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Miyuu、2ndアルバム『LA LA RAINBOW』で表現する楽しさ・心境の変化と成長とは?

2021.03.17
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口ずさみたくなるメロディと、優しく抜けるスモーキーな歌声で注目を集めるシンガーソングライター、Miyuuさん。昨年2月の1stフルアルバムから約1年ぶりに、2ndアルバム『LA LA RAINBOW』が24日にリリースされます。昨年7月から7ヵ月連続で行ってきたマンスリー配信ライブ「Over The Rainbow」など、様々な試みが一つにまとまる形で、Michael Kanekoさんをプロデューサーに迎えて仕上げられた今作。全曲タップリと解説していただきました!


いきなり「令和のアグネス・チャン」?

──ちょうど昨日の深夜、TVをつけたままこの取材の準備をしていたら、Miyuuさんが画面に出てきてビックリしたんですが(笑)。

Miyuu ああ、『霜降りバラエティ』ですね(笑)。

──「令和のアグネス・チャンを探す」というオーディションでしたが、1次審査突破おめでとうございます!

Miyuu ありがとうございます(笑)。そもそも、「オーディション」とだけ聞いてスタジオに行ったんですけど、「あれ? これ、TVの収録なんかな?」って。行ってみたらすごい個性的な人がいっぱいおったから、「もしかして、がっつりバラエティっぽいし、まさかTVでオンエアされるんかな?」と思ったんです(笑)。



──番組名からして『バラエティ』だし、霜降り明星のせいやさんはJ.Y. Parkさんを真似た「セイ・Y・パーク」になってましたから、バラエティ以外の何ものでもないですね(笑)。

Miyuu 一応、ちょっと前に「アグネス・チャンの曲から1曲弾き語りと、特技をやってください」という話は来てたんですけど、特技というものがあんまりなくて。avexのオーディションの時は「親指が直角に曲がります!」(実際にやってみせる)っていうのをやってたんですけど、「そんなん絶対おもんないやん!」と思って(笑)。実際、本番では歌い始めた瞬間に(合格の証の)キューブをもらえたので、「ラッキー!」みたいな(笑)。

──ちなみに特技は何を用意してたんですか?

Miyuu 「●●●●が◇◇◇になったら」というモノマネなんですけど、そんなことやったことなかったんですよ(笑)。前日までビデオを撮ってずっと練習してて、だから前日に寝たのが朝5時ぐらいになって、ツラかったです。

──その特技は、結局披露する場がなかったということですね。

Miyuu はい。でもこの後の2次審査以降でやるかもしれないんですよね。

──ではまだ伏せ字にしておきましょう。それはそれで頑張っていただくとして(笑)、ニューアルバムのことをお聞きしたいと思います。1年ぶりの2ndフルアルバムということですが、昨年夏に配信された曲も入ってますよね。制作期間というとどれぐらいになるんですか?

Miyuu アルバム自体の制作期間は、半年ちょいぐらいになるんかな? でも実際、去年の夏に配信した「summer together」という曲は「アルバムにしよう」と思って作ったわけじゃないんですよ。自粛期間がずっと続いてて、私自身も旅行が好きやけど行けなくなってちょっと落ち込んだりしてて。たぶんファンの方も行きたいところに行けなかったり学校にも通えなかったりして、家での時間が増えてるんかなと。それで、ちょっとでも私にできることがないかなと思って、毎日お昼にやってたライブ配信の中で「みんなで曲作ってみる?」っていうのをやり始めたんですよ。毎日やってたらネタもなくなってくるじゃないですか(笑)。みんなで参加できる企画もいいかもと思って、そういうことを配信中に言ったら「ぜひぜひぜひ!」ってなって。

──それはみんなうれしいですよね。

Miyuu 「来年の夏に向けて、みんなで一緒に集まった時に歌える曲を作りましょう」ということで、リアルタイムのコメントで歌詞の案を出してもらって、もらったワードをつなげて1曲にしていったんです。それをやっているうちに「配信できたらいいよね」という話になって、夏に配信させてもらったんです。

──では、収録曲の中では「summer together」が一番最初にできたわけですか?

Miyuu 一番最初にレコーディングして音源化されたのは、そうですね。ただ、デモとして最初にできてた曲は「fly」なんです。これは1年以上前からある曲で、一昨年の年末に撮影して出演もさせてもらったショートフィルムの曲なんです。企画の段階から、監督と「こういう映画が作りたいよね」という話をさせてもらって、その中でできた曲だったので、音源化する予定はなかったんですよ。でも去年、映画祭とかで作品を見てもらう機会とかもあって、「映画のメッセージも曲のメッセージももっと届けられたらいいな」ということで、チームの皆さんのお力をお借りして配信できたという曲なんです。



──なるほど。そして「my friend feat.Michael Kaneko」も昨年10月配信ですね。

Miyuu 去年の7月から7ヵ月連続で、月1回「Miyuu Monthly Online Live~Over The Rainbow~」というタイトルで配信ライブをやらせていただいてたんです。ちょっと高クオリティで音も映像もちゃんと届けて、なおかつ、旅行にも行けなかったりするから、映像の中で旅気分も味わってほしいということで、虹の7色で毎回テーマカラーを決めて配信しようというテーマで。その最初に、「毎月新曲を作ります」って、適当に言っちゃったんですよ(笑)。

──適当に(笑)。

Miyuu 言ってしまったから、毎月のテーマカラーにちなんだ新曲を作ろう!とやっているうちに、「それをまとめたアルバムが出せたら面白いよね」という話になって、やっとアルバムを意識して曲作りをするようになったんです。「Over The Rainbow」が始まるまでは、正直コロナの影響でライブもできないしグッズの販売もできないし、曲を作るにもお金がかかるというのを自分なりに考えて、「アルバムを作りたい」って言うべきじゃないなって思ったりしてたんですよ。でも周りからアルバムのアイデアを出してもらったり、いろいろとお力をお借りしたおかげで、アルバムを作ることになりました。

──通常のアルバム制作と比べると、けっこう変わった過程を経て決定したわけですね。

Miyuu そうですね。「とりあえず、自分が今できることは何だろう」と考えてトライ、トライ、トライってやってて、気づいたらアルバムを作ろうということになってたという感じです。


オーガニック感が増したサウンドとアートワーク!

──アルバムを通して聴くと、そうした過程が意外に聞こえるほど、作品としてのまとまりがあるように思えました。

Miyuu そうなんです(笑)。それは、今回シンガーソングライターのMichael Kanekoさんにプロデュースで入っていただいていて、先ほど出た「my friend feat.Michael Kaneko」では歌唱もしていただいてるんですよ。今までのEPとかアルバムでは、曲によっていろんな方にお願いしてたんですけど、今回は私が「音楽に旅感を入れたい」というのと、自然が好きなので「海っぽさも入れたい」ということで、「やっぱマイキーさんしかおらんな」と(笑)。



──そこから出発してるわけですね。

Miyuu 「summer together」の時は“海”っていうテーマがあったから「絶対マイキーさん!」という話になり、次の「my friend feat.Michael Kaneko」は私がアシスタントMCを務めている「ZOOM UP!~Chill Out~」というCS番組のテーマソングを作ろうということでできた曲なので、当然メインMCのマイキーさんと一緒に作るというのが当然になってたから、「ラッキー!」って(笑)。

──ラッキー(笑)。

Miyuu そうなったら、「全曲マイキーさんにお願いできるかな?」って話になり、スケジュールとかもあるからどうなんやろ?と思ったんですけど、すっごい快くOKしてくださって。マイキーさんとも話したんですけど、日本のアーティストさんのアルバムって、曲ごとにアレンジャーさんとかプロデューサーさんとかが違うことも多いんですよね。だから「洋楽だと当たり前なんだけど、アルバム一作を通してプロデュースできるのは日本ではけっこうレアだからうれしかった」って言ってもらえて、私もうれしかったんですよ。洋楽が好きで、今こうやって音楽をさせてもらってるから、そうやって言ってもらえて「新しい発見をしたな」と思いました。

──いい流れで整ったんですね。

Miyuu すっごいいい流れでしたね。マイキーさんは年も近くて相談しやすいので、曲順とか悩んだ時も「俺はこういうつもりでアレンジをしたから、ストーリー性を考えて曲順を組んだらいいんじゃない?」って教えてもらったりして、なるほど!みたいな。普段やったら「これ、聞いてええんかな?」みたいなことも聞いて、すごくアドバイスをくれたりしたので、メッチャやりやすかったです。

──その結果だと思うんですが、1stアルバムよりもさらに音のオーガニック度が増してますよね。その前のEPの頃などはロック調の曲もありましたが、どんどんオーガニック風味が増しているように感じます。

Miyuu ちょっと……老けたから……(だんだん小声になって)っていう……。

──いやいや、何を言い出すんですか(笑)。

Miyuu 「大人になった」ですね(笑)。大人になったから、心境の変化もあって確かにオーガニックなサウンドになったし、かと思えば今まではアコギの生音をメインにしてきたんですけど、今回はシンセっぽい音を入れて遊んでみた楽曲もあったり、遊び心がいっぱい散りばめられてて、トータルで大きく見るとアートワークも含めてオーガニックな感じになってますね。

──ですよね。

Miyuu 心境の変化としては、以前は違う価値観とかをなかなか受け入れられなかったんです。何かに抗おうとしてた感じがあって、歌詞にもそういう言葉が多かったんですね。反抗とか愚痴みたいなのが多くて。それが去年とか、もっと前の自分で。でも今は、人と違う自分も受け入れるし、自分と違う他人の意見も、前はもっと押しのけようとしてたけど、「あ、この人はこういう考え方なんだな」って、自分なりに受け入れられるようになってきてて。……許せないこともありますけど(笑)。

──それはありますよね。

Miyuu 家で通して聴いたりしてると、そういう心境の変化が歌詞とかサウンドにも表れてるのかなって思いますね。

──なので、全体で一番に感じる印象は「穏やかさ」なんですが、ところどころに強い意志も見え隠れしますよね。先ほど少し出ましたが、今回「CD+Blu-ray」と「CD ONLY」の2形態で、Goldfish Kissのアートワークも2パターンあるんですね。前者はMiyuuさんが風景の中に溶け込むように描かれていて、一方後者は写真が真ん中に配置されていて、ファンにとっては悩ましい選択ですよね。

Miyuu 悩ませたかったんです(笑)。今回、音楽もそうやけど「日常に溶け込むような」ということをテーマにしてるんです。日常をちょっと彩るというか。これがなくても生きていけるかもしれんけど、これがあったらちょっとハッピーを感じたり、心が動いて日々が楽しくなったり。だからアートワークとかも、部屋に飾ったら気持ちが上がるっていうのを意識したいなあと。だったら私が実際に家に飾っててワクワクするようなアーティストさんに、ちょっとお願いしてみようという感じで、ダメ元じゃないけど(笑)「ジャケットを描き下ろしてもらえませんか」ってインスタでDMも送らせてもらって。そしたら「いいよ、いいよ!」みたいな感じで言ってくださって。

──そんな直接的なやりとりがあったんですね。

Miyuu はい。シアトル在住の方なんですけど、英語でちょっとやりとりさせてもらって、「こういう感じがいい」というようなお話をして、2パターン描き下ろしていただきました。

──というかまあ、ファンの方は「しょうがない、どっちもいくか」というものに仕上がってますよね。

Miyuu いっちゃってください(笑)。

──このアートワークを見ても、先ほどのお話からしても、アルバムの季節感は「夏」がメインですか?

Miyuu そんなこともないんですけど、ちょっと外に出たくなる音楽ということで、温かい季節を連想させる曲がおおくなってはいます。でもよく歌詞を聴いたりMVを見たりすると、意外と春夏秋冬の要素が入ってて……というのも、「Over The Rainbow」は夏に始まって冬にかけて配信していて、その中で季節に合わせた新曲も作ったので。


全曲解説! コロナの影響でポジティブに!?

──では、収録曲を1曲ずつ解説していただいてもいいですか? まず1曲目は「introduction~over the rainbow~」。イントロらしく短い曲ですが。

Miyuu 「Over The Rainbow」をやっていくうちに、この配信ライブのテーマ曲ができたらいいなと思って、家で適当にギターを弾いててできたメロディーなんですけど。オープニング曲らしく、気分が上がって楽しく聴ける曲をイメージして作ったイントロになってます。

──次は「love you in blue」。1月にアルバムの先行配信という形で発表された曲ですね。

Miyuu 1曲目は絶対「love you in blue」だなと思ってたので、この曲につながるように、「introduction~over the rainbow~」を作ったんです。だからキーとかも同じになるようにしていて。

──ああ、そういうことなんですね。この「blue」は冷たい方ではなく、爽やかな方の意味で。

Miyuu そうですね。これが7月の「Over The Rainbow」の新曲として書いたものです。私は「blue」と言えば真っ先に海が思い浮かぶんですね。さっきも言った通り、今までは自分の中のモヤモヤを歌詞にすることが多かったんですけど、この曲は楽しいものにしたかったから、今まで書いてこなかったようなラブソングを意識しました。例えば「愛してる」なんて言葉は今まで恥ずかしくて使えなかったんですけど今回は入れてみたり、自分の中ではちょっと振り切った歌詞になってます。

──歌詞を振り切ったので、曲をより軽やかにしたというところはありますか?

Miyuu うーん……最初に作ったデモと、だいぶ変わったんですよ。デモはスローーな感じで、ゆるーーく愛を語るみたいな感じだったんですけど、アレンジされてみたら爽やかでちょっとノれるみたいになってて、「あ、こんな感じで来るんや!」って思って(笑)。逆にそれが、振り切った歌詞とミスマッチでマッチしてるように思えたので、「このまま行っちゃってください!」みたいな(笑)。

──以前にお話を伺った時には、「ネガティブな気持ちの時に歌詞が出てくる」ということを言われていましたが、この曲だけ聴いても「ちょっと違うぞ」と思いました。全体的にもそうだと思いますが、それをオープニングから示す曲になってますよね。

Miyuu そうですね。それも、コロナがメッチャ影響してると思います。正直、ちょっと気持ちが落ち込んでた時でも、言霊みたいな感じで、楽しいことをいっぱい口にすることで勝手に楽しくなっていく、みたいなことってあるじゃないですか。そういう風に、状況が楽しくなかったとしても、楽しい歌によって楽しくなっていくんじゃないかなあと。自分が歌うことでそうなっていくというのもあるし、それを聴いて、今落ち込んでいる人たちがそうなっていけたらいいなという願いも込めて、楽しい方に振り切って書いてみようと思いました。



──コロナの影響が、その方向に行ったんですね。

Miyuu 今まではけっこうネガなものをエネルギーにして作ってきたから、同じようにやってたらすごく落ちていってしまうなと思って。それは自分でコントロールできるようにせんとアカンなと思った結果ですね。

──次が先ほども出た「my friend feat.Michael Kaneko」です。

Miyuu ずっとコロナ期間で、友達ともあんまり会えへん、それは私もみんなも同じ状況なので、友達について歌うことで共感できたりとか、「ちょっと友達に連絡してみよ」っていう気分になれたりとかっていうのを意識して、タイトル通りの(笑)曲にしてみました。これは私の作曲ではなくてマイキーさんが曲を書いてくれてて、「こういう曲あんねんけど、どう?」って送ってくれたんですね。それに私が日本語の歌詞をつけて、それを踏まえてマイキーさんが英詞を書いてくれて。だからその英詞を作ってくれたのは、レコーディングの時だったんですよ。私も日本語の歌詞が当日までできなくて。

──ギリギリだったんですね(笑)。

Miyuu 今までは自分が書いたメロディーだから、歌詞を当てはめるのってそんなに悩んだことなかったんですけど、マイキーさんの作ったメロディーってやっぱり洋楽っぽいというか、英語がハマるような感じになってるので、「どうやって日本語をハメたらいいんやろ?」みたいな(笑)。マイキーさんの英語っぽい感じがいい曲やから、できるだけ譜割りとか変えたくないな……と思ってたら当日になっちゃって。でも無事に録り終えました

──歌もマイキーさんと一緒にというのはこれが唯一ですが、そのあたりの作業はいかがでしたか?

Miyuu いつも通りに私が先にブースに入って、その後にマイキーさんだったんですけど、私って普段からメッチャ録り直すんですよ。途中から、もはや何が納得いく歌い方なのかが分からなくなるほどで。だからレコーディングで「わー、スッキリした!」みたいなことってあんまりなくて、いつもちょっと落ち込みながら帰るんです(笑)。そもそもブースに入ると力んじゃうんですけど、マイキーさんはフワーーと入ってフワーーと歌うみたいな感じに見えたから、「あんなにラフに歌えるのは、日頃メチャメチャ歌い込んでるからなんかな?」と思って、勉強になりました。

──次も色名がついた曲で、「yellow light tonight」。歌詞の内容は切ないですが、音は軽やかで。

Miyuu これはちょっとジャズっぽい感じになってて、12月の「Over The Rainbow」の新曲なんですけど、やり始める前から「この月はこの色」というのは決めてたんです。12月はイルミネーションがキラキラしてるはずだったけど、今年はたぶんそういうのもなくなるんやろうなあーということで、逆にイルミネーションを思い出すような曲を作ろうと思ったんです。この曲を作ってる間に、さっき出た「fly」の映画の監督ともやりとりしてて、「また作品撮りたいですね」なんて話してたんですよ。その中で「今、こういう曲を書いてるんですけど、冬っぽいイメージなんです」って聴いてもらったら「メッチャいいじゃないですか! クリスマス・ソングっぽいですね」って言ってもらったので、「じゃあクリスマス・ソングにしよう」みたいな(笑)。



──そういうきっかけでしたか(笑)。

Miyuu 去年もクリスマス・ソングを作ったんですけど、新たに、違う形で作りたいなと思って。ジャズっぽい曲って今までなかったので、そういう大人っぽさも感じられる曲にしたいなと思って作りました。

──雰囲気としては、Wham!の「ラスト・クリスマス」に近いものがあるかもしれないですね。

Miyuu そうですね。去年のクリスマス・ソングはちょっとほんわかな感じになったので、「今年は切なめでいく? それとももっとラブラブでいく?」みたいな(笑)。ちょっと遊び心で書いた曲ですね。


アルバム・タイトルの由来とは……

──次が「indigo night」。これも色の曲名ですね。

Miyuu はい。indigo、藍色ですね。8月の新曲なんですけど、けっこう難しかったんです。7色っていう縛りがあるじゃないですか。「藍色で連想することって何やろう?」って思って。ずーっと考えてて、夜にパッと空を見たら、「藍色や!」みたいな(笑)。藍色の中に光ってる星があって、歌詞の中に「光は闇でこそ輝いて」っていうフレーズがあるんですけど、それをまさにその時に思ったんですね。自分が落ち込んでる時とか……大部分、歌詞にコロナが影響してるんですけど(笑)、ホンマに今まで感じたことのないザワザワを感じてて、でもこういうつらさとかしんどさがあるからこそ得られる新しいものもきっとあるんだろうなと。あと、今まであんまり大事に感じてなかったことが実はすっごく大事だったとか、そういうことをすごく感じたんですね。それでこの曲では、「メッチャつらいこともあるし、もしかしたらハッピーエンドで終われないこともあるけど、その中でどんだけもがくか、どんだけ自分の行きたい方向に行けるか、たぶんそれで自分の人生の楽しさとかやりがいが変わってくるんかな」っていうのを、歌った曲になってます。

──次の「step it(pray)」は?

Miyuu これは「Over The Rainbow」の新曲として書こうと思った曲ではないんですけど、7月の「Over The Rainbow Vol.1」の前日とかに作ったんかな? コロナ禍で、すっごい悲しいニュースとかいっぱいあったじゃないですか。それが原因でいろんな方が亡くなったり、ツイッターでもいろいろ見て気持ちが落ち込んだりして、影響を受けてしまうんですよね。影響を受けてしまうのに、ネットニュースとかすごく見ちゃうんですよ(笑)。

──よく分かります。

Miyuu それでちょっと落ち込んじゃって、ギターを触っててもボーッとしちゃうみたいなのが続いちゃって、「これはアカンな!」と思って。自分のこのモヤモヤしてるのをどうしよう?と思って、やっぱり曲を作ることで吐き出すしかないんじゃないかと。自分の受け入れられない事実だったり悲しい出来事だったりっていうのを、自分だったらどういう風に消化するやろうかと思ってギターを弾きながらメロディーを口ずさんでてできた曲なんです。だからこれは前のアルバムの時みたいに、自分の中のモヤモヤをエネルギーにしてできた曲で、私はすごく気に入ってます。

──誰か亡くなってしまった人へのメッセージのようにも取れるし、もっと広く、旅立った人への思いだったりもするのかなと思って聴いていました。

Miyuu まさにそうですね。自分が会ってない人でも、例えばすごく有名な方が亡くなったりとかもしたし、身近ではないけど、何かあったかとか分からへんし……って、考えても考えても答えがあるものじゃないし、ずっと心の中にモヤモヤ抱えてしまうなあっていうのを曲にしてます。

──次は、先ほどもお話しいただいた「fly」です。

Miyuu これは映画ありきの曲なんですけど、映画は「東京」「夢」「挫折」といったキーワードからストーリーを膨らませていったので、そういうワードを意識しながら作っていきました。自分も大阪から上京してきて、何かうまくいかへんことが続いたりとか、「思ってたのとちょっと違う」みたいなことがいっぱいある中でも、「まだできる、まだできる」みたいな。「まだやりたいことがあるんじゃないか」みたいな気持ちで今も生きてるわけですよね。登場人物も各々、夢を追いかけてる人たちのストーリーなんですけど、「夢を追いかけるには壁もあるけど、願い続けることで、もしかしたら未来は変わっていくかも」っていう希望をテーマに書きました。



──東京には慣れましたか?

Miyuu 慣れました。けっこう最近は、東京が好きになってきました。以前は「魂、売るもんか!」って思ってたんですけど、今は「魂どうぞ!」って感じで(笑)。



──それは差し出しすぎでは?(笑)

Miyuu (笑)前は受け入れる自分になれてなかったというか、ホンマに違いを否定しちゃうタイプやったんですけど、あんまりそれを意識してなかったんですよ。今振り返ると、「標準語、ムリ~!」って思ってたんですけど、今はそんなことどうでもいいなって(笑)。最近はそういうちょっとした違いとかも楽しめるようになってきて、私自身も東京を楽しめるようになってきました。

──それは何よりです。次も先ほど話が出た「summer together」ですが、この曲の歌詞に「LA LA LA LA」とか「RAINBOW」という言葉が入っていますよね。今回のアルバム・タイトル『LA LA RAINBOW』は、この曲から来たものなんですか?

Miyuu 今までのアルバム・タイトルは、ストーリーとか意味みたいなものをけっこう大事にしてたんですけど、今回は逆に、意味とかじゃなくて響きとか直感みたいなものを出してみようかなと思って。だからタイトルは、全く何も考えてないんですよ。「楽しそう」「明るい気分になれる」「ハッピー」っていうことだけを意識して、パッと思いついたのが『LA LA RAINBOW』やった、っていうだけというか(笑)。

──そうだったんですか。

Miyuu 気づいたら、確かに「summer together」に「LA LA LA LA」って入ってたなと(笑)。「RAINBOW」は配信ライブのタイトルもあったし、カラフルな感じにしたいというのもあったんですけど、もしかしたらあの曲からパッと出てきたのかもしれないです。


これからも「血の通ったもの」を届けていきたい

──次が「red」。これはモロに色名の曲ですが。

Miyuu これは1月の「Over The Rainbow」の新曲で、今までは自分の感情とかを大事にして歌詞を書いてきたんですけど、この曲は友達の恋愛体験について書いた曲なんです。小学校からの幼馴染みなんですけど、その子が学生当時に付き合ってた相手との恋愛を横で見てて、「うわー、激しい恋愛してるなー」と思って。大人になって、その人とは別れたんですけど、「アタシのあん時の曲書いてや!」って言われて。すごい図々しい友達なんですけど(笑)。

──押しが強い(笑)。

Miyuu ずーっと言われてたんですけど、自分の感情メインで曲を書いてきてたから、書けなかったんですよ。でも今回、色ありきで「red」というキーワードがあって、「情熱的な感じがいいよなあ……」と考えてたらその子が浮かんで。「よし、あの子になりきって書いてみよう!」と思って書いた曲です。でもサウンドは、それとは対照的にアコギから入るような、わりとゆっくりした感じなんですけど、メロディーは洋楽をすごく意識して作ってて、サビからできて。あと、せっかくマイキーさんと一緒におんねんから、英語を使いたいなと思って、サビは全部英語にしようと決めて作りました。マイキーさんに教えてもらお、と思って(笑)。

──「過去の出来事も糧にして、これから生きていこう」というニュアンスになっているのは、そういうことが下敷きとしてあったんですね。

Miyuu そうですね。実際、彼女はその恋愛を通じてすっごい成長したなと客観的に見て思ったんですよ。本人にとってもいい経験やったというか、たぶん一生懸命やってたからすごく今に生きてるんだろうなと感じて、そういう曲にしたいと思いました。恋愛をして苦しいこともあるけど、その場その場を一生懸命生きてたら、絶対自分のためになってるんじゃない?っていうメッセージがこもってます。

──次の「shine on you」は秋の曲ですが、曲も短いし歌詞もシンプルですよね。

Miyuu これは11月、オレンジをテーマにした曲です。私、季節では秋が一番好きなんですよ。でも、秋をテーマに曲を書いたことがないなと思って、「ザ・秋」みたいな、これを聴けば秋のワードが散りばめられてます、みたいな曲を作りたくて。ストーリーと言うよりは直感で、みんなが一回聴いたら歌える、みたいな曲にしたかったのと、自粛期間中にウクレレを始めてたので、「せっかくやったら、ウクレレで録ってみよう」と思って、デモはウクレレで録ったんです。サビは1回聴いたら絶対覚えられるような曲だから、それこそみんなで集まれるようになったら、ウクレレを持ってきてもらって「一緒に歌おう会」みたいなのをしたいなと。そういうのをコンセプトに作ったので、できたら今年、少人数でもみんなでやれたらいいなと思ってます。

──それはいい光景ですね。11曲目、事実上の最後の曲が「purple」です。

Miyuu この曲は、わりと「今までの自分」感が残ってる曲かなと思います。

──すごく複雑な感情が込められた歌詞ですよね。

Miyuu そうですね。人生一回きりなので、後悔したくないじゃないですか。「あの時、あれをやっておけばよかった」みたいな。でも私はすでに一つ、「あと一歩チャレンジしようと思ってたらできたのにな」という後悔があるんです。でもそれって、「いつだって一歩踏み出したら変わるかもしれへんのに、何を私は後悔やって終わらせてんのやろう?」と思って。まだ生きてるし、いつ死ぬかも分からへんのに、やらんでええんかなと。「もう年齢が……」とか「時間が……」とか「お金が……」とか、理由を作ろうと思えばいっぱいあるけど、ホンマにやらんといつ死ぬか分からへんで、と。それこそ、ここでもコロナが影響してて(笑)。だからこの曲は、「後悔しない生き方は、今からでもやればできるから」っていうのを、自分にも言い聞かせるために作ったし、聴いてもらう人にももしそういう思いがあったら、「あ、今からやれるんだ」っていう勇気を与えられたらいいなと思って曲にしました。

──なるほど。

Miyuu 「後悔」というワードとか、ちょっと重いじゃないですか。だからこそ、「今やねんで」っていう。この曲を最後にしたのは、私自身が、後悔をそうじゃないものに変える続きを見せたいと思ったからです。

──となると、その後に「red」のリプライズが来ているのはどういう理由なんですか?

Miyuu これは直感です(笑)。サビの後のところが気に入ってて、それで終わらせたいっていうだけなんです(笑)。前回のアルバムもエンディングみたいなのを入れてるんですけど、その時は旅の終わりみたいな感じで、キレイな感じで終わらせたくなかったんですよ。だからデモをiPhoneのボイスメモで録ったのを、そのまま入れたんですね。本当は今回も同じように粗い感じで終わらせたかったから、マイキーさんに「これ使ってください」って言ったんですけど、「いや、クオリティ低すぎてムリ」って(笑)。「これは録り直しましょう」って言われて、こちらは「粗い感じで終わらせたいんです」って伝えて録ってみたら、全曲終わった後で「まとめ」みたいな気持ちでやれたのもあって、結果的によかったかなと思いました。これはワンテイクなので、そういう粗さも残ったと思います。



──そうしてできたアルバムが24日に発売されて、ライブもまだちょっと状況が不明確な感じですが、とはいえこの先、どうしていきたいですか?

Miyuu 「ライブができひんから曲を作ろう」とかじゃなくて、「ライブができひんなら、新しい何かで届けてみる?」ということを、楽しく前向きに考えてます。去年はそれでいろんなチャレンジをさせてもらったんですけど、これからの活動はより一層、自分の血が通ってるみたいな、作品を届ける時に、タイミングとかも自分の意志とすごく近くにあるようなやり方をして、あったかいものをそのまま届けられたらいいなと思ってます。例えばパッケージ一つにしてもこだわりたいし、「こういう思いでこうした」って言いたいし、グッズだったりも自分の手作りだったり、ちょっと粗くても自分の思いがこもったものを意識して届けられたらいいなと思ってます。そういう1年にしたいですね。

──そして、「令和のアグネス・チャン」も頑張ると。

Miyuu そうですね、次のオンエアで落ちてるかもしれないですけど、頑張ります(笑)。

NEW ALBUM『LA LA RAINBOW』

2021年3月24日(水)On sale!


Miyuu 
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高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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