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バリカタキッズ

福岡から世界へ 音楽でSDGsを発信する「バリカタキッズ」デビュー

2021.10.06
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音楽
インタビュー
SDGs
福岡
気候変動による災害、紛争、差別、貧困…今、地球が抱える課題を音楽の力で共有し、解決へと向かわせたい。そんな思いを胸に、福岡・九州を拠点とするキッズグループ「バリカタキッズ」が1stシングル「サステナ」でメジャーデビューを果たした。キーワードは「SDGs(持続可能な開発目標)」。一見、難しそうに思える問題を歌とダンスで表現し、自分たちの同世代に伝えようと張り切るキッズたちの瞳は純真さに満ちていた。

バリカタキッズのメンバーは福岡県と大分県在住で、小学6年生~中学2年生の5人。
小学6年の弘中葵(あおい)、宮原稜虎(りょうと)、中学1年の薬師神愛姫(あまね)、ラフェイブ・ジェイミー(ジェイミー)、中学2年の亀山姫花(ひめか)。エイベックス・アーティストアカデミー福岡校で幼い頃から歌やダンスのレッスンに励んできた。
 
結成のきっかけは、2020年度に「NHK福岡放送局開局90年記念ソング」として制作された「好いとっと」(作詞:MISIA、作曲:GReeeeN)。そのキッズダンサーとして編成された。命名された「バリカタキッズ」の由来は、博多ラーメン。麺のゆで方で「バリカタ」と言えば「すごく硬め」の意味で、博多らしい勢いを感じさせる言葉だ。


サウンドプロデュースは松隈ケンタ


デビュー曲「サステナ」は、BiSH、豆柴の大群などを手掛ける福岡在住の音楽プロデューサー松隈ケンタ氏がサウンドプロデュース。松隈氏らしい骨太のロックサウンドと、エモーショナルな旋律が胸に沁みる。松隈氏は「福岡発のキッズグループということで、若い彼らが未来の福岡、未来の世界を作り上げてゆく期待を込めた曲に仕上げた」と言う。


タイトルはSDGs(Sustainable Development Goals)の「Sustainable(持続可能な)」から着想した。SDGsは2015年9月、国連サミットで採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が掲げた17の目標と、169のターゲットからなる。貧困、飢餓、不平等などを解消し、気候変動、資源の枯渇などを解決して全ての国が持続可能な経済成長を遂げるための行動を促している。
(詳しくはこちら)
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/SDGs_pamphlet.pdf


子どもたちが感じる不安と決意を


歌詞には、そんな課題と向き合う次世代の子どもたちが感じている不安、そして立ち向かう決意が込められている。
「大人になるその時 僕らの世界は 輝いているかな?」
「生まれ育ったこの地から始められるさ 僕ら」
「あの広い広い海だって 僕らでさ 守り続けるよ」
「どんなに強い向かい風だって 手と手繋いで 迎えるよ」
 
メンバーたちは曲を初めて聴いた時の感想をこう語ってくれた。



あまね パワフルだけどエモーショナル。アニメのオープニングに流れそうだと思いました

ジェイミー 明るくて、ノリノリで。お母さんもとっても好きです。しかも、歌詞には深い意味があります

あおい ずっと聴いていても何度でも楽しめる曲です。明るくてカッコよくて、いろんな要素が入っています


メンバーで支え合い難しい歌詞も習得


英語のインタールードが入っているのも特徴だ。
「Just let it go, just believe in yourself!」
「Are you ready to go on with our life?」
 
メンバーたちはこの早口の歌詞を習得するのに苦労したという。でも、「英語が得意なジェイミーに教えてもらいました」(ひめか)、「ジェイミーに『何かが違うんだよなぁ』と言われながら細かく発音を教えてもらいました」というように、支え合って作り上げていった。
 
公開されたミュージックビデオ(MV)は、全編が福岡ロケ。シーサイドももち海浜公園、三苫海岸、宗像グローバルアリーナ、アクロス福岡など、自然を感じられる場所でメンバーたちが笑顔で踊り、走る。ラストは旗を掲げた5人が海辺に立ち、未来への希望と覚悟を示す。
 
メンバーたちは結成以来、SDGsについて座学や体験を通して学んできた。
九州⼤学⼤学院芸術⼯学研究院のSDGsデザインユニット⻑、井上滋樹教授を訪ね、大学がある福岡県糸島市の自然の中でロケを敢行。北九州市の航空会社「スターフライヤー」やJR九州高速船が展開する豪華高速船「クィーンビートル」を取材、ビーチクリーン活動にも参加した。
そうした現場での生の感覚を同世代や親世代と共有しようと、YouTubeでの配信にも力を入れている。
【バリカタチャンネル】
https://www.youtube.com/channel/UCqGobHdzeDxV9BhKWpwDnAA


メンバーが気になるSDGsの「目標」は?


そんなメンバーたちに、SDGsの17の目標のうち、どれが一番気になっているかを聞いてみた。



あおい 目標1の「貧困」。同じ地球に住んでいるのに食べものがなかったり、外でトイレするしかなかったり、そのような格差はさみしいなと思います。仕事を作ったり、学校を作って教育できる環境になるとといいなと思います。
 
あまね 目標10の「不平等」。絆創膏は白人の肌に同化するように肌色にしてあって、黒人の人がようやく黒い色の物を探せたというニュースを見ました。黒人だから白人だからという差別や不平等がなくなるにはどうすればよいか? これからも考えていきたいと思います。



ジェイミー 目標14の「海洋資源」。海にプラスチックが捨てられ続けると、それらが魚に取りこまれ、結果、私たちは大好きな魚が食べられなくなってしまう。家族ときれいな海に行って砂の城を作った楽しい思い出があります。そんなことができなくならないようにしたい。
 
ひめか 目標2の「飢餓」。ご飯を食べられずに、そのことで頭がいっぱいになっている人たちがいます。私たちは給食を残すこともありますが、出された物は食べる、そして残ったら冷凍にするようにします。
 
りょうと 目標15の「陸上資源」。緑がなくなると二酸化炭素が増えて、気温上昇につながります。そんなことには絶対にしたくない。


学ぶことに積極的になった体験も伝えたい

メンバーたちも、初めてSDGsのことを聞いた時には「そんな難しいことわかるのかな」と思ったそうだ。でも、双六ゲーム(サイコロを振って止まったマス目に書いてある17の目標のクイズに答えていく)などを使って少しずつ学んでいった。
(国連が作った双六はこちら)
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/2030agenda/go-goals/
 
すると、メンバーたちも学習することに積極的になったという。



ひめか 学校の勉強していても疑問が増えた

あおい 授業でSDGsの話が出て答えたら、なんで知ってるの? ってびっくりされた

あまね 勉強は嫌いだったけど、双六みたいに楽しい学び方があるってわかった



りょうと 先生に、なんでSDGsを教えないの? って言ってたら学校で『SDGsマン』って呼ばれるようになって

ジェイミー 社会の点数が10点ぐらい上がって驚きました

そんな体験も伝えていきたいと話してくれた。
 
バリカタキッズは地元で暮らしながら、地に足のついた活動を続けていく。福岡在住のあおい、ジェイミー、ひめか、りょうとは「福岡は食べものがおいしいし、みんなフレンドリー」と口をそろえる。ひめかは「制限がなかったら替え玉は2、3回すると思う」というくらいラーメン好き。りょうとは「イチゴのあまおう」推しだ。
ジェイミーは財布を落として拾ってもらったことがあるし、あおいは電車で立っていると「大丈夫?」と声を掛けてもらったことがある。
すると、大分在住のあまねは「大分にも関アジ、関サバ、カボスとか福岡に負けないくらいおいしいものがあるし、自然も豊かだよ」と教えてくれた。
 
全員の目標は「5年後、マリンメッセ福岡を満員にする」こと。誰かの憧れになったり、見ている人たちを勇気づけたりできるアーティストになるため、努力を続けていく。


災害を実感したことが企画の発端に



今回、バリカタキッズのデビューに当たって、SDGsをテーマにしようと企画したのは、所属するエイベックス・エンタテインメント九州支社の太田友嗣支社長。
昨年4月に赴任して以降、九州では7月に熊本豪雨があり、被災したCDショップの窮状を知った。今年9月には福岡に台風14号が初上陸するなど異常気象が続いている。
「一人一人が努力しない限り、災害の規模は大きくなるのではないかと実感した。エンターテインメントという私たちのフィールドでもできることがあるはずだ」
SDGsは日本でも認知度は高まってきているものの、行政や企業の動きに限られ、まだ将来を担う子どもたちや若者たちに浸透しているとは言えない状況だ。
「それはエンターテインメントの役割ではないか」
そう考えたのが発端だったという。
 
そして、福岡の人々は地元愛がとても強い。
「地元の子どもたちを地元でアーティストとして育て、その子どもたちが地元に恩を返して愛をもらう。そんな循環を作りたい」
デジタル化が進み、以前のように東京にいなければ発信できないという環境ではなくなった。レコーディングもMV撮影もオンラインライブも、福岡でできる。その動きは新型コロナウイルスの流行が加速させた。
「バリカタキッズは、アーティストとしての規模が大きくなっても、福岡拠点であり続ける。福岡・九州の魅力を福岡から発信することで、交流人口や移住定住人口の増加にも貢献したい」
熱く語る太田支社長とスタッフに支えられ、5人のメンバーは成長している。



【バリカタキッズ Official Website】
https://avex.jp/barikatakids/

【バリカタキッズ Twitter】
https://twitter.com/barikatakids

【バリカタキッズ Instagram】
https://www.instagram.com/barikatakids/

【バリカタチャンネル】
https://www.youtube.com/channel/UCqGobHdzeDxV9BhKWpwDnAA


加茂川雅仁
WRITTEN BY加茂川雅仁
1960年、福岡市生まれ。西日本新聞クロスメディア報道部記者としてエンターテインメント担当。

共著に橘京平のペンネームで「Peace Hill 天狗と呼ばれた男 岡部平太物語」(上下巻、幻冬舎)、「直向きに勝つ 近代コーチの祖・岡部平太」(忘羊社)。
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