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【林部智史】原曲のファンなので、オリジナルのときよりもアレンジは戦いました(笑)【カバーアルバム『カタリベ2』】

林部智史

【林部智史】原曲のファンなので、オリジナルのときよりもアレンジは戦いました(笑)【カバーアルバム『カタリベ2』】

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6年ぶりとなるカバーアルバム『カタリベ2』をリリースした林部智史さん。誰もが知る大ヒット曲から隠れた名曲まで12曲が選曲されていますが、なぜ今『2』だったのか、この選曲の理由は……といったもろもろについて、タップリと語っていただきました! そして後半には、ファンの方にはさらに楽しみになる情報も!
 
 
「無限の可能性を探るために、自分の原点であるカバーに再び向き合いました」
 

 
──『カタリベ』というタイトルとしては6年ぶり2枚目となりますが、タイミング的なものというのは何かあったんでしょうか?
 
林部 今年は8周年イヤーということで、「8」を横に倒して「∞(無限)」というコンセプトでやってるんですね。去年は7周年の「虹」、今年は「∞ 無限」という感じでお題を与えられて、そこからどういうコンサートをやって、どういう活動をしていこうかなと考えていくわけですけど、「∞ 無限」を渡された時に、「無限の可能性」という言葉がセットでついてきて、その可能性を探るためにあえて原点であるカバー曲をリリースしたいということになりました。
 
──なるほど。
 
林部 ちょうど『カタリベ1』が出て6年経って、「いつ出すの?」というお声もたくさんいただきながら、満を持しての今回になったんですけど、そのタイミング的にもちょうど良かったので、カバー曲で行くことになったんですが。6年空いた理由は、僕はカバー曲というか、カラオケ番組ありきでデビューさせてもらっているので、最初はカバーを求められていたんですよ。コンサートでもそうですし、お客さんは実際にカラオケ番組を見てコンサートに来てくれるから、カバー目当ての人が多いですよね。そんな中、もちろんカバーもたくさん歌っていくわけですけど、それだけだと、今後ずっと「カラオケ屋さん」になっちゃうし、「カバーの人」になっちゃう。それは避けたかったので、オリジナル曲に力を注いでいく時間というのが、この6年間だったように思います。
 
──オリジナル曲の自分を確立する時間だったわけですね。
 
林部 いわゆるオリジナルアルバムが、今『III(サード)』まで出ていますが、『I(ファースト)』と『カタリベ1』は同じ年に出たんですよ。だから『II(セカンド)』が出た時に、『カタリベ2』を出そうという話もあったんですけど、それだとまだ“カバーの人”をちょっと払拭できないから、せめて『III』を出した後に『カタリベ2』を出したいという話はしていて。そのタイミングが、コンセプトアルバムとかのおかげでちょっと遅くなって、今回に至るという感じです。
 
──やはりカバーきっかけで世に出ただけに、乱発はしたくないと。
 
林部 そうですね。一般的なイメージとしてもそうですし、自分自身も今後、カバー曲が尽きないとはいえ、オリジナルが生命線だと思っているので、乱発はしたくなかったです。
 
──最初に全体的なお話から伺いますが、今回の選曲に関しては、ご自分が愛聴されていた曲だと伺っています。
 
林部 そうですね、基本的には僕が歌ってきた楽曲、聴いてきた楽曲、自分の育ってきた時代時代の曲が多いですね。
 
──その中で前回と違うのが、全曲女性アーティスト、女性ボーカルの楽曲で統一されている点です。前回は男女混ざっていましたが、今回は何か意識されたんでしょうか?
 

林部 コンセプトは、僕の生まれた1988年以降の曲というところなんですが、結果的に女性曲になりました。前作も女性曲が多いですし、実際コンサートで披露させていただく曲も、女性客が圧倒的に多いんですよ。それは、お客様の年齢層や男女比率というところにも関わってくるのと、あと、形に残す時に女性曲の方が、僕の色を乗せやすいなという点に気がついたというのもあります。それは『カタリベ1』からの反省点でもあるというか、『カタリベ1』は男性曲をあつかった時に色が乗りづらかったというのが正直ありますね。
 
──そうなんですね。
 
林部 例えば、小田和正さんの「たしかなこと」。僕はこの曲がすごく好きで、同じキーで歌って『カタリベ1』に収録したんですね。この曲もいろんな方がカバーしていますけど、僕は原曲をすごく大事にしたいという気持ちがどのアーティストよりも強いと思っていて。そうすると、おのずとちょっと歌い方とかも寄せちゃうところがありまして、しかも小田さんと同じキーで歌ってると、良さというのが出しづらいなというのは思うんですよね。
 
──完コピになってしまうみたいな?
 
林部 そうなんですよ。それこそ避けたかったカラオケの感じになってくるので、そうなると、キーを変えられる女性曲の方が、僕の声自体にそこまでクセがないと思ってる分、カバーとしてはいいんじゃないかと。小田さんとは系統的に同じじゃないですか。「こう来るだろうな」というのが分かっちゃうというか。そういうのを避けるにはわりと女性曲が多くなりましたね。
 
──とはいえ、先ほど言われたように原曲をすごく大事にされているカバーだと思うので、個色の乗せ方にしても、わりと薄いですよね。そこの塩梅はどう考えられたんですか?
 
林部 女性曲の場合、男性が歌うというクッションが一つ入ると、それが色になりますよね。それに、もともと男性曲と女性曲では声域が違うので、声域の広さで言うと、男性しか歌えない曲、女性しか歌えない曲というのが存在していて、広瀬香美さんの「promise」とか本当に誰もカバーしてないぐらいの作品なんですよ。僕もけっこう歌うのは難しかったですけど、そういう選曲の時点で、誰もやってないところを選べたような気がしますね。
 
──なるほど。「大胆なアレンジ!」とか「こうしてみました!」みたいなところではなくて、もう選曲自体から色が出せていると。
 
林部 そうですね。逆にアレンジでは、より生音っぽくなるので、言い方を変えればよりおとなしくなりますし、より自分自身の声が生かせるアレンジに寄っていっちゃうので、曲が優しくなるんですよね。僕自身、その原曲のファンなので、「いや、このイントロは違うんだよな」みたいにならないように、僕は極力、口酸っぱくして戦いましたね。
 
──「戦った」ですか。
 
林部 アレンジャーさんは基本的にアレンジを変えたいものなので。原曲がある中で、真似はしたくないじゃないですか。というのはすごく伝わってくるんですけど、そこはみんなが面白いぐらいに戦ってましたね。「いやでも、原曲のこのフレーズは残したいよ」とか。でもそこにアレンジャーなりの個性というのも必要なところがあるので、うまいところを探していきました。やっぱり原曲ファンはいるし、僕自身その一人なので、押さえておきたい点は、僕は逆にオリジナルのときよりも口を出したというところで、今回の選曲になったというのはありますね。
 
 
リード曲&1曲目はデビューのきっかけになった「PIECE OF MY WISH」
 
 
──では収録曲について1曲ずつ、その曲の思い出なども含めてお聞きできればと思います。1曲目は今井美紀さんの「PIECE OF MY WISH」ですね。

 

林部 この曲は僕のデビューのきっかけになった楽曲ですね。僕のデビュー曲「あいたい」の歌詞が乗ってない状態のものを歌える人を探していたみたいなんですけど、「これが歌えるのは女性だろうな」という感じで探してたらしいんですよね。それでたまたま、「PIECE OF MY WISH」を僕がキー高く歌ってるのを聴いて、この子に歌わせたら面白いだろうなということで見つけてもらったという経緯があったんですよ。僕がデビューした時と、歌詞の内容とかもすごくリンクしていて思い出の楽曲なので、今回原点回帰というところで、リード曲プラス1曲目にさせてもらいました。
 
──今回のカバー集はもうこれで始めたいと。
 
林部 はい。無限の可能性を探るためのカバーの原点回帰というところで。
 
──頭からピアノで優しい感じになっていますね。
 
林部 形に残すためというよりは、よりコンサートをイメージして音作りしてもらってるんですよ。原曲はエレクトリック・ピアノで入ってるんですけど、それを生ピアノで弾いてもらって、コンサートでの再現性というところにこだわってアレンジしてます。
 
──今この曲を歌うことに対しては、感慨のようなものがあったのではと思うんですが。
 
林部 正直、その当時の感覚とかというのはないに等しいというか……やっぱり点数を取りにいく歌い方でしたし、点数を取りに行くキーでしたし。僕の場合、点数を取るにはギリギリまでキーを高くしないといけなかったので、その時のキーともまた違うんですよ。だから全く別物として歌ったんですけど、今、歌詞を見返すと、「夢を諦めない」というところもリンクしてくるので、そういった運命的なものがあって面白いなとは思いますね。僕自身今回、カバーする上で今度は発信者になるわけなので、そういう力を持つ歌にしたいなと思いながら歌ってます。
 
──時の流れを感じましたか?
 
林部 そうですね、この曲自体が91年の作品で、僕がカラオケで歌ってたのは10年前なので、この歌と出会ってからも、時の流れを感じますね。
 
──2曲目が、古内東子さんの「誰より好きなのに」です。

林部 この曲は『カタリベ1』の時から候補には挙がっていて、大好きな楽曲ではありました。プロになってからのコンサートでも候補に挙がっていて、でも歌えてなかったんですけど、今年2月のNHKホールでのコンサートで、ブラスセクションを入れるとなった時に、ピッタリの楽曲だなと。原曲は洋楽っぽいおしゃれさがあって、カッコいい楽曲なんですよ。今回、ブラスをやっと入れられるとなった時に、満を持して歌うことができたので、その流れで収録しました。
 
──3曲目は竹内まりやさんの「シングル・アゲイン」。
 
林部 僕はいろんな女性アーティスト曲を歌ってきていて、竹内まりやさんはその中でも割と多いんですよね。『カタリベ1』には入ってないんですけど「駅」をカバーしたこともあって、一番世の中の人々に聴いてもらってるカバーが、その「駅」なんですよ。今は再生数が数字で分かりますからね。次が高橋真理子さんの「ごめんね」で、「駅」がちょっと多いぐらいで。だから竹内まりやさんで歌いたい楽曲はいろいろある中で、何か1曲入れたいなと思っていたんです。「告白」とか「カムフラージュ」とか「元気を出して」とか、そのへんで悩んで、結局「シングル・アゲイン」になったんですけど。ここはやっぱり、自分の「駅」からの流れが大きかったですね。
 
──なるほど。
 
林部 まりやさんの声なのか、歌なのか、僕がカバーした時の響きなのかというところは、この曲が皆さんにどう聴いてもらえるかなと思っていて、その意味でちょっと楽しみな曲でもあります。このへんは正直……この曲が89年の作品で、「PIECE OF MY WISH」が91年なので、僕は1歳とか3歳の頃で(笑)、その時代にリアルタイムで聴いてきたわけではなくて、でもこういった曲は非常に多いんですけど。その次の「promise」もそうですね。
 
──先ほども話に出た、広瀬香美さんの曲ですね。

 

林部 これも当時から聴いていたというよりは、プロになって、より聴くようになった楽曲ですね。僕はちょっとラテン系というかスパニッシュ系の作品を自分で作ることがあって過去にも2作品CDになってるんですけど、その大元というか題材は、僕の中でいつも「promise」なんです。
 
──やっぱりそうなんですね。
 
林部 はい。でも今さかのぼって聴いてみると、なかなか珍しい楽曲なんですよね。すごくカッコいいじゃないですか。そこから、例えばポルノグラフィティの「サウダージ」とか「アゲハ蝶」とかにつながってきてるんだろうな、なんてことを思って。ちょっと動きの速い曲、そして手拍子も打てる楽曲を作りたいという時に、必ず名前を出す楽曲の一つが「promise」だったんですけど、名前を出すわりには、カバーする感じには全然なってなかったので、今回このタイミングで、改めて楽曲と向き合いたいなと思って、収録させてもらいました。やっぱりカバーすると、曲のキャッチーさと、あとコーラスのキャッチーさとかがすごく映えてる曲だなと改めて思ったので、今後の曲作りにまた生きそうですね。
 
──この曲に関しては、むしろ原曲よりもスパニッシュ色が少し強くないですか?
 
林部 原曲は逆に打ち込み系サウンドというか、機械系の音が意外と入ってるなということに、今回カバーして気付いたんですよね。僕はコンサートで歌えるようにという考えで、そういう機械系の音を極力減らして、よりオーガニックに作っていくので、そういう意味でも、よりスパニッシュ系のギターがフィーチャーされて、確かに強くなりましたね。
 
──この曲は97年の作品で、林部さんが9歳の頃だから、林部さんにおけるフラメンコ、スパニッシュの原点なのかと勝手に思ったりしたんですが……。
 
林部 ハハハハ。そういうわけではないですね。でも、「ロマンスの神様」あたりよりは、僕の中では「promise」が好きですね。楽曲のカッコよさがあって。
 
──次が杏里さんの「SUMMER CANDLE」ですね。
 
林部 僕の生まれた年の作品ですけど、もちろん当時聴いてたというわけでもなく。ちょっと洋楽チックなところは先ほどの「誰より好きなのに」とかと重なるところもありますね。AOR(アダルト・オリエンテッド・ロック……よりソフトで大人向けとされたロックのジャンル)っぽさ、曲の間の取り方……もともと、杏里さんもとある洋楽曲をモチーフにこの楽曲を作ってるんですけど、なかなかカバーの中でも違うカッコよさ、洋楽的カッコよさがある楽曲だなと思っていたので、入れたいなと思った楽曲ですね。
 
 
HYの「NAO」は僕ら世代には一番激アツな楽曲
 
 
──6曲目はDREAMS COME TRUEの「サンキュ.」。
 
林部 これは、アップテンポ枠でどんな曲があるかなと思って探した中で辿り着いた曲で。「promise」もアップテンポなんですけど、この「サンキュ.」もドリカムのコンサートでは手拍子が起こるような「ほっこりソング」なんですよね。だからバランス的にいいなと思って。当たり前なんですけど、吉田美和さんってメチャメチャ歌がうまいじゃないですか。歌がすごい上手な人のカバーって、なかなか難しいものがあるんですよ(笑)。MISIAさんも完全にそうなんですけど。そうなった時に、「未来予想図II」では勝負できないなと思って。それとか「やさしいキスをして」とかはカバーとしてメチャメチャ人気で、もちろん候補としても挙がってたんですけど、そんな中でもアップテンポの「サンキュ.」だったら、ちょっと僕のマイルドな部分も出せるんじゃないかなと思って選曲しました。
 
──この曲のコーラスも、全部ご自身の声ですか?
 
林部 もちろん。いつも通り、他の曲もコーラスは全部自分です。この曲は特に、コーラスとやり合う楽曲でもあるので、コーラスはわりと大きめに入ってますね。
 
──次が「NAO」。HYの曲ですね。
 
林部 これは僕ら世代ではたぶん一番激アツな楽曲で、高校の時にものすごく流行ってましたね。
 
──これは本当にリアルタイムなんですね。
 
林部 そうですね。リアルタイムの曲が実は意外に少ないんですけど、そのうちの一つですね。HYには女性ボーカル、仲宗根泉さんの泣き歌ソングが3~4曲あるんですけど、この歌も王道で。今年になってまた「366日」が流行ってるんですけど、あえてこっちに行きました。「366日」の方が話題にはなるんでしょうけど、僕はこっちの方が好きですね。
 
──次が松たか子さんの「桜の雨、いつか」ですね。

 

林部 これもカラオケで歌った楽曲でした。この曲はアレンジが武部聡志さんなんですけど、ピアノのリフレインとかにちょっと「春よ、来い」要素が含まれていて。「春よ、来い」もすごく好きなんですけど、この歌のリフレインもすごくキレイで、これはコンサートで披露したいなと思ってましたね。あと、最初この歌を持ってイベントを回ってたんです。「あいたい」とこの曲で。
 
──そうだったんですね。
 
林部 はい。でも形にしてなくて。そういう、デビューからの思い出の曲でもありますね。
 
──9曲目は矢井田瞳さんの「I’m here saying nothing」。

林部 これは6周年の時に披露した楽曲でもあるんですけど、その年は異国的な楽曲をやっていこうということになって、この曲もちょっとエスニックじゃないですか。なので、その時に選曲しました。だから2年前のコンサートで披露して以来の今回の選曲なんですけど、矢井田瞳さんだと、一番有名な曲は別の曲だったりするんですけど、当時もものすごく聴いてましたね。
 
──矢井田瞳さんの原曲は特にキーが高いと思いますが、そこの塩梅については?
 
林部 そうですね、本当に塩梅が難しくて。何が難しいって、矢井田さんは裏声を多用する方で、僕にはその裏声の切り替えはちょっと難しかったですね。だから「promise」と、このエスニック2曲は同じくらい難しかったです。そういうのもあって、この曲をカバーしている方はなかなかいないですね。それでいくと、次の「ほんとはね。」が一番カバーしてる人が多いですけど。
 
──より子。さんの曲ですね。
 
林部 ソニンさんとかもカバーしてますよね。ソニンさんがカバーしてるのも同じ理由だったんですけど、これはより子。さんの生涯が「24時間テレビ」のスペシャルドラマになったんですよね。小さい頃に病気をしていて、というストーリーを松浦亜弥さんが演じていて、最後、「ほんとはね。」を歌う場面があって、僕の体感ではメチャメチャ流行ってたんですよね。その当時もずっと歌ってて、そういう思い出の楽曲ですね。
 
──次がMISIAさんの「名前のない空を見上げて」。
 
林部 この曲も当時すごく聴き込んでた歌です。三拍子が心地いい楽曲で、玉置浩二さんが作られていて、すごく好きです。あと僕の2ndシングル「晴れた日に空を見上げて」という楽曲とリンクする部分が、すごく個人的にあって、その流れでもちょっと縁を感じて選びました。
 
──最後はAIさんの「ハピネス」ですね。
 
林部 もともと僕はR&B好きで、AIさんもすごく好きなんですけど、自分の声とはギャップがあって、歌う方じゃなくて聴く専門なんですね。その中で「ハピネス」は音楽学校時代によく歌っていた楽曲で。たぶん、リリースされたのも僕が音楽学校にいた当時だったと思います。もともとのサウンドはAIさんらしくR&Bで作られてるんですけど、僕がそのままR&Bでカラオケを作ると今のニーズとちょっとワケの分かんないことになるので、実はこの12曲の中で一番アレンジを変えました。原曲リスペクトではあるんですけど、今の僕に寄せるとこうなるだろうなという感じで、アレンジ的にはすごく攻めた感じになりましたね。あとは歌詞の多幸感とか、R&B度を強めるけど、ピアノ1本でそこを薄くしたり、あとは歌い方で薄くするために、ゴスペルグループのVOJAに入ってもらったり、あとは「みんなのうた」の「ポプラの伝言」で一緒に歌ってもらったひばり児童合唱団の皆さんに入ってもらったりしました。
 
──一番アレンジを変えることでアルバムに馴染ませることができたと。
 
林部 それはありますね。もちろん原曲リスペクトではあるんですけど、やっぱり原曲のままでは馴染まないというのもありますし、今の僕に馴染まないというのも正直あったので。選曲の段階でちょっと難しさはあったんですけど、でも、音楽学校時代という自分の熱さもあるし、子供たちも巻き込みたいなというのもちょっとあったりして、選曲しました。
 
──これで全曲について語っていただいて、何曲か「難しかった」という言葉が出ましたが、一番はどの曲でしたか?
 
林部 一番は「I’m here saying nothing」ですね。これは本当に声の切り替えが難しかったです。コンサートでは勢いで何とかなるんですけど、形にするとなると、音程とか声の切り替えの仕方とかが、なかなか難しかったですね。
 
──そもそも矢井田瞳さんが、歌い方だけではなく、声の出し方にもすごく特徴がある方だからこそ、というか。
 
林部 それはすごく感じましたね。音域が広いんですよ。Aメロよりサビの方が低いという楽曲ですし。だから全部そうですけど、オリジナルを歌うよりもよっぽど難しくて。それが本当に可能性につながってるのかなとは思いましたね。
 
 
カバーのみのコンサートもやってみたい!
 
 

──この12曲を仕上げて、通しで聴いて改めて思ったことはありましたか?
 
林部 収録順については、僕はいつも「この曲でコンサートをするとしたら」というところをけっこう意識して決めてるんですね。だいたい、3曲目、4曲目で雰囲気を変えて、真ん中あたりの6曲目ぐらいでちょっとアップテンポを持ってきて……みたいな作戦はいつも同じなんですけど。だから、この12曲でコンサートをやった時のことを考えて、曲順を選んだりしてるんですね。並び順的に自然になるように、聴いていく中で、次の曲のイントロが自然に流れるようなセットリストにしてますね。最後ハピネスはピアノ1本ですけど、逆にピアノ1本だから、真ん中に入れるのは難しくて、最後に入れるべき曲だなと思ったり。でもどうですかね、僕の方がまるっと聴いた時にどう思ったかというのは難しいですね。お客さんがどう思うかなので。
 
──「こう思ってもらえたら」というような狙いがある中で、また別の解釈もされるかもしれないと。
 
林部 はい、それはそれでいいと思うんですけど、やっぱりコンサートのように、流れるように曲から曲がつながっていて、あとは1枚通して、飽きずに流れればいいなと思ってます。
 
──そうすると、このままでセットリストにしたくなりませんか?
 
林部 なりますよ。なので、基本的にはこの感じでコンサートを考えるんですけど、12曲しか歌わないわけではないので、プラスアルファでオリジナル曲を入れたり、他のカバーを入れたりとか、休憩が入ったりとか、そういうことが入ってくると、またセットリストを変えたりというのはあるんですけど、もし12曲だけでコンサートをするなら、絶対これでいきますね。
 
──カバーアルバムを出した直後のタイミングだと、カバーのみのライブを行うアーティストの方も多いような印象があるんですが、林部さんはそういう予定はないんですよね?
 
林部 そうですね。カバーのみでという予定はないです。今回のライブも、アルバムを引っ提げてのコンサートではあるんですけども、僕のステージ的にこのアルバムだけのコンサートじゃなくて、次につながるコンサートをしたいと思っているので、やっぱりオリジナルとの違いを聴いてもらいたいんですよ。僕自身、オリジナルとの違いを感じたいということもありますし。だからもちろんアルバムを引っ提げてのコンサートではあるんですけど、逆にアルバム曲で歌わない楽曲もありますし、やっぱりここだけを見据えてるわけじゃないですね、僕に関しては。
 
──今後、他にやりたいことは?
 
林部 先ほどおっしゃっていただいた、カバーだけのコンサートというのは面白いかもしれませんね。
 
──そうなんですか!
 
林部 ただ、僕の大きなテーマは「コンサート・アーティスト」で、コンサートのお土産にアルバムを買っていってほしいという感じもあるので、アルバムを引っ提げてのコンサートって、実はあんまり経験がなくて。今回に関しても、半分ぐらいはすでに披露している楽曲だし、という感覚はあるんですよ。でも逆に、アルバムを引っ提げて、となると僕自身がどうなんだろうなというのはありますね。
 
─セットリストでいうと、よく「アルバム完全再現」というのもあって、それが好きな人も多いですよね。
 
林部 そうですよね。僕自身、例えばネタバレを見て映画に行きたくないみたいな感覚があるんですけど、予習して曲を知っておいた上でコンサートに行きたい人もいっぱいいるんですよね(笑)。その気持ちもやっぱり分かんないとなというのはあって。僕自身は、次のバンド編成とかも教えたくないぐらいなんですよ、ホントは。
 
──分かります(笑)。
 
林部 当日来て、「おおっ!」というのが欲しいんですけど、でもそういう「ネタバレ回」というか、ここから歌いますよというのも、確かにあってもいいのかなと。それはそれで、僕がやって何を感じるのかというのは……やらないで決めるのはおかしいかなとは正直思ってるので。
 
──やってみて、「やっぱりちょっと違うな」となるかもしれないけど、ということですね。
 
林部 そうです。基本は「やってみて考える」というのを大事にしてるので、今回『カタリベ2』が出て、今後もカバーアルバムが出たとして、それをミックスした「カバーコンサート」みたいなものができたら、どういう感じなのかなというのを調べたいですね。いや、「調べたい」じゃないな、「やりたい」です(笑)。
 
──では最後に、ファンの方へメッセージをお願いします。
 
林部 カバーというのは僕の歌手デビューの原点でもあって、今、コンサートではオリジナルの方が多くなって中心になってはいるんですけど、カバー曲というのはやっぱり僕の年代と、聴いてくださる方の年代の差を埋めるものでもあると思うんですよね。逆に言うと、カバー曲によってオリジナル曲をより新しく感じてもらうものでもあったりして、本当に無限の可能性に溢れてるのかなということで、今回は8周年という年はカバーでいこうと思ってます。カバーってけっこう保守的なイメージがあると思うんですけど、歌うのはオリジナル以上に難しいし、音作りというところでも、オリジナル以上に介入しましたし、ここはこだわってやってたところなので、僕自身、可能性を広げるための1枚でもあります。なので今後、この『カタリベ2』が僕の歌い手人生の未来を切り開く1枚になったらいいなと思うので、ぜひ聴いていただきたいと思います。
 
──ありがとうございました!
 
 

撮影 長谷英史


『カタリベ2』
2024.06.05 ON SALE

 

林部智史 CONCERT TOUR 2024
∞ 歌で編む 無限の物語 ∞

2024.6.4(火)  千葉市民会館 大ホール(千葉)
2024.6.7(金) カナモトホール(札幌市民ホール)大ホール(北海道)
2024.6.13(木) 東京国際フォーラム ホールC(東京)
2024.6.16(日) シェルターなんようホール(南陽市文化会館)大ホール(山形)
2024.6.22(土) 岡山芸術創造劇場ハレノワ 大劇場(岡山)
2024.6.23(日) 福岡国際会議場 メインホール(福岡)
2024.6.27(木) Niterra日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知)
2024.6.30(日) とちぎ岩下の新生姜ホール(栃木文化会館)大ホール(栃木)
2024.7.6(土) NHK大阪ホール(大阪)
2024.7.7(日) 静岡市民文化会館 中ホール(静岡)
2024.7.12(金) りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)劇場(新潟)
2024.7.15(祝月) 大宮ソニックシティ 大ホール(埼玉)
2024.7.20(土) 東京エレクトロンホール宮城(宮城)
2024.7.27(土) 相模女子大学グリーンホール 大ホール(神奈川)

“おうちでコンサート”
おうちで特別企画公演
和楽器の調べと共に
はやしべさとし 三十歳の旅立ち
~叙情歌を道づれに~ 奈良編
2024.7.13(土)
https://hayashibe-satoshi.com/ouchi-de-concert/

【林部智史 Official HP】
https://hayashibe-satoshi.com/

【林部智史 Twitter】
https://twitter.com/hayashibe3104

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記事情報

高崎計三

ライター

高崎計三

1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。