昨年、1stアルバム『ENTER』をリリースし、ソロアーティストとしての活動を再始動させた高野洸。アルバムを引っさげての1stツアー『高野洸 1st Live Tour “ENTER”』はコロナ禍にもかかわらず大盛況のうちに終了し、アーティストとしてファンと音楽を共にする喜びを味わった。
そして今年6月8日、ついに2枚目のフルアルバム『2LDK』がリリース。これまでシングルとしてリリースされてきた人気曲に加えて、☆Taku Takahashi (m-flo, block.fm)をはじめKanata Okajima, Hayato Yamamotoがコライトした新曲「Anoter Brain」、Bimiこと廣野凌大とのコラボ楽曲など、今回も縦横無尽に様々なジャンルを歌い尽くす。1枚目よりさらに自由に、さらに高みを目指した2ndアルバム『2LDK』について語っていただきました。
制作過程から衝撃的だった「Another Brain」
──2ndアルバムリリースおめでとうございます! アルバムのタイトルとなった『2LDK』にはどんな意味が込められていますか?
高野 1stの時より日常的に聴いてほしいなと思ったんですけど。いろんなタイトルを考えていく中で、みなさんの身近にあるもので、特に不動産とか見てる時にはよく目にする文字ですしね(笑)。2LDKの中にはいろんな部屋があって、その部屋を曲にたとえると、自分のアルバムにもいろんな曲が入ってて、曲を聴く時間とか気分によって、家で聴きたい曲を聴けるっていう、そういうアルバムにしたくて。そして 2ndアルバムの2とかけて、『2LDK』となりました! 寝室で聴きたい、バラードに近いような寝る前に落ち着く曲だったり、リビングでくつろぎながらチルアウトする曲とか、友達が遊びに来た時、夜テンション上げたい時に聴くダンスチューン、パーティソング的なものも入ってます。
──アルバム・タイトルを決める時に不動産めぐりをしていたわけではないんですよね?(笑)。
高野 (笑)。でも他の候補を出しつつも、これが一番しっくり来たんですよね。この4文字がすごく目立つし、映えると思うし。
──今回のアルバムには新録曲がたくさん収録されていますが、中でも☆Taku Takahashi (m-flo, block.fm), Kanata Okajima, Hayato Yamamotoがコライトした新曲「Anoter Brain」はまさに高野さんのイメージにピッタリな曲だと感じました。初めて聴いた時どうでした?
高野 衝撃的でしたね。まずオケだけ作られたものを聴いたんですけど、その段階でノリが良くて。☆Taku Takahashiさんのリズムの取り方とか、ドラムの使い方が僕はめっちゃ好きなんですよ。まだメロディもついてないんで自分で予想するしかないんですけど、ここがサビかな?っていうところはそこまで持っていくのにEDMのような煽りもありつつ、いいところでズガンッとノれるんで、思わず首を振ってしまうような感じでした。その後、メロディをKanata Okajimaさんがつけた時に、よりやばいなと思いましたね。届いてすぐ5回連続くらいで聴いちゃって、めちゃくちゃかっこよくて! これを自分が歌うんだって思うとわくわくしましたし、ずっと本当に楽しみにしてました。なんですけど、仮歌をKanata Okajimaさんが入れてくださってて、けっこう高音でめちゃくちゃうまいんですよ(苦笑)。海外で育った方のグルーヴというか、それを真似したい部分ではあるんですけど。今この曲がカッコいいのはKanataさんのグルーヴがあるからだから、自分もがんばらなきゃまずいなって思ってがんばりましたね。
──でも伸びやかな声が出てましたよね。
高野 そうですかね(照)。
──歌詞も少し不思議というか…。
高野 宇宙を感じますよね。実はこの曲のテーマは“スマホ”なんですよ。トラックの段階で、これからKanataさんがメロディとか歌詞を作る前にテーマを決めようとなって、「Another Brain」となりました。スマホに依存し過ぎて、君(スマホ)がいないともう生きていけないっていうのはまず大前提であって、でも、スマホというもう一つの脳みそを使って、視聴覚だけでいろんな世界と触れ合うことができるっていう。それがなんか素敵だなと思っていろいろ書きました。
──でもこの曲は歌うのはすごく難しそうですよね。レコーディングはどうでしたか?
高野 いやー、難しかったですね! 音のハメ方とか、ちょっと普通とは違う取り方をしてるからこそちょっとR&Bっぽく聴こえるんだろうなって自分は思ってるんですけど、だからこそちょっと難しいかなって感じがします。
──この曲を作るために☆Takuさんとはけっこうコミュニケーションを取りながらの作業だったんですか?
高野 そうですね、☆Takuさんがすごく僕と近い立場でお話をしてくださるので、まず僕がどんなジャンルの音楽を聴くのかとか、どういうものを作りたいのかっていうのを聞いてくださって、その後に曲を作り始めてくれたんですけど。キーチェックの時にまたお会いして、キーチェックではしっかり歌って、音の高低を一音一音細かく確かめながらやったんですよ。こっちの声質はすごく響きがいいとか、全部言ってくれるんです。すごく褒めてくださったし、これまでいろんな名曲を作り出している方がそうやって言ってくれるのはめちゃくちゃ勉強になりましました。それに、☆Takuさんの音楽オタクっぷりがすごく素敵で! またご一緒したいなと思いながらやってました。
──☆Takuさんから褒められた言葉で覚えているものはありますか?
高野 マニアックな話なんですけど、高い周波数が出てて、それが艶がある、と言われました。レコーディングしたら声の周波数が波形で出るんですけど、高いのをちょっといじるとキラキラした声になるらしいんですよ。自分の声って第三者としては聴けないので、そういうご意見はありがたかったですね。本当に☆Takuさん、聞けば何でも答えてくれるので、いろいろ聞いちゃいましたね。曲とか音楽についての質問もそうですけど。本当に同じ目線で話してくれる方です。
──☆Takuさんとのお仕事を通して、音楽への思いが変わったところはありましたか?
高野 より深いところまで見えるようになったと思います。だからなおさら面白いし、今までの作品の反省点とかもより見えてくるので、ここから先に作るものがより研ぎ澄まされるんじゃないって思います。
──では続いて、新録曲の「ツイてる。」ですが、高野さんは自分はツイてる方だと思いますか?
高野 ツイてる方だと思います。基本的にはツイついてますけど、でもなんかツイてないなって思う日ももちろんあるじゃないですか。そういう日のことを綴ってみた曲です。寝坊した日のことというか(笑)。テーマ的には“ツイてないけど、ツイてる”。そんな一日の出来事をバーッと書き上げたんですけど、歌詞にはその時に書いたものをわりとそのまま反映してくださってますね。曲にハメるのって難しいと思うんですけど、それをうまいことストーリー性を持たせながらAメロはこういって、サビはこういくっていう流れができてるんで、よくできてるなあと思いました。
ついに叶った! Bimiこと廣野凌大とのコラボ
──「slow game life feat.Bimi」は、Bimiこと廣野凌大さんとのコラボレーションですよね。なぜ2人でコラボすることになったんですか?
高野 初めて共演した舞台『タンブリング』で、廣野凌大が今度Bimiという名義でアーティスト活動を始めるのでMV観てくださいって言われたのが初めてですね。今では彼もライブ活動とかしてますけど、その時に「いつかコラボやらせてください」と言われていて。Bimiの曲は役者・廣野凌大じゃなくてちゃんとアーティストだなっていうのを感じましたし、それでいて凌大の音楽好きな感じが出て、ラップもめちゃくちゃうまいし、ぜひコラボしたいなと思っていたんで、それが叶ったという感じですね。
──歌詞も格ゲーっぽくてユニークですよね。
高野 そうですね、2人で一緒にやる格ゲーが一つあるんで、それを取り入れました。僕は2番でロールプレイングゲームを入れてます。ABとか各々のヴァースとかはトラック聴きながら自分でまとめて出してますけど、サビの歌詞はメロディライン含めて一緒に作りました。廣野凌大が「カラオケ行って作りましょう!」って言ってくれたんで、一緒にカラオケ行って作って。俺も凌大も舞台終わりとかだし、普通に夜にカラオケで会って作りました(笑)。
──今回は役者ではなく、アーティストとしてのコラボですが、おたがいに今までとは少し違う一面を見せる新鮮さはありました?
高野 凌大の曲の作り方みたいなのは予想通りっていうか(笑)。凌大って予想外にこんな作り方するんだな、じゃなくて。やっぱりシンプルにフィーリングで作っていくタイプだったから、まあ予想通りでしたね。僕は歌詞を作り込むタイプなので、けっこう真逆です。
──この曲のテーマは“ゲーム”なんですか?
高野 そうですね。もう即決で「これでいいんじゃない?」って決まりました。それこそ僕んちのリビングで夜から朝までゲームやってるそういう日常、どうですか?って(笑)。今回のアルバムのテーマを発表した時に凌大がそう言ってくれたので、それに決まりました。
──「鶴」は高野さんが作詞された曲ですが、どんな思いで作った曲ですか?
高野 この曲は、僕のおじいちゃんを思って作った曲です。初めて自分の身近な人が死の淵に陥ってしまって、今までそういう体験がなかったのでびっくりしまして。その頃は東京での活動が毎日続いている時だったので、ずっと心配はしてたんですけど、帰ることもできず…。それでも一日だけ休みをつくってもらい帰ることができて、会えたんですよ。その時、仕事は自分のがんばれるところまでがんばれって、それがじいちゃんにとって一番うれしいことだろうってみんなも言ってくれたので、東京での活動が向こうに届いてたらいいなという思いで書きました。
──高野さんにとっておじいさんはどんな存在ですか?
高野 カッコいいじいちゃんだったなと思いますね! 僕が感動した言葉があって。「幸せな人生だったよ」って言ってくれたんですよ。その言葉を聞けて本当によかったですね。僕の活動を一番身近でずっと応援してくれたので。子どもの頃は福岡から上京する時にもついてきてくれてたし、活動は全部チェックしてくれてました。
──この曲はおじいさんにお聞かせしたんですか?
高野 聴いてもらえました。本当は歌詞も見てほしかったけど、もうスマホの文字も見えないくらいだったんですよ。そしたら家族がじいちゃんが見やすいようにってA4の紙をつないで大きな紙を作って、そこに歌詞を大きく書き出してくれて…。それを見せながら曲を流してくれました。
──新録曲の「SECRET」ですが、こちらはまたガラッと曲調が変わりますよね。
高野 「SECRET」はライブのことを考えて選曲した曲で、テーマは“秘密の時間・空間の共有”。二人だけの空間、誰にも内緒の世界ってドキドキワクワクするじゃないですか。その高揚感もリズムに入ってるし、色気もある曲ですね。ただ、高音がめちゃくちゃ苦戦しました。僕の曲の中では一番高くて、レコーディングブースでめちゃくちゃ調整しました。
──「Pull the Trigger」もまた少し大人っぽい曲調ですね。
高野 「Pull the Trigger」のテーマはタイトルどおり“引き金を引く”なんですけど、「その時が来たら、そこからは容赦しないよ」という想いを歌った曲です。夜をイメージして歌ってるんですけど、みなさんのご想像にお任せします(笑)。
ライブが楽しみ! ペンライトをいっぱい振ってほしい!
──なるほど(笑)。今回のアルバムには新録曲以外にも6曲収録されていますよね。シングルとしてリリースされている曲も含めて、あらためて語りたい曲はありますか?
高野 「tiny lady」ですね。今回のアルバムの曲順を決める時、実は一番迷ったんですよ。「tiny lady」は夏の曲でもあるし、でもチルっぽさもありつつ、そこであらためて気づいたのが、この曲ってシティポップだなって。ちょっとレトロ感があって、それがおしゃれなんだなって。前までは言語化できなかったですけど、今回やっと表現できましたね(笑)。2曲目っていう曲順もまた絶妙で、気持ちは上がったまま、でも焦らされないゆったりした気持ちでチルいなって。一曲目の「Another Brain」を聴いてもらった後に「tiny lady」っていう繋がりがすごく素敵なんじゃないかなって思ってます。
──初回生産限定盤には特典映像も盛りだくさんで、中でもMVが6曲も収録されているんですけど、中でもお気に入りはありますか?
高野 「Another Brain」は監督が曲を聴いてそこから発想を膨らませてくれて、浮遊感とか、ちょっと感じる宇宙感みたいなものを映像にしてくれました。すごくカッコいいんですよ。曲ではバスドラがドンドンって入ってるけど、でもあえてゆっくりな映像を作るということを監督がやってくれていて、めちゃくちゃ素敵で相性抜群でしたね。「ツイてる。」は歌詞もストーリー性のあるものだったので、映画のように撮りたいと提案したんですよ。駅で撮影できたらいいなとお伝えしたら、実際に電車で撮影することができて、いいMVになりました。
──昨年実施された初めてのツアーはどうでしたか?
高野 駆け抜けました! どの会場も達成感があって、本当に楽しかったです。ツアーで回るっていうこともうれしいんですけど、ソロでやらせてもらってる活動で、今ではこうしてライブをできるようになるまで曲が揃ってきて、それだけですごくうれしいことなんですけど、そこにファンの方が集まってきてくれて。僕も体力との勝負だったんですけどちゃんとやり切れて、すごくうれしかったです。
──このライブツアーがあったから今回のアルバムに繋がった、というものはありましたか?
高野 これは僕が考えすぎなだけなのかもしれないですけど、“ファースト”アルバムと“ファースト”ライブには色をつけたくないって思ってたんですよ。だから、このセカンドからは思いっきり遊んでいけたらいいなと思ってて、今回はちょっと攻めた曲にも挑戦しましたし、ライブももちろん攻めたライブにしたいと思ってます。もちろんファーストアルバム、ライブを経たからこそ感じられたもの、新しく見えたものがめちゃくちゃたくさんありましたし、何事も経験って本当に大事なんだなって思いました。
──6月25日からは『高野洸 2nd Live Tour “AT CITY”』も始まります。自分に対して期待していることは?
高野 究極的には、唯一無二な存在になれたらいいなと思ってるんですよね。ライブをやるアーティストがこれだけたくさんいらっしゃる中で、それでも「洸くんがライブやるんだったら行きたい」って、日頃から応援してくれてる方はもちろん、ライブだけでも観たいという方にも遊びに来ていただけるように、ライブが注目されるような存在になりたいですね。さらに俳優もやってるからこその演出ができればなおさら面白いし、他と比べても遜色のないものを作れるんじゃないかなと思ってます。実は今回、福澤侑くん、 Daikiさん、皇希さんの3人からなるクリエイタークルー・REXにライブ演出をお願いすることになったんですよ。僕は3人とも仲よしなんですけど、特に同年代の侑くんとは仲よしで、僕もREXにお願いしたいと思っていたし、彼もぜひやりたいと言ってくれて、今回実現しました。僕もセトリを作ったり、構成を作ったりして、より親密に話して一緒に作っていってます。侑くんはダンスはもう極めてるんですけど、これまでいろんなライブの演出をやってるし、俯瞰で見てくれる人なんですよね。踊りまくるのはもちろんなんですけど(笑)。その中でもどれだけエンタメを面白く伝えるかっていうのを最重視して作っていきます。
──「slow game life feat.Bimi」でコラボしたBimiさんこと廣野凌大さんともそうですけど、同世代の方と作品を作っていくというのは今回特に意識していたのですか?
高野 それは普段、普通に話してる時になんか一緒に作れないかなって思ったり、思ってくれたりっていう瞬間があって、その時に実現できそうなものがあればやる、みたいな感じですかね。実際、コラボして外れることが見えないっていうか、日頃のクリエイティブな感じを間近で見てるからこそ一緒に作れるし、本当に仲がよくて話しやすいからこそより親密に作っていけるなという感じがあるので、間違いなくいいものができるなという想像をしながら作っていきました。
──せっかくコラボ楽曲もあるので、ライブにBimiさんの登場を期待してもいいですか?
高野 いやあ、やりたいですよね。僕がお願いしたら、凌大もきっと歌いたいと言ってくれると思うんですけどね(笑)。
──2022年もすでに半分が過ぎて、今年も盛りだくさんな1年になりそうですけど、楽しみなことは?
高野 やっぱりライブですね! きっと面白いものになるんじゃないかなってワクワクしてます。こういうご時世の中で、公演自体が難しい時もあったけど、それでも今までいろんなエンタメ業界がちょっとずつ挑戦してきてくれて、それでここまで来たっていう感じがしてるので、僕もそれに少しでも協力できたらうれしいです。まだ声が出せる状況になるかはわからないんですけど、今回はペンライトが2色なので、声が出せない分いっぱい振ってほしいですね。今回のツアーのテーマがネオンなのでペンライトも紫と黄色でネオンっぽくなっていて、お好きな色を固定でつけてもいいですし、曲によって色を変えてもいいですし、お好きなほうを選んで振ってみてください。
──このアルバムを通して見えた、アーティスト・高野洸のこの先は?
高野 2ndアルバムを作ったからこそ見えたものはめちゃくちゃたくさんあって。今後、作品を作る時にそれらが反映できると思うので、だから早く新曲に挑戦したいんですよね。とにかく僕は楽曲とライブの二つを極めたいんです。今まではいろんなジャンルを歌ってきましたけど、もう少し僕の色というか、高野洸ってこうだよね、みたいなのもある程度絞っていきたいと思っていますし、まだカバーとか、やってないことも多いので、いろいろ遊びたいですしね。ライブもいろいろ構想があります。アルバムはまだセカンドですけど、実はもうサードのことも考えながら作っているので、次は今作よりさらにこだわれたらうれしいです。
2ndアルバム『2LDK』
2022.06.08 ON SALE
<2ndライヴツアー「高野洸 2nd Live Tour “AT CITY”」開催!>
https://takano-akira.net/contents/502587?tag=all
2022年6月25日(土)宮城・仙台GIGS
2022年7月 9日(土)福岡・キャナルシティ劇場
2022年7月10日(日)福岡・キャナルシティ劇場
2022年7月17日(日)大阪・オリックス劇場
2022年7月18日(月・祝)名古屋・日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
2022年7月24日(日)東京ガーデンシアター
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ライター
尹秀姫(ゆんすひ)
出版社勤務を経て、現在はフリーの編集・ライター。たまに韓国語の通訳・翻訳も。K-POPを中心にさまざまなアーティスト・俳優にインタビューしています。