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【KEIKO】梶浦由記さんとの夢のタッグ!「ここぞ」というタイミングで訪れる

2024.01.24
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音楽
インタビュー
ニューシングル「夕闇のうた」をリリースしたKEIKOさん。この曲はソロ活動後初のアニメタイアップ楽曲で、『戦国妖狐 世直し姉弟編』のEDテーマとしてオンエアされています。しかもこの曲の作詞・作曲・編曲はあの”梶浦由記さん。Kalafinaファンはもちろん、アニソンファンにとっても待望の夢のタッグ”となった今作について、そして昨年末のあのライブについてなど、タップリじっくり語っていただきました!


本気で難しかった? 梶浦由記制作の「夕闇のうた」




──今回の「夕闇のうた」なんですが、エンディングというよりオープニングみたいな曲ですよね。
 
KEIKO そうなんですよ。リズムがどんどん増えていくので。私も最後の方は、「オープニングかな?」みたいな印象でした(笑)。
 
──制作の順番としては、タイアップの話、アニメ、曲、という中ではどういう流れだったんですか?
 
KEIKO 最初にこのお話をいただいた時点で「KEIKO×梶浦由記」で行けたらどうだろうか?と言っていただいて。それで梶浦さんに書いていただけるならぜひ!とお返事しました。アニメの作品に寄り添った曲はこれまでもたくさん歌わせていただいてるんですけど、ソロでは今回が初めてになるんですね。やっぱりソロの初アニメは、梶浦さんに書いていただけるなら私も嬉しいですとお伝えして、制作が始まりました。
 
──この作品については、この話が来て知って、そこから原作を読まれたそうですね。
 
KEIKO はい。猫好きなので、まずたまちゃんがかわいいなと(笑)。キツネちゃんなので「かわいいな」と思ってまずキャラクターから入り、私は単純な性格なので、内容については分かりやすい方がありがたいんですけど、すごく分かりやすくてよかったです。私が歌わせていただく「世直し姉弟編」までは旅の始まりというか、作品のスタートの物語で、徐々に仲間が増えていくというストーリーでもあったので、すごい入りやすいなと思いました。もうササッと読めちゃいましたね。
 
──時代物でありファンタジーでもありますが、もともとこういうジャンルはお好きでしたか?
 
KEIKO 戦国ものというと、『三国志』と『キングダム』は全巻持っているほどで、「男の戦い」ものが好きなんですよ(笑)。もちろんこれまでKalafinaで歌わせていただいた作品は全部見させていただいていて、今回は「戦い」とか「武将」というのとはちょっと違いますけど、戦国時代という背景の部分が共通したジャンルだったので、面白かったし、出会えて嬉しかったですね。
 
──妖怪とか化け物がたくさん出てきますよね。
 
KEIKO 妖怪の細部の描写が難しくて「どうなってるんだろう?」と思って(笑)。パラパラって流し見する時もありますけど、やっぱり自分が歌わせていただく作品はじっくり見たいじゃないですか。けっこう難しい描写だなと思って、妖怪の細部についてはじっくり見てました。「ここは手なのかな? 足なのか?」みたいな(笑)。そういう感じで制作に入る前に、原作を楽しませてもらいました。いろんなタイプがいて、個性があるキャラクター像だなと思って。独特ですよね。
 
──作品がどんな感じか分かったところで、梶浦さんの曲ができてきたという感じですか。
 
KEIKO そうですね。まず「TVサイズ」という、テレビのEDになる形の制作から入ったんですね。今回、「TVサイズ」とオリジナルはちょっと歌い出しのアレンジが違っていて、「TVサイズ」は弦のアレンジから始まるんですね。バラードな感じで始まっていくんですけど、ちょっとそこは置いといて、まずはメロの雰囲気をということでワンコーラス、「TVサイズ」の仮歌を録って、キー合わせとかもやっていって「うん、こっちだね!」という感じで。その仮歌の流れは阿吽の呼吸みたいな感じで、スムーズにレコーディングさせてもらいました。
 
──実際、そうやって曲ができてきて、どういう印象でしたか?
 
KEIKO やっぱりちょっと和テイストだなと思いました。アニメのタイアップを作られる時、梶浦さんは本当に作品に寄り添った上で、さらにその作品をご覧になる方々が「このフレーズはここの部分を言ってるのかな?」と想像する余白を残していく、完全に答えは出してないという寄り添い方をされていると伺ったことがあったんですね。今回もそういう感じだなと思いながら、メロディーは少し和テイストですけど、さっきもおっしゃっていただいたように曲が最後にいくにつれて徐々に徐々に盛り上がって、段階を経ていくっていうのが、物語性を感じてアニメのタイアップならではだなという感じがすごくしました。懐かしい感じというか。
 
──レコーディングで歌われる時に、特に気をつけたり意識されたことというと?
 


KEIKO いつもなんですけど、梶浦さんの曲を歌う時は「言葉が流れないように」というのはすごく意識しています。頭の「光と影が手を取り駆け巡る」というこのフレーズで、私の中でキャラクターがポンポン!と浮かんできて。「光と影……うん、なるほど」みたいな。その時点で、頭の中で考えて歌うというよりは、自分の中で情景がパッと浮かんだというのがあって。「夜の中で生まれた」の「中で」というフレーズを含みがある、意志を感じる包み込むような歌い方にしたいな…、言葉の1個1個を流れるように……「中」って言葉一つなんですが、ここの歌いぐせを絶対変えようとか考えて。歌詞をいただいた時に情景が見えているんですけど、その時に言葉がもう体の中に入ってないと私、冷めちゃうんですよ。だから本番のレコーディングまでに暗譜して、あんまり譜面を見ないようにしたくて。自分の中でもう情景を見た上で歌詞が出てくるっていう状態にしたいんですね。

──そうなんですね。
 
KEIKO その中で、やっぱりレコーディングはライブと少し違って、「言葉の計算」がすごく大事なんですね。ソロになってからは全部1人で歌い上げるので、全部を全力で歌ったらうるさすぎたり、喉の微妙な震えみたいなものを大事にして歌いたいという時もあって、そういったちょっと繊細な表現もレコーディングでは出したいっていうのがあるんですね。だからこそ、まずは自分の中で暗譜することがけっこう大事なんですよ。その後に、自分に見えたそこの景色の中で歌って、録音してみる。ここの言葉をちょっと大事に拾いたいなとか、ここはちょっとウィスパーっぽくしようかなとか少し研究して、レコーディングに持っていくと。その上で梶浦さんにディレクションしていただいて、「どっちがいいですかね?」という感じの流れだったので、時間はそんなにあったわけじゃないんですけど、でもその中でカッと集中して、まずは体に入れようと思ってスタジオで繰り返し繰り返し、暗譜するぐらい歌い込んだ感じでしたね。
 
──梶浦さんからのディレクションはかなり細かいものなんですか?
 
KEIKO そうですね、けっこう細かいかもしれないです。今回わりとレンジが広くて、低域から始まってけっこう高めまで歌っているんですけど、低域を歌う時はちょっと意識を明るめにしないと、レコーディングだと少し暗く聞こえてしまったり、大事な言葉が埋もれて聞こえちゃったりすることがあって。不思議と音の中に紛れ込んじゃうというか。それはもったいないというか、悔しいじゃないですか。だからそこは自分が思ってる以上にやらないといけないんだなっていうのを、改めて意識して。(手元の譜面を示して)譜面を見ると、「明るめ」っていろんな個所にメモしてるんですよ。「チェロの感じ」とか。
 
──ああ、書いてありますね。
 
KEIKO そういう風にポイントポイントで、低域の部分を大事にしてなきゃいけないっていうのはありますね。
 
──しっかり意識しておかないといけないと。
 
KEIKO そう。そうやって思った以上に意識して、歌って、聞いてみたら「普通」ぐらいなんですね。レコーディングって不思議なんですけど、「まだまだやっていいんだ!」みたいな。「やりすぎたかな?」と思うぐらいが普通だったりするんです。
 
──そういうものなんですね。

KEIKO 梶浦さんの曲、特にアニメの曲だと、梶浦さんご自身も「ダイナミックに時にスケール大きめに制作している」っておっしゃっていて、だからこそ歌う側もちょっと気合を入れ直して「やり過ぎかな」っていうぐらい、大きく体に響かせるような歌い方をしても、「あ、普通だね」みたいな(笑)。やはり梶浦さんの音楽だと、普通にしっかり目に歌っても曲のエネルギーに負けちゃうんだなっていう感じなんですよね。今回は弦は絶対的な信頼の今野ストリングスの皆さんに彩って頂き、ミュージシャンの方々も梶浦さんの現場ではお馴染みのFBM(フロントバンドメンバーズ)の皆さんに演奏して頂きました。長年一緒にやらせていただいている音楽の大先輩!その大人なサウンドがゴリゴリに入ってる中で歌わせていただいたので、私も「負けないぞ」みたいな感じで(笑)、気合をかなり入れて歌わせてもらいました。
 
──実際、聴いて「気合入ってるな」と思いました(笑)。むしろ気合い入ってないと、この曲は歌えないですよね?
 
KEIKO そうなんです。難しいんですよ!(笑) 実は結構難しくて、本音で言っちゃいましたもん、「梶浦さん、この曲難しいです!」って。そしたら「うん、KEIKOちゃんだから書いちゃった~」って言ってくださったんですけど、お互いにこうやって長く、もう20年近く一緒に音楽をやらせていただいていて、そう言っていただけるのも嬉しかったです。まだまだ挑戦しようと思いました。


ソロになってからの梶浦楽曲の存在とは?




──ソロになってからの、梶浦さんの曲って、KEIKOさんの中ではどういう存在ですか?
 
KEIKO ソロになってから3年経って……それまでは、梶浦さんの音楽だけを歌い続けてきた音楽生活だったので、ある意味、他を知らない…ソロになって挑戦しなきゃいけない事もたくさんある中で小さな変化や気づきは勿論ありました、でもやっぱり今ソロと同時進行で、FictionJunction(梶浦由記のソロプロジェクトの総称)で梶浦さんと常に活動させていただいてるというのもあって、ずっと私の中に梶浦さんの音楽があるんですね。たぶん、遠くなったり離れたりしたらまた変わると思うんですけど、離れてないので(笑)、変わらないんですよ。常に私のそばで鳴り続けてる音楽が、梶浦さんの音楽で。なくなったことがないから、まだそんなに大きく変化してはないのかもしれないですね。
 
──ただ、ソロになってからは梶浦さんではない、他の方の曲がメインになったじゃないですか。梶浦さんの曲は「七色のフィナーレ」以来になるので、「ここぞ」というタイミングで訪れるというか。
 
KEIKO 「ここぞ」っていいですね(笑)。心強いです。
 
──だからこのシングルにしても、普段のKEIKOさんのソロ作品とはまたちょっと別の顔ですよね。
 
KEIKO そうですね。制作という意味では、「七色のフィナーレ」は「楽曲提供」という形で、作詞と編曲はKEIKOさんチームにお任せという制作の仕方だったんですよ。だからこれまでやってきたような関係値での制作というのは、ある意味「夕闇のうた」が初めてですね。あ、でも大きく変化したとこはありますね! 譜面を見て分かりました。
 
──というと?
 
KEIKO 以前までなら私が担当するようなパートではない部分も譜面に記されていて、私的に「おっ!」って驚いたところがあるんですよ。真ん中の、ちょっとガラリとメロディーが入り組むEメロという部分があるんですけど、ここはハーモニーがおっかけっこしてて、譜面にはクロスボーカルと書かれているんですが、曲の場面展開として、景色をガラリと変えるメロディーラインで、全部がボーカルトラックなんですよ。
 
──ほう。
 
KEIKO コーラストラックとか裏じゃなくて、全部がちゃんとクロスボーカルとして鳴っているような旋律が入っていて、その旋律を歌う時に、全部「ボーカル」って書いてあるからこっちだろうなと思って歌ったら「ううん、KEIKOちゃん、そっちじゃなくて上の方」って言われて。「えっ、上の方歌うんですか?」みたいな。私は五線譜の下側を歌うことがすごく多くて、特にそういった入り組んだメロディーの場合は。だから五線譜の真ん中以上、上の方をメインで歌うってことがほぼなかったんですよ。ソロになって少しずつ増えてきたんですけど、この3年間に私がいろんな音楽をソロで歌ってきてるのを梶浦さんも聞いてくださっていたり、梶浦さんの現場でもそういったパートも少しずつ増えたりとかしたっていうのもあるのか、「出るもんね?」って言いながら(笑)。梶浦さんが私の変化に気づいて曲作りをしてくださっていたんだなっていうのがすごく嬉しくて。「ああ、見てくださっているんだ、聞いてくださっているんだな…頑張らなきゃ!」て気持ちになりました。それは自分の中ですごく嬉しい変化と挑戦でしたね。
 
──なるほど。
 


KEIKO どの現場もそうだと思うんですけど、「できないこと」をそんなにやらせないじゃないですか。お仕事なので「できることをやらせる」っていう、まずそこが第1だと思うんですけど、だからこそ、「あそこやりたかった! 悔しい! 次こそこれが歌えるようになりたい!」と思ってみんな努力していくと思うんですけど、そういう過程がこれまでずっとあったので、「私もこのフレーズを歌えるようになったんだな」っていう喜びがありました。
 
──そこを汲み取って曲に入れ込んでくださってたわけですね。
 
KEIKO はい、ゾクゾクっとしました。本当に嬉しかったです。
 
──TVサイズが先行配信されてからの反響はいかがでしたか?
 
KEIKO ちょうどその頃、「Kaji Fes. 2023」という梶浦さんの30周年イベントがあって、そのリハーサルをやっていたんです。「サプライズで武道館で歌うよ!フルサイズのリハをしているよ!みんな、待っててね!」みたいな気持ちだったんです(笑)。「早く、早く聴いてもらいたい!」みたいに、いつも以上に前のめり感があったんです。
 
──待てない!と。
 
KEIKO それで反響を見てみると、「あ、聞きたかった、この音楽の感じ!」とか「これはフルバージョンが早く聴きたい!」とかのコメントとかを見たら、余計に「フルバージョンを聴いてもらいたい!」という気持ちになりました。今回、リリースまでにそういう過程がジワジワとあって、これまでずっと応援してくださったお客さんとの間でも、その楽しみを共有できる時間があったので、いつも以上にリリースまで「みんなで待ってる」っていう感じがありました。
 
──しかも年が明けたら1月10日からアニメが始まって、1月24日に正式リリースということで、ずっと楽しめた感じですね。
 
KEIKO そうなんです! だから今回は、ずっとみんなと常にカウントダウンしてる感じでちょっとずつちょっとずつ何かがあって、嬉しいんですよ! お祝い事が続くって、幸せです。


「夕闇のうた」MVの衣装に隠された秘密とは?


──アニメ作品の中で自分の歌が聞こえてくるというのは今までもずっと経験されてると思うんですが、ソロになってからだと、またちょっと違う感じがあったりしますか?
 
KEIKO 緊張します(笑)。アニメのMVというのが『戦国妖狐』のホームページで出された時に見ていて、一番初めからアニメとシンクロしていくのを見た瞬間に、すごく緊張しました(笑)。自分だけの、1本の声でアニメと重なって聞けるって、すごく新鮮でした。
 
──グループじゃなくて、ってことですね。
 
KEIKO はい、初体験だったし、やっぱり緊張しますね。それこそKalafinaのスタートの時に『空の境界』を、新宿の劇場でみんなで観た時と同じような緊張感でした。初めて自分たちの声とアニメーションがリンクする瞬間っていう……何でしょうね、やっぱりアニメと音楽って、距離感がすごく近しいんですよ。どちら側も寄り添うように、相乗効果をきちんと狙って作られているっていうところで、制作陣の本気と本気がぶつかるじゃないですか。それが毎回、どのアニメーションでも、やっぱ私はザワザワッと震えが来る感じがあるんですよね。あの時の緊張感と感動を今回思い出したし、一瞬でしたけど、そういうのを感じたので、本放送が本当に楽しみになりました。
 
──この曲のMVが、アー写と同じ衣装ですよね。この衣装がまずカッコよくて。
 


KEIKO ありがとうございます! 和装で暴れて、ちょっと荒ぶってて(笑)。これは本当の和服で、2枚のお着物を着崩してアレンジしてるんです。2枚をうまく重ねて、ドレスっぽくしてるんですよ。
 
──ああ、そうだったんですね! てっきり、和服の生地を使ってドレス風にデザインされたものなのかと思ってました。
 
KEIKO ですよね! 私も「どうやって着るんだろう?」って(笑)。着付けができるスタイリストさんが上手に組み合わせてくださったんですけど、メチャクチャ重量感があるんですよ。着物2枚分なので。
 
──ああ、なるほど。右肩が、ちょっと片肌脱いだような感じになってますよね。
 
KEIKO それも着付けでそうしてもらってます。そこも新しいなと思いました。アレンジされた和装ドレスみたいなものもありますけど、こういう着方もあるんだなと。しかもそれで荒ぶっていたという(笑)。撮影の途中から暑かったですもん!ドレスじゃないのでけっこう着崩れちゃったりするので、撮影はスタッフ陣の方々にフォローしていただきながらやりました。
 
──しかも、いつもはここまでアクションないですよね。
 
KEIKO そうですね。やっぱりアニメの世界観って、少しオーバーになった部分を切り取ってもらう瞬間が欲しくなるというか、少し荒ぶりたいんですよね。そこがアニメーションの魅力というか、現実のリアル世界から、ちょっと異世界に飛ばせてもらえるっていうのは。だから歌ってる人も視覚的にそれを表現しないと、音にも衣装にも負けますからね。
 
──プラス、他のアクションがシルエットで入ってましたね。
 
KEIKO 殺陣と日舞ですね。プロの方にパフォーマンスしていただくと、あんなにもしなやかで凛々しくて、「日本っていいな!」って思いました。カッコいい!単純に最後までファンのように見てました(笑)。あーもう一度観たい……。すごいんですよ!カメリハでも滝汗をかきながら全身全霊で、絶対手を抜かないんです。剣術や棒術って危ないじゃないですか。集中されてるから、リハーサルから帰ってくる度に本当に戦った後みたいな感じで。「今から本番ですが大丈夫ですか?」みたいな(笑)。
 
──心配になるぐらい(笑)。
 
KEIKO 息を呑む感じでしたね。バックでは「夕闇のうた」がかかってて、すごくしなやかな感じの部分もあるんですけど、「突き!」みたいな時は、モニター画面を見てると目をつぶっちゃうぐらい迫力があって。日舞の方も妖艶すぎて、「ついていきます!」みたいな(笑)。しなやかな動き、女性らしいラインがやっぱりプロの方はすごいなと思って。本当に「冗談抜きでたくさん使ってください、私の場面を削って!」って言っちゃいました笑MVで自分以外の方にパフォーマンスしていただくというのも初めてだったので、ぜひたくさんの人に見てほしいですし、『戦国妖狐』の世界にすごく合うなと思って。
 
──実際、MVの完成形になった時には、そのパフォーマンスを生で見ていたから余計に、感じるものがあったんじゃないですか?
 
KEIKO 音楽とのリンクがすごかったです。和メロの中に「梶浦さん節」があって、作品から、曲から歌詞から、全部がリンクすると強いなと思いました。そこは私もこれから生でライブパフォーマンスする時に意識したいところだなと思いましたね。言葉もだし、その曲を歌う時はスッとその曲の世界に、ちゃんとこの『戦国妖狐』の「夕闇のうた」という世界の中に、入り込んで表現したいなと。
 
──ライブの中でも、セットリストに入れた時にすごくいいアクセントになりそうな曲ですよね。
 


KEIKO なりますね。もともと声が低音というのもあるんですけど、ちょっと「闇的」というか、アニメで言うと、属性みたいなものってあるじゃないですか。「闇属性」とか「夜型」みたいな。ファンの方々でも言葉の表現は様々ですが、そうおっしゃってくれる方が多いんですけど、私も夜が好きだし、落ち着くというか。いろんな顔があってこそのエンタメなので、いろいろできるというのは絶対大事だし、やりたいんですけど、その中でもたぶん、アーティストさんってしっくりくる部分、ストンと落ちて「あ、ここだよね」みたいなものってあるじゃないですか。私はこの曲もそうですが、梶浦さんの曲を歌わせていただいたり、自分のソロ楽曲でも思ったりするんですけど、少し儚さのある和メロみたいなものが、自分でも歌っていて心地よかったりして。この先のライブでも「夕闇のうた」を軸に、自分の今までやってきた曲たちを結びつけて1日のライブを作るとどうなるかなって、今ちょっと練り出したんですけど、すごく楽しみになりました。曲が増えていくと、その曲に合わせて、また選曲していけるので、『戦国妖狐』さんとの出会いから生まれた「夕闇のうた」はこれから待っているライブに影響力大きいです!


勝手に『戦国妖狐』のイメージソングとして作った!? カップリング曲「燈命」!


──カップリングの「燈命」なんですが、この曲も『戦国妖狐』と関連してるんですか?
 
KEIKO はい、その通りでございます。原作の『戦国妖狐』の中でたまちゃんの背景を綴った「妖狐小歌」という短編が入ってるんですよ。それが、迅火とたまちゃんの出会いの話なんですね。世直し姉弟として物語がスタートしていく前のお話なんです。その2人の背景を感じるEDにしたいっていう、制作サイドさんからのすごく熱い思いがあって、それを梶浦さんと私も伺っていて、その中で「夕闇のうた」が出来上がったんですね。私もアニメになる前の原作を読んで、人間が想像できないほどに、人生は永いという、たまちゃんしか分からない妖狐ならではの想いみたいなものとか、たま目線の曲が書けないかなと思ったんです。せっかくならこのシングルは『戦国妖狐』の1枚にしたいですと気持ちを伝えました。聴いてくれた方がアニメを観たり原作と照らし合わせて、想いを寄せながら聴いてもらえるものにしたくて。私も割と事細かに「ここのシーンが好き」とかいろいろ書き出したものを作詞・作曲のSakuさんに伝えて書いてもらった曲なので、より原作の内容に寄り添った優しいバラードになっています。私はかわいらしい感じと、一気に大人の妖艶な女性の両面を持っている、色っぽいたまちゃんが好きなんですよ。ちょっと女性の顔になる、あの瞬間のたまちゃんにドキッとします!マニアックですかね!?(笑)。
 
──いえいえ(笑)。
 
KEIKO 少ししとやかな、憂いがあるような、そんなたまちゃんの描写がここに込められるといいなと思って、捧げました(笑)。「ここのページのこの感じがいい!」とかも言って、でも「ここまで細かくは伝えなくていいですよ。基本はおまかせでいいので」って言いながらも、自分が歌う時にこういう描写が見えたらいいなと思って、全神経を注ぎました(笑)。
 
──なるほど。KEIKOさんのご希望でイメージソングにしてもらったということですね。でも逆に、原作とかアニメで『戦国妖狐』に接している人には嬉しいですよね、きっと。
 
KEIKO はい、喜んでいただければなと思って作りました。メロディーも和メロで。はじめ何曲か候補があったんですけど、言葉も入るので、少したどたどしさも残るというか、ちょっと拙い感じのメロディーにしていただいて。壮大なバラードになりすぎないような曲調がいいなと思って選びました。
 
──何度も言うようで恐縮ですが、「夕闇のうた」がOPで、この「燈命」がEDだったら、すごく据わりがいいなと思ったりとかしたんですよね(笑)。
 
KEIKO 嬉しいです(笑)。そういう風に聴いていただいてもいいですし、出来上がってみたら、セットにして聴いていただききたいなと思いました。
 
──3月には、東京と大阪でビルボードライブでのライブが予定されています。
 


KEIKO はい。ライブのタイトルにも「夕闇のうた」と入っているので、この曲を軸に作ろうかなと思っています。前回のビルボードさんのでのライブはアルバムタイトルと同じ「CUTLERY」にしたんですけど、シングルのタイトルは初なんですよね。「夕闇のうた」を軸に、これまで1stから3rdまで出させてもらった中で、一つの世界をちょっと作れるような構成を今練ってます。耳だけじゃなくて視覚でも、そこでしか楽しめない音楽って絶対あるので、ビルボードライブのあのラグジュアリーな空間と、少し大人な空間で楽しむ音楽っていう、その醍醐味もちゃんと感じながらセットリストを今、練っています。楽しいですよ(笑)。
 
──そして先ほども出た12・8&9日本武道館「Kaji Fes. 2023」ですが、終わっていかがでしたか?
 
KEIKO 「ふぁー……」って感じで。擬音になっちゃうんですけど(笑)。いやでも本当に、メチャメチャ集中してたんですよ! やっぱレギュラーボーカル陣として立たせていただくので、ゲストさんたちもしっかり支えるパートをやらせていただいてたっていうのもあるし、昨年1年間が梶浦さんの30周年イヤーということで、本当にずーっと走り続けて、一緒に駆け抜けた1年だったんですよね。その集大成としてこのライブがあったんですけど、やっぱり目指してるものが明確にあるといいですね、人間って。
 
──おお(笑)。
 
KEIKO やっぱり、みんなで同じ目標に向かうっていうところがあると、別にそんな確認し合わなくても、気持ちが同じ方向を向いてて、現場がもう熱いんですよ。単純に梶浦さんの音楽が激アツなんですけど。12月にNHKで放送された「6000曲のパレード」っていう梶浦さんの密着番組があって、一昨年ぐらいからもうずっとカメラが回ってるし。その「6000曲のパレード」のうち歌ものとなると、昨年『空色の椅子』という、Kalafinaの曲がタイトルにもなっている歌詞集を出された時に、「本当にたくさん歌わせていただいてるな」っていうことを想ったんですね。それを梶浦さんにもお伝えして、「本当に、KEIKOちゃんがこんなに歌ってくれているっていうのを、私も再確認しました」って言ってくださって。これまで積み重ねてきた色んな想いを胸に昨年を駆け抜けさせていただいて、その6000曲の中で欠かせない曲たちがたくさんあるから、その中から60曲に絞るのもそれはもう大変な作業だったんだろうなって。60曲って聞くと、演奏する側と歌う側からすると、「ええーっ!」って(笑)。「大きな大きな壁だぞ!」って、「これを超えたら強くなるんだ」って思って。一番大変なのはミュージシャンの方々だったりするので、いつも歌姫陣は、「いや、バイオリンの今野均さんの方が私たちよりもっと弾いてるから、私たちは全然いける」みたいな(笑)。それこそアニメのキャラクターみたいに、「無敵ゾーン」に入って行くイメージでいよう、みたいな。みんなでそうやって「大丈夫、ゾーンに入れば俺たち、いけるから」とか笑そんな励まし合いもしながらたどり着いた武道館だったので、私、当日はすごく冷静でした。
 
──そうなんですね。
 
KEIKO いろんなゲストさんたちを迎えて、「では声を寄り添わせていただきます」という感じで。いろんなアーティストさんたちがメインで歌われるので、低音の私はたくさん歌わせていただいてたんですよね。かなりいろんな歌姫さんたちとコラボができて、どの歌姫さんたちも、声が違うし、魅力も違うし、リズムの取り方も違う。長年やらせていただいてた方は見なくても阿吽の呼吸で分かるんですけど、ゲストさんたちはその一瞬一瞬で掴まなきゃいけない、寄り添わなきゃいけないということで全集中だったので、私の中では興奮してるとかそういうのではなく、よりその音楽、ゲストさんが大切な渾身の1曲を歌われているから、それを私も一緒に歌う一員になるので、けっこう冷静に1曲1曲大事に歌って、お祭りソングみたいな曲だけ、「ちょっといいですか、イエーイ!」みたいな感じで遊ばせてもらった感じでした(笑)。
 
──今のお話だけ聞いていると、ベーシストみたいですよね。
 
KEIKO そう言ってもらえると嬉しいです!(笑) そうですね、いつもリズム隊の低域隊とタッグを組んでいるので、「うす!」って感じでどっしり構えていようっていう。確かに、ドラマーさんとベーシストさんと、ストリングスだとチェロ、意気投合してます。
 
──昨年末にそういうライブの機会があって、1年の締めくくりとしてはすごくよかったんじゃないですか?
 
KEIKO 本当によかったです。そしてその翌週には、プラネタリウム・ライブもあって、それが歌い納めだったので。武道館でお祭り、ドーン!ってやった後に、みんなに「1年お疲れ様」ってなってもらいたくて。2023年の、大きな大きな波を乗り越えて、ポッと、小波みたいな音楽時間で最後に締めくくれたというのは、もう歌い人としてはメチャメチャ幸せな2023年でした。


2024年の活動は……「灰になりたい」!?




──ちょうど1年ほど前にインタビューさせていただいた時に、「2023年はこうしたい」というお話をされていたんですよ。
 
KEIKO ええーっ、何だろう?
 
──「ハマっていく」というのがテーマだと。

KEIKO ああ、思い出しました! いろんなことがあるから、その場面場面でちゃんとハマっていきたいって言いましたね。できてたかな?(笑) ……どうだろう? 自分でジャッジするの苦手なんですよ(笑)。だから見ててくれた人とか聴いてくれてた人とか、その現場を一緒に歩んでくれた人たちが、「こういうKEIKOも見られた」「この場面のKEIKOが印象的だった」とか、ところどころ、その人の中で残ってくれていたら、ハマれてたんじゃないかって気がします。私の中では、「ハマりたい」って言いつつも、たぶん1個1個の仕事は全力で必死だったんですよ。どのライブも限界突破していけるようにというか、「余力を残さないで終わりたい」って途中から思い始めたのか、ライブが終わった後は灰になってて。私って、ライブが終わった後もそんな風にはならないタイプだったんですよ。別に余力を残してたわけじゃないけど、いつもちゃんとペース配分を考えながら冷静にちゃんとやっていくパートでもあったので、それが自分のスタイルだと思っていたんです。でも今年は、梶浦さんの30周年をお祝いしたいっていう気持ちも相まって、ドイツとかアジアとかももう振り切って「11年ぶりのドイツだ!」みたいな。11年前に来てくださった方とか主催の方とかとも再会できたんですね。こんな事って中々ないぞ、それならば全身全霊で歌を届けなきゃと思って、「もう余力なんていらない!」みたいな感じで、振り切ってたんですよね。だから振り返ると、それぐらい自分も1個1個やり切った感じがあるので、来てくださった方が、「何かすごいエネルギーだったな」とか思い出してくれてたら、「やりきれたんだな」「ハマれてたんだな」って。今年はそんな風に、ちょっとずつ変化もしました。
 
──2024年はどうしたいですか?
 
KEIKO そうですね、すでにリリースが決まっている、ライブが決まっている、というのはあるんですが、この勢いを止めたくないから、やっぱり灰になる気持ちで、全力でやりたいかなと思ってます。どのお仕事も1回1回が、「この人と最後かもしれない」じゃないけど、それぐらいの熱量でちゃんとみんなと会える機会を大事にしたいかな。昨年3月のビルボードライブ横浜の日が、ちょうど声出し解禁になったかな?みたいな、みんなと確認した日でもあったんですね。そういう風に、ライブでもちょっとずつディスタンスが小っちゃくなった思い出があって。昨年は声が聞けるようになって、本来の音楽を楽しむスタイルに戻れたというのもあるので、何かその熱い気持ちを持ち続けて、たくさんの方にまた会いたいなって、歌を届けたいなって、思ってます。だから、灰になりたい……変なの(笑)。
 
──ビルボードライブは1日2ステージありますが(笑)。
 

KEIKO ええ、いいんですよ。灰になりますから(笑)。それぐらい全力で歌って、みんなに持って帰ってもらおう!ビルボードなのに、オールスタンディングとかではないのに(笑)。でも音楽の受け止め方はね、オールスタンディングでガーッとノってるから灰になるというわけじゃないので。「燃えた!」みたいな、込み上げるような、みんなの心を乱すような、そういう音楽を、歌を届けたいなと思いますね。エネルギー値高めで、いかせてください(笑)。
 
──格闘技の試合では、接戦になった時によくセコンドが「余力を残して終わるな! 全部出し切れ!」って言うんですが、それを思い出しました。

KEIKO それです!(笑)。余力は残すなっていうね。いやでも、何かその先に見える何かがあるんですよ。体力もそうだし、自分とお客さんとの熱量もそうだし、そんな風に音楽がやれたら幸せだなって思います。
 
──くどいようですが、1stステージで出し切った後の2ndステージは大丈夫なんですか?
 
KEIKO それは大丈夫ですね。何かノってるので。不思議なんですけど、アドレナリンが切れないんですよ。特に2ステージとかやると、もう朝5時ぐらいまで切れないんです。大体朝まで起きてるので、燃えちゃった時はアフターパーティみたいにインスタライブやっちゃったりとかしてるんですよ、来れなかった人用だったり、自分の熱が冷めないから。この時代でよかったなって思いますね、そういうのも共有できるから。
 
──確かにそうですね。
 
KEIKO そうやってみんなと前向きな時間を作りたいな!燃えてます(笑)。
 
──ではビルボードライブの当日深夜も、ちょっと楽しみかもですね。
 
KEIKO はい、燃えます(笑)。
 
──ありがとうございました!

 
撮影 長谷英史



「夕闇のうた」
TVアニメ「戦国妖狐 世直し姉弟編」エンディングテーマ
2024.01.24 ON SALE

 
Music Videoはこちら:https://youtu.be/3QG1XPM5ut0


KEIKO Billboard Live 2024 “夕闇のうた” K015~018

2024年3月11日(月)ビルボードライブ東京
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00

2024年3月19日(火)ビルボードライブ大阪
1stステージ 開場17:00 開演18:00 / 2ndステージ 開場20:00 開演21:00



【KEIKOオフィシャルホームページ】
https://avex.jp/keiko-singer/

【KEIKOオフィシャル X】
https://twitter.com/keikostaff

【KEIKO YouTube Channel】
https://www.youtube.com/channel/UCRr3yX9Kp5QVyr6JwxNnIJA

【KEIKOオフィシャルInstagram】
https://www.instagram.com/keco.choco/


 
高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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