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【さぐぱん】初のミニアルバムをリリース「自分が何者なのかをずっと探し続けているんです」【牧島 輝】

2022.05.04
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インタビュー
舞台を中心に俳優として活躍している牧島 輝さん。昨年2月にシングル「かくれんぼっち」でデビューし、8月にはアーティスト名をさぐぱんとして本格的に活動をスタート。そしてついに5月4日、初めてのミニアルバム『さぐわん』をリリースします。「かくれんぼっち」では蓋をしてしまいがちなネガティブな感情に焦点を当てた共感を呼び起こす歌詞と、難易度の高いボカロ曲っぽいメロディを歌いこなす実力に注目が集まっていましたが、アルバムでは作詞にも挑戦。歌手としてますます独自の世界観を広げているさぐぱんさんにお話を伺いました。
 
 
「さぐぱん」と名乗る理由、そしてその意味とは?
 

 
──昨年2月に「かくれんぼっち」で歌手デビューして以降、8月には “さぐぱん”としてアーティスト活動をスタートしました。名前が変わったことには初めびっくりしたんですけど…。
 
さぐぱん 僕もびっくりしました(笑)。
 
──何か理由があったんですか?
 
さぐぱん 「牧島 輝」は俳優としての名前として使った方がいいんじゃないかという話から、アーティスト名を別に考えよういうことになりまして。いろいろ考える中、カッコつける感じのスタイリッシュな名前が多かったので、恥ずかしくて。最終的にもっとゆるい感じの、ゆるキャラみたいな名前がいいんじゃないかということで、さぐぱんになりました。くまモンと一緒ですね。
 
──ゆるいテイストの名前がいい、というぐらいのゆるい理由だったんですね。
 
さぐぱん そうですね(笑)。僕、動物が好きなんで、さぐぱんのぱんはパンダのパンです。嘘ですけど(笑)。僕もいろいろ候補を出したんだけど全部却下されちゃって、さぐぱんだけ唯一通ったっていうだけなんですよ(笑)。
 
──じゃあ今回のアルバム名『さぐわん』は、さぐぱんが出す初めてのアルバムという意味なんですか?
 
さぐぱん その通りです、それ以上も以下も何もないです(笑)。
 
──そんなかわいらしい響きとは対照的に、曲の方は割とシリアスというか、MVもやや暗めな感じですよね。
 
さぐぱん たしかに、名前とギャップがありますよね。オムライスの歌とか歌ってそうなのに(笑)。
 
──(笑)。「Deep Silence」のMVは「かくれんぼっち」と同様に、少し暗めな色と廃墟っぽいセットが印象的でした。
 
さぐぱん 監督が曲からイメージしたものが二面性だったので、そういうところを見せられたらいいねということで、あのMVでになりました。歌詞も、世の中に絶望してたりするけど、でもそれに抗ってという曲なので、そういうところをMVで見せたかったのかなって僕も勝手に汲み取って、演じてみました。
 
──「かくれんぼっち」でもそうでしたが、「Deep Silence」の歌詞は普段は見過ごされがちな、ネガティブな感情に焦点を当てている気がしました。
 


さぐぱん みんな一人でいる時って、そんなに明るいことばっかり考えてないじゃないですか、きっと。むしろ不安と向き合ってる時間とか、面倒くさいことと戦ってる時間の方が多いんじゃないかなと思うんです。というか僕はそう。みんながそうなのかは知らないけど、僕はそうなんじゃないかと思うんですね。そういうことを歌う曲な気がして。だから、自分が一人でいて不安だったりする瞬間を思い出しながら歌ったらいいのかなと思って、歌ってみました。
不安を感じてる人に向けてというよりも、ただこういう時もあるよねっていう。呼びかけるんじゃなくて、自分もそうかもみたいな共感ですね。「こうじゃない?」みたいなノリのほうが近い曲です。
 
──今回の曲も含めて、さぐぱんというアーティストはそういうネガティブな感情を大事にして歌ってる印象がありますね。
 
さぐぱん アルバムの曲はどれもそんなに明るくないというか、切なかったり、つらいこととかばっかり歌ってるんですよね。今後もそういう曲を歌い続けていくとして、そういう切ない気持ちとか、しんどいこととかに寄り添えるようにがんばっていきたいです。
 
──そして難しい曲も多いですよね。
 
さぐぱん どんな曲を歌う時も難しさは感じますね。必死ですよ、何を歌っても。歌って難しいですよね。普通に「ぞうさん」とか歌っても難しいと思う(笑)。簡単な曲なんてないですよ。「ぞうさん おはながながいのね」「そうよ かあさんもながいのよ」って、とうさんは? って思っちゃったりするから(笑)。そしてこれは誰が歌ってるんだろう? 誰と誰の会話なんだろう? みたいなことをつい考えちゃうんですよね。ぞうの会話ではないじゃないですか。そういう疑問を持つのって大事だと思うんですよ。
 
──そういう疑問が根底にあるから、さぐぱんさんの曲は歌詞に毎回、発見と気づきがあると思うんですよね。今回のアルバムでは2曲、作詞されてますが、歌詞を書く時は何を思って書いているんですか?
 
さぐぱん 歌詞を書く時は苦しかったですね。僕はやっぱり役者として生きている時間が長いから、自分で何かを文字にするって大変なことですよね。言葉を扱うって大変じゃないですか。そんな中で、「夏は過ぎ去って」は景色が浮かぶように、みんなにも景色が浮かんだらいいなと思いながら、その景色を想像して書きました。


 
アーティストとしてのさぐぱんは……「面倒くさいやつ」?
 

 
──「アネモネ」はタイトルが素敵ですね。
 
さぐぱん これ、実はマネージャーが考えてくれたんですよ。とりあえず僕は歌詞をがんばって書いて、レコーディングした後に曲のタイトルどうしようねとなって。季節感と花言葉が歌詞に合ってるんじゃないかということで、「アネモネ」になりました。歌詞はちゃんと自分で考えましたよ(笑)。だからある意味、合作です。
 
アネモネの花言葉は「儚い恋」とか、「あなたを信じて待つ」とか、「君を愛す」という意味があって。春に咲くんですけど、綺麗な花をつけるために冬は忍んでるんですよね。そういうところも曲の世界観に合ってるなということで、決めました。
 
──「アネモネ」は切ない恋の歌で、歌詞もすごくきれいなんですけど、歌詞を書いていた時に思い描いてたことってありますか?
 
さぐぱん そんな恋したことないですよ、僕は。全部想像です(笑)。自分が経験したことではないですね。だから実感もないですけど。歌う時は、誰かが書いたことにしてます。自分で書いたことを忘れないと恥ずかしいし。恋の歌を書くのって恥ずかしいですよね。自分は引きこもりだったのでそういう経験はないけど、映画とか漫画とかでそういう作品に触れることはあるし、自分が経験したことじゃなくてもなんとなく思い浮かぶ景色はあるのかな、という感じです。


 ──では、「かくれんぼっち」、「水槽世界」、「flower」はどんな曲ですか?
 
さぐぱん 「かくれんぼっち」は、速いですね。ライブで歌うんですよね、これ。まずいですよ(笑)。もともとボカロが好きだったので、好きな感じの曲です。これはディスじゃないけど、俳優さんが曲を出すとなった時、爽やかな曲を出しがちだと思うんです。そういう曲って元気が出たり、力をもらえたりするし楽しいけど、そうじゃなくてネガティブなところで共感を得て元気をもらえることもあると思うんですよね。僕はそういうところを目指したいなと思っていて、そういうことを伝えて作ってもらった曲なんです。ぷすさんの歌詞も素晴らしいし、そういう僕の気持ちを汲んで作ってくれたから、自分的にもすごく歌いやすかったなと思いますね。


「水槽世界」は、ミニアルバムを出すにあたって、候補の曲が何曲かあったんですけど、その中で一番最初にこの曲がいいと思って決めた曲です。普段僕が聴いてる音楽のジャンル含めて、自分の好みに一番近いなと思って。自分が歌いたい曲でもあるけど、普段から僕が聴いているような、好きな曲ですね。素敵な歌詞だなと思いましたし、タイトルも素敵なんですよ。「タイトル変える?」と言われたけど、ぜひこのままでということで、このタイトルになりました。病んでそうですよね、この歌詞を書いてる人って(笑)。そういうの、僕は好きですね。この歌詞を書いてくれた槇島さんってきっと正直な人なんじゃないかなって思います。
 
「flower」はYuさんが作ってくれた曲なんですけど、舞台の楽曲もかなり作ってる方で、それでぜひ作ってくれませんかということでお願いしました。とてもまっすぐな方なんですよ、Yuさんって。だから歌詞も本当にまっすぐだし、あったかくて。アルバムは切ない曲とか、冷たい感じの曲が多い中で、温かみのある曲を書いてくれたのはありがたかったですね。他の曲とはまた色が違う感じがして素敵だなと思います。歌詞は聴く人の解釈次第なんじゃないかと思いますね。僕がこう思って歌ったというよりは、聴く人がどう感じて聴くのかということの方が大事な気がします。Yuさんとは4年ぐらいのお付き合いで、お仕事もご一緒してるんですよ。僕もYuさんのことをわかってるつもりでいるし、Yuさんも僕のことをすごくよくわかってくれているので、お互いのよさが出た作品になればいいなと思いながらお願いしました。Yuさんにお願いした時点で、Yuさんらしい曲が来たらいいなと思ってたから、そういう曲が来て嬉しかったですね。
 
──さぐぱんとして記念すべき初めてのアルバムですが、全体的にどんな作品になったと思いますか? 
 


さぐぱん 曲調はけっこう違うけど、色は近い曲が集まってるなと思ってる、というかそうしたんですけどね。何となく、自分はこういうイメージで歌ってるんだということが伝わるように、世界観に統一感があるものを選んだような気がします。僕は、考えてることは明るい方だと思うんですけど、明るく元気にみたいなことを表現するのが苦手なので、こういう風な色の曲が自分に合ってるのかなって。
 
──今回のアルバムで満足しているところと、もう少しここはこうしたかった、次はこうしたいというところはありますか?
 
さぐぱん 僕は、聴いてくれる人がどう思うかが大事な気がするんですよね。僕が満足できるのは、買ってくれた人の手にアルバムが渡った時、その人が満足してくれたかどうかな気がする。なので、まだ満足はまったくしてなくて。でも、こういうイメージで曲を選びたいとか、そういうことはちゃんと自分で選んで作ってきたから後悔はないです。ただ、満足するのはこれからかな。
やってみたいことは、すごく大変だろうけど…。前にちょっとしたアニメーションを手描きで作ったことがあるんですよ。と言っても、テレビで見るようなアニメのクオリティじゃないですよ。言ったら、棒人間が歩いてるぐらいのものですけど。いつか自分で曲を作って、それに自分で描いた絵を動かして、作品に合った雰囲気のものを作ってみたらいいかなと思ってます。全部一人でやるんだったら、フル尺じゃなくてもいいかもしれないですよね。
 
──5月には東京、大阪でさぐぱんのファーストライブが開催されます。オリジナルグッズ付きチケットもあるそうですが、このグッズというのが気になります。
 
さぐぱん ライブのロゴを自分で作りまして、それをそのままグッズにしようかなと思っています。…文句言えないですもんね、自分で作ったものだったら(笑)。できるだけ自分ができることはやりたいなって思ってるんですよ。
 
──楽しみにしてることはありますか?
 


さぐぱん まだ声は出せないと思うけど、声が出せないこととか忘れてほしいですね。盛り上がっちゃいけないとか、ちょっと気をつけちゃうじゃないですか。今、舞台をやってても、笑い声を出しちゃいけないとか、ついそう思っちゃうと思うんですよね。だから、そういうことを忘れられるようなライブにできたらいいなと思います。
 
──さぐぱんとして、今後やってみたい活動はありますか?
 
さぐぱん 埼玉出身なんですけど、昔、地元のちっちゃいライブハウスみたいなところにライブを観に行ったんですよ、中学生ぐらいの時に。だから地元に帰って、ちっちゃいライブハウスで公演してみたいですね。
 
──アーティスト・さぐぱん、そして俳優・牧島 輝として活動を両立させてきたこの1年でしたが、だからこそ見えてきたものはありますか?
 
さぐぱん 自分は体が一個しかないんだなって(笑)。あと3個ぐらいあったらいいなと思いますね。やりたいことはいっぱいあるんですけど、体ってどうやら1個しかないらしいんですよ。どうにかならないもんですかね。だからまあ、限られた時間でがんばるしかないんですけど。やっぱりね、平等な時間の中で何をするかを自分でちゃんと選択していかないといけないなって思いましたね。
僕は今の自分の仕事が好きなので、お芝居ももっとやりたいし、歌ももっとがんばりたいし、もっと絵を描きたいし、もっと家で寝てたいし(笑)。2か月ぐらい休んで、海外にも行きたいですよね。時には休んでインプットすることも大事だと思うので、世の中がもう少し落ち着いてきたら、いろんな景色を見に行きたい思ってます。
実は2年前ぐらいに海外に行く予定だったんですよ。けっこう楽しみにしてたんですけど、なくなってしまったので…。1か月ちょっと時間が空く予定で、姉がけっこう海外に行く人なので、旅費を払うから一緒にヨーロッパに行こうという話だったんですけど。姉は明るくて、とても社交的なんです。本当にいいお姉ちゃんなんですよ。
 
──では最後に、アーティスト・さぐぱんを一言で言うなら?
 


さぐぱん 僕はさぐぱんとしてとかじゃなくて、自分が何者かをずっと探し続けてるんですよ。役者としても、役者じゃないオフの自分としても。課題なんですよね、僕の中で。…難しいですね。言葉にできてたらもっと色々なことがうまくいってる気がする。迷子になってますもんね、僕はずっと。流されるように生きてきたんで。でもそれは悪いことじゃなくて、気づいたらここにいたので(笑)。自分がどんな人間ですっていうのは、難しいな…。
何もないですね、僕は。何かの力を借りて生きていきたいからお芝居を始めたので。自分自身は何もないんですよ。面倒くさいやつなんですよ、僕(笑)。面倒くさいやつが、面倒くさいことをやってます。


 
撮影 長谷英史
 
 
 
『さぐわん』
2022.5.04.ON SALE

 
 
 
 
さぐぱん 1st Live
<大阪>
2022年5月15日(日) なんばHatch
大阪市浪速区湊町1-3-1
http://www.namba-hatch.com
開場 17:00 / 開演 18:00
 
<東京>
2022年5月29日(日) ヒューリックホール東京
東京都千代田区有楽町2丁目-5-1 有楽町マリオン11F(阪急メンズ館側)
http://hulic-theater.com
開場 17:00 / 開演 18:00
 

【牧島 輝 Official Site】
https://makishima-hikaru.net

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尹秀姫(ゆんすひ)
WRITTEN BY尹秀姫(ゆんすひ)
出版社勤務を経て、現在はフリーの編集・ライター。たまに韓国語の通訳・翻訳も。K-POPを中心にさまざまなアーティスト・俳優にインタビューしています。
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