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超豪華!Do As Infinity最新楽曲「Like A Rose」音楽制作陣による徹底分析座談会【音楽好き必見】

2020.12.23
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12月24日~27日に上演される舞台「イケメン王子 美女と野獣の最後の恋 THE STAGE ~Beast Leon~」の主題歌に、Do As Infinityの新曲「Like A Rose」が使用されます。この楽曲の制作に関わっているのが、avexのクリエイター・セクション「Blue Bird's Nest」に所属するats-(佐藤あつし)さん、清水武仁さん、渡辺徹さんのチーム。Do As Infinityの大渡亮さんとこの3人に、「Like A Rose」が完成するまでの過程とコラボレーションの様子をお聞きしました。普段あまり詳しく語られることのない、楽曲制作の実際をどうぞ!


20年前のドラマから好きだったDo As Infinityと!


──今回は「Like A Rose」の楽曲制作に関わった方々にお集まりいただいたので、「この曲ができるまで」の過程をお聞きできればと思うんですが。立ち上がりからの行程を細かく知る機会って、ファンの方にもなかなかないと思うので。

大渡 なるほど。この「イケメンシリーズ」アプリを運営しているサイバードさんの方から、「Do As Infinityさんでアプリの主題歌をお願いしたい」という依頼が来たんですよ。それで「あなたをただ愛している」というテーマ曲を作ったんです。リリースは今年の7月だったんですけど、19年の夏には着手していたんですね。

──初のデジタルシングルとしてのリリースでしたが、制作はもっと前だったんですね。

大渡 もともとサイバードさんのプロデューサーの方がDo As Infinityの楽曲をよく聴かれていたということで依頼してくださったので、ディレクターの徳田善久と僕とで「Do As Infinityのどのあたりの楽曲を聴いていたのか」ということを逆にインタビューしたんです。すると「陽の当たる坂道」だったり「柊」だったり、ドラマで使われたようなヒットソングを何曲か挙げられたので、可能な限りそれらのテイストを盛り込みたいなということを、まず方向性として決めました。Do As Infinityは複数の作家さんの曲を使用させていただくことがあるので、そういうテーマの元に曲を集めさせていただいて、その中から歴代何曲かいただいている大西克巳さん(※Blue Bird's Nest所属クリエイター)という作曲家の曲に決めさせていただきました。

──というのが、アプリ版の主題歌としてあったと。

大渡 はい。それがようやく今年の夏にリリースされまして、大変ご好評をいただいて、「サイバードさんとはいいコラボレーションができたな」と思っていた中で、そのイケメンアプリを舞台版として起こしたいという話になり、再度、「舞台用の楽曲をDo As Infinityさんでお願いしたい」という流れで、ats-さんの楽曲を使用させていただいたという感じです。

ats- 僕らの方は舞台の内容などを把握した上で、自分達の持っているDo As Infinityさんのイメージをまずは音にするということから始め舞台の内容も踏まえて構築していった感じです。

──その「Do As Infinityのイメージ」というのは?

ats- 「二千年の恋」というドラマがありまして……。

大渡 20年前ですよ!

ats- あれが好きで見ていたんですが、エンディングで必ずDo As Infinityさんの「Yesterday & Today」という曲が流れて、「えーっ、こんないい曲があるんだ!」と思って感動してたんです。最終回で主役2人が死んで、彼らの赤ちゃんを女性の方の妹が育てるという展開なんですが、そこでまたその曲が流れて、そこで号泣したぐらい、本当に大好きだったんです。だからDo As Infinityさんというとそのイメージが特に強くて。切なくて、ちょっとシルキーで。あのドラマのイメージはすごく強いですね。


Do As Infinity / Yesterday & Today

──20年前からそれだけの思い入れがあったわけですね。

ats- だから今回、関わらせていただくことができて本当に光栄ですし、うれしかったですね。

大渡 その当時、ats-さんはHΛLというユニットをやられていて、ご挨拶はさせていただいたことがありました。

ats- そうですね。イベントでご一緒させていただいたときに。

──お互いデビューが近かったんですよね。

ats- HΛLが2000年デビューで、Do As Infinityさんが1999年ですよね。

大渡 だからほとんど同じ時期ですね。たまにイベントでご一緒させていただくことがあった程度で、仕事で関わるという機会はなくて。

──それがここで交わるというのは面白いですね。楽曲が決定してからはどういう流れだったんでしょうか。

大渡 僕や徳田が舞台の台本を見させていただいた感想は、「『ベルサイユのばら』みたいな感じだな」と。それで歌詞も「台本を読んで書いてくださる方にお願いしたほうがよかろう」という流れになりまして、また何人かの方に声をかけさせていただきました。選考する際に「ベルばら」感にどこまで寄せるかというのが僕らの課題でもあったんですが、集まった作品は、一方は僕らDo As Infinityが出してきた世界観に寄っていて、一方は台本にすごく寄り添っていて「ベルばら」感も出ているという感じで。最初はDo As Infinityの世界観に沿った作品がいいかなと思ったんですが、僕はその歌詞を男性の声のものだと思ってて。その時点では主題歌に求められているのが男性の声なのか女性の声なのかを分からずに見ていたんです。でもどうやら正解は「女性の声の歌詞がいい」ということで、「じゃあこっちがいいね」ということで、小松レナさん(※Blue Bird's Nest所属クリエイター)の「Like A Rose」を選びました。結局、彼女の歌詞が一番「ベルばら」感が出ていたんですね。

──なるほど。

大渡 これで歌詞も決まって曲と歌詞のカップリングも成立した中でレコーディングを行ったんですが、この素晴らしい方たちでだいたいのオケができていまして。ただ、コードで濁る個所があるので、「ここをもっとスッキリさせたほうがサビの響きがもっとよくなるんじゃないか」ということをおこがましくも提案させていただいて、僕が書いたコードを「これでよかったらどうですか」と。徳田ディレクターを介してのやりとりだったんですが、「こだわりのポイントではあったけど、そっちのほうがメロディがすっきりする」という声をいただきました。僕としては、「元のちょっとカオスになるようなトーンが必要なんだったら、別にそれでも構わない」というスタンスだったんですが、受け入れていただいて、どちらかというとすっきりしたコードになっていきました。まあ、「ここはBmなの? G/Bなの?」という程度のちょっとした違いで、ギタリストあるあるなんですけどね(笑)。

ats- 今回の曲「Like A Rose」はDo As Infinityさんの持つ儚く切ないエヴァーグリーンでエモーショナルなイメージに、2000年代にHΛLが放っていた毒気やブルータルで危ないエッセンスを注入したような楽曲になっています。
ドロップチューニングのベースで歌う伴さんのボーカルは今までになく危険な香りのするスリリングでセクシーに感じられました。
まるでモノトーンの背景に真っ赤な薔薇だけが凛々しく色づいてるように伴さんの歌でイメージを作ってくださいました。


Do As Infinityは「反avex」だった!?

──でも必要な過程ということですね。

大渡 それで僕と徳田でレコーディングを進めていきました。ガイド(レコーディングでの演奏をスムーズにするために録音された仮演奏)で素晴らしいギターも入っていて、最初は正直、「これをそのまま使っていいんじゃね?」って思ったんですけど(笑)。

清水 いやいや(笑)。

大渡 僕はリードギターだけ弾くという形でもいいんじゃないかって思ったんですよ。でもさすがにそうもいかず、上からひと塗りさせていただいたという感じです。

ats- 作曲は僕がさせていただいたんですが、アレンジをどうするかの段階で、ほぼ同じ時期にデビューしたものの今まで接点がなかったDo AsさんとHΛLですが、20年の時を経て今こうしてHΛLの元メンバーとして一緒にお仕事ができることで、ぜひこの楽曲をスペシャルなものにしたいと思い、僕らのプロデューサーの岩渕優輝と相談をしたうえでこの3人でアレンジさせていただこうと。普段はそれぞれが1人でミュージシャン、クリエイターとして活動、活躍してる3人ですが、ここの所各々でこれは特別な作品だと感じた時に集まる事が増えていて。劇伴も数作3人でやったことがあるので、より舞台の内容に沿ったものが創れるんじゃないかと。そして舞台の主題歌ということもあって作品に合わせてどんなリクエストにも素早く対応ができる、ということで今回の流れになりました。清水さんも元HΛLのメンバーだし、渡辺さんもDo As Infinityを好きなんですよね?



渡辺 はい。アマチュア時代からよく聴いていたので、今回関われることになって「やっと来たか!」みたいな(笑)。

一同 おおっ!(笑)

渡辺 僕も16年avexにいますけど、この作品まで一度も接点がなくて。

大渡 そうだったんですね。ウチはちょっと異端というか、あまりavex色のないところにポツネンといる感じだったので(笑)。

ats- そこがカッコいいんですよね!

大渡 最初は松浦(勝人=現avex会長)さんに立ち上げて頂いんたんですけど、その後原田(淳=元avex役員)さんが担当する事になり。「じゃあ、ちょっとのびのびやらせてもらおうか」みたいな。僕もグループ立ち上げの最後のメンバーだったりするもので、「反avex」的な……今じゃ愛社精神丸出しですけど(笑)、グランジな質感をどう盛り込んだら異端になって個性的になるかというのを実戦してきたというのがありました。今思えばただのガキの遠吠えなんですけど、当時はそこに自分のプライオリティを持ってやってたようなところがありましたね。

──そこがもっとavexっぽかったら、渡辺さんももっと早く関われたかもしれないですね(笑)。

大渡 あり得ます。そうだったら、それこそday after tomorrowは出てこなかったかもしれない(笑)。

一同 (笑)


──制作過程に話を戻しますが(笑)、ガイドでは清水さんがギターを入れられたんですか?

ats- 通常は清水さんがギターを担当しますが、他にもストリングスのアレンジが素晴らしかったりするんですね。以前清水さんがアレンジをしたAAAの「さよならの前に」など多数の曲で素晴らしいアレンジをされていたのを知っていたこともあって、今回は完全に「ストリングス・アレンジをよろしくお願いします!」ということでお願いしました。


AAA / 「さよならの前に」Music Video

清水 まずはどういうオーダーが上がってくるか分からなかったというのがあって、それだったら自分や徹ちゃんを立てたほうがいいんじゃないかというats-さんと岩渕の判断もあったと思うんです。そういう意味では最初に受け取ったデモの時点で、大渡さんがお聴きになったギターは入ってたんですよ。我々は一人ずつがアレンジャーとして活動している身なので、誰が何をやってもおかしくないというか。そういう意味では、さっき大渡さんがおっしゃったように楽曲のイメージを骨太で伝えられたats-さんが曲を用意されて、その印象がよかったので、フルサイズの制作を進めさせていただいたという形です。だから、毎回僕がギターを弾くとか、決まった形があるわけではないんですよ。

──ケースバイケースということですか。

ats- 亮さんに聞かれました。「3人はどういう振り分けでやってるの?」って(笑)。

大渡 作家さんでトリオでやられるというのは珍しかったので、この制作でお会いしたときに、まず伺いました(笑)。

ats- 最初からカッチリ決まってるチームというのはよくあるんですけど、我々は基本は各々が独立したアレンジャーであり、曲によって流動的に変わるという珍しい(スペシャル)ユニットでもあるので、そういうところを目指している方々にも、もしかしたら参考になるのかなとは思います。

大渡 最近は「コライト」という言葉があるように、新しい形なのかなと思いました。

ats- 特に、みんなDo As Infinityさんが好きなんですよ。だから愛情もあったりして、作業自体が楽しかったですね。

大渡 ありがたいですね。

──渡辺さんはどういう関わり方をされたんですか?

渡辺 僕は今回ピアノパートを担当しました。普段の自分の音色とは違うんですけど、今回は自分に刷り込まれているDo As InfinityのDNAをフレージングも含め表現してみた感じですかね。この楽曲は重めのサウンドで力強く、ダークなサウンドが印象的ですが、その中に切なさを取り入れたいと思い、ピアノでそんな部分を演出出来たらと思いました



──大渡さんは、渡辺さんをはじめ皆さんがそんなにファンだったというのはご存じなかったんですよね?

大渡 そうですね。トラックダウンの時にお会いして、そういうことを伺って「面白いなあ」と思いました。一緒に写真とか撮って(笑)。

渡辺 僕もそのときに初めてお話ししたんですが、学生時代の憧れのグループだったのでとても光栄でありながら緊張しました(笑)


「コード一つへのこだわり」から広がる音楽談義!

──楽曲から、Do As Infinityの作風を深く理解されているというのは感じられましたか?

大渡 Do As Infinityというよりは、舞台をしっかり把握されているなという印象でしたね。やっぱりそこを基準に選んだので。まあ、Do As Infinity自体に「ベルばら」みたいな世界観の曲がなくはないんですよ。マイナーコードの……Amの演歌みたいな曲が多いんですよね。そういう、共通の項目をちゃんと紡いでくれているなあという感じだったので。

ats- 僕らは打ち込みがしやすいように、テンポを倍にして打ち込んでたんですね。それを譜面にしてお送りしたら「ちょっと弾きにくいんだけど」って言われて(笑)。

大渡 そうそう(笑)。それでまず「これ、大丈夫?」ってなって。

ats- DAW(Digital Audio Workstation。打ち込みによる楽曲制作ツール)って、変拍子が途中で入るとほんの少しズレたり、MIDIの音がヨレたりという、若干の弱点が現れてきちゃうんですよ。だから打ち込みは変拍子が入らないほうがエラーが少ないという理由だけで、テンポを倍にしてたんです。

大渡 2/4っていうのがサビ前に入るんですけど……

ats- テンポを倍にすると、そこでエラーが入らなくて自然と通り過ぎるんですよ。そういう理由で、倍のテンポで録ってたんですけど、それをそのまま譜面に起こしてお送りしてしまったもので(笑)。

大渡 へえ~! そうだったんだ。まあ、それぞれ皆さんのやり方がおありなので、僕のほうで書き直して作業したんですけどね。僕は玉譜(音符による譜面)で書くほうではなくて、構成とリズム譜ぐらいで書くので、それに自分が見やすいように書き直した感じですけどね。その書き直したタイミングで「こっちのコードのほうがいいんじゃないのかなあ?」というのがあったので、さっき言ったように連絡させていただいて。

ats- サビを、抜けるようなすっきりした感じに変えてくださったので、すごくよくなりました。

大渡 でもats-さんがそうされていたのも、実は理解はしてたんですよ。Do As Infinityが意図的にそういうことをしていた時期があったので。意図的というか……無知のためにそうなった曲もあるし、意図してそうした曲もあるんです。わざとディミニッシュコード(メジャー、マイナーコードと異なり、特殊な構成音を持つコードのこと)で半音ぶつけるコードが経過音としてぶち込んであるものが、歴代の曲でいくつかありまして。そういうのを聴かれて、そうしたのかもしれないなあと、修正した後に思いました。でも今の僕の好みとしては、「うーん、もうちょっとすっきりしたいな」という。以前は混沌を選んでたのに、20年経つとすっきりを選ぶという、成長したというか大人になったというのか(笑)。

ats- 最初は「柊」のような、エモい感じというのもちょっと狙ってたんでしょうね。


Do As Infinity / 柊(Hiiragi)

大渡 でも今で言うと、どちらも正解ではあると思います。

──そうして曲も完成して。

ats- ミックスはDo Asさんの多くの作品を手掛けられているベテラン・エンジニアの井上剛さんにやっていただいて、もう聴いた瞬間にカッコ良くて「あ、バッチリです!」という感じでした。

──お話を伺っていると、かなりスムーズに進んだように感じられたんですが。

大渡 そうですね。最近はレコーディングにもそんなに時間はかからないというか、だいたい要点を押さえて進みますね。僕もデビュー当時はガッシャンガッシャン壁にぶつかって、音決めだなんだかんだって、とにかく時間がかかりましたけど。当時は「時間がかかって正解」みたいな時代でもありました。スタジオ代もかかりましたけど、それもフィーに含まれてるんでしょ、みたいなのが当たり前だったんですよね。1日1曲録ったら終わり、みたいな。でも今はそんなことは言ってられなくて、ギター録りだけだったら1日3~4曲とか当たり前だったりしますし。そのへんは鍛えられたというか、自分の作業としては早くなってると思います。しかもこういうプロの方たちなので、ちゃんと要点を打ち合わせしておけば、当日時間をかけるようなことはないですね。

──舞台で使われたときにどう聞こえるのかも楽しみですね。

大渡 今お稽古されていて、24日~27日に公演なんですよね。僕も見に行きたいと思ってます。

ats- 噂で聞いたんですけど、今回の曲「Like A Rose」は新しいギターで弾かれてるんですか?

大渡 いや、僕がいつもDo As Infinityで使ってるものです。レス・ポールとストラトキャスターで。王道の、下敷きをレス・ポールで弾いて、その上のラインをストラトのセンターかハーフトーンで弾いて。リードも、そのバッキングと同じレス・ポールで弾いてると思います。

ats- あっ、そうなんですね。「今回、新しいので弾いてるよ」と聞いたもので。

大渡 今回は使ってないんですけど、Xotic(エキゾチック)という新しいストラトを便利品として最近買って、スタジオでその話をしていたので、そう伝わったんじゃないですかね。Do As Infinityでもそうなんですけど、ロックだったらいつも使ってるレス・ポールとストラトで事足りちゃうというか。

ats- その音が鳴った瞬間に「あ、Do As Infinityだよね、これ!」ってなりますよね。

大渡 いやいや、恐縮です。でもボトムでレス・ポール弾いて、上物でストラト弾いてるだけなんですけどね(笑)。誰が弾いてもああなると思いますよ。

ats- いやいや、アレはすごいです!

──今回の曲「Like A Rose」の作業全体に関して、清水さんとしてはいかがでしたか?

ats- 僕がいろいろうるさかったですよね?

清水 いやいや(笑)。僕は元々今回作品を俯瞰で見た時に自分はストリングス・アレンジに徹するのが良いかなと思っていて、そんな中でのリクエストだったので、弦を入れる人数感だったり、どういうアプローチで入れるかというのは、ats-さんとすり合わせながらやりましたけどね。全体としては……

ats- 僕は今回思い入れの分けっこう色々なアイディアをぶつけたりしましたが「結局、清水さんが正しかったな」っていうのはありましたね。

清水 あったの?

ats- はい。

清水 ああ、そう。……役に立ったみたいです(笑)。



ats- チームでやる良さって、そういうところなんですよ。

清水 まあコードについてのやりとりがお2人の間でされてたときに、その時点で弦はもう入れていたので、そこの細かい修正はしました。それに対してまた直しがあるかなと思ったら、もうOKだったので、自分的にはよかったなと、胸をなで下ろしました。


スムーズに進んだコラボレーションは、今後も?

──渡辺さんはどうでしょう?

ats- 渡辺さんは、普段はこういうシネマティックで非現実的な音色ではないんですけど、今回はすごく質感のある音で弾いてくれたんです。派手派手しい、かわいらしい感じでは決してなく、渋くて大人っぽいピアノで。

渡辺 頑張って弾きました(笑)。自分の指癖にはないものもあったりして、そこはちょっと大変だったりもしましたけど。Do Asサウンドって勿論ギターがとてもカッコいいんですけど、それと共にピアノやストリングスと言った楽器もとても重要なポジションを担っていると思います。なのでギターに負けないくらいのピアノを心がけました。その様にこの3人で徐々に組み上げていくじゃないですか。そこで最後に亮さんのギターと伴さんのボーカルが入った時点で、「あ、これじゃん!」みたいな。やっぱり当然ですけどギターとボーカルが一番おいしく聞こえるなと思いました。
そう言った意味ではアレンジャーとして我々がこの楽曲に対して施したアレンジが正解だ!と思いました。

清水 ギターとボーカルが入った瞬間、明確なDo As Infinityのアイデンティティを感じましたよね。


大渡 ありがとうございます、本当に(笑)。

ats- アコギって、曲ごとに替えられてるんですか?

大渡 僕はレコーディング用は大きいボディのものと小さいものと2種類しか持ってなくて、あんまり上下にガシャーンとならないほうがいい場合にはボディの大きい000(トリプルオー)を弾いて、でもだいたいドレッドノートスタイルの、マーチンで言うところのD28とか、ああいうヤツを先に弾きます。

ats- 一つ、ずっとお聞きしたかったことがあるんです。「深い森」のイントロ、あれは何を使われてるのかなと。「この音出してぇ~!」って、ずっと思ってたんです。


Do As Infinity / 深い森(Fukai Mori)

大渡 あれはいい音ですよね。

ats- いい音なんですよ! 「これ、ギブソンじゃなくて何の音?」ってずっと思ってて。

大渡 ギブソンなんですよ。

ats- ええーっ! マジすか!

大渡 あれはねえ、曲の中で平気で1音半転調する曲が多いんですよ。Aメロから、Bメロで1音半上がってそのままサビに行って、またAメロで1音半下がって元のキーに戻るっていうパターンが多かったんです。当時、僕はチューニング替えとかカポ(カポタストの略。ギターに装着し、弦を押さえるためのアクセサリー)の概念があんまりなくて、「2カポすればどっちもできるじゃん」っていうのが分からなかったんです。「これ、どうしたらいいんだ?」って考えて、確か、AメロとBメロでチューニングを替えたギターを弾いてると思います。弾いてるのは、機材レンタル屋さんが持ってた、1967年製のサザンジャンボです。「それ、売ってくれ」って言ったけど売ってくれなかったんですよ。



ats- ええ~っ(笑)。

大渡 「これ、いい音だから売ってくれ」って言ったんですけど、「ウチの財産だから」って。そんなことも分かってなかったんですよ。弾きづらいんですよ、67年頃のギブソンってものすごいナローネックで、細いんですよ。ペッタンコで。弾きづらいんですけど、やたらいい音がするんですよね。

ats- あの音を目指してましたよ!

清水 その時代のギブソンのナローネックって、持った感じはオモチャを弾かされてるような感じですよね。

大渡 ええ。ギター評価的にはあまりよくないんですけど、そのサザンジャンボはすごく鳴るんですよ。「メチャクチャいいじゃん、これ!」って思ったのを、まだ覚えてますよ。20年ぐらい経ってるのに。売ってくれなかった悔しさも覚えてます(笑)。

ats- そうなんですね! 僕はもう20年間、あの音を何で弾いてるのか、聞きたくて聞きたくて(笑)。

大渡 今だったら、AメロとBメロを同じように弾けるようにカポを使うので、あんな感じでは弾けないと思いますね。無知がゆえになせる業ですよ(笑)。

ats- 友達に、「あれはギブソンじゃないよ」って知ったかぶってましたよ!

大渡 そうなると思います。「こんな音が出るギブソンってあるんだ!」って、僕も当時思いましたから。

──20年経って解答が得られたわけですね。

ats- すっきりしました!(笑)

渡辺 僕も2枚目、3枚目あたりのアコギのサウンドがすごく好きで、自分のプロジェクトでアコギを入れる機会もよくあるんですけど、「どうしてもあのストロークにならないな」とか思うんですよ。

大渡 ぜひ呼んでください! 2本持っていきますから。

一同 (笑)

──清水さんはaccessの浅倉大介さんとのお仕事が多いですが、一方で大渡さんはももいろクローバーZのステージで浅倉さんと共演されたことがあるんですよね?

大渡 はい、同じステージでご一緒させていただきました。

清水 うちとけました?(笑)

大渡 はい、前乗りしてお食事もご一緒させていただいたりして。スーパー・レジェンドな感じで、すごく勉強になりました。すごく社交性もあって、ずいぶんおしゃべりもさせていただいて。今思えば、面白いメンツでしたね(笑)。ももクロのメンバーもすごくいい子たちで、僕は2018年に3公演出演させていただいたんですが、すごく楽しい思い出になりました。

──お話を伺っていると、今回のコラボレーションは本当にすごくうまくいった感じですね。

大渡 本当にそうですね。皆さんでほぼ完成していただいて、僕はダルマの目を入れるだけみたいな感じでしたけど。

ats- いやいや、そんなことはないです(笑)。自分で言うのも何ですが奇跡のコラボでした。

──ということは、今後もこの共同作業は続きそうですかね。

大渡 いやもう、ぜひお願いしたいぐらいです。皆さんのスキルというか実力は、あの曲で存分に分かったので。むしろ「こういう曲で、ats-さん、清水さん、渡辺さんに」という形でお願いすることはきっとあると思います。

ats- たぶん「こういうイメージにしたい」というのを具現化するのは、この3人は早いと思います。

──渡辺さんはもっとアピールしておかなくて大丈夫ですか?(笑)

渡辺 大丈夫です、アピールは音でします(笑)。

大渡 十分伝わりました(笑)。今後もよろしくお願いします!
 
撮影 長谷 英史

舞台「イケメン王子 美女と野獣の最後の恋 THE STAGE ~Beast Leon~」

2020年12月24日(木)~27日(日)
シアター1010
公式サイト:https://ikemenbeast-stage.com/


Do As Infinity オフィシャルサイト
https://d-a-i.com/

大渡 亮 Official twitter
https://twitter.com/ryoowatari


Blue Bird's Nest オフィシャルサイト
https://bluebirdsnest.avex.jp/
高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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