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May J. デビュー15周年イヤーの幕開け ―たくさんの挑戦と新たな一歩を踏み出す“今”に込められた想いとは?

2021.01.01
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インタビュー
デビュー15周年イヤーを迎える2021年、元日からベストアルバム「W BEST 2 –Original & Covers-」をリリースするMay J.さん。2015年発表の「W BEST –Original & Covers-」に続いてオリジナル曲とカバー曲の2枚組になっており、前作以降の曲を中心に構成されたこの作品について、また主にこの6年間の活動とトピックについて、May J.さんにいろいろ伺ってみました!

新たな目標を見つけられた、八代亜紀さんとの共演

──本日、1月1日に「W BEST 2 –Original & Covers-」がリリースということで、2015年に「1」がリリースされ15周年のタイミングでの1から2のリリースまでの間の6年間はご自身にとってどういう期間でしたか?

May J. 相変わらずいろんなことにチャレンジさせていただく機会もすごく増えて、より自由に、肩の力を抜いていろんなことにチャレンジできた期間だったと思います。

──そんな中で、ご自身で一番大きなチャレンジというと、パッと思い浮かぶのは?

May J. オーケストラのコンサートが増えました。それまでオーケストラはほとんどやってなかったので、それこそアナ雪を歌わせてもらってからそういう機会が増えて。もう今では本当にオーケストラコンサートが大好きなんです。あの人数感の中でいろんな楽器があって、それこそ音源のまま再現できるっていうのがすごいですよね。バンドだけだったらなかなかできないことをできて、やっぱりその迫力は凄いんです。『ああ、ここで歌える人になりたいな』っていう風に思えたので、そこはどんどんチャレンジしてます。

 

──オーケストラがバックだと、あの迫力に対抗するというのでもないでしょうが、歌う姿勢というのも変わってきますよね?

May J. はい、それによってまた新たな姿勢ができたというか。テンポがないんですよ。

──というと?

May J. ないというか、テンポが決まってないというのがオーケストラの特徴なんですね。指揮者はいらっしゃるんですけど、その時の空気を読みながら……クリック聞きながらやってるわけでもないし、その時に生まれたものがそのままの流れで進行してしまうので、「あ、これは私が引っ張っていかなきゃいけないんだな」と思って、自分の歌でちゃんと世界観を出すように意識しました。

──いかようにでも合わせてくれるから、歌う側にしっかり柱がないといけないわけですね。

May J. はい。緊張感があれば全部伝わるし、臆病になっていたらそれも伝わってしまうから、「フリーにいこう」「自由にいこう」という気持ちがすごく大事でした。

──それはオーケストラをバックに歌った人でないと分からない感覚ですね。

May J. あれは本当に、経験してみないと分からない世界です。

──しかも、誰でもできるわけじゃないですからね。そしてこの期間、今回のベストにも入っていますが、話題になったのはやはり八代亜紀さんとの共演作「母と娘の10,000日 ~未来の扉~ duet with 八代亜紀」ですよね。顔合わせにビックリもしましたが、曲を聴くと「あー、そうか!」といろいろ納得できる共演でした。ご自身ではいかがでしたか?


May J. duet with 八代亜紀 / 2017.05.24発売シングル「母と娘の10,000日 ~未来の扉~ (Studio Session Clip)」歌詞付

May J. 2013年にNHKの「オンガクジェネレーション」という番組で共演させていただいたのがきっかけだったんです。ジェネレーションが違う二人を呼んで、一緒にデュエットするという企画で、初めてお会いしました。そこでいろんな共通点があったというか……私の苗字が橋本で、八代さんの苗字も旧姓が橋本なんですよ。ウィキペディアで見て、「橋本さんですね」みたいな感じで話が弾んで、「じゃあ今度、ドレス作ってあげるよ」みたいな感じで言ってくださって、それから何年も経った後に「できたよ」って(笑)。じゃあ取りに行きますということで、事務所にいただきに行って。「ぜひこれを着て、一緒に何か曲を歌いたいです。コラボしたいです」とお伝えしたら「いいよ!」みたいな感じで決まりました(笑)。

──ドレスは数年越しですけど、決まるのは早かったんですね(笑)。

May J. 八代さんのことは大好きだし、歌声も素晴らしくて、自分とは対極にいるというか。八代さんの低音を響かせる歌と、自分の高音が生かせる曲ができたらいいなと思って、一緒に歌わせていただきました。

──その対極のところを生かすというところで、「母と娘」というコンセプトに?

May J. まあ、立場もあると思うんですけど、一緒に歌うということになると、せっかくだから結婚式とかで母と娘がちょっと涙するような曲ができたらいいなと思って、アンジェラ・アキさんにお願いしたんですよ。

──その共演で得たものは、今思うと何ですか?

May J. あの曲をいろんな場所で歌わせてもらったんですよね。八代さんとNHKの「うたコン」という番組で歌ったり、ウェディングのイベントで歌ったりとか。八代さんの何というか、心の広さというか……どんな場面でも緊張しないんですよ。「大丈夫だよ。何緊張してんの? フフフ」みたいな感じで(笑)。いつも裏で「手が冷たいね~」って手をさすって温めてくれたりとか、「うわ~、こんな人になりたいな!」って思うような。動じないというか、どんな場面でも八代さんらしくいらっしゃるんですよ。私はけっこう空気を読んじゃったりして、ちょっとシュンってなっちゃったり、自分を出さなきゃいけない場面で出せなくなっちゃったりということがあるので、こういう風に何も気にせずに、自分を出せる人になりたいなと思いました。

──それは、キャリアのなせる業なのか、もともとの性格なのか……。

May J. 人によって、いろんなキャリアを積めば積むほど慣れていく人と、どんどん怖がりになっちゃう人がいるんですよ。私は怖がりになるほうで(笑)。もう、怖くなっちゃうんですよね。本番前の緊張感に弱いし、「失敗したらどうしよう」とか考えちゃう人なので。だから八代さんみたいな人と一緒にいるとちょっと紛れるというか。あんな人になりたいですね。

──八代さんに接して、大きな目標ができたみたいな。

May J. そうですね。やっぱり、長く歌い続けていたいんですよ。八代さんは「80歳になっても歌いたい」っておっしゃっていたので、それが目標ですね。


新録の「Faith」日本語詞バージョンに込められた思い

──あの曲はMVも、真野恵里菜さん出演のドラマ仕立てで話題になりました。DVD付きのバージョンではそれも見られますね。あのMVを見ると、「母と娘っていいなあ」と思いますね。私事なんですが完全に男家系で育ったので、遠い世界だからというのもありますが。

May J. 「母と娘」だけで聞いてもらうのもちょっと残酷だなと思ってたので(笑)、「父と娘」でも想像して聞いてほしいなと思ってるんですね。自分のスタッフさんの結婚式では、彼女のお父さんがサックスを吹いて私が歌うみたいな演出をしたこともあって、お父さんと娘の涙の場面もあったりしたんです。だから「父・娘」でも全然成立するし、「母・息子」でもいいと思うし、それぞれの思いで聴いていただきたいですね。

──これまでもいろんなタイプがありましたが、曲をベースにしたドラマとなると、見る人の受け取り方も違うでしょうし、作品に対する思いも少し違うものがあるんじゃないですか?

May J. そうですね。そこまでドラマっぽくしてMVを作ることも今まであんまりなかったですし、やっぱりメッセージ性が強いというか。「母と娘」だったり「結婚式」だったり。10,000日を迎える日って娘が27.5歳の時になるんですけど、その頃の自分って、ある意味自立する境目にいたなと思っていて。やっぱりみんなが通る時期でもあるし、私自身もすごく共感できるというか。「そういう時期あったなあ」って思いながら歌わせてもらって、27.5歳をこれから迎える人にも……やっぱり母親に対して、いろいろ思うんですよね。今までは一緒にいるのが当たり前だったけど、もうそういう歳じゃないんだなーっていうのに気付き始める時期なんですよ。「あと何回会えるんだろう」とか、そういうことを真剣に考え始めてしまった時期で、一緒にいる時にもっと一緒に楽しんだりしたい!とか、親孝行もなかなかできないけど、でもしたいなあとか、私自身、そういう風に考えるきっかけになりました。だからこの曲を聴いてくださる皆さんにも、そういう風に何かしらお母さんに感謝の気持ちを伝えてほしいなと思いました。



──今回のベストで改めて聴いて、きっかけにしてもらうのもいいかもしれないですね。今回、選曲はご自分で希望を出されたんでしょうか?

May J. もちろんです! シングルになった曲だったり、リードソングになった曲は欠かせないじゃないですか。プラス、ライブで欠かさずに歌っている曲。ライブでお客さんとの思い出がある曲もあるので、そういった曲を中心に選曲しました。 

──ベスト盤のために選曲を絞り込む作業は、スムーズにできましたか?

May J. いえ、それは悩みましたよ。「これは入れた方がいいよね」って言って、あとから入れた曲もありますし。ただ、バラードが多いんですよ。「バラードばっかりだな」ってなって(笑)、ちょっとアップテンポの曲を入れようかとか。やっぱり、ライブと一緒なんですよね。構成を考える時に、ここで上げて、下げて上げて……というのを考えながら作ったので、それも踏まえて……セットリストですね。ライブのセットリストみたいな感じでイメージしました。

──今回は、前回の「W BEST –Original & Covers-」以降の曲が中心ですよね。やっぱりセットリストも同じだと思うんですが、キャリアがあるのでその絞り込みだけでもかなり大変になってくるのでは?

May J. そんなにないですよ、キャリアなんて。

──いえいえ(笑)。実際、15周年イヤーになるわけですし。

May J. 悩みはしましたけど、普段のライブに比べたら「こういう流れになるんだろうなあ」というのは見えていたので、そこまですごく悩んだというほどではなかったですね。初めて聴いてくださる方もいると思うので、そういう人でも楽しんでもらえるようにというのは考えました。

──「W」とついているのはオリジナルとカバーに分かれているからですが、両方同じように決められましたか?

May J. 逆にカバーをベストに選ぶというのが申し訳なかったですね。だって、全部がベストの曲じゃないですか(笑)。

──なるほど、名曲を厳選してカバーしているわけですからね。

May J. それは毎回思うんですよね。だからちょっとここは割り切って、MVがある曲をと(笑)。MVもDVDに入れているので、多い方がいいなと思って。あとはよくライブで歌う曲。そこに集中しました。

──オリジナル曲の方が自分の責任だけで決められるということですね。しかしこれって、May J.さんならではの悩みなんじゃないですか?

May J. カバーでベストを出す人ってそんなにいないでしょうからね(笑)。

──収録曲の中では新録が2曲収録ということですね。1曲は「Faith」の日本語詞バージョンで。厳しい辛い状況から立ち上がるという内容が、日本語詞でより明確に伝わってきます。

May J. この曲はもともと、2015年にリリースしたシングルのカップリングのゲームタイアップの曲で。「英語で作詞してほしい」と言われていて、私が英語で書きたいなと思って、そのゲームを元に、でも自分と共通するテーマもあったので、その負けない気持ちだったりを書いたんですね。その後、ファンの人の投票でセットリストを決めるリクエスト・ライブというのをやったら、その曲が1位になったんです。何も期待してなかったので、「えっ、この曲が!?」ってすごくビックリして(笑)。でもその日から、この曲に対しての期待感というのか、みんなが聴きたいと思ってくれると思うと、「あっ、もっと大事にしなきゃ」って思って(笑)。


May J. / Faith [with lyrics] (2017.10.25 ALBUM "Futuristic")

──自分の曲なのに(笑)。

May J. もちろん大事ではあるんですけど、みんなが聞きたいって言ってくれる、求めてくれる喜びってあるじゃないですか。それから毎回ライブで歌うようになって。そしたら歌うたびに、この曲が自分の「生きるテーマソング」みたいな感じになっていったんですね。すごく大事な曲だし、やっぱり改めてこのメッセージを皆に伝えたいっていう思いで日本語で書いた方がいいなと思って。それで書かせていただいたんですけど、最初に歌った時ってアナ雪の直後で、いろいろと自分の中で悔しい思いがあったりという頃で。それで外に対してのアピールというか、「自分は何があっても前に進んでいくんだ」みたいな、その悔しい思いを外に向けて歌ってたんです、当時は。

──ある種の宣言のような。

May J. ただ、だんだんそのエネルギーを向ける方向が外から内側になっていったんです。自分に対して言ってるんだなって。強い自分と弱い自分が二人いるんですよ。さっき話したみたいに臆病になっている時がすごく多いんですね。ただ心のどこかでは、「あなただったら絶対できるよ」って言っている強い自分もいるんです。常にその二人の戦いがあるんだなっていうのに気づいて、内側、自分に対して聞かせてるような風に変わってきました。

──なるほど。

May J. ただ、その弱い自分って今まではすごく嫌だったんですけど、それを受け入れられるようになってきたというか。「ああ、今日はそれが自分のベストだったんだな」っていう風に受け入れることで、どんどん肩の力が抜けていって。逆にプレッシャーもなくなっていったし。もちろんいまだに失敗する時もあるんですけど、「まあそれが今日のベストだったからな、明日からまた頑張ろう」という気持ちで切り替えられるようになったので、そういう変化が、実はこの曲の中で起こっていました。



──すごく印象的だった歌詞が、「ゴールもまだ見えなくて/ねぇどこを向けばいいの?」という部分でした。立ちあがることを宣言している中で、でもまだゴールは見えないんだ、という。

May J. 「ゴールって見えないものなんだな」と思いました。いつまでも、どこに向かってるか分かんない中でみんな一歩一歩ベストを尽くしながら探ってるんだな、それが人生なんだなって。まだ15周年ですけど、そういう風に感じてますね。

──そういう思いが、特にこの日本語の歌詞にはぎっしり込められていると感じました。

May J. そうですね。逆に日本語ではっきりと伝えたいなと思って、意識していました。


「W BEST 2 –Original & Covers-」、オリジナルとカバーそれぞれの聴きどころは?

──この曲のMVも見させていただいたんですが、2人のMay J.さんが登場しますよね。これはどういう意味合い、コンセプトなんでしょう?

May J. どう思いましたか?(笑)

──いろいろ考えたんですよ。「過去」と「今」だったりとか。冒頭で、黒の方のMay J.さんが「シーッ」っていうポーズをするじゃないですか。あと、一部の歌詞が反転で表示されたり。その意味は何だろうとか、いろいろ考えながら何度か見させていただいたんですが……すみません、お聞きできますか?(笑)

May J. (笑)。先ほど話した通り、「弱い自分」と「強い自分」、自分の中に2人いる、その感じですね。黒い方が、ちょっと自信をなくしている時の自分を表現していて、シルバーの方が、理想の自分……って言ったらちょっと語弊があるかもしれないんですけど、そうでありたい自分というか。そのコンセプトが、「W BEST 2」のジャケットでもあるんです。あのポーズだったり歌詞の反転の意味は……これは、見てくださる方のご想像にお任せしたいですね。

──了解しました。そこを考えながら、改めて見てみたいと思います。この新録バージョンへの反響はいかがですか?

May J. 先日、NHKの「のど自慢」で歌ったんですよ。それから11月にやった、2020年初のライブでも歌ったんですが、皆さんコメント書いてくださっていて、「すごくいい!」みたいな。あと、「日本語が一番好き!」みたいなコメントは見つけました!(笑)

──ご本人の予想を超えて聴かれていた曲が日本語詞になったわけですからね。

May J. そうですね、この曲は皆さんのおかげですごく成長できたなって感じます。

──もう一曲が、「Garden」の……。

May J. 「Lo-fi Edit」ですね。周年では毎回「Garden」のリミックスを作っていて、それが恒例になってるんですけど(笑)。今回は「2020リミックス」にしたくて、今、一緒にトラックを作っている方がいるんですね。オリジナル曲も何曲か作っていて、2021年はそれをリリースしたいなって考えてるんですけど、その方にお願いしました。今年、私がやりたい音楽のテイストに近い感じで、かつ2020年らしいちょっと内心的な。皆さん家にいたので、パーティーな感じではなく、そういうイメージで作ってもらいました。

──それは、ご自身の創作に向かう姿勢が、ステイホーム期間でそういう方向になったということですか?

May J. もともと、Lo-fiだったり打ち込みで音数が少ない、ちょっと内心的な、マイナー調な曲が好きなんですよ。聴くのが一番好きなジャンルがそれなんですけど、自分がいつも歌っているものとは全く違う世界観なので、なかなかそういった曲に今まで挑戦することができなかったんです。でもこのコロナの時期に、ちょっと挑戦してみようかなって。家でも作業の時間が増えたので、作詞と作曲をして、実は何曲か貯めているんですね。なので、それを2021年、新しい方向性で……もちろん、今までのMay J.のような楽曲もやりつつ、ちょっと違う方向性も試してみたいなっていう思いがあって、まずこの「Garden(Lo-fi Edit)」が、そのチラ見せみたいな感じで(笑)。カバーの一番最後に入ってるんですけど、曲間も少しあけて、「何だこれは?」みたいな感じで、あえて終わらせました。

──これからの予告編的な感じと。なるほど、これが最後に入っているのはそういう意味だったんですね。これが2枚の最初と最後に収録されているわけですが、Disc-1の「Original Best」とDisc-2の「Covers Best」、それぞれの聴きどころを改めて教えていただけますか?

May J. 難しいですね(笑)。オリジナルの方は、それこそジャンルもすごく幅広いですし、コラボの曲も2曲入っていたり、その時その時で一生懸命、求めてくださることに対して応えたいという思いで、かつ自由に歌わせていただいた曲で……。その中に、LAで録った曲もあるんですよ。LAの曲がすごい自由だったんですね。自分が作詞・作曲して、向こうのミュージシャンとレコーディングしてっていう。空気も変わるし、環境も変わると自分の気持ちも変わるし。そこはすごく新しい挑戦だったなっていう風に思うので、違う国の空気感も混ざった、この5年間の私の軌跡になっていると思います。



──カバーの方はいかがですか?

May J. これまた難しいですね(笑)。ミュージシャンが素晴らしい方々ばかりで、大体みんなで一緒にスタジオで違うルームに入って「せーの!」で録ったものがほとんどだと思うので、ちょっとライブ感も残ってると思います。それこそ、一発で録ったものをそのまま使ってたりとかもするので。それに、巨匠たちが編曲してくださっているので、その音を楽しむという面でもぜひ注目していただきたいですね。

──カバーに関しては、テーマごとのカバーアルバムも出されてきたので、選曲の幅も増えたというところがあるかと思います。よく考えたら、「Time To Say Goodbye」と「RIDE ON TIME」が同じ並びで入っているアルバムって、なかなかないと思うんですよ(笑)。

May J. だからベストなんですよねえ……(笑)。今回は「平成ラブソングカバーズ supported by DAM」と「Cinema Song Covers」の2枚から入ってるんですけど、「Time To Say Goodbye」については、「えっ、May J.がそれ歌うの?」みたいな意外性があると思うんですよ。まさに「オーケストラのコンサートで『Time To Say Goodbye』を歌いたい!」っていうので勝手に練習して(笑)、森麻季さんっていう素晴らしいオペラ・シンガーの方の家まで行って教えてもらったんです。それぐらいすごく好きで熱が入った曲なので、ぜひ入れたいなということで入れました。意外性というところで。

──さらに「異邦人」があったり「糸」があったり、本当にMay J.さんのカバーだからこそ、しかもベストだからこそというバラエティで。

May J. だから曲順が大変だったんですよ(笑)。でもそこも、ライブを意識して山を作って、ストーリーを自分なりに組み立てて選びました。

──そうすると、カバーの最後に入っている「Can't Take My Eyes Off You」は、もしかしてアンコールですか?

May J. その通りです(笑)。

──この期間、ライブもみんな今まで通りには楽しめていないので、このベスト盤を疑似ライブのように楽しむこともできるわけですね。

May J. なので、ぜひCDで聴いてほしいですね。CDだと曲間の時間とかもこちらで選べるので、そこもストーリーの中に含めて考えているので。


2020年にやってきたこと、そして2021年に挑戦したいこととは?

──先ほど、オリジナル曲のことを伺いましたが、カバーを多くやられたことで変わった部分というのはありますか?

May J. カバーに挑戦させてもらう時って、どれだけその曲の歌詞を理解できるかがすごく大事なんだなって、歌わせていただくたびに思うようになりました。その理解が浅ければ浅い歌になってしまうし。だから、それがどんな風に作られたかっていう背景が分からない分、「じゃあそこは自由に自分で作っていいんだ」っていう風に振り切って、自分のストーリーで想像しながら歌うようにしてますね。

──なるほど。そこでもう一つお聞きしたかったのは、カバーを歌うことが多くなったことで、オリジナル曲の創作や向き合い方に変化というのはありましたか?

May J. カバーだと、例えば編曲をお願いした時に初めてお会いする方々がたくさんいらっしゃったんですね。その時に「うわー、この人の編曲はすごくかっこいいな!」とか「次の自分の曲の時にお願いしたいな」と思ったことが、後でつながっていたことがありますね。

──やっぱりMay J.さんの場合はオリジナルとカバーが両輪で成り立っているんですね。

May J. カバーがあったからよかったっていう風に思いますよ、いつも。そこで出会った人たちと、そこで出来上がったものがあったし、「このノリでオリジナルも作ろう」テンションもあるし。カバーがあってすごくよかったです。

──では、この先もベストが出るとなると、常にダブるという形になりそうですね

May J. いえ、分からないですよ。今回は両方これだけ曲があったし、前回のがあったから、「2」を出そうという流れになっただけですから。「3」があるかも分からないし(笑)。

──いえいえ、あると思います(笑)。で、先ほども少し出ましたが、「15th Anniversary BOX」DVDの方もかなり豪華な内容じゃないですか。

May J. 内容満載すぎて、自分でも把握し切れていないところが、正直あります。

──そうですか(笑)。一つ気になったのが、Disc-4の映像特典で、「デビュー15年を振り返るBAKURO TAIKAI!」というものなんですが(笑)。

May J. 気になっちゃいましたか!(笑) これは……やっぱり、いろいろあるじゃないですか。失敗したこととか、トラブルが起きたりとか。その当時は言えなかった、その時期に言ったらちょっとまずいなーっていうことも、今だったら言えると。マネージャーさんが2人いるんですけど、その2人のマネージャーさんと3人でいろいろ暴露し合うという(笑)。

──では、ずっと追いかけているファンからすると……。

May J. 「やっぱり!」とか「ええ~!?」みたいなことを、けっこう出しましたよ(笑)。2時間ぐらいしゃべりましたからね。「これはこういう状況で」みたいなことを、自分で絵も描いて説明したりもしてます。

──絵もですか(笑)。ではそれも楽しみということで。今年は15周年イヤーで、1月1日からこの「W BEST 2 –Original & Covers-」がリリースされたわけですが、その前にまず、2020年をまとめると?

May J. 皆さんにとって、本当に大変な時期ではあったと思うんですね。もちろん私にとってもそうだし。ただ、それをプラスに持って行かなきゃいけなかったんですよ。今までこんなに休みがあることってなかったし、それを自分の未来のために使う時間だと思って、ピアノの練習したりとか、機材を買ったりとかしました。簡単なレコーディングなら家でもできるように、自分でいろいろ機材を調達したりとか、自分で映像を撮ってみたりとか、今まで「やりたかったなあ、でもちょっとなかなか時間ないからできないな」っていうことに、昨年はすごくチャレンジできました。やっぱり、コロナがこれからどうなるか分からないですけど、どんな状況でも「コロナだからな」っていうのは気にせずに、何でも自分でできる環境を作れる準備ができた1年だったと思います。

 
──すごく有意義に過ごされたんですね。

May J. そうですね、ただやっぱり、ライブができないのは残念でしたね。一度だけやったんですが、お客さんを半分ぐらいにして、声も出せないので、今までと全然違う状況ではあったんですけど、やっぱりお客さんがいる場所で歌うだけでこんなに違うんだなって。今まで当たり前にやってたことが、すごくありがたいことなんだなって、感じたことがなかったですからね。マイクを握った瞬間、泣きそうになりましたから。あれはやっぱり、今年だから感じた尊さですかね。

──その上で、この2021年はどうしたいですか?

May J. 一番は、ライブがたくさんできるようになったらいいですよね。それこそオーケストラのライブが楽しいし、やりたいし、ジャズのライブも年に何回かやっていたので、それも今年もやりたいし。あと、音楽のジャンルも、先ほど言った新しい楽曲、打ち込みのものに挑戦したいという気持ちもあるので、その世界観だけの新しいライブもしたいですね。

──そういうことを、不自由なくやれる世の中になるといいですよね、本当に。

May J. なればいいですけど、ならなかったらならなかったで、振り切ってやろうと思います!

 


 
撮影 長谷 英史

『May J. W BEST 2 -Original & Covers-』



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May J.
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高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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