“Tripod” is back!! 遂にあの三人の“m-flo”が帰ってきた。
1997年、“☆Taku”“ VERBAL”“LISA”の三人でメジャーデビューを果たした“m-flo”は「come again」をはじめ数々のキラーチューンを世に送り出した。しかし 2002年、LISAがソロ活動への専念を理由に脱退。二人となった“m-flo”はゲストヴォーカルを迎えるlovesシリーズを展開するなど、今日まで精力的な活動を続けてきた。
そして2017/12/15、これまで限定的に合流していたLISA の15年振りとなる本格復帰が発表された。かくしてインディーズによる「The Way We Were」のリリースから20周年となるアニヴァーサリーイヤーの今年、オリジナルメンバーによる“m-flo”が、再び音楽シーンへと帰還を果たした。
その第一弾となるリリース作品は『the tripod e.p.2』。1999年リリースのメジャーデビューシングル『the tripod e.p.』を彷彿とさせるタイトルが物語る通り、伝説のtripod(三人組)はいままさに新章へと漕ぎ出したのだ。
今回の全員インタビューでは、再始動までのプロセスやレコーディングの模様、さらにそれぞれが抱く“m-flo”への想いをざっくばらんに語ってもらった。
導かれた再集結
―まずはLISAさんが復帰することになった経緯からお聞かせください。
☆Taku )これは一度に決まったわけではなくて、ちょっとした流れがあって。まず2016/12/15に、J-WAVEのイベント(J-WAVE「MUSIC FACTORY」クリスマスパーティー)でLISAと僕が久々に共演しました。そこで“m-flo”の曲を演奏したんですが、ファンのリアクションがあまりにも暖かくて、僕もLISAもすごく感動したんです。この時点で三人での復活をはっきりと意識しました。
VERBAL ) そもそも僕と☆Takuの間では、これまで何度も「いつかまた三人で“m-flo”をやりたいよね」とよく話していたんです。
☆Taku )そう。だからその気持ちをVERBALに話さなければと思っていた矢先の12/23、VERBALが事故に見舞われてしまって…(※EXILEのMAKIDAIらと函館から車での移動中、交通事故に遭い瀕死の重症を負った)。
―そうでしたね。
☆Taku )一時は集中治療室に入っていたものの、一命をとりとめてくれた。ホッとしました。でも同時に“m-flo”での出演を約束していたユニバーサル・スタジオ・ジャパンの『ユニバーサル・カウントダウン・パーティ』をどうにかしなければならなかった。そこでLISAにピンチヒッターをお願いしたら、彼女も快く引き受けてくれた。USJ側も応援してくれて、素晴らしいライヴができました。そうして年明けにVERBALのお見舞いへ行った時、「また三人で“m-flo”やらない?」と持ち出したら、 VERBALも同じ気持ちだったんです。
“m-flo”のファンになったLISA
―LISAさんは自分が離れている間の“m-flo”をどのような気持ちで見ていましたか?
LISA ) 一旦離れたからこそ、より二人の音楽的な凄さというか、守備範囲の広さを思い知りましたね。個人的には、離れていた時に一番ガツンとヤラれた曲が「let go」(“m-flo loves YOSHIKA”/2004年)だったの。あの曲を聴いた時、「こんな素晴らしい曲が出来るんだ!?」って心から感動した。すぐYOSHIKAちゃんのファンになり、あらためてというか、初めて“m-flo”のファンになった!(笑)。
☆Taku )そうだったんだ?(苦笑)。
LISA ) ごめんね、もちろん他にもいい曲たくさんあるよ? 分かってるよ?(笑)。でも特に私は「let go」から、一人のファンとして、二人がどんな活動をしていくのかを期待しながらチェックするようになりましたね。ただ、昔から一緒にやってきた仲間だし、10周年の時とかライヴとか、たまに呼んでもらって歌ってもいたので、正直「離れていたなあ」という感覚は全く無かった。でもさあ、それって有難いことだよね。(二人に向かって)本当にありがとうね!
☆Taku )どういたしまして(笑)。
VERBAL ) 本当にタイミングですね。J-WAVEのイベントはとても良いきっかけとなったわけだし。
☆Taku ) “m-flo”がインディーズで「The Way We Were」をリリースしてから、今年でちょうど20周年なんです。でも20周年だからLISAを呼んだというわけでもなくて。本当にいろんなタイミングが重なったんです。自分でも今こうして話しながら、何てオーガニックで美しい流れだったんだろうとハッとしてしまうぐらい。運命だったんだなあって。
遊び心と“m-flo”らしさ
―今回のキービジュアルは、loves時代からのアイコンだった VERBALさんと☆Takuさんのサングラス姿にLISAさんが合体したというアプローチですね。
☆Taku ) 実はデザインチームからのアイデアなんです。届けられたラフスケッチをミーティングで広げたらみんなで盛り上がって。
VERBAL ) いまあるべき三人の形としてとてもしっくりきましたね。三人のこれまでとここからのストーリーの全てが繋がると思いました。
LISA ) これ、素敵なビジュアルだよね!
☆Taku ) 僕らがこれまで発信してきたこと、LISAがここまで歌ってきたこと、その後ろにたくさんのスタッフがいてくれること。こうしたビジュアルも今回の『the tripod e.p.2』も、そうした全てが有機的に繋がって生まれたものだと思っています。
―『the tripod e.p.2』のリリースに先駆けて、収録曲の「No Question」を、LISAさんのヴォーカル、VERBALさんのラップ、ドラム、シンセの4つのパーツに分けて配信リリースされましたね。全てのパーツを同時再生すると曲のフルバージョンが聴ける仕掛けでしたが、このアイデアはどのような経緯で生まれたのですか?
☆Taku ) スタッフとのブレストからでしたね。「みんなでわいわいと遊んでもらえるものを」というシンプルな遊び心でした。実際うちのスタッフもみんなで試して盛り上がっていましたよ。作った僕自身がなかなか上手くできなかったけど(笑)。
―久し振りに三人でスタジオに入ってみて、何か以前と異なる変化は感じましたか?
LISA ) 歌詞の説得力もよりリアルで強くなったと思う。大人になってそう思えるのはとてもプレシャスなこと。歳を重ねるっていいなって思いました。二人は相変わらずのハッピーボーイズだけど、VERBALはたまにコーヒーを持ってきてくれるというジェントルマンな一面も見せてくれて(笑)。相変わらず二人といると楽しいなあって感じました(笑)。
☆Taku ) VERBALは、昔は家で歌詞を作り込んでくるタイプだったんだけど、最近はスタジオでバイヴスを感じとりながら書くようになった。LISAもすごくスピード感が上がっていて驚きました。でもみんなで探求の旅に繰り出すような感じは変わっていませんでした。昔からの仲だし、細かい説明も要らないから話が早い(笑)。
VERBAL ) 三人の“m-flo”としてしっくりくる部分もあれば、LISAにしかできないこともたくさんあったけど、決定的な変化は三人とも大人になったということ(笑)。以前はそれぞれに俺俺なエゴが強かったけど(笑)、いまは「AじゃなくてBでも良い曲が作れるよね?」みたいな柔軟さもあって。
☆Taku ) そもそも“m-flo”というのは想像していたこと以上のことがたくさん起こるプロジェクトだった。僕が思いつかなかったアイデアを誰かが思い付くことで新しい何かが生まれたことだって何度もあったし。だから今回はそういう“m-flo”らしさに立ち返ったという気分ですね。
―「NEVER」は3/10から公開される映画『去年の冬、きみと別れ』(出演:岩田剛典ほか) の主題歌ですね。
VERBAL ) 映画側からのオファーは、バラードという以外は特に細かいリクエストはなかったので、ほぼ僕達に任せてもらえました。でも結果として、映画の内容に寄り添った、エンドロールとよくフィットした曲になったと思います。映画と一緒に、劇場で楽しんでもらえたら嬉しいですね。
成長と原点回帰
―今回の『the tripod e.p.2』は、LISAさんの歌が変わったという印象を強く受けました。日本語をより噛みしめるように歌われているし、特に「NEVER」における「伝えるんだ」というパワーがものすごい。
LISA ) すごく嬉しい! 今回はとにかくいまの自分が持っている全てを注ぎ込んで、想いを「伝えるんだ」ということだけに専念しました。上手く歌おうとか、音程とか発声とか、そういう意識は、もう私の中では超越してしまったというか。私はこれまで、恋をしたり、傷ついたり、一人の女性として、人間として、いろいろな人生経験をしてきました…。でもいまの私はその全てで成り立っているし、それを抱えて歌うことのできる自分は、もしかしたら、表現者としていま最も良い時期にいるのかもしれないとさえ感じています。
☆Taku ) レコーディングもすごい緊張感だった。ピリピリしているとかではなく、LISAの歌に込めるパワーがとにかくもの凄かった。「これは絶対に録音でミスなんてできないな」と僕もすごく緊張した(笑)。
LISA ) もう歌い終わった後は全てを出し切ったからフラフラだったもんね(笑)。でもそんな歌を歌えるなんて、自分はいまとても恵まれていると思う。この場を借りて、若い子にも伝えておきたい。いまはまだいいけれど、もし歌い続けるならば、いつの日か、自分の全てを注ぎ込むような歌を歌えるようにならなきゃ絶対にダメよ!!(笑)。
―「No Question」では、いまの“m-flo”のモードを高らかに宣誓するようなリリックでありフロウが随所に散りばめられていますね。
☆Taku ) そこ、僕からも二人に訊きたい。僕はトラックを渡して、あとは二人にお任せというスタイルだったんだけど、二人はそういう気持ちをどのくらい自覚的に盛り込んだの?
VERBAL ) 僕が今回“m-flo”で心がけたのは、まっさらな気持ちからのアプローチだったんです。これは他のインタビューでもLISAが話していますけど「VERBALのラップ、最近つまらないんじゃない?」と言われたことがきっかけで(笑)。
LISA ) ごめん、言ったね(笑)。
VERBAL )でも確かにここ最近の自分は、ラップと曲の相性に関して、ある種の使命感を感じていたというか、ちょっと気を配り過ぎていたんですね。でも“m-flo”では、もっと流れに身を任せようと思い直した。☆Takuのトラックからバイヴスを感じて、LISAの言葉や勢いに呼応して、アンサーを提示していくように歌おうと思いました。どうもいつの間にか、器用になってしまっていたというか。みんなそうだと思うんですが、器用になって良い部分もあれば悪い部分もあって。多分LISAが言った「つまらない」は、その悪い部分だったんだと思うんです。
LISA ) うん。
VERBAL ) だから昔のラフでロー(※RAW。「生っぽい」の意)な感じを取り戻そうと思った。一発録りみたいなちょっと荒っぽいテイクも、敢えて録り直さずにそのまま採用しました。
☆Taku ) 僕は今回、二人のリリックから更にインスパイアされたことがたくさんあった。僕が渡したトラックが、なぜLISAの中で「No Question」(=「これしかない」の意)へと繋がっていったのかもすごく興味深い。
LISA ) こればかりは「降ってきちゃった」としか言えない。まさにIt’s Magicよ。「No Question」は☆Takuから届いたトラックを聴いた時、Oh My Goddess. fantastic! って叫んじゃって、その後、メロディも言葉もすぐに降ってきたのよ。
☆Taku ) なぜ二人に訊きたかったかと言うと、実は「No Question」の二人の歌とラップのリリックは、僕のいまの気持ちをすごく代弁してくれていたからなんだ。僕らは性格も趣味も全くバラバラの三人だし、特別に相談し合って曲を作ったわけでもないのに。だから本当に驚いたんだ。
LISA ) 何か、ウチらいますごくいい関係だねえ!(笑)。
三人 ) (爆笑)。
VERBAL ) そういえばこの間、この三人で関係者の人たちと会食した日があったんですけど、しばらくするとLISAはお酒をガンガンに呑んで一人で踊っていて、☆Takuはずっとスタッフとアイデアを真剣に議論していて、僕はバーカウンターでそれを見ながら何人かと楽しく呑んでいた。それを見ながら「ああ、これって“m-flo”っぽいよなあ」と思ったんです(笑)。ライヴもそうだけど、僕らは同じ一つの空間にいてもそれぞれのキャラも動きも全く違うんだよね。
LISA ) そこが“m-flo”の良さ。またこうして三人で集まれたなんて、神様に感謝しかない!!(笑)。
20周年のヴィジョン
―では最後に、20周年というアニヴァーサリーイヤーをどのようなモチベーションで駆け抜けていくのか、それぞれのヴィジョンをお聞かせください。
☆Taku ) いままでの歴史を大事にしながら、でも目指していくのは未来。そういう動き方をしていきたい。
VERBAL ) 個人的にはローなところを取り戻しつつ、その反面で、三人のコミュニケーションをより大切にしていきたい。僕、デビュー当時にコミュニケーションが未熟だった分、後になって勿体なかったなあと後悔したことも幾つかあったんです。コミュニケーションが円滑だと、何よりもクリエイティビティに無駄がない。みんな大人になってそれぞれの責任や生活もあるから、クリエイティヴだけに特化した時間を確保することが昔よりも難しくなっている。LISAにも「またLINE(=ビジネスメール)ばっかりやって!」と何度か怒られたから(笑)、三人でいる時間はクリエイティヴだけに集中して、いい音楽をどんどん積み上げたいですね。
LISA ) そうだね。そしてとにかく楽しみたい! “m-flo”はすごくエクスペリメンタルなチームなので、現状を壊し続けて、未来に向かって真っ直ぐ進んでいくような一年にしたいと思います。
『the tripod e.p.2』2018/3/7 リリース
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【m-flo OFFICIAL WEBSITE】
http://m-flo.com/
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ライター
内田正樹
ライター・編集者・ディレクター・インタビュアー。元雑誌SWITCH編集長。様々なアーティストへのインタビューやコラム執筆に、書籍、ブックレット、ファッション関連のカタログ編集などを手掛けている。音楽に関してはナタリー、Yahoo!ニュース特集などで執筆中。編著書に「椎名林檎 音楽家のカルテ」ほか。