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BACK-ON 結成15年感謝の想いが詰まったセルフカバーアルバム『FLIP SOUND』制作秘話!

2021.02.15
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昨年15周年を迎え、その一環として2月17日に2枚組の『FLIP SOUND』をリリースするBACK-ON。過去曲のセルフカバーによるDisc 1と、現在の2人体制になってからの配信限定曲が初めてCD化されるDisc 2からなるこのベストアルバムはどのように制作され、今後にどうつながっていくのかを、いろいろと聞いてみました。 新曲「Down」についても詳しくお聞きしています!


タイトル『FLIP SOUND』の由来とは……?

──まずは、このタイミングでセルフカバー・ベストをリリースすることになった経緯を伺いたいんですが。

KENJI03 昨年、気づいたら15周年だなと思って。もともとはフラッとニューアルバムでも出そうかなと思ってたんですけど、せっかく15周年ということで、何か一つ、今までの集大成的なものをテーマにして作った方がいいんじゃないかと思ったんですよね。4年前から僕ら2人体制になって、ライブでも昔の曲を演奏している中で、同じ曲でも以前の体制とは違う演奏になるのは当たり前じゃないですか。だから今までの既存の楽曲を集めたベストアルバムというよりは、ライブでやってる昔の楽曲を、今の僕らのサウンドでもう一回リニューアルし直して、周年ということでアルバムを作ってみようかなというのが最初のきっかけでした。

──その選曲について、資料には「タイアップ曲を中心に」とあります。その意図は?

KENJI03 特にそこまで意識はしてなかったよね?

TEEDA うん。でも海外でもライブをやる時に、過去曲の音源も使って演奏するので、タイアップ曲って演奏頻度も高いし、どうせだったらタイアップ曲の方がファンのみんなも喜んでくれるだろうし、原曲との違いも分かるんじゃないかなと。そういう部分も含めて録り直して、今の体制での100%で演奏したセルフカバー・バージョンでやれたらと思って選曲したという感じですね。

──タイアップと言えば、「アイシールド21」関連の曲が3曲入っていますが、つい最近「アイシールド21」がツイッターのトレンドに入っていて、ちょっと話題だったんですよね。

KENJI03 そうみたいですね。その直前にスーパーボウルがあったからですかね? 偶然なんですけど、ちょっとタイミングいいなと思って(笑)。

TEEDA 今回、収録している「BLAZE LINE」という曲が「アイシールド21」のオープニングだったんですけど、前回は途中に女性のチアリーディングの声を入れていたんです。それを今回は変えて、もう親世代になったので子供たちに言ってもらってBACK-ONを応援してもらうという声を入れてみたりして。そういう面白いストーリーもあったらいいなと思って、やってみました。

-BACK-ON / BLAZE LINE

──タイトルの『FLIP SOUND』は足立区のスタジオの名前なんですね。

KENJI03 はい。僕らが中学生の時から通ってたリハーサルスタジオなんですけど、今回「タイトルはどうしようか」という話になった時に、無理やりとってつけたような名前よりも、僕らに紐付いたようなタイトルはないかなと探したんですよ。探したというか、ちょうど僕が実家にいたんですけど、ふと「あのスタジオはどうなったの?」と思った時に「この名前いいな」と思って。パッと聞くと「ん?」ってなるかもしれないけど、やっぱり自分たちの原点だし、それこそ収録されている楽曲のリハーサルもほとんどそこでやってたっていうストーリーもあって、自分たちの出発地点なんですよね。「これどうかな?」と思ってTEEDAに相談して。

TEEDA 今はコロナの影響もあって若干休業中みたいな感じなんですけど、「どうかな?」って話になった時に「いいんじゃない? 一応許可は取ろうか」ということで電話して、「お世話になってたんで『FLIP SOUND』って名前を使いたいんですけど」って言ったら「逆にいいの? こんなスタジオの名前使ってもらって」って。「いや、ぜひぜひお願いします」と。

KENJI03 俺、その電話のやりとりを横で聞いてたんですよ。そのスタジオのオヤジは中学校から知ってて、すっげえガミガミ言われてて。だから急にかしこまられて、意外すぎて笑っちゃったんですよ(笑)。

TEEDA そうそう(笑)。KENJI03がアンプを買ったとかスピーカーを買ったとか言って持っていっても、「そんなんじゃダメだな!」って。



KENJI03 「ニセモンだ!」ってね(笑)。絵に描いたようなイングヴェイ(・マルムスティーン、速弾きで有名なスウェーデンのヘヴィーメタル・ギタリスト)好きのサラサラのロン毛で、ロビーでかかってるビデオは常にイングヴェイとかそういうバンドので。

TEEDA ディープ・パープルとかね。

KENJI03 「頑固メタルオヤジ」なんですよ。そのオヤジがすごく優しくなった瞬間を聞いて、やっぱりこのタイトルにしてよかったなと思いましたね。感謝の気持ちを込めて。

──今回のベストは2枚組で、15曲収録の「Disc 1」がセルフカバーということですが、カバーをするにあたって全体の方針みたいなものはあったんでしょうか。

KENJI03 まず、「全部録り直す」ということですね。それと今回はタイミング的にコロナ禍の中での制作になったので、レコーディング・スタジオとかを押さえるのにもすごく時間がかかったりというのもあって、ほとんどを僕の自宅のスタジオで作りました。ミックスは外部のスタジオで録ったんですけど、この際だからそこ以外の部分、ドラム録りとかも全部、家でやろうと思って。そういう新たな挑戦を自分の裏テーマとして掲げて制作してみました。

TEEDA 選んだ中にはかなり初期の楽曲とかもあったりして、確かに今の技術でやれば原曲よりうまく歌うことはできると思うんですけど、でも当時の雰囲気感とか勢い感とかをすごく重視しようと思いました。原曲を何度も聴いてそれを真似して、さらにプラスになるように作ったりしましたね。

KENJI03 こういうことを言うとアレなんですけど、実はリスナーとしては「セルフカバー」ってあまり好きじゃなくて。やっぱりどうしても、キャリアを積むと演奏力とか歌唱力は上がってくるじゃないですか、当たり前に。でもそうすると、逆に情熱とかが失われていきがちだと思うんですよね。だから俺たちは「セルフカバー」というよりも、また別のアプローチをかけて、スキル自慢じゃないものにしたいなと思いました。

──序盤だけ見ても、1曲目の「Butterfly」は原曲に凝った味付けが施されていて、逆に2曲目の「STRIKE BACK」はすごくストレートなカバーになってますよね。どう料理するかは、曲によって使い分けたという感じですか。

TEEDA そうですね。どうしたって変えようがないというか、変えたらよくならないという曲もあったりしますし。例えば「STRIKE BACK」はわりかし完成されていて、でもそこで今のサウンドにしたらどうなるかというところで録り直して。歌い方とかも変えてみようと思ってやってみても、何かしっくりこなかったんですよ。変えて悪くなるぐらいだったらストレートにやった方がいいかなとか、もっと根本的なサウンド感を見直すべきなのかとか考えて。逆に「Butterfly」だとKENJI03のリアレンジの中でヒップホップな、トラップっぽいビート感もあったりとかしたので、もともとあったラップを乗せようと思っても何かそのビート感に合わず、KENJI03にも「これ、ラップのフロー変えちゃっていいかな?」って言ったら「あ、全然いいんじゃない?」と。「歌詞も変わっちゃうけど、やっちゃうよ?」ということで録って、ガラッと変わったりとか。セルフカバーとはいえ、ガラッと変えた方がいいものであればそうしちゃうし、という感じでけっこう柔軟にやりました。

──では曲によって、「セルフカバー」に近いものもあれば「リメイク」に近いものもあるという感覚ですか?

TEEDA まあ、「リメイク」まではいかないですけどね。

KENJI03 「STRIKE BACK」に関しては、音とかを引いたって感じですかね。足されてたシンセとかを排除してシンプルにしたりとかっていうアプローチをして、逆に「Butterfly」はメロディーだけを核として残して、リミックスでもないけど、そういうアプローチをかけたり、曲によって「ああしよう、こうしよう」という感じでやってました。


自分たちの過去と正面から向き合ったセルフカバー作業

──原曲を守る方向の曲、崩す方向の曲がありますよね。その違いは、お二人の感覚で?

KENJI03 そうですね。もちろんオリジナルがいいと思ってその作業をやっていったので、“イヤな崩し”にならないようにバランスを見て、アレンジを決めていきました。



──原曲を聴き込んでカバーの方向性を決める作業というのは、まさに自分たちの15年と向き合うことだったと思うんですが。

TEEDA そうですね。歌詞的に「ここはもうちょっとちゃんとした風に直したいな」という部分もあったりしたんですけど、「この時の自分は、頭が悪くて勢いだけだったんだな」とか、そういうのを大事にした方がいいのかなと思ったり。そこで歌詞を作り直しちゃったら、わかりやすくはなるだろうけど、この当時の自分が何を言おうとしてたのかがぼやけちゃうなと思って。「ここは残しておこう」とか、そのさじ加減が難しい部分はありましたね。帳尻を合わせるという言い方も変なんですけど、その時の勢いと今の感じを足した状態でいたいというのを表現するために、すごく向き合ったなと。今それをやる恥ずかしさもあったし、どこまでそれをやるかというせめぎ合いが、自分の中にはすごくありました。

KENJI03 僕は単純に、オリジナルがすごく好きだし、それを超えたいという気持ちもあるんですけど、どちらかというとアナザー的な、もう一つのアプローチというスタイルで今回はやりたかったんですね。今の自分がBACK-ONとして活動してきたキャリアの中と、自分がコンポーザーとしてやってきたキャリアの中で、また新しいアプローチをやったらどうなるのかなという、単純にフラットな気持ちで作りましたね。逆にあんまり意識しすぎたりとか作り込みすぎないようにというのは、自分の中で意識して作業しました。

──聴いていく作業の中では、その時々の思い出とかも蘇ったのでは?

KENJI03 5人とか4人とかで楽曲を作ってた時代もあったので、発見もすごくあったんですよ。パラ(パラデータ。ミックスする前の楽器パートごとのファイル)とかをいただいて聴くと、聴いたことのなかったフレーズがあったりして、「何だ、こんなんあったんだ!」とか。「これ、当時は後ろに引っ込めてたけど、メインで出した方がよくない?」と思って出したのが、「flower」のメインのギターなんです。

──確かに。

KENJI03 そんなフレーズが入ってたなんて、知らなかったんですよ。「これいいな!」と思ってパワーコードとかの音を排除して、それを採用してメインのギターフレーズに入れたりとか、パズルみたいな感じでできた曲もあったし。発見はとにかくたくさんありましたね。

TEEDA 去年の配信アルバムでセルフカバーしていた「Chain」という曲(「Chain2020」としてDisc 2に収録)では、「ちゃんと弾くとすっきりロックなリフが鳴ってるけど、オリジナルだと何か変な鳴りがあるんだよな」って調べていったら、おかしなリフが入ってて、ちょっと不協和音みたいになってるんですよ。「これ、ダメだよな。でもこれが入ってないと、ヘビー感が出ないんだよな」と。そういう発見もありましたね。

KENJI03 重ねのマジックじゃないですけど、そういうのも見えましたね。



TEEDA 「これ、何だ!?」みたいなね(笑)。

KENJI03 他のメンバーもいた時代の曲なので、他のメンバーの思いついたフレーズとかも入ってるわけじゃないですか。そういうところもまた発見で、「こういうフレーズは面白いな」とか「自分だったらこのフレーズは思いつかないな」というのが見えてきたりして、楽しかったですね。

──他のメンバーがいた時代の曲も、いったん解体して再構築して、2人バージョンにしたと。

KENJI03 はい。解体してかけらを集めて聴いて、「これいいな」と。基本的にはドラムから何から全部、ウチで録って、基本の部分は全部新しい今のサウンドにしたかったので。今の自分たちの音で構成して、昔の音はつまんでサンプリングで入れるという形にしました。

──家をリフォームした時に、古い柱の一部を別の場所に生かすみたいな。

KENJI03 そういうことです! 新日本プロレスの合宿所みたいな(笑)。

TEEDA 「匠の粋な計らい」みたいなね。

──今回セルフカバーした中で、一番力が入った曲はどれですか?

KENJI03 それは考えたんですけど……全部大変でした。ホントに大変でした。全部思い入れもあるし、1曲1曲それぞれに、聴く人の思い入れがすごくあるじゃないですか。特にタイアップでアニメのテーマソングにもなった曲が多い中で。そう考えると手抜きは絶対にできないし、それによって「やっぱりオリジナルがいいや」と思われるのも絶対にイヤだったから、そういう点では特に時間をかけたのは……どの曲というより、ミックス作業ですかね。そっちにすごく時間がかかったなっていう印象があります。

TEEDA 僕なんかはKENJI03がオケを作ってる時とかにやりとりしていて、大変そうだなと思ったのは「flower」ですね。この曲自体にファンがいて、オリジナルを知ってる人がすごく多いんですよね。今回、オケは確実によくなってるし、KENJI03もそれに対してメロディーを乗っけて、何回も録ってるわけですよ。それを聴いて「あ、いいじゃん!」って思うんですけど、KENJI03には「これでいいのかなあ?」というか、「オリジナルを聴いてる人たちが、いいって言ってくれるかな?」という気持ちがあって、「いや、もう1回やり直す」みたいなのがけっこうあったんですよ。そういう、思い入れがある曲ほど緊張感があるし、「今度のカバーは微妙だったよね」「オリジナルの方がいいよね」って言われるのは、ある意味当たり前だったりするのかもしれないですけど、やっぱり「すごくよくなったよね!」って言われるものが正解だと思うし。そこがすごく緊張感あったなというのは感じました。

-BACK-ON / flower

KENJI03 その時の思いとか情熱とかって、「もう1回録れ」って言われても、絶対録れないんですよね。そういう意味では、歌ってすごく深いし、難しいなっていうのを改めてすごく感じさせてくれたなというか。それこそ、リズムとかピッチが合っていようが、グッとこないものはこないんだなというか。最初に歌を録ったのは「flower」だったんですけど、最初に思いっきりつまずいたんですよ。

──というと?

KENJI03 しっくりこないんですよ。「何かよくないんだよね」「いや、よくなくなくはないんだけど、よくないんだよね」とかグルグルなって、「どうしよう、これから先?」と思ってすっごく悩んで、TEEDAにも何回も相談して。

TEEDA やっぱりうまくなってるから、グルーブに裏ノリ感が出てたりとか、ビブラートがすごくキレイになってたりとか発音がハッキリするようになったとか、そういう部分はキャリアの中で出てきてるものだし。ライブでやったらすごく心地いいんだと思うんですけど、オケになった時に、その当時の勢いだったり、パーン!って伸びるような、ビブラートとか使わないで精いっぱい頑張った歌い方とのギャップが生まれるんですよ。それで「どうかな?」って聞かれて、僕はメッチャいいと思うんですけど、「何か違うんだよな」って言って、オリジナル曲を聴きながら歌ってみたりもして。その結果、オリジナル曲も踏まえた上で、ちゃんとそれを超えた感じで落ち着いたんです。「ああ、よかった」と思って。



KENJI03 そうだね。さっきの質問に戻るんですけど、ボーカルの録りが一番大変だったのは「flower」だったかもしれません。

TEEDA 悩んでたよね。

KENJI03 すごくみんなが好きな曲だし。もともとは、年末にこの曲だけ先行配信する予定だったんですよ。でも思ってるようなボーカル・テイクが録れなくて、自分たちが納得しないまま出すのはイヤだなと思って、その時は配信するのをやめたんです。そこは時間がかかったなっていう記憶がありますね。

──なかなか難しい作業ですよね。

KENJI03 だから、セルフカバーは二度とやりたくないです。こんなに難しいものだとは思いませんでした。

TEEDA だって、自分じゃ分からないからね。人に聴いてもらって「こっちの方がよくない?」とか言われて初めて「あ、ここはよくないのか」とか「そういうイメージはなかったな」って思ったり。だから相談しないと分かんないというか。

KENJI03 だから、普通のカバーの方がやりようがあるなと思ったんですよ。やっぱり、自分たちのものを崩して作るっていう難しさ、「こんなにも大変だったんだな」というのを思い知らされましたね。自分たちでもう一回探りながら作る感じで、明確なゴールがなかったからこそ難しかったんだなというか。

──ということは、今後ライブでこれらの曲を演奏する時は、基本的に今回のバージョンになるということですか?

TEEDA そうですね。

KENJI03 ……そうですね。

──何だか急に歯切れが悪くなりましたが(笑)。

KENJI03 そこまではまだ考えてなかったっていう(笑)。とにかく俺は音源を完璧に作るっていうゴールを目指してたので、まだ考えられてなかったです。

TEEDA 過去曲をライブでやってた時の歯がゆさみたいなものも、これで払拭できた部分もあるんですよ。これをライブでやったらもうちょっとタイトに聞こえるんじゃないかなとか、今の自分たちが求めてるようなビート感でやれるんじゃないかなとは思ってます。

──2人体制になってからのライブで「もうちょっとこうした方がいいな」と思っていたようなところも盛り込めたと。

TEEDA ああ、そうです。例えばラップのところを、オケでダブルで流してたところがやたら重ねてあったりしたんですよ、そうすると邪魔だったりとか。今までライブで歌ってきて、お互いにグルーブ出してちょっと後ろノリになったりした時にそういうのがあると、ズレが出ちゃうんですよね。だったらここは外してグルーブ出していこうという点とかは、ライブも意識して作れたなと思います。


新曲「Down」のきっかけはアメリカン・プロレス!?

──続いて「Disc 2」なんですが、こちらは配信限定アルバムとして発表されていたものが、初めて盤になるということで。やはり自分の作品が盤になるというのはいいものですか?

KENJI03 単純に、マスタリングで少し音圧が上がったりとか、そういう作業はしました。基本的には配信のバージョンとそこまで違いはないですけど。今回、2枚組で出せるということになって、まだ2人体制では盤はなかったので、形にして出したいなと思って。

TEEDA 昔から応援してくれてるファンの人たちはDisc 1で「セルフカバーってどんな感じなのかな」って聴いてくれたり、それから初めて僕たちの作品を手に取って聴いてくれた人が、「あ、カバーはこんな感じですげえカッコいいね」となり、Disc 2では、2人体制になってからの楽曲を今まで聴いたことなかった人も、今の体制を好きになってくれたらなと思いますね。歌詞カードもついてるんで、「こんなこと歌ってるんだ」と思ってもらえるのもいいですし。配信で広がるのもうれしいんですけど、盤の形で手に取ってもらって、大事に聴いてもらいたいなというところもありますね。

──ジャケットアートは、「配信だったものが盤になった」という点で、どちらかというとDisc 2のイメージに近いのかなと勝手に思ったんですが。

TEEDA それはちょっとありますね。最初、KENJI03が「こういうイメージで」と出したものから何パターンか話を広げていって、デビュー当時からずっとデザインをやってくれてる方と話し合って、「やっと盤になるから、だまし絵のようにCDがプリントされている方が面白くないか?」というので落ち着いて、「これ、面白いかもね」という風に決まりました。

──そしてこの2枚組に新たに収録されているのが、「Down」という新曲ということですか?

KENJI03 「Down」は配信シングルとしてリリースされる曲なんですが、今回の2枚組を買っていただくとスマプラのコードが入っているので、購入者は先行で聴けるという仕組みになってるんです。

──これはどういう曲ですか?

KENJI03 もともと、1曲だけ作るということでどうしようかなと思って、最初はバラードが自分の頭の中にあったんですよ。でも久しぶりの新曲でバラードというのも何からしくない感じがして。最近、WWEというアメリカのプロレスを子供と一緒に見てて、子供はめっちゃハマっててフィギュアとかも買って一緒に遊んでるんですけど、映像で流れてくる音楽とかもめっちゃカッコいいんですよ。「あ、だったらWWEをモチーフにして曲を作ってみたらどうかな?」と思ったら自然にフレーズが浮かんできて、ヤベえ!と思ったんですよ。「バラード作ろうと思ってたのに、他の方向に行っちゃった」と思って(笑)。でも「こんな感じでいいかな?」ってTEEDAに投げてみたら「いいじゃん」って言うんで、これで行こうと。

──思わぬ方向転換だったんですね(笑)。

KENJI03 歌詞も、もともとはWWEをモチーフにしようかなと思ったんですけど、今のコロナ禍の中でみんな足踏み状態だし、だったら「みんなで次の世界に踏み出そうぜ」っていう応援ソング的なところに落とし込もうかなと思って仕上げました。最初、Aメロまでは歌詞を書いてたんですけど、「このまま行くと小さな世界の曲になっちゃうな」と思って。

──WWEのための曲みたいになっちゃうと。

KENJI03 もうちょっと人々に響かせる何かがほしいなと思った時に、せっかくならみんなの背中を押せるような、熱い気持ちになるようなテーマの歌詞にしようかなと思って。

TEEDA この「Down」みたいな曲ってBACK-ONらしくて好きなんですけど、最初、ミドルバラードを作るっていう話を聞いた時に、「それはそれでいいんだよ」って言ってたんですよ。オケはKENJI03が作ってるし、方向性は尊重したいし。そう思ってて送られてきたデモを聴いたら「全然ミドルバラードじゃねえじゃねえか」って思いつつ(笑)。でも僕はハードな曲が好きなんですよね。去年リリースして、今回のDisc 2に入ってる「three two one」っていう曲もそうなんですけど、ドロップしたギターで攻撃的な曲がBACK-ONっぽいなと思うので、この「Down」もテンションが上がって、「ああ、いいね」って思いました。

KENJI03 確かにBACK-ONっぽいんですけど、自分の中での裏テーマがあって。前の体制ではトップラインの作り方として、けっこう王道を意識して作ってたんですけど、あえてそれを排除して、今までの俺を知ってる人だったら作りそうもないと思うメロディーを歌ってみたら、みんなどう反応するかなと思って。そういうところで、あえてマイナー調でいくというテーマでトップラインを作ったんです。いろんな人に聴かせたら、「変わったメロディーだね」って感じでわりとみんな同じ反応をしてくれて。最初、TEEDAに聴かせた時も、一瞬不安感があったじゃん? サビの感じが。

TEEDA きっとなんですけど、お互いにちょっと不安だったんですよ。KENJI03も「このラインってどうかな? キャッチーじゃない? 怖すぎる?」みたいな感じだったし、「いや、そんなこともないけど、どうかな? どんな言葉が乗るかだよね」って、お互い探り合いみたいな(笑)。



KENJI03 やっぱりこの2人ありきのBACK-ONだから、俺の志向が強すぎるのもだんだん怖くなってきて、LINEしたんですよ。「これ、どうですか?」って(笑)。

TEEDA マイナー調は置いといて、歌詞感とメロ感がキャッチーだからどうにでもなるかなというか、よくなりそうだなというのはすごく思いました。あと、今はこれだけいろんな曲がサブスクで溢れてるし、メジャーもマイナーもあんまり関係ないよな、と。聴いて残るのは聴感上よかったり、テンション上がったり、もしかしたら歌じゃなくてリフだけなのかもしれないし。そういうところをイメージしたら、「全然アリなんじゃない?」と思いました。

KENJI03 せっかくだから崩しに行く曲を作ろうと。

──実際、ライブの1曲目になってもいいぐらいの勢いがある曲じゃないですか。今回はシングルでもありますが、洋楽アーティストとかで「ベストアルバムに新曲1曲収録」というパターンって、ぶっちゃけあんまりいい曲ってないイメージがあるんですよ。でもこの曲はそうじゃなくて。

KENJI03 それ、すげえ分かります!(笑) 結果的にそうならない曲になりましたけど、そういう感じに聞こえたらどうだろうっていうのも実際ありました。そうなったらイヤだなと思って、でもそこに縛られすぎるのもどうかなと思って、結果何も考えずに作ったら、いい感じになったっていう(笑)。

TEEDA たぶん、ベストがDisc 1だけで、プラス「Down」だけだったら、ちょっと不思議感は出たかもしれない。けどDisc 2はわりとそっち方面にも行ってるので、この曲がDisc 1とDisc 2のちょうど中間部分をつないでくれているのかなという気はしますね。だから2枚全部聴いていって「Down」を聴いたら、すんなり入るような気がするというか。

──あとDVDの方には、ライブ映像とMVの他に、秘蔵映像が入っているということですが。自分もまだ見れていないんですが……。

KENJI03 じゃあ見ないでください(笑)。これは今話してきたようなことと真逆な、イモっぽい恥ずかしい映像なんで。まあ15周年ということで、ここまで応援してきてくれたみんなにも見せてないような映像とか、喜んでもらえる映像が入ったらいいかなと思って。実家に古いビデオカメラで撮った映像がけっこうあったんですよ。それを年末に頑張って編集してもらったものもあります。

──撮っておくもんだという。

KENJI03 本当にそう思いましたね。撮った時は単純にビデオカメラがあるのがうれしくて、誰か遊びに来たら撮ってたり、ツアーの時とかも持っていって撮ってたんですよ。それが今となればお宝なので。もっといろいろあったんですけど、これ以上見せるとBACK-ONのキャラが崩壊するなと思って。

TEEDA 初レコーディングの映像とか、結成当時からの映像がちょこちょこ挟まってる感じになってます。

KENJI03 初ツアーで京都に上陸して、うれしさのあまり京都のラーメン屋さんでビデオを撮りながら店員さんに「僕ら東京から来たんですけど! 東京から来たんですけど!」ってすごい言ってる映像とかもあって(笑)。

TEEDA ああ、言ってた言ってた!(笑)

KENJI03 横にいた外国人に「ヘイ!」とか声かけたりして(笑)。東京以外のところに行くっていうのがメッチャうれしくて。初ツアーでいかに浮かれてるかというのがよく表れてる映像になってます。

──15周年は昨年だったわけですが、コロナの影響で世界的に大変な状況になってしまいました。実際、昨年はどうでしたか?

TEEDA 我慢もすごくありましたし、何もできない時期もあったり、それこそ海外公演もできないとかもあったんですけど、でもそれで卑屈になってるのも何か負けたようでイヤだし。だから自分のできることを、お互いが探したりして、今だからやれることをやろうとか、プラスに考えられるように動いてましたね。

KENJI03 僕は逆に自分と向き合う時間が増えたので、いろんなものを吸収できて、自分にとってはプラスになった期間だと思います。だからこそ今回のセルフカバーのようなアレンジにもたどり着けたし、「Down」のような楽曲もできたので。

TEEDA 逆に言うと、今まで通りにライブもやれたとしたら、たぶんセルフカバーは間に合わなかった可能性もあるというか。

KENJI03 やったとしてもあそこまで崩してなかったかもしれないですね。ボーカルをリテイクするぐらいで、あんなに全部を切り崩して完パケまで全部自分たちでやるというところまでは行かなかったと思います。

──新しく接したものには、どんなものがありますか?

KENJI03 僕は、めちゃくちゃゲームをやるようになりました。もともと家族にはゲーム好きな人が多くて、僕自身はあまりゲームにはハマらないような性格だったんですけど、コロナ禍の中で子供が「あつ森」をやり始めて、一緒にやってたら自分がハマり出して、「フォートナイト」とかもやり始めて。おかげさまで今も続いてて、毎日やってます。

TEEDA そうなんだ。

KENJI03 時間は取られるんですけど、いいストレスのはけ口にもなるし、音楽的なアイデアとかも見えてきたりするんで、面白いアプローチもできそうだなと思ってます。



TEEDA 僕はもともとバイクに乗るのが好きで、別にコロナだからっていうわけじゃないですけど大型免許を取って大型バイクを買いました。GoProとかを買ってヘルメットにつけていろんなところを走った動画を撮って、ファンコミュニティクラブに「TEEDAモトブログ始めたってよ」っていう映像を配信したりして遊んでますね。

──今年ももう2月ですが、ここからどうしていきたいですか?

KENJI03 ライブに関しては、現状どうなるか分からないですけど、とにかく制作は続けつつ、次はオリジナルアルバムかなという感じですね。

TEEDA 状況がよくなったらライブもしたいですけど、落ち着くまでにはまだ時間がかかりそうなので、どうせだったら曲をいっぱい作ってリリースしていくのがいいかなと。ライブができないからってただ止まってるよりも、その方がファンのみんなにも、自分たちにとっても健康的かなと思いますね。今のウチにガッツリ曲をリリースして溜め込んでいれば、いざライブ解禁、世界でもやれるとなった時に、思いっきりストックがあってドカーン!といけると思うので。

──その時も楽しみですね。ありがとうございました!
撮影 長谷英史


 
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NEW ALBUM『Flip sound』

2021.02.17 on sale
高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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