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【林部智史】7周年アルバム『RAINBOW』豪華作家陣による七色の楽曲たち

林部智史

【林部智史】7周年アルバム『RAINBOW』豪華作家陣による七色の楽曲たち

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デビュー7周年アルバム『RAINBOW』をリリースした林部智史さん。「7」にちなんで虹の七色をテーマにした7つの楽曲が収録されていますが、各曲は超豪華な作家陣の手によるもの。昭和歌謡の巨匠から“今どき”のポップ・クリエイターまでがそれぞれの色をイメージして作った楽曲が、林部さんの見事な歌声で表現されています。このアルバムの各曲と「7周年」の思いについて、たっぷり伺いました!

豪華な作家陣に「色」を選んでもらって制作した7曲によるアルバム!

──前回は昨年10月、アルバム『III(サード)』リリースの際にお話を伺いましたが、その時は「7周年記念として阿木燿子さん、宇崎竜童さんに楽曲制作をお願いしたら、思いがけない早さで「虹めいて」が完成した」とおっしゃっていましたよね。今年、7周年イヤーの予定は、そのことで多少なりとも変更になったんでしょうか?
 
林部 そうですね。そもそも『III』に収録するかどうかも曲ができ次第ということで、そこには入れないという案もあったんですが、入れられることになって。7周年に向けて「虹をかける」という意味で入れてもいいんじゃないかということで収録したんですよね。今年の2月にサントリーホールで7周年のアニバーサリーコンサートを開催したんですが、そこでは「虹」をテーマにコンサートを作って、「虹めいて」を最後に歌ったんです。その段階で、「虹」をテーマにしたアルバムを作れたらいいねという案がだんだんと進んでいってて。そんな中、昨年はお話ししていなかったんですけど、実はもう1曲いただいていたんですよ。
 
──あ、そうなんですね!
 
林部 それが今回収録している「七つの子・その後」で。けっこうトリッキーな楽曲で、タイトルからなかなか攻めている楽曲なので、あの流れで『III』にいれることはできないし、どういう感じで入れようか?という課題は、半年ほど持ち続けていたんです。
 
──粗末に扱えないですしね(笑)。
 
林部 そうなんですよ。大切に扱わないといけないんですけど、ちょっとトリッキーすぎて、カップリングとかシングルにも正直難しい楽曲だったんですね。だからこそ、あの楽曲が「虹」の活動の中で形にできればいいのかなというのは課題でした。「虹めいて」の時はまだ先が見えてなかったんですけど、そこからが今回のアルバムのスタートでした。
 
──虹の七色をテーマにアルバムを制作すると決まって、改めてその中の1曲として「七つの子・その後」を入れようと決まった、ということですか?
 

林部 そういうことです。あの曲には童謡「七つの子」から夕暮れのイメージがあって、この楽曲は【橙】(オレンジ)だろうなとは思ってたんですね。阿木さんたちに「今回のアルバムはこういうコンセプトで、その中の【橙】の楽曲として収録します」とお話ししたら、そのために歌詞をちょっと変えたり、メロディーをちょっと付け足したりという流れになって。そんな感じで『RAINBOW』に向けてのやりとりは何回かありました。
 
──この曲はスパニッシュギターがフィーチャーされた、フラメンコ調になってますよね。
 
林部 はい、ラテン系で。アレンジの段階では「ブラジルの方に寄らなければいいね」っていう話をしていて。サンバっぽい感じじゃなくスパニッシュで、ギターをかき鳴らすようなアレンジにしたいねという話をしました。
 
──サンバっぽくなると明るくなってしまうということですよね。
 
林部 そうですね。歌詞だけ見ると苦しさとか、自問自答していて孤独な感じが出ているので。ただ、ドロドロの悲しい歌にもできるんですけど、そういう風にするよりは、空に飛び立っていくような勢いのある曲にしたいねということで、哀愁もありつつということでスパニッシュになりました。
 
──ちょっとアルバム全体の話に戻るんですが、作家陣というのはこの方とこの方に、ということをあらかじめ決めてスタートしたんですか?
 

林部 そこは、それぞれだったんです。まず阿木さん、宇崎さんの曲があって、アルバムをリリースしようと実際に動き始めた時に、シングル化できる曲を専攻させたいねという話になって。そこで、僕のコンサートに一番よく来てくれている松井五郎さんにお願いしたんです。「こういうコンセプトでアルバムを出したいんですが、何色だったら作ってくれますか?」ということで(笑)。そこで【橙】とか来たらどうしようかなというのはあったんですけど、【赤】と言ってくださって、まさに最初の曲にふさわしい、リーダーみたいな色を選んでもらって。2月にその詞が来たんですが、松井さんは僕も作詞・作曲をすることは知ってるし、歌っている姿を見ているからこそ、「林部が書かなそうな、歌わなそうなキャラクターを書きたい」とおっしゃって書いてくださったのが「La Rouge」なんです。
 
──なるほど。
 
林部 「お客様のイメージにはない、悪い男を書いてみたよ」と言われたんですね。その段階で作曲家はまだ決まってなかったので、松井さんと相談して何人か挙げてもらった中から林哲司さんにお願いしたという経緯でした。そんな感じで1曲1曲、お願いした経緯は違うんです。
 
──松井さんとは古いお付き合いなんですね。
 
林部 そうですね。僕が玉置浩二さんの「行かないで」をカバーした『カタリベ1』の時のコンサートに初めて来ていただいて、それからは数回、遊びに来てもらっています。
 
──松井五郎さんも林哲司さんも代表曲がありすぎるぐらいですが、林部さんにとって一番の曲はどれですか?

 

林部 林哲司さんの曲はコンサートでも数曲歌っているんですが、一番印象にあるのは「悲しみがとまらない」ですね。今回、「La Rouge」を歌うからこそ、コンサートで林哲司さんの曲も歌いたいなと思って、8月は「真夜中のドア~stay with me」を歌ってました。その時代を彩る歌を作っていた方だし、逆にこの40年を超えて今、世界中で聴かれている歌ですから、すごいことですよね。
 
──松井五郎さんについてはどうですか?
 
林部 安全地帯の曲はもちろんなんですけど、意外と聴いてて一番歌えるのは「勇気100%」なんです。僕はカラオケからこの世界に入っているんですけど、「カラオケバトル」のCDを作った時に、みんなのテーマソングで歌った曲の詞が松井五郎さんだったんです。その時にお会いしていたという経緯もありました。
 
──そうだったんですね。では本当に、トップバッターにはうってつけだったと。
 
林部 もちろん、皆さんレジェンドですけどね。阿木さんと宇崎さんもそうだし、来生たかおさんと来生悦子さんも。でも松井さんは僕のコンサートに一番来てくださっていたということもあって、作家として僕と真逆の像を書きたいといってくださったことは、すごくうれしかったですね。
 
──「La Rouge」はタイトルの「ルージュ」にしても、歌詞の中の「秘め事」にしても、今の歌詞には出てこないような単語が散りばめられていますよね。
 
林部 そうですね(笑)。懐かしさも哀愁もあって……僕は歌謡曲もたくさん歌いますし、懐かしさはあるんですけど、なかなか歌ったことのないジャンルだなというのは感じてて。「どの時代に似てるんだろう」「どの曲に似てるんだろう」と考えると、なかなか難しい曲なんですよ。でも間違いなく、「ちょっと前」を彩る曲ですよね。

 
──実際に歌ってみていかがでしたか?
 
林部 「僕と違う像」ということで先入観もありましたし、感情移入は難しいですよね。歌の表情はつけるんですけど、わりと無表情で歌う曲だなと感じていて。それは「叙情歌」でやっている歌い方に近いんですけど、歌い手に徹する歌い方を、歌謡曲に持ってきたというか、自分の色をそこまで乗せないというか。そんな、僕にとってはわりと新しい曲でした。
 
──そんなチャレンジもさせてもらえる曲だったと。
 
林部 まさにそうですね。ジャンルの垣根を越えるというのは、前作『III』でけっこうやったつもりだったんですけど、今回はジャンルじゃなくて作家さんの色が濃い楽曲が集まったなという印象があるんですね。その色を、アレンジによってより強調させたいなというのが今回やった手段で、今までは僕の色に寄せるというようなアレンジをしてきたんですよ。例えば【黄】だったら明るい曲だから全部打ち込みで、ちょっとコミカルな感じにしようと。だからコーラスも今までで最多のチャンネルを使ってて、52人の林部がいるんですよ。そんな感じで、それぞれの曲で極限まで振り切るような作り方をしましたね。
 
 
過去最多! 「52人の林部智史」によるコーラスが実現!
 

 
──2曲目が先ほども出た「七つの子・その後」ですが、先に曲があって、それを【橙】にはめたということでしたね。
 
林部 はい。もともとオレンジのイメージはあったんですけど、アルバム・コンセプトの中でのそういう位置付けに決まったところで、歌詞やメロディーをブラッシュアップしていただきました。
 

──スパニッシュ風の曲は、前作にもありましたよね。
 
林部 はい、ありました。あの時はよりメロディアスな感じで僕に近くしているんですけど、今回はよりスパニッシュに近い方向になりました。前作で近いことをやっていたこともあって、【橙】に関してはわりとスムーズでしたね。
 
──小説などでは「あのおとぎ話のその後」みたいな作品はありますが、歌では珍しいですよね(笑)。
 
林部 確かに(笑)。同時に「虹めいて」と同じ作家さんが作った歌とは思えない感じになっていて、でもどこか、山口百恵さんが歌っているような曲にも聞こえるし……という曲ですね。
 
──3曲目の「SUNNY-SIDE UP」は藤林聖子さんとマシコタツロウさんのコンビで、ガラリと“今どき”という感じですね。
 
林部 この【黄】が最後まで残った色だったんです。マシコさんにお願いしたいと言ったのは僕で、以前に「あの頃のままに」という曲を作っていただいたことがあるんですね。NHKラジオ深夜便で、初めて「深夜便のうた」になった曲なんですが。マシコさんは「ハナミズキ」のイメージが強いですけど、EXILEにも曲を提供していたり、本当にいろんな楽曲を作られていて、僕は好きな曲が多いんです。その中で、以前はバラードをいただいたから今度はアップテンポの曲がほしいなと思って、マシコさんに「【黄】で作ってください」というお願いをしました。そしたら最初、マシコさんから歌詞入りで曲が届いたんです。
 
──ほう。
 
林部 1番だけの歌詞だったんですけど、それも面白かったので、「このまま2番以降も書いてくださいますか」とお願いして一度はOKだったんですけど、5日ぐらいして「やっぱり書けませんでした」ということで(笑)。そこから作詞家さんを探して、何人かピックアップしてもらった中で、藤林さんが戦隊ものの主題歌の詞を書かれていたんですね。そこまで振り切りたいなと思って。
 

──藤林さんは戦隊ものと仮面ライダーシリーズでも有名ですもんね。
 
林部 僕自身はアニソンの印象も強かったので、お願いしました。コミカルなものが書ける方がいいなと思ってたんですよね。ポンポンポンポン、耳で感じられる軽快さがいいなと。歌というのは、歌詞を見て二度楽しめるものもあるけど、耳にパッと入ってきた瞬間に理解できるという歌、特にアップテンポではそれが必要だと思っているので、そういうのを加味してお願いしたら、やっぱり韻をたくさん踏んでくださったりというものが出来上がったので、「ああ、お願いしてよかったな」と思いましたね。あと一番よかったのは、僕の段階ではデモ音源を「ラララ」で歌って送ったんですけど、メチャメチャ字足らずとか字余りで返ってきたんですよ。それはすごくうれしいことで。
 
──そうなんですか。
 
林部 そういうのがほしかったんです。一音一音にしっかり当てはめられちゃうとよくないんですよね。だから2番は文字をバーッと詰めて歌ったりしながら、「これこれ! これがやりたかったんだよね」と思って(笑)。そこは一番うれしかったですね。
 
──そういうものなんですね。
 
林部 「字余りでも字足らずでも構いませんよ」というのは最初からお伝えしてあることなんですけど、字数に当てはまって届いたものを、わざわざ「字余りにしてください」ってお願いするのも違うじゃないですか。だから、最初からけっこうやり過ぎてあったのがよかったですね。それに「ここは多すぎるので、まとめさせてもらっていいですか」というようなやりとりはできるんですけど、今回はその必要もなく、いい感じの字余り・字足らずで来たので「いい歌詞だなあ」と思って、僕は好きですね。
 
──そしてこの曲には、先ほども出たように52人の林部さんがコーラスを入れているんですよね。
 

林部 そうなんです。52チャンネル使っていて、僕の楽曲の中では最多のコーラス量ですね。明るさやコミカルさを出すという点において、より幅を広げられればと思って、コーラスで遊んでみました。
 
──多チャンネルにもほどがありますよね(笑)。
 
林部 個人的には、もうちょっと入れたかったんですよ。ただ、僕のアイデアがもう浮かばなかったです(笑)。今までで一番時間もかかりましたしね。
 
──そうでしょうね(笑)。
 
林部 コーラスは自分でやる人とやらない人といますが、僕は一応低い音も高い音も出るので、全部自分でやるからより時間がかかるんですけど。
 
──次が「Omoide」。作詞が鮎川めぐみさんで、作曲が松本俊明さんですね。
 
林部 この曲だけちょっと特殊な経緯なんです。「コカリナ」という木製の楽器があるんですけど、この曲はもともと、その楽器のアンサンブルのために松本さんが作られたインスト曲だったんです。それをたまたま僕のチームのディレクターが耳にして「これはいい曲だから」ということで「歌を入れられないでしょうか」というお願いをして、歌を入れるという経緯になりました。今回、【緑】をイメージする歌詞を鮎川さんにお願いして入れてもらって実現した楽曲です。
 
──そういうことでしたか。
 
林部 松本さんにはいつか書いていただきたいなと思ってたんですが、逆にこういう、インストの既存曲というケースはなかなか珍しいなと思って。僕のデビュー曲「あいたい」もインスト曲が元だったので、こういう出会いはそれ以来ですね。
 

──鮎川さんは昭和から平成のアイドル楽曲がたくさんありますよね。
 
林部 そうですね。本当にいろんな楽曲を書かれてますけど、僕はずっと鮎川さんの、抽象的に表現する歌詞がいいなと思っていて、いつかお願いしたいとずっと思っていたんです。この【緑】の3拍子の曲は、曲を聴いただけで幻想的、神秘的だったので、僕だったら具体的な詞を入れないで書きたいなとずっと思っていて。だから鮎川さんにお願いして、結果、予想通りの詞が届きました。もともとのメロディーに切なさ、苦しさがあるんですけど、最後に昇華させて「前を向こう」というような歌詞を書いてくださったので、曲のアレンジも最後はメジャーコードに行って、昇華するような終わり方に変えたりして、詞からちょっとアレンジを変更させてもらいました。
 
──ちなみにこの「Omoide」というタイトルは、原曲の時点のものだったんですか?
 
林部 そうです、そうです。だからタイトル縛りで、【緑】のエッセンスを足しながら書いてくださいとお願いしたんですが、実は僕はそこまで【緑】を足さなくてもやれるんじゃないかなと思っていて。曲が持っているものと、そもそもコカリナが木の楽器なので、曲に込められた自然の色があったんですよね。だから「【緑】なんですけど、そこまでとらわれなくていいですよ」というお願いの仕方をしました。
 
 
ツアーでは2回虹が出る? その理由は……
 
 

──5曲目は「もうひとつの未来」。作詞の森由里子さんがこれまで書いているのはほとんど女性歌手ですよね。
 
林部 ああ、確かにそうですよね。僕は『DRAGON BALL』のイメージがすごく強くて、あれは男性歌手ですけどね。これは、『III』の時から「これいいな」と思ってた楽曲なんですよ。曲を選ぶ時に、いろんな方の楽曲をいただいて聴いたりするんですけど、その中でこの曲だけ引っかかって「『III』に入れたい!」って言ってたんです。ただアルバムのコンセプトとかもあって、その時は保留になっちゃったんですよね。その時点から森さんに詞をお願いしてたんですけど、今回収録するにあたって、詞もメロディーもガラッと変わったんです。【青】に寄せてブラッシュアップしました。
 
──しっとりした曲ですよね。
 
林部 もともと、洋楽系のメロディーの流れ方だなと思ってたので、曲作りも洋楽系に寄せて、あえて生の音源を使わず打ち込みにしたりしてます。
 

──歌い方は?
 
林部 これはメロディーの移動がすごく難しくて、個人的には七色の中で一番難しい曲だと思ってます。
 
──次の6曲目、「心の傘」は今回唯一、ご自身で作詞・作曲をされている曲ですね。
 
林部 はい。次の8周年でまた何かアルバムを作ろうとなった時に、何個かのアイデアは芽が出るんですけど、何個かは潰れるんですよ。そうやって厳選されていくわけで。今回の『RAINBOW』も、動かないと花は咲かせられないじゃないですか。だから【藍】の楽曲として僕が先にこれを書いたんですね。7周年コンサートでもこれをまず披露して。これが『RAINBOW』の【藍】になろうともならずとも、この曲が作れればいいやと思ってたんですけど、これから各作家さんたちに七色お願いしていく中で、僕は【藍】が売れ残ると思ってたんです。僕が作詞家だったら、【藍】が一番イヤなので。
 
──そうなんですか?
 
林部 【藍】が一番浮かばないと思ったんです。【青】だったら空とか海、などいろいろある中で、具体的なものが何もないなあと。だから、この『RAINBOW』プロジェクトを成功させるために先に自分で選んだんです。これが最後に残ってたら、このプロジェクトは動かなくなると思って。それで作り始めて、最初に披露したというわけなんです。
 

──バンドを組もうという時に、「じゃあ俺ベースやるわ」みたいな。
 
林部 まさにそうです。だからこの子はベースなんですよ(笑)。
 
──この詞は、ご自分の正直な思いを表現したものなのかなと思ったんですが。
 
林部 もちろん僕にも重ねられますけど、僕よりもっとひねくれた人間を描いてるんです。でも、だいたいみんな自意識で生きてるから、だいたいみんなが持ってる感情なのかなとも思ってて。というのは、【赤】だったら「情熱」、【青】だったら「冷静」とか、色の持ってるイメージってあるじゃないですか。その中で【藍】が持ってるのはいろいろあるんですけど、その中で「探究心」というのが引っかかって。だから「探究心」を描いた歌にしようと思ったのがこの歌詞ですね。
 
──「探究心」ですか。
 

林部 何か、あまり周りが見えなくなって苦労している人ってたくさんいるんだろうなと思って、そういう人たちのために書いたんです。【藍】という言葉は一切出てこないんですけど、僕なりの【藍】の捉え方をまとめてみたという感じですね。
 
──色に対して、そういうアプローチもアリだったわけですね。
 
林部 僕としては、全部こういう感じでお願いしたかったんですけど、制作チーム的にはそうはいかなかったみたいですね(笑)。分かりづらいので。この曲も【藍】という言葉なりを入れろと言われたんですけど、「逆に入れないのがいいんです。入れない曲が1曲ぐらいあってもいいと思う」って言って。
 
──編曲が西村真吾さんですね。この方も幅広いジャンルで活躍されていますが。
 
林部 【藍】をジャンルで表すとすればロックだったので、ロックで書く曲を作りたいと思ってお願いしました。今回で言うと「La Rouge」も作っていただいていて、本当に幅広いですよね。
 
──7曲目が「やさしい眺め」です。
 
林部 作詞は来生えつこさんで、補助詞で僕が入ってます。この曲が実は一番長いお付き合いなんですよ。以前に来生たかおさんと阿木燿子さんによる「恋衣」という楽曲をリリースさせていただいたんですが、その時にもう1曲いただいていたものだったんです。だから「虹めいて」パターンですよね(笑)。


──まさにそうなりますね。
 
林部 今までもそうなんですけど、もう1曲いただいたものの出しどころって、意外と難しくて。しかもそれをえつこさんに書いてもらっていたので、いろいろ考えていたんですけど、今回のコンセプト・アルバムで【紫】がどうかと。ボサノバの出すムードというのが大人のイメージで、【紫】という色も大人じゃないですか(笑)。単なるイメージですけど。それで行こうと思って、5年越しぐらいで出してきて「このアルバムに入れたいんです。ついては【紫】にブラッシュアップしたいんですけど」ってお願いしたら、「歌詞は自由に変えちゃってください」とおっしゃっていただきまして、じゃあ僕がその詞を残しつつ、【紫】に変えていこうということで、補助詞で僕が入ってるんです。
 
──そういう経緯でのダブルネームだったんですね。
 
林部 そうです。「やさしい眺め」というタイトルは変わってないんですけど、元の歌はイメージで言うと明るい未来が見える曲で、真っ白だったんです。それを【紫】の未来が見える曲にしたいと思ったのが始まりで、どんどん不穏な空気を入れていって、【紫】の不安感とかおどろおどろしさ、「悪役」「罪」といったイメージをどんどん足していってできたものです。
 
──真っ白だから塗り甲斐があったと。
 
林部 そうです、そうです。「これをどう邪悪にしてやろうか」と楽しみながらやってました(笑)。結局、半分ほど残りましたね。タイトルも残したかったので。「やさしい眺め」というほんわかしたタイトルを、どこか歪んだ「やさしい眺め」にするにはどうしたらいいだろうかと思って作っていったので、最後のところもピッチをずらしまくって気持ち悪さを出して、本当にやりたい放題やりました。来生さんにはお送りしてますが、どう思われてるか分からないですけど(笑)。もともとの“白い方”の「やさしい眺め」は、ディナーショーでけっこう歌ってたんですよ。歌い始めてから5年ぐらい経ったんですけど、今回、【紫】を足した……というか、染めた形になりました。
 
──ここまでが七色の楽曲で、最後にボーナストラックで「虹めいて」のスペシャルバージョンが収録されています。
 
林部 僕自身、音楽で虹をどう表しますかと言われた時に思ったのが、「七色の歌声」だったんですよ。7人のコーラスでやるのが一番分かりやすいんじゃないかと。それで7周年のアニバーサリー・コンサートの時に7人のコーラスを入れてもらって、この「虹めいて」をやって。だからこれは「虹めいて」の「レインボー・バージョン」ですね。
 
──ご自身は、虹についての思い出は何かありますか?
 
林部 ないんですよ。今年も「虹」をテーマに活動してますけど、1回も見てないんですよ。
 
──そうですか(笑)。
 
林部 探すとないんですよね。コンビニとかだって、探すといきなりなくなったりしますけど。「虹」をテーマにしてるから会うというものでもないんだなと思って。でも、誰もが必ず見たことあるものじゃないですか。「虹めいて」の歌詞の中で、「奇跡」と「軌跡」という言葉を使い分けて書いてくださってるんですけど、「たまに起きるから奇跡」という言葉がすごく好きなんです。「起きないから奇跡なんだよ」という捉え方もあると思うんですけど、僕の捉え方と「虹」というものはすごくリンクしていて、今年に入って容易に見れていないのも奇跡的だなと。今年、いい時に虹が見られればいいなと思ってますね。
 
──改めて7周年ということで、ご自分では「7年」ということに対してどんな思いがありますか?
 

林部 “途中”感は強いですよね。キリのいい周年でもないですし。でも、歌謡界や演歌界の番組に出させてもらうと、僕なんかまだド新人なんですけど、7年って、自分で「新人なんですけど」って言うのは許されない年じゃないですか。自分の土台は固まりつつ……10、15、20というキリのいい周年をどう迎えられるかは、こういう“キリのよくない”周年をどう過ごすかで決まると思ってるんです。だから数字的には「7」に当てはめてやらせてもらってますけど、10周年に向けてどう道を歩んでいくか。今年は「虹」という軌跡をどう歩けるかというところですよね。ただ、普通の7年じゃなくてコロナがあったので、実質活動できたのって4~5年なのかなと思うと、順風満帆ではないところが逆に僕らしい7年なのかなと思ってますけどね。ただそれも自分の道のりだなあと。うまくまとまらなかったですけど、まとまらない7年だったということですよね(笑)。来年も何かしら、「8」にちなんでやっていければと思ってます。
 
──ツアーに関してはいかがですか?
 
林部 普段はアルバムとツアーは別にリンクさせていないんですが、今回のアルバム・リリースはツアーに向けてのタイミングでもあって。こういうことはわりと初めてに近いですね。今回に関しては、わりとアルバムをたずさえてのツアーになるかなと思いますね。アルバムの楽曲が中心ですけど、ツアータイトルには「朝虹は雨、夕虹は晴れ」と、虹が2つ入ってるんですね。だから2回、虹が出るということなんじゃないかと。
 
──それがどういうことかは、コンサートに来てのお楽しみということですね。
 
林部 分かるかもしれないし、分からないかもしれません(笑)。もちろん歌は1曲1曲心を込めて歌いますし、そういった部分は皆さん1人1人が心の中で感じていただければいいのかなと思っています。
 
──分かりました。ありがとうございました!

 

撮影 長谷英史


『RAINBOW』
2023.09.27 ON SALE


 

「林部智史CONCERT TOUR 2023 ~朝虹は雨、夕虹は晴れ~」
9/26(火)浦安市文化会館 大ホール(千葉)
10/1(日)静岡市民文化会館 中ホール(静岡)
10/7(土)けんしん郡山文化センター 中ホール(福島)
10/14(土)ひたちなか市文化会館 大ホール(茨城)
10/20(金)サンケイホールブリーゼ(大阪)
10/24(火)東京国際フォーラム ホールC(東京)
10/27(金)広島JMSアステールプラザ 大ホール(広島)
10/29(日)岡山芸術創造劇場 ハレノワ 大劇場(岡山)
11/7(火)大宮ソニックシティ 大ホール(埼玉)
11/15(水)日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知)
11/19(日)東京エレクトロンホール宮城 大ホール(宮城)
11/26(日)神奈川県民ホール 大ホール(神奈川)

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