【青野紗穂】ミュージカルデビュー10周年の節目に主演「人生として一歩踏み出す勇気を持てる作品」ミュージカル『あの鐘の音と共に』

ミュージカル『あの鐘の音と共に』で主演・エレノア役を務める青野紗穂。約7年ぶりとなる主演への想い、作品のテーマ、そして共演者との心温まるエピソードに加え、ミュージカル俳優デビューから10年を迎えたキャリアの振り返りや、これからの一歩の踏み出し方について語った。
Q.今回ミュージカル『あの鐘の音と共に』への主演が決まった時の心境はいかがでしたか?
青野:お話し自体は『楽しそうだな』と思って、すごくありがたい気持ちで受けさせていただきました。でも、よくよく考えてみたら『あ、そっか、主演か!』と(笑)。主演はカンパニーの座長として、その雰囲気や色を決めてしまう大きな役割があるので、引っ張っていけるかという不安は正直ありました。ただ、ミュージカルデビューして今年で10周年という節目の年に、7、8年ぶりに主演をさせていただけるのはすごく嬉しかったです。「なるべくしてなったご縁なのかな」とも思っています。
Q.本作は「冬の最高傑作」と名高い作品と言われていますが、台本を読まれたり、稽古を進める中で、この作品についてどのような印象を持たれていますか?
青野:演出家の岡本一馬さんは、「愛がテーマ」とおっしゃっていました。至るところに愛が散りばめられていて、エレノアだけでなく、サントクレアの人々の濃い人生が描かれていて、そこには奇跡や愛があると。私が本を読んだり、稽古をしたりする中で感じるのは、愛や奇跡もそうですが、「人生として一歩踏み出す勇気」や「希望を持つこと」がテーマなのかなということです。辛い道でも楽しい道でも、いつか光が見える、道が開けていくような、そんな作品だと感じています。
Q.今回演じられるエレノアというキャラクターについては、どのように捉えていらっしゃいますか?
青野:私が演じるエレノアは20歳の女の子ですが、精神的には、母親が亡くなった10年前の事件の時で止まっているように感じています。すごく素直で、真っ直ぐで、人が大好きで好奇心旺盛ですが、心のどこかで愛に飢えているというか、寂しさを求めている。暖かい愛を求めているはずなのに、失うのが怖いから、一歩踏み出すことを恐れている。周りの人には、たまに寂しい笑顔をする、という風に見られている女の子だと思います。
演じていると感情の起伏が激しく、ジェットコースターのような心情を抱えているので、すごく大変な役柄ですが、その分お客様は最後まで飽きずに楽しめ、温かい気持ちになれると思います。
Q.青野さんが演じられる役はクールな役が多い印象ですが、今回のエレノアのキャラクターは少し違う役柄ですね
青野:そうですね。エレノアはクールとは全然違う役柄なので、正直、お稽古が終わると『テーマパークで朝から晩まで乗り物に乗ったくらい疲れる』くらい、ものすごいエネルギーを使います。ただ、役作りをしていく中で、エレノアは『耐える』とか『自己犠牲』の選択をしがちなんですが、私も昔はそういうタイプだったなという過去の自分と重なる部分は多少ありました。
Q.今回のミュージカルは3チーム制で、青野さんはシングルキャストということで、大変なことも多いかと思いますが、これまでの稽古はいかがですか?
青野:私はシングルキャストなので、単純に稽古の回数が3倍なんですよね。体力的に大変ではありましたが、チームによって色や匂いが全く違うので、同じ作品をしているはずなのに、全然違う感情になったり、楽しさや悲しさのポイントが異なったりするのがすごく面白かったです。
年齢構成もチームで違ったりするので、共演者の方々の「あ、そこが楽しいんだ」とか「あ、これをそう思うんだ」という発見が毎日あって、面白いなと感じる日々でした。
Q.稽古場でのエピソードはありますか?
青野:本当に青春をしているような雰囲気です。リア役の子が、私が学生の頃に流行っていた「親友」とか「ラブとも」みたいな文字がプリントされてTシャツを見つけてくれてエレノア、リア、マリア、ウーラの仲良し4人組の分を買ってきてくれたんですよ。みんなで着て、懐かしいね、って。真剣なシーンで、みんなそのTシャツを着ていたりして、すごくシュールだけどエモい瞬間がたくさんありました。本当に学生の頃に戻ったように賑やかで、すごく楽しいカンパニーです。
Q.演技や歌唱についてはプロデューサーの岡本さんとコミュニケーションを重ねて役作りをしていった感じですか?
青野:私が最初に思い描いたエレノア像と、岡本さんが求めているものが真逆だったので、全部作り直して逆にしていったら、岡本さんが見たい絵にはなっていたみたいです。所々、岡本さんが『ここのシーンはこういう感情になれればな』といったヒントをくださるので、それを元に、理解できない時は『それって私はこういう風に聞こえるんですけど、合ってますか?』と、細かく言語化して確認していきました。とても丁寧に言語化してくださったので、ありがたかったです。
Q.青野さんは役を作る時に理論派という感じですか?
青野:私は感覚だけではできないタイプなので、「なぜこのセリフなのか」「どういう性格だからこういう言い方をするのか」といったことを、細かく言語化して落とし込んでいくことが多いです。その方が忘れないし、トラブルが起こった時でもそのまま入れる状態を作れるので。台本をひたすら書いて覚えるというのも昔から続けてますね。
Q.ミュージカル俳優デビューしてから10年ということで青野さんが次の10年に向けて一歩踏み出したいことはありますか?
青野:振り返るとこれまでの10年はとにかくガムシャラに動いてきたという感じです。そんな私でも10年続けられたということは、この先もっと明確化した目標を持って歩むとしても、きっと続けられるかもしれないとつい最近思ったんです。
なので、これからは、もっと自分が大人になって、人としての責任を持ちつつ、周りの人に与える影響を、もっと幸せで楽しいものにできるような、「大人の頑張り方」を見つけていきたいと思っています。
Q.「大人の頑張り方」にも繋がると思うのですが、お仕事ではないプライベートの時間で、青野さんが大切にしている時間はありますか?
青野:2つあって、1つは、全く仕事と関係ない話で人と楽しむ時間です。誰かと笑ってお酒を飲んだりしたり、仕事から離れる時間を作ることです。
もう1つは、一人の時間です。散歩やどこかに行くでもいいのですが、携帯なども置いて必ず自然と触れ合ってデジタルデトックスする時間を確保するようにしています。
仕事に特化しすぎてしまうと、人間形成がうまくいかなくなったり、何かトラブルがあった時に対応できなかったりするのではないか、という危機感があったんです。周りの人の考え方を理解できるようになり、それが結果的に仕事にもいい影響が出ているので、それが分かってから、心の容量に余白ができるようになって、すごく健康的になりました。
Q.最後に、初日を心待ちにしている方々へメッセージをお願いします。
青野:ミュージカル「あの鐘の音と共に」は3年ぶりの再演となります。この物語は、サントクレア市民たちが歩んできた過去と、歩んでいく未来をつなげるような作品だと思っております。雪のような奇跡や、温かい愛が皆様に伝わればと思っていますが、一度観に来ていただいて、観た後に「自分の人生、この先一歩踏み出せば何か変わるのではないか」や「自分の存在は誰かの役に立っているのかもしれない」という、そんな希望を持てるような作品になっています。ぜひ劇場に足を運んでいただき、私たちと一緒にサントクレアを楽しんでいただければなと思います。
<青野紗穂 プロフィール>
青野紗穂 兵庫県出身 1997年10月19日生まれ
兵庫県出身。9歳よりエイベックス・アーティストアカデミーでボーカルやダンスレッスンを開始。2012年、14歳でN.Y.アポロシアターのボーカルコンテストに出場し優勝。音楽活動はもちろん舞台にも活躍の場を広げ、17年『RENT』にミミ役で出演。
その後も多彩な舞台に出演している。
主な出演作に、『美女音楽劇 人魚姫』(主演)、『ブルックリン』(主演)、『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』、『イン・ザ・ハイツ』、『手紙』『CROSS ROAD』、『ヘアスプレー』、『ルーザーヴィル』『SONG WRITERS』、『ダンス・オブ・ヴァンパイア』など多数のミュージカルに出演。ディズニー100年の集大成ミュージカル「ウィッシュ」ハル役で日本版声優として出演。
<青野紗穂 SNS情報>
X:https://x.com/SahoA_official
Instagram:https://www.instagram.com/sahoaono/
<作品情報>
【作品名】『あの鐘の音と共に-THE BELL 2025-』
【脚本・演出・作詞】岡本一馬
【作曲・音楽監督】 津村友華
【振付】 ユキジ
【演出助手】 サカナ
【歌唱指導】 yuka
【舞台美術】 飯塚幸之介|(有)飯塚舞台事務所
【宣材撮影】 清原明音
【ヘアメイク】 権頭奈津美/小山麻由美
【舞台監督】 飯塚幸之介|(有)飯塚舞台事務所
【音響・マイク】 石金慎太朗|(株)東京音響通信研究所
【照明】 塩田哲也|(株)サウンドエム
【制作】 山田花菜
【制作補佐】 関戸有希
【票券】 八木井里緒
【プロデューサー】 岡本一馬
【主催・製作】 (株)ACTMENT PARK
『あの鐘の音と共に-THE BELL 2025-』公演サイト
https://actmentpark.com/thebell2025