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小澤ちひろ

北海道在住シンガーソングライター 小澤ちひろ デビュー15周年記念イベントレポート&インタビュー

2020.03.25
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インタビュー
1995年にavex traxより「Candy」名義でデビュー、現在は地元・北海道を拠点に活動し、4月15日にオールタイムセルフカバーベスト『きゅきゅきゅ』をリリースする小澤ちひろさん。1月に行われたデビュー15周年記念イベントに伺って、インタビューも行ってきました。先行配信された新曲「MORNiNG(朝MORi MiX)」のこと、アルバム『きゅきゅきゅ』のこと、そしてこの15年間と現在のこと……いろいろと興味深いお話が満載です!


幸運な35人に囲まれてのトーク&ライブ!


1月26日(日)……札幌市在住のシンガーソングライター・小澤ちひろさんのデビュー15周年の記念日にも当たるこの日、札幌市内の「ムジカホールカフェ」で「小澤ちひろ 15th Anniversary Special Talk&Live! ~インスタライヴ配信&MV撮影もするよ~」が行われました。



会場は暖かい内装のこぢんまりとしたカフェですが、この日はイスが中央を向くように円形に並べられ、35人のお客さんでいっぱいに。抽選で当たった幸運な35人は老若男女さまざまな顔触れで、イベント開始を今か今かと待っている様子が伝わってきます。



まずはプライベートでも仲がいいという司会の中嶋あゆみさんに呼び込まれて、小澤さんが登場したんですが……着ているのはもしかして……パジャマ? 先行配信された新曲「MORNiNG(朝MORi MiX)」に合わせて、そのジャケットでも着用しているパジャマ(普段寝る時も着ているもの)で登場したとのこと。いきなり、普段のライブでは絶対に見られない趣向です。トークは15周年のこと、この新曲のこと……などへと広がります。「15年前は、とにかくスカートが短かったね(笑)」という言葉で始まって、何しろ30分はあっという間! ほとんどの人が「まだまだ聞いていたい」と思ったことでしょうが、今日は内容も盛りだくさんですからね。いったん休憩となり、ライブのセッティングが行われます。



前述のように、この日は真ん中に小澤さんがいて、客席が360度ぐるりと囲む形になっています。ライブではギターの曽山良一さん、ベースの木村ケイコさんが加わりますが、お二人も小澤さんと向かい合う形に。こういうところも珍しいカタチになってますね。
 
ギターとベースのかけ合いから演奏が始まり、新たな衣装で勢いよく飛び出してきた小澤さんは、手元のサンプリングマシンでドラムソロ的な演奏を披露すると、「ふざけんなロックンロール」からスタート。アットホームな会場でしたが、アップテンポの曲でいきなりヒートアップ! そしてそのまま「Green Splash~彼に恋してます」につなぎます。



MCでは今日のライブのコンセプトが「テーマパーク」と紹介され、「テーマパークで言えば観覧車」ということで、一転してしっとりとした「紡ぎ愛」。そして「テーマパークの思い出」として、9歳の時に初めて受けたオーディションのエピソードを披露。そしてそのオーディションで歌ったという安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」へ。



続いては、「みんな、そろそろ体を動かしたいんじゃないですか?」ということで、全員で振りの練習をした後(ご本人が間違えてしまう場面もありましたが……)、「I love my family」へ。まるでアリーナかと思うような(笑)コール&レスポンスも決まり、いよいよ曲へ……と思ったら冒頭でトチるというハプニングもありつつでしたが、最後は先ほど練習した振りも揃って、大盛り上がりで終了。そして改めて15周年のお礼をしつつ、新曲「MORNiNG(朝MORi MiX)」が配信されたことのお礼も。そしてここで、4月15日に15周年記念アルバム『きゅきゅきゅ』の発売決定が、本人の口から発表! 会場はひときわ大きな歓声、「おめでとう!」の声で包まれます!
 
次の曲はこのアルバムの中からということで、15年前のまさにこの日、「Candy」名義でリリースされたデビュー曲「Bye&Thanks」! まさに小澤ちひろの原点というこの曲に、全員が手拍子する中、最後は渾身の力で歌い上げます。



そしてラストの曲はもちろん、新曲「MORNiNG(朝MORi MiX)」! 曲の前には制作秘話が披露され、サンプリングした「朝の音」を出すためのいろんな工夫も明かされます。中でも「朝と言えば朝シャン」からシャンプーボトルで音を出す工夫をした末に「ボトル吹きのプロになりました!」と、ボトルを尺八のようにして音を出す演奏(?)を見せる小澤さん(ここでも一度ミスったのはナイショということで)。で、一通りみんなを楽しませたところで、いよいよ曲へ。もう9時近い時間ですが、この空間だけはさわやかな朝になったようでした。
 
曲が終わると、鳴り止まない拍手の中を小澤さんが退場し、これで終了……ではないのです。しばしセッティング&着替えのため休憩の後、「MORNiNG」(アルバムVer)のMV撮影に移行します。



小澤さんもギターを持ち、さらに同じくギターを持った2名のダンサーさんとともに、激しいダンスを披露する小澤さん。コンパクトなスペースで3人がギターを持ち上げたり振り回したりする振り付けは、息が合っていないと大変なことになってしまいそうですが、わずかな時間、距離感などを確認しただけでバッチリ決めてみせるのはさすが! 振りの最後で立ち姿からクルッと振り返ってポーズを決める場面では、「カット!」がかかると思わず自分で「ドヤ!」って言ってしまうほどの決まりっぷり(笑)。
 
またここで「らしいな」と思ったのが、ことあるごとにスタッフの皆さんをお客さんに紹介するところ。激しいダンスで汗をかくのでメイク直しの必要があると、メイクさんを紹介し、エピソードを語る小澤さん。その他、スタッフさんなども紹介していったのも、こういうイベントならではですね。



最後はダンスパート明けの部分を撮影するにあたり、お客さんにも「最後なので、盛大に応援してあげてください!」というディレクターからの指示が入り、また手拍子で盛り上がった中で撮影も終了。終わってみれば2時間以上、盛りだくさんすぎる内容だったのでした。最後にこの日だけの特製コースターを小澤さん自身から手渡されて家路につく人々の顔が、その満足度を物語っていました。
 
このときに撮影されたMVをちょっとだけ公開


 
撮影協力:ライブカフェ&バー「musica hall cafe」
札幌市中央区南3西6

このイベントの翌日に、小澤さんにインタビューを行いました。イベントのことからアルバムのことなど、いろいろ伺ってみましょう。


ラジオ番組のアイデアから生まれた新曲!



──イベントお疲れ様でした! 終えてみて、いかがでしたか?
 
小澤 まず、360度ステージで、私たちミュージシャンもお互いに向かい合って、お客さんもその周りを囲むっていうスタイルのライブが初めてだったんですよね。一つのライブをみんなで作っているって感じがより強く感じられて、すごく楽しかったです。デビュー15周年をライブで迎えられたことが、すごくよかったです。
 
──トークありライブあり、さらにMVの撮影ありで盛りだくさんでしたね。

小澤 そうですね。MV撮影の時はライブが終わったばかりで、練習めちゃくちゃしたはずの振りが飛んでしまいました(笑)。そんな自分の中でのハプニングもあったんですけど、そこも含めてリアルな姿をファンの皆さんにも見てもらえて、自分の中ではある意味、新しい挑戦ができたなと思いました。

──本当にファンの方たちにしてみれば、普段絶対見られないような光景がいろいろ見られたと思います。
 
小澤 汗が噴き出ているところをメイク直ししてもらうところとかですよね(笑)。それからスタッフさんを紹介する場面って、普段のライブの中ではないので、紹介できてうれしかったですね。
 
──会場にいらしていたファンの皆さんは、いつもいらっしゃる方々も多かったんですか?
 
小澤 そういう方々もいらっしゃいましたけど、昨日は35名が抽選で選ばれるという形だったので、いつもとはまたちょっと違った雰囲気だったんじゃないかなと思います。
 
──会場はコンパクトなスペースだし、新曲の「MORNiNG(朝MORi MiX)」も爽やかな曲調だし、アコースティック調のライブになるのかなと勝手に思っていたんですが、全然違いましたね(笑)。
 
小澤 そこはある意味、ちょっと期待を裏切りたいというところがあって。昨日のライブのテーマが「テーマパーク」だったので、もう最初からジェットコースターに乗ってもらおうみたいな感じで(笑)。マシンも、ああいう形で使ったのは今回が初めてだったんです。

──そうだったんですね! 冒頭のドラムソロ的な部分も含めて、かなりバッチリ決まっていたので、そんなこととは思っていませんでした。
 
小澤 ホントですか? よかったです! ライブでお客さんの前に出てきた時には、もうけっこう熱気が伝わってきていたので、すごく乗せられた部分はありましたね。
 
──ご自分でも今までにない手応えを感じた部分はあったのでは?
 
小澤 やってみて……最初、あんな風に叫ぶ予定じゃなかったんですけど、自分の中で高揚してきてシャウトしてしまったみたいな(笑)。ライブ感が、自分の中ですごくありましたね。
 
──歌われたのは7曲ですよね? 終わってみればそうとは思えないボリューム感が感じられました。
 
小澤 ズシン!と来ましたね(笑)。確かにマシンも使ったし鍵盤も弾いたし、踊ったし……かなり盛りだくさんで、いろんなアトラクションに乗ってもらえたかなと思っています(笑)。

──というところで、改めて「MORNiNG(朝MORi MiX)」という曲なんですが……最初、曲の成り立ちを知らないまま音源を聞かせていただいた時点では、「ん? 何だか不思議な音だな」と思っていたんです。何だろうな?と。イベントでもお話しされていましたが、いろんな「朝の音」がサンプリングされているんですね。
 
小澤 そうなんですよ。私が今、毎週月曜日に担当させていただいているAIR-Gʼ FM北海道の「朝MORi」という番組で「ウェイソン」というコーナーがあって、そこでは私のミュージシャンとしての活動を報告しているんですね。もともと、曲がどういう風にできていったかを紐解いていくっていうコーナーだったんですけど、曲を作るところからみんなでやっていこうっていう話になって。それで「朝」をテーマに、「どんな風景が思い浮かびますか?」っていう写真をまずは募集したんです。例えばお子さんと一緒に朝サッカーしている写真とか、仕事終わりが自分の朝だっていう人がちょっと車を止めて撮った朝日の写真だったり、名古屋のモーニングの、小倉トーストの写真などたくさん番組に送ってもらったんですよ。

──なるほど。
 
小澤 そういう皆さんの写真にインスピレーションを受けながら、それを一番の軸にして曲を作ろうというところから始まって、私がメロディーを作っていったんですね。最初は「朝の音」とかを入れる予定ではなかったんですけど、この番組のメインパーソナリティーの森さんが、「せっかく朝の曲を作るんだったら、とことん朝にこだわって、朝の音を取り入れたくない?」ってアイデアをくださって、「じゃあ、やってみよう」ということになりました。その時点までのアレンジは一回全部捨てて、改めて作り上げていったので、本当に番組とリスナーの皆さんと一緒に作っていった感じですね。

──いいアイデアをもらったから、方向転換しようと。
 
小澤 その朝の音も、「どんな音を取り入れたらいいと思いますか」っていうのも番組内でディスカッションして、例えば「トースターのチン!っていう音に朝を感じます」っていう人がいたり、寝息だったり、カーテンを開ける音だったり。それを曲の中に取り入れていきました。頑張って(笑)。
 
──でも、実際にその音を録音するのは大変だったのでは?
 
小澤 思った以上に大変でした。例えばトーストをかじる「ガブッ!」って音に朝を感じるという人がいて、それを実際に録音しようと思ったときに、普通の焼き方じゃ全然「ガブッ!」とはならないんですよ。普通にやると「シナッ」「パフォッ」みたいな音になってしまって(笑)。だから音を出すために、もうこんがりと焼き目をつけて音を出したり、ボトルはもうプロだから大丈夫なんですけど……。

──イベントでも披露されてたアレですね(笑)。
 
小澤 あと、「パンにバターを塗る音」という案が出たんですけど、それがやってみたら意外と難しくて。シャッシャカシャッシャカシャッシャカ……みたいな感じで、シェイカーを振るような感じが意外と難しくて。しかも手元の音を入れなきゃいけないのに、やりながら「あー!」とか「うー!」とかしゃべっちゃうんですよ(笑)。だから一緒に声も入っちゃって、結果的にはそれが曲のイントロで使われちゃったんです。「アツ! アツ!」みたいなのもホントはしゃべっちゃいけなかったんですけど、それを使おうということになって。

──音だけ聞いてると、「何が熱いんだろう?」となるところですよね(笑)。ところで小澤さんご自身は、朝はすぐ起きられる方なんですか?

小澤 いやもう、最近はもう全然ダメです。朝は寝ている方が多いんです。だけど今回、リリースの前後1週間ずつ、計2週間、「MORNiNGリリース記念モーニング・ライブ」をやっていて、朝活に目覚め始めました。8時にはモーニングライブをやるので、6時くらいには起きて準備して、発声練習を一応して……っていうのをやっていたんですけど、みんなすごいなと思うんですよね。毎朝通勤されてる方とか学生さんは、それが当たり前じゃないですか。ホントにすごいなあって(笑)。2日目で「もう無理かも……」ってなりましたから(笑)。


アルバム・タイトル『きゅきゅきゅ』の意味とは?



──もともとは夜型ですか?
 
小澤 曲を作るようになってからは、どんどん夜型になってしまって。朝まで作っているとか……朝に寝るくらいの方が、最近は多くなっちゃっていたんですけど、これを機にかなりいい生活リズムになってきています。
 
──「MORNiNG」という曲を歌ってる人が朝寝てるわけにいかないですもんね(笑)。
 
小澤 いやー、本当にそうなんですけどね(笑)。


──毎週月曜の朝は「朝MORi」に出られてますが、その時は朝早いですよね?
 
小澤 はい、月曜は8時にスタジオ入りです。ただ、私の住んでいるところが札幌市内でも郊外の方で、乗り継ぎ時間を間違えたら中心部まで2時間ぐらいかかっちゃうところなんですよ。家の前から出ているバスが、まず1時間に1~2本しか出てないので、これを逃したらヤバいんですよね。ちょっとでも寝過ごしたり二度寝とかしたら間に合わなくなってしまうっていう緊張感があります。

──月曜の朝だけはいつもと違うと。
 
小澤 番組には2年前の春から出演しているんですけど、実は1回だけ寝坊したことがあったんですよ。その時は家からタクシーに乗りました。起きたのが、出ないといけない時間の10分前で。
 
──それは大変!
 
小澤 お化粧とかもあるじゃないですか。ホントはシャワーを浴びたいとか。生放送なので化粧もシャワーも何もせずに急いで家を出て。結局スタジオは間に合ったんですが、何食わぬ顔で、「全然寝坊とかしてませんけど?」みたいな顔で入りました(笑)。「MORNiNG」の歌詞のような、さわやかな朝とは、真逆でしたね(笑)。

──さて、イベントの中でも15周年記念アルバムの発売が発表されました。その後に詳細が明らかになりましたが、それにしても変わったタイトルですよね(笑)。
 
小澤 そうですか?(笑)。この15年間に作った楽曲、リリースした曲の中から14曲と、あと新曲を収録したセルフカバーベストアルバムなんです。デビュー曲の「Bye&Thanks」だったりとか、ライブで披露することはあっても、ボーカルブースに入って歌うのは久々で、すごく胸が「きゅきゅきゅ」っとしたというのが一番の理由で、アルバムタイトルにしました。

──なるほど。ご自分の心情を反映したものと。
 
小澤 そうなんです。あとは……「きゅ、きゅ、きゅ」。3つの「きゅ」で「サンキュー」、ありがとうという意味もあったりとか。後付けでいろいろ考えられるなって思っているところです(笑)。「きゅきゅきゅ」っと磨いていこう、だったり、「きゅきゅきゅ」っと、この15周年でもう一回ネクタイを締め直そう、だったりとか。いろんなことに使える、いろんなメッセージが込められるな、という。

──ではこの先、メインの理由以外は質問に答えるたびに変わるかもしれない?(笑)
 
小澤 そうですね。聞いてくださる皆さんに、いろんな捉え方をしてもらえればいいかなというところもあります。

──小澤さんのそれぞれの活動名義ごとの曲も、ソロ用のバージョンに作り替えられていて。
 
小澤 はい。今回ちょっと面白いのは、収録する楽曲を先に決めていったのではなくて、参加するミュージシャンが先に決まって、「そのミュージシャンとどんな曲をやりたいかな」みたいなところで楽曲を決めていったんです。で、今回のプロデューサーといろいろな話をした時に、「これまでの小澤ちひろというよりは、これからの小澤ちひろを見せるアルバムにしたいね」というのがまず一番最初にあって。そこから、一緒に未来を作っていきたいミュージシャンが、ミュージカルを作るみたいな感じでキャストが先に決まっていったんです。15年間の中でのストーリーを見ていただけるアルバムにしたいというコンセプトもあったので、デビューから今までを見せていくという形でどんどん曲が決まっていきました。
 
──「ストーリーアルバム」と銘打たれているのは、そういう意味合いということなんですね。
 
小澤 そうですね。ベストアルバムというよりは、15年間のストーリーを見ていただきたいなと思ったので。
 
──15年間、いろんな状況や環境の中で作ってきた曲を、改めて並べて作り直すという作業では、いろんな思いもこみ上げてきたんじゃないですか?
 
小澤 まず、その時々にこれがベストだと思って作ってきた楽曲を一回崩すというのは、すごく胸が痛む部分も正直ありました。でも逆に、新しいアレンジになってみると、私自身がこの15年間の中で年を重ねるにつれて着る洋服が変わったりとかメイクの仕方が変わったりしていたように、曲も新しい洋服を着られてすごく喜んでいるなって思えた瞬間とかもあって。レコーディングしたりアレンジしてもらったり、皆さんに演奏してもらう中で、自分の中で驚きと喜びが、すごくありました。
 

北海道と東京をLINEでつないでアルバム制作!



──新曲の「MORNiNG」も、アルバムに収録される方は「朝MORi MiX」とは別バージョンになってるんですよね?
 
小澤 そうですね。アルバムに収録される「MORNiNG」はサンプリング音は入っていなくて、しゃべり声とかが入っていたり。ドラムはレミオロメンの神宮司治さんが参加してくださっていたり、「THE YELLOW MONKEYのもう一人のメンバー」と言われた三国義貴さんが鍵盤で来てくださってます。あとはずっと私のバンドで弾いてくださって昨日のライヴもベースを弾いてくださった木村ケイコさん。この曲の制作も、すごく面白いやり方で進んでるんですよ。
 
──というと?
 
小澤 神宮司さんは東京にいらっしゃって、私たちは札幌にいるので、LINE電話を動画でつないでプリプロをするっていうのをやりました。東京のスタジオで神宮司さんに叩いてもらって、札幌で私たちが「あ、こんな感じ! このフィルいですね!」とか「Aメロはこちらでシェイカーの音を入れるので、ドラムはなくて大丈夫そうですね」と言ったら、神宮司さんが「こんな感じでやってみたらどう?」って反応して、「いいですね!」みたいな感じでセッションを進めました。そして「これでOK」となったら、「じゃ今から録ります」って、録音する姿も動画で見させてもらうんです。そうやって録った音がデータでそれぞれのパソコンに送られてきて、それぞれのパソコンの音楽ソフトで開いて聞いているという感じなんです。

──すごいですね。
 
小澤 それに合わせて、今度はベースのケイコさんが、「じゃあ今からベースをこんな感じで弾きます、どうですか?」と。またそれがみんなに送られて、それぞれのパソコンの音楽ソフトの中で聞いて、「OK!」とか、「もっとこうした方がいい」という作業を今まさにやっているところです。

──まさに「21世紀の制作過程」って感じですね!
 
小澤 本当に、「すごい時代になったね!って言いながらやっています。
 
──昨日使われたマシンとか、その制作のお話などを聞くと、機械はお強い方なんですか?
 
小澤 いや……そういう面では、私はかなり疎いので……強くない方だと思います(笑)。だけど、あのマシンとかもYouTubeで「machine」で検索して同じ機材を使っている人の動画を見て学んでいます。海外でも使っているアーティストがいるので、それを見て何とか見よう見まねで(笑)。

──機械に詳しいというよりも、見よう見まねで自分のものにしていく能力が上がっていくみたいな?
 
小澤 もう、どうにかって感じです(笑)。昔は曲作ったときにはギターは「せーの!」でテープレコーダーに録音していましたからね。そう考えると、この15年で進化しましたね(笑)。
 
──先ほどの「朝MORi MiX」のサンプリングも、今だからこそやりやすくなったわけですよね。
 
小澤 そうですね! 15年前だったら確実にやってないと思います。一つ一つの音をテープで録ってデータ化して……みたいな作業だったら、大変すぎますから。カーテンの音は、スマートフォンのボイスメモで録りましたからね。
 
──今はスマートフォンでも、そういうサンプリングで使えるぐらいの品質で録れちゃいますからね。そういうテクノロジーの恩恵を受けた音楽ということですね(笑)。またデビュー15周年日にそういう作り方の曲がリリースされたというのも、ちょっとすごい話というか。
 
小澤 はい、今までやったことないことにチャレンジした新曲を出せるっていうのはうれしいですね。私のテーマは「挑戦」なんですよ。いつでも挑戦していたいという気持ちがすごくあるので。「MORNiNG」はもともとは15周年のために作った曲ではないんですが、すごく意味のある曲になったなと思います。曲のテーマである、朝、一日の始まり、新しいストーリーというところでも、運命を感じるというか、すごくしっくりきていますね。

──ただ、歌詞の世界は全くテクノロジーとは無縁じゃないですか。そこの対比も面白いですよね。
 
小澤 確かに(笑)。歌詞を作る過程もいろいろ面白かったんですよ。皆さんのアイデアを元にして、一番最初にメロディーが生まれたんですね。メロディーだけで私が「ラララ……」と歌ったものをボイスメモで録音してラジオ番組の中で流して、「これでどんな歌詞が思い浮かべますか?」と。そしたら「おうちカフェ」とか「おうちデート」だったり、カップルの日常の朝というのを連想してくださった方がすごく多くて。そこからまたインスピレーションを受けて、どんどん広げていきました。しゃべり声とかもふんだんに使っているので、「日常感」はすごく出ているかなと思います。

──古い曲の再録については、15年間、各時代の自分と向き合って、なおかつ「今」のものにしていくという作業でもあったわけですね。向き合うだけでも大変な作業のような気がしますが。
 
小澤 この曲たちと一緒に、また新しい未来を作っていくという楽しみの方が、どちらかというと大きかったですね。作業は大変ではありながら、未来が楽しみという方が大きいという感じでした。ライブでも、このアルバムからどんどんやっていきたいなと思っていますし。
 
──それによってライブ自体も大きく変わりそうですね。
 
小澤 マシンを使ってみたりとか、楽曲によってはアコギやエレキギターを弾いてみたり鍵盤を弾いてみたり、踊ったりというのが増えそうですね(笑)。今回のアルバムはすごくバラエティに富んだ内容になっているんですよ。「ふざけんなロックンロール」は、札幌のすすきのにあるミュージックラウンジで毎晩演奏されているギター・レジェンドがアンプ直でギターをつないで、その場でセッション感覚でやってくださった、本当にロックらしい曲になっています。「ハッピーソウルミュージック」はソウルフルな、アフロヘアなんかをイメージしてしまうような感じだったり。ライブでもいろんなアプローチをしたいなと思っています。
 

北海道を拠点にしてよかった、意外な理由とは?



──改めてこの15年間、今の時点で振り返ってみるといかがでしたか?
 
小澤 最初、「デビューしたら売れる」って思っていたんですよ。ジェットコースターのピークに行ったと思っていたらそうじゃなくて、その後に急降下みたいなものがあったり、山があったり谷があったりっていう本当にもう、ジェットコースター的な15年間でしたね。

──その中で、あえて一つ、ここが一番ポイントだったなというのは?
 
小澤 やっぱり地元に戻ってきたっていうことがすごく大きかったです。
一度夢を持って出た北海道に戻ってきたというところは、すごくポイントになっていますね。戻ってきてラジオパーソナリティーもやらせていただいたりということが今回の新曲につながっていたり。

──東京での活動と北海道での活動で、一番違いを感じるのはどんなところですか?
 
小澤 一番は……東京は人がたくさんいて、自分がしっかり立っていないと流されてしまうところ。北海道は、自分を確認できる場所でしたね。自分のやりたいことが明確に感じられる場所だなというのが、戻ってきた当初はありましたね。
 
──今、北海道を拠点に活動されていて、一番よかったと思うことは?
 
小澤 東京に行っていた時は、「どうやったら目立てるんだろう?」みたいなところに気持ちが行ってしまったりしていたこともあったんですけど、北海道で活動してやっぱり自分は、音楽を通して人に元気になってもらいたい、音楽を通して背中を押したり希望を与えたいっていう、そういう気持ちが根本にあったんだということを気付けたのがすごくよかったですね。あと、本当に個人的なことなんですけど……イクラがすごく好きなので、イクラ丼がいつでも食べられるってことですね。
 
──いきなり音楽からスコーン!と離れましたね(笑)。
 
小澤 東京でもお寿司屋さんとかに行くことはあったんですけど、やっぱり本当に高級なお寿司屋さんじゃないと、イクラはなかなか食べられなかったりしたんですね。こっちだと100円回転寿司でも本当においしいイクラが食べられて、しかも240円と400円バージョンみたいな感じで、イクラだけでも2種類とかあるんですよ。そういうのの食べ比べがすぐできたりして。そういう食にも元気がもらえるというか、好きなものをすぐ食べられるというのは本当にうれしいことです。
 
──特にイクラが。

小澤 イクラですね! あとはパンケーキも好きなんですけど、地元で採れた、十勝の小麦を使ったパンケーキだったりを地元で楽しめるっていうのは格別で、本当にうれしいことですね。

──なるほど、食べ物は大事ですからね(笑)。昨日、イベントを拝見していても、何というか……ダイレクトに応援されているんだなという感じをすごく受けました。地元の、本当に小澤さんの歌が好きな人たちに囲まれて活動されてるんだなというか。
 
小澤 地元愛は、すごく感じますね! 本当にいつもありがたいなと思っています。CDショップにしても、私がこっちに戻ってきて、まだリリースもないのに私のコーナーをそれぞれの店舗が作ってくださって、ファンの皆さんとの交換ノートを作ってくださったり。まだCDのリリースがされてない時点でですよ?
 
──それはすごい。

小澤 ラジオ番組もそうですし、地元愛は日々すごく感じています。それもあって、これからは「北海道といえば小澤ちひろ」じゃなくて、「小澤ちひろといえば北海道」って言われたいなという思いがあるんです。新しい発想だったり、活力の元となる生きる力になるものが北海道から常に生まれていくっていうイメージを持ってもらえるようなアーティストに成長できたらなっていうのはすごく思いますね。
 
──そんな中、今年はデビュー15周年を迎え、柱となる作品も発売になります。ここからはどうしていきたいですか?
 
小澤 新しいアーティストの形を提示できたらいいなと思います。シンガーソングライターと言えばギター持って歌うっていうステレオタイプなイメージがあると思うんですけど、そのイメージにとらわれないイメージを提示して、驚いてもらえたり喜んでもらえたりできるようなアーティストに育っていきたいなと思います。

──昨日のMVの撮影でも思ったんですが、「シンガー」の枠に収められないほど、ダンスがすごいじゃないですか。

小澤 ホントですか? ありがとうございます! 今回のMVでも、自分の武器って何だろう?唯一無二なものって何だろう?ダンスもやったしギターもやったし、曲を作ることもやったし、いろいろやったけど、ホントに自分の武器になるものって何なんだろうなと考えて。歌って踊って、曲も作るし楽器も持つ、っていうのを全て一つのMVに込めたらどうだろう?今の自分にしかできないもの、今の自分だからできるものって何だろう?ということで、今回初めて、あのギターダンスにチャレンジしました。
 
──本番前、振りの確認をされていた時には、コンパクトなスペースだから大丈夫かなと思ってたんですが、始まってみたらバシッと決まりましたよね。
 
小澤 いやー、緊張しました(笑)。ギターが窓ガラスに当たったら……とか、お客さんに当たっちゃったら……とか。かなり緊張したんですよ。仕上がりが楽しみです(笑)。

──そのMVも含めて、4曲分の映像が収録されたDVDがついたバージョンも発売されるんですよね。
 
小澤 そうですね。15年前の私と今の私が、このDVDの中で共存しているんですけど……「Bye&Thanks」とか「Stay Gold」の頃の私と、「MORNiNG」の私を比べたら、絶対に15年前の私の方がセクシーだと思いますからね。15年前の私は、胸を「きゅきゅきゅ」っとしていたんですよ(笑)。
 
──というと……。
 
小澤 15年前、Candyの頃って売り文句が「和製ビヨンセ」だったんです(笑)。そのイメージに合わせて、メイクさんにガムテープとかで胸を寄せられて、パットもすごく盛られて(笑)。このDVDではそんな姿も見られるので、ぜひ(笑)。

──ぜひ(笑)。では最後に、改めてメッセージをいただければ。



小澤 今回はオールタイムベストアルバムと銘打っていますが、このタイミングで「小澤ちひろ」っていう名前自体を初めて知ったという方にもきっと楽しんでもらえるような、バラエティ溢れるアルバムになりました。配信もCDもあるので、ワンアクションいただけるとうれしいです。今まで小澤ちひろの楽曲を聞いたことがある人も、どんな再構築をしたのかっていうのを、期待して聞いてほしいなと思いますね。このアルバムには、すごく華やかにデビューさせていただいた時の楽曲「Bye&Thanks」から、独りぼっちで部屋の中で作った楽曲だったり、人通りの前で歌った路上ライブ時代の曲だったりとか、また札幌に戻ってきてから作った曲もあるので、そういうストーリーも一緒に感じてもらえたらうれしいです。私は今は北海道在住なんですが、15年前に比べたらSNSがすごく便利になったので、インスタライブで配信したり、全国、世界との距離が近くなりました。これからどんどん発信していきたいと思うので、インスタやツイッターでフォローしてもらえたらうれしいです。
 
──ありがとうございました!
撮影 長谷英史
 
なんと!イベントの時に手渡ししていた特製コースターにサインを入れていただいたものを3名さまにプレゼントします!(絵柄は選べません)








オールタイムセルフカバーベスト『きゅきゅきゅ』
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高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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