11月26日、神奈川・パシフィコ横浜国立大ホールで、i☆Ris結成11周年記念ライブ『i☆Ris 11th Anniversary Live ~Heart Jack~』が開催されました。メンバーにとってもファンにとっても節目となる周年ライブ、今回もi☆Risらしく華やかかつにぎやかなステージとなりました。このライブの模様を詳細レポート!
全員オリジナル・メンバー!の5人が繰り広げるキラッキラのパフォーマンス
開演15分前、会場となったパシフィコ横浜国立大ホールの入り口をくぐると、中は外の寒さを忘れるぐらいの活気に満ちていた。大勢のファンに楽しそうな声、なんてポジティブな空間なんだろう。この時点ですでにi☆Risのライブは始まっていたと言える。そもそも、「11th Anniversary Live」 という響きの強さよ。アイドル戦国時代と言われはじめた2010年代初期からかなりの時間が経ち、今や長きにわたって活動しているアイドルグループも多くはない。しかし、i☆Risの場合は卒業したメンバーがひとりいるものの、途中加入のメンバーはなく、現在残っている5人は全員結成時のメンバー。そんなグループはシーンを見渡しても片手で数えられるほどしかいないのではないか。しかも、11周年記念ライブをパシフィコ横浜なんていう大会場で行えるほどの人気をキープしているとなると……彼女たち以外にいるのだろうか? 何が言いたいかというと、i☆Risは非常に稀有な存在なのである。しかも、彼女たちが繰り広げるパフォーマンスは今だってキラッキラなのだ――。
ライブは「Queens Bluff」から始まった。仮面を手にして舞い、歌う姿でさっそくファンのHeartをJackしたあと、「ありえんほどフィーバー」「ブライトファンタジー」と畳み掛ける。どれもイントロが鳴った瞬間に大歓声が上がるほどの盛り上がりで、気づけばうっすらと汗がにじんできていた。まっすぐに突き抜ける芹澤優のボーカル、厚みのある茜屋日海夏の歌唱が気持ちいい。
最初のMCでは山北早紀が「どうですか、みなさん。ハートジャックされてますー?」と余裕たっぷりに客席に問いかけ、11年という自身の活動歴の長さに驚きながら、「最近は余生みたいな感覚」と表現しつつ、「初心の気持ちで頑張りたいと思います!」と気合を入れた。芹沢は「11周年を迎えるなんてこれっぽっちも思ってなかった」と率直な感想を伝え、「ここまで来させてくれたのは、ファン、スタッフ、自分のかわいさのおかげ」と笑わせた。茜屋、若井友希、久保田未夢も「11周年」という歴史の重みをそれぞれの言葉で表現した。
続いてのブロックは、「ここ一年で(i☆Risのことを)知った人は顔も名前を知らないかもしれない」という流れからの自己紹介ソング「5STAR」ではじまった。この曲は山北による作詞だが、<みそじです!>という自身を紹介する歌詞がしっかり<もうすぐ33歳>に変えられていた。己の年齢までをも武器にする姿勢がカッコいい。この曲では各メンバーの演技力も光る。普通のアイドルには太刀打ちできないほど高い表現力にのけぞった。
各メンバーの歌唱力も高いが、i☆Risはユニゾンの美しさも強みである。続く、「ミラクル☆パラダイス」には<ステージあがれば 誰だってアイドル>という歌詞があるが、この曲で聴くことができるユニゾンの美しさを前にすると、そんなこと気軽に言えない。これは個人的な好みなのだが、アイドルの曲でサビがユニゾンになると少しがっかりしてしまうことがある。ユニゾンになった途端に歌の個性が消えるように感じてしまうからだ。しかし、i☆Risは違う。5人の素晴らしい発声によって新たな魅力が生み出されるのだ。これ以降の曲でも彼女たちのユニゾンは冴えわたっていた。
ラストには予定外のサプライズも……!
i☆Risがすごいのは歌唱だけではない。「FANTASTIC ILLUSION」ではかなり驚かされた。この曲の間奏で「これから手品をしたいと思いまーす!」と茜屋が空っぽの箱を用意し、中に何も入っていないことを観客に確認させてからフタを閉じる。そして、合図とともに箱を開けると……やっぱり何も入っていない。もしかしたらあっちの箱に入ってるのかもしれない、といつの間にかステージのあちこちに置いてあった5つの箱を5人がそれぞれ開けてみると、そこにはアイリスの花が。ここまでは普通の演出。驚いたのはこのあと。「このアイリスの花、もっと近くで見たいよねえ!?」と5人がステージを降り、1階席の中ほどまで歩いて花を見せびらかしに行き、さらにその花をファンに直接手渡すという、アイドルのライブではかなり珍しい演出を実行したのだ。安全面を考慮して普通はやらないと思う。ステージを降りるという時点ですでにピリッとするはず。しかし、5人はそれをやった。これは11年かけて培ったファンとの信頼関係の賜物にほかならない。そのことにとても感動した。
しかも、これだけで終わらなかった。続く「ハートビート急上昇」を客席通路で歌い始めたのだが、冒頭で5人は1人の女性客のことをまじまじと見つめながら歌唱したのだ。その場のノリで行ったことなのかもしれないが、その女性客にとっては卒倒モノの演出だし、それを見ている自分としても感動的に映った。
飛び道具続出で観客を歓喜の渦に包み込んだ前半とは打って変わって、後半は新曲「Let you know!」でグッと大人っぽい雰囲気で迫り、クールなダンスナンバー「jewel」ではドキッとするほど声のトーンを変化させて魅せる。一方、エレクトロスウィング的なアプローチの「Spending」では5人の連携を重視したダンスで観客を魅了した。こうして聴いてみると、i☆Risは曲のクオリティが高い。この日披露した楽曲すべてが強い。彼女たちの11年の活動を支えてきたのはこれらの楽曲群であるということも間違いのないところだろう。
終盤のMCでは声優アイドルグループとしての自分たちの活動歴の長さについて「前人未到なところはあるよね」と話していたが、だからといって肩肘張ったところがないのがいい。気づけば先輩たちがいなくなり、後輩たちもいなくなったという話には全観客が苦笑い。この雰囲気がとてもよかった。日常を完全に忘れられる場所だった。よく「会社や学校で嫌なことがあると思うけど、今日この瞬間だけはそんなこと忘れて……」的なMCを聞くことがあるが、それを言われた時点で思い出しちゃうのよ、というのが正直なところ。彼女たちはそんなことはひと言も言わず、ただただ我々を楽しませ、夢中にさせてくれる。「私たちは一生i☆Risです!」なんてことはまったく言わないし、なんなら「気づいたら続いてた」ぐらいのノリだけど、だからこその11年なのかな、と思った。
アンコールでは11周年記念のケーキがサプライズで登場したり、来年1月リリースの新曲「White Lyrical Kingdom」を初披露したり、来年夏公開の劇場版アニメ「i☆Ris the Movie – Full Energy!! -」のティザー映像を観たり、その映画で使用する観客の歓声を全員参加で撮って思いがけず声優デビューを果たしたり、本当にてんこ盛りなアンコールタイムを過ごした。
最後のメンバー挨拶は、「アイドルとして大きな夢は特にないけど、ちっちゃな夢をたくさん叶えていけたら」(久保田)、「本当にいいバランスで成り立ってると思います」(若井)、「3年ぐらい続いたらいいだろうと思ってたら、11年も楽しんでる自分がいました」(茜屋)、「団結しながらここまできた」(芹澤)、「(i☆Risは)奇跡で成り立ってるんですよね。(メンバーに向かって)なんで皆さん辞めないんですか? みんな、アラサーですよ?」(山北)と、いい意味で本当に自然体。観客が感動するようなことを言おうとするメンバーはひとりもいなかったけど、だからこそ信じられると思った。
そのことを再確認する場面がライブの最後の最後に待ち受けていた。ラストナンバー「アルティメット☆MAGIC」をパフォーマンスしている最中に頭上からハート型の紙が次々と降ってきたのだが、歌い終わったあとにそのうちの何枚かにメンバーのサインが入っていると発表。しかし、サイン入りの紙はステージ上にも何枚か落ちていたようで、せっかくだからとメンバーがその紙を持って再びステージを降り、観客に何枚も渡しに行ったのだ。そんな予定外のサプライズをやりつつ、まさに5人がステージを去ろうとしていたとき、バックに流れていた「ドリームパレード」がガチ恋口上のパートに差し掛かった。渾身の力を振り絞って口上を叫ぶファン、ステージの端で口上にじっと耳を傾ける5人。その光景が本当に美しくて。アイドルとファンのあるべき姿を見た気がして心が温かくなった。i☆Risはいいグループ。本当にいいグループだ。
M1 Queens Bluff
M2 ありえんほどフィーバー
M3 ブライトファンタジー
M4 5STAR☆
M5 ミラクル☆パラダイス
M6 あっぱれ!馬鹿騒ぎ
M7 FANTASTIC ILLUSION
M8 ハートビート急上昇
M9 イノセントイノベーション
M10 Let you know!
M11 jewel
M12 Spending
M13 12月のSnowry
M14 Goin’on
M15 Anniversary
M16 Happy New World☆
M17 ドリームパレード
M18 幻想曲WONDERLAND
E1 Color
E2 White Lyrical Kingdom
E3 アルティメット☆MAGIC
両A面シングル『White Lyrical Kingdom/キセキ-ノ-フィラメント』
2024.1.24 ON SALE
劇場版アニメ「i☆Ris the Movie – Full Energy!! -」
2024年初夏 全国劇場公開
【i☆Ris OFFICIAL WEBSITE】
https://iris.dive2ent.com/
【i☆Ris YouTubeChannel】
https://www.youtube.com/c/iRisOfficialChannel
【i☆Ris Twitter】
https://twitter.com/iris_official_
ライター
阿刀“DA”大志
1975年東京都生まれ。学生時代、アメリカ留学中にHi-STANDARDのメンバーと出会ったことが縁で1999年にPIZZA OF DEATH RECORDSに入社。現在は、フリーランスとしてBRAHMAN/OAU/the LOW-ATUSのPRや音楽ライターなど雑多に活動中。Twitter:@DA_chang