そういうところで、またさらにこだわるれるところはこだわっていきたいなと思ってますね。
『何処かの君に』
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<1st ONE MAN LIVE 「此処にいる君に」>
自身の誕生日に初のワンマンライブが開催決定!!!
【日時】
2021年11月28日(日)
(昼公演) 開場14:15/開演15:00 予定
(夜公演) 開場17:45/開演18:30 予定
【会場】
東京:山野ホール
(〒151-8539 東京都渋谷区代々木1丁目53−1)
【チケット代金】
全席指定 7,800円(税込)
【梶原岳人 Official Website】
https://avex.jp/kajiwaragakuto/
【梶原岳人 Twitter】
https://twitter.com/gaku_kajiwara
【梶原岳人YouTube】
https://www.youtube.com/channel/UCqDQNKhiPGxEYaJ8MN3_VGg
【梶原岳人Instagram】
https://www.instagram.com/kajiwaragakuto_official/
【梶原岳人TikTok】
https://www.tiktok.com/@kajiwaragakuto_official
ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。