10thアルバム『Synopsis』をリリースしたKis-My-Ft2。ファンにとってはゴールデンウィークがまだまだ続くかのような喜びとなっていることでしょう。新体制になって初めてのアルバムということもあって、グループとして、タイトルやコンセプトからも「新しいストーリーの幕開け」にかける意気込みが伝わってくるこの作品について、このアルバムにまつわるストーリーからその内容、今後の展開までをまとめました!
メンバーが「今魅せたいキスマイ」をテーマにプロデュース監修した6曲も収録!
遡ること約3カ月前の2月15日。昨年10月から始まった新体制となって初めての全国アリーナツアー「Kis-My-Ft2 -For dear life-」の最終日(国立代々木競技場第一体育館)の昼公演にて、初夏に通算10枚目となるオリジナルアルバムを発売することと3大ドームツアーの開催を発表。また、開演前に行われた報道陣向けの囲み取材では、タイトルが「シ」から始まるとネタバレしたり、「ドームで映える楽曲を集めている段階」と進捗状況を明かしたりと、“早くファンのみんなに聴かせたい”と言わんばかりの期待感と自信をにじませた。アリーナツアーを駆け抜けた勢いそのままに、いや、むしろ加速するようにノンストップで前進していくKis-My-Ft2を頼もしく感じた。
そして3月12日、アルバムタイトルとその詳細が明らかになり、リリース日は5月8日であるとアナウンスされた。タイトルは『Synopsis』。“これから始まるKis-My-Ft2のストーリー”をコンセプトに、大切な人達と創り上げる新たな「Synopsis=あらすじ」を表現した作品になるという。すでに新体制として走り出している彼らが、ここで改めてスタートを宣言するかのような潔さや心意気を感じさせる。注目すべきは、メンバー6人がそれぞれ「今魅せたいキスマイ」をテーマにプロデュース監修した楽曲が6曲収録される点だ。楽曲のラインナップも公開され、1月にリリースした両A面シングル「HEARTBREAKER/C’monova」以外に新曲が12曲収録されているが、どれがメンバープロデュース監修楽曲なのか明記されていない。それがまた、待つ者の心を躍らせるのだった。
そんな中、4月9日にコンセプト楽曲「Loved One」のMVがYouTubeでプレミア公開された。とあるゲーム会社を舞台に、GraphicDesignerの千賀健永、Programmerの宮田俊哉、ScriptWriterの横尾渉、MusicComposerの藤ヶ谷太輔、GameDirectorの玉森裕太、そしてMarketingProducerの二階堂高嗣がチームとなって新しいゲームの制作に奮闘する様子が描かれている。
それぞれが自分にしかできない役割を担い、ときには衝突しながらも、許したり、受け入れたり、労ったり…協力し合って最高のものを完成させていく。それはお互いが“大切な人”だからだ。「過去も未来もいつだって『Loved One=大切な人』がいるから僕らは進んでゆけるし、思い切って挑み続けられる」。そんなシンプルだが、強くてあたたかいメッセージが込められている。
口笛のようなサウンドで軽妙に始まり、「Everybody say」という掛け声に続いて同じメロディーを6人が声を合わせて「Nananana~」「oh whoa」とアンセムのごとく元気に歌い出すイントロは、6人が順に登場する映像と相まって何かが始まっていく予感満載でワクワクさせられる。また、コントローラーの動きなどゲームの要素が取り入れられたサビのダンスはユニーク且つキャッチー。キスマイファンにはなじみがあるだろうファンキーなステップや、不思議な腕の動きも楽しく、一度見たらクセになってしまう振り付けは思わず一緒に踊りたくなる。現在、YouTubeのショート動画では「みんなでLoved One」、「いきなりLoved One」、「ひとりでLoved One」とさまざまなパターンがあがっており、展開が楽しみだ。
同日には特設サイトもオープン。メンバープロデュース監修楽曲について、誰がどの曲を担当したのかを予想するクイズ企画を実施。「Loved One」と、発表当初からピックアップされていた「I Miss You」をのぞく10曲のダイジェスト音源と、ヒントとしてメンバーの短いコメントが公開された。ヒントから紐解けそうな人もいれば、まったくわからない人もいるし、“らしさ”をストレートに受け取っていいのか、はたまた変化球なのか…真剣に悩んだ人も多いのではないだろうか。Xでも#Quiz_Synopsisで考察が大盛り上がり。答え合わせはもちろんのこと、こうしてメンバーと楽曲に思いをめぐらせながら、リリースを楽しみに待つ時間もきっと、アルバムのコンセプトである“大切な人達と一緒に創り上げる”ということなのだろう。
本作を引っ提げた三大ドームツアーも楽しみ!
そして4月21日、クイズの正解が発表された。
千賀は、独特なノリとテンポが印象的なロックテイストの「Keep it 100」。「周りの誰かがネガティブにしようとも、信じたものにオリジナルの色を足して強く進もうというメッセージ」を込めたのだそう。宮田はボカロ曲を感じさせる「B-SIDE」。「人間には弱い部分や汚い部分があるからこそ、綺麗なところがより綺麗に見える」と人間の裏側を“B面”として表現した。横尾の「ほしゆい」は、「現代的な音と和楽器をミックスさせて、どの世代の方達にも新鮮で面白く聞こえるよう制作していただいた」という。
「日常の見過ごしがちな幸せや、支えてくれる人の存在をテーマにした」という藤ヶ谷の「With…」はバッハの「G線上のアリア」をサンプリング。そのバランスにもこだわって制作された。玉森の「WANI-WANI」は「Warning=警告」という意味だ。「好き勝手言う人たちの言葉よりも、幕が上がる前に暗闇に響く自分達を呼ぶその『声』を胸に力強く立つ。そんな姿をイメージした1曲」だそう。二階堂はライブを意識し、「コール&レスポンスでみんなと一緒に楽しんで騒げるようなデジタルロック調の楽曲に仕上がった」という「Connecting!!」。
正解とともに、彼らが楽曲に込めた思いも改めて明かされた。各々、関わり方は自由であるがゆえに、彼らの音楽性やセンスが顕著に表れており、興味深い。まさに“六人六様”だ。1曲ずつ聴いてももちろんキスマイなのだが、6曲通して聞くと、より立体的で多彩に“今のキスマイ”が浮かび上がってくる。
4月26日には、「I Miss You」のMVがYouTubeで公開された。チルなラップスタイルの大人な失恋ソングで、メンバー同士の掛け合いが特徴的だ。また、電話のコール音がサンプリングされているほか、MVでは6人が携帯電話を手にしていたり、何もない空間に置かれた電話ボックスのセットが使われていたりと、恋愛に欠かせないアイテムでもある“電話”がモチーフの1つとなっている。
冒頭から6人それぞれの姿が、まるでドラマのワンシーンのように切り取られていく。藤ヶ谷はコインランドリー、宮田はビルの屋上、玉森は地下鉄のホーム、横尾はカフェ、二階堂は車の中、千賀は部屋…いつもは“キミ”が隣にいたであろう場所で1人、物思いにふけっていたり、項垂れていたり…。携帯から電話してもつながらない。少しの望みを抱き、電話ボックスからかけてみるが、電話が使われていないことを告げるアナウンスが虚しく響くだけ。「もう戻れないって分かってんのに」かけてしまう電話。思い出してしまうキミとの思い出――。終わってしまった恋を忘れられない男を演じている6人の芝居は非常にリアルで、グッと引き込まれ、それぞれの物語を見てみたくなる。藤ヶ谷の虚ろでやるせない目、宮田の泣きそうなほど悲しい表情、玉森の辛さを押し殺したような顔、横尾のどこか諦めたような遠い目、二階堂の苦しく悩ましげな表情、千賀の哀愁漂う佇まい。“切ない”という表現にこんなにバリエーションがあるのかと驚くほど、一人ひとりの表現に胸が張り裂けそうになってしまうと同時に、大人な6人だからこそ生み出せる豊かな表情に色気すら感じられた。
こうして約3カ月間、少しずつ明らかになっていく内容と、ドキドキ、ワクワクするような企画で、楽みながら待っていた『Synopsis』がついに手元に届く。アップデートされた新しさもありつつ、これまで育んできた“キスマイらしさ”もちゃんと感じさせる新曲の数々は、声色や歌い方も含め、洗練された大人の魅力が凝縮されているような充実ぶりだ。
特典映像も盛りだくさんで、初回盤Aには、『Synopsis』制作メイキングドキュメンタリー「I Miss You」のSolo Edit、初回盤Bには「キスマイビビりランド~罰ゲーム対決ファイナルラウンド~」と「メンバーソロインタビュー(About Produced Tracks)」が収録されている。「キスマイビビりランド~」は、キスマイのCD特典映像おなじみのバラエティー企画だ。リリース直前、YouTubeで先出し企画として富士急ハイランドでロケを行った、「ティーカップに乗って文字を見つけろ!キスマイぐるぐるワード」が公開されていた。小学生かのように楽しんだりグロッキーになったりする6人が相変わらずのバラエティー力の高さを見せており、遊園地×キスマイの抜群の相性に期待が高まるばかりだ。
CD全形態に封入された応募券で当選すると「購入者イベント」に参加できる特典も発表された。シングル「HEARTBRAKER/C’monova」リリース時にはキスマイ初の「Meet & Greet」を開催したが、今回はどのようなものになるのだろうか。きっと、1人でも多くのファンと会いたい、という彼らの熱い思いに触れられるものになるに違いない。
本作を引っ提げて、6月9日の京セラドーム大阪を皮切りに、東京、名古屋をまわる三大ドームツアー「Kis-My-Ft2 Dome Tour 2024 Synopsis」が待っている。「6人の曲をもっと増やしたい」。そう言っていた彼らが、たくさんの新しい曲たちとともに“原点”であるドームに帰ってくる。できるなら、その雄姿をしっかりと見届けようではないか。彼らが大切な人達と創り上げる新たな“Synopsis=あらすじ”の最初の1つになるのだから。
【Kis-My-Ft2 OFFICIAL SITE】
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ライター
四戸咲子
フリーランスライター。週刊誌にて編集兼ライターとして勤務後、現在は主に雑誌にて、映画・ドラマ・演劇・音楽・本などエンタメ&カルチャーに関するインタビュー、執筆をしています。