2023年5月にデビュー13周年を迎えた東京女子流が、5月3日から7日のゴールデンウィークに【東京女子流 13th Anniversary Live】を連日開催。その初日にエイベックス発のアイドルグループ同士であるレーベルメイト・わーすたとの2マンライブ【東京わーすた流】を実現しました。両方のファンが驚き、歓声を上げたそのライブの模様についてレポートします!
さまざまな趣向を凝らし、あらゆる意味でサプライズだらけの公演!
この公演は、よくある前半と後半に分かれてライブする対バンとは異なり、東京女子流とわーすたそれぞれのライブパートがあるのはもちろん、互いの楽曲をカバーしたり、シャッフルユニットを組んでコラボレーションしたり、計8人のメンバー総出で代表曲をお届けしたりと、様々な趣向を凝らした【東京わーすた流】の名に相応しい特別仕様となっていた。そんな夢の宴のオープニングを飾ったのは、主催者である東京女子流。わーすたのトレードマークである猫耳を4人各々装着し、完全なる少女だった時代とはうって変わって、腕を引っ張られながら足のあいだを一気に潜り抜けるアクロバティックな動きなども交えながら、明らかに成長を遂げたパフォーマンスで「コーナーカット・メモリーズ」を披露していく。その後、入れ替わるように登場したわーすたも歌、ダンスともに進化の一途を辿ってきた表現力で「マッシュ・ド・アート」を観客のハンドクラップに包まれながら開放的に展開してみせた。
そして「親戚だと思っている」と称した東京女子流を再びステージに呼び込むと、両グループ全員揃い踏みで「東京わーすた流でーす!」とご挨拶。互いに「可愛いです!」「まぶしい!」と讃え合いながらMCを繰り広げていくのだが、ここで一際異彩を放っていたのが廣川奈々聖(わーすた)。「私、女子流さんのオタクとしてどこまでやっていいのか……程々に出していきます。すみません」と言いながら、彼女たちのライブを目の前で観たくて客席へ降りようとし「緊張しちゃうから!」「めっちゃレス送っちゃうから」と制される場面も(笑)。
そんなわーすたからの愛情に応えるべく、東京女子流は「わーすたさんの曲をやっちゃいます! 私たち、食べることが大好きなんですね。しかもその中でもお肉が大好きなんです! なので、今日はこの会場でお肉を焼いちゃおうかなと。それでは、美味しく焼きたいと思います!」と焼肉しているジェスチャーをしながらなんと「大志を抱け!カルビアンビシャス!」をカバー。扇子を振り回しつつ「お肉!」「焼いちゃって!」と激しいコール&レスポンスを繰り広げ、会場の熱気を一気に高めていく。その後も「ミルフィーユ」「ストロベリーフロート」とオリジナルのグルメソングを畳み掛けていくのだが、デビュー時からのふんわりした女の子のイメージは保ちながらも、フューチャーベースやディスコクラシック然としたR&Bなど大人のクラブミュージックを体現するに相応しいパフォーマンス。このブロック最後の「ガールズトーク」に至るまでフォーメーションのデザイン含め終始惚れ惚れとするステージングを貫いた。
続いては、そんな彼女たちからのリクエストで「完全なるアイドル」をわーすたの小玉梨々華&三品瑠香、東京女子流の中江友梨&庄司芽生といったシャッフルユニットでお届け。この4人が最初の立ち位置についただけで客席から「うそ!?」と驚きの声も上がっていたが、それもそのはず。この曲は「アイドル多すぎ」「猫耳しんどい」などわーすたの本音、もっと言えばアイドルの光と闇や本音と建前を露わにしてしまった衝撃作であり、それを東京女子流のメンバーも一緒になって歌ってしまうというのはなかなかの問題……と思っていたのだが、4人揃って楽しげに暴れまわりながら迫力ある四声ハーモニーを響かせていく姿は、正直めちゃくちゃハマっていた。あらゆる意味でサプライズだらけの公演である。
これほど有意義なアイドルの2マンライブはそうそうない!
わーすたの4人がステージに揃うと、廣川が「芽生ちゃんの「鼻血が出たニャー」に釘付けだった!」と「完全なるアイドル」の感想を興奮気味に語る中、今度は彼女たちが東京女子流の「リフレクション」をカバー。アーバンなハウス×ポップスに乗せていつもと違う質感の表情を見せる4人の歌声とダンスが心地良く、ファルセット手前の絶妙なハイトーンに驚くほどよく合っていた。そんなわーすたの新世界を覗かせてくれたあとは、ファンと一丸となって「おいしい!」「おかわり!」のコール&レスポンス含めthis isアイドルポップ然とした世界観が楽しい「タピオカミルクティー」、暴走したドールのように可愛くも人間離れした動きを見せながら、まるでロックスターのようにシャウト気味に歌い叫んでいく「萌ってかエモ」。そして、このブロックの最後には、あまりにパワフル&ハートフルなポップチューン「清濁あわせていただくにゃー」を全身全霊でお届けし、まるで大団円のような一体感を生み出していった。
圧倒的なパフォーマンス(三品瑠香に関しては、このまま叫びながら爆発してしまうんじゃないかと思った)。その熱を残したままライブは、東京女子流の山邊未夢&新井ひとみ、わーすたの廣川奈々聖&松田美里によるシャッフルユニットの時間へ。東京女子流のAORテイストのポップチューン「Viva La 恋心」を披露し、4人並んで前のメンバーの腰にひじをついて微笑むコレオグラフなど、目でも耳でもガーリーな世界観を堪能できるパフォーマンスで魅了していく。終盤のダンサブルなハンドクラップで会場が一体化していく流れは実にホープフルだった。ちなみに、廣川はこの曲が大好きで、それを知った東京女子流の面々が「絶対に奈々聖ちゃんとやりたいね」と話していたそうだ。これを聞いて彼女がどれだけ嬉しそうだったかは想像にお任せしたい。
「東京わーすた流、ここで全員大集合したいと思います!」このタイミングで東京女子流の4人は猫耳から犬耳にチェンジ。ということは、メンバー勢ぞろいで披露されるナンバーはもちろん、わーすたのインディーズデビュー作にして代表曲「いぬねこ。青春真っ盛り」! イントロから「にゃー!×6 にゃんぽこらー! わん!×6 わんぽこらー!」と全力のコールに包まれ、猫や犬のポーズを決めながら歌い踊る8人のこれぞアイドル!と言わんばかりの光景は、コミカルな楽曲でありながらも劇的にまぶしかった。そして、同じく東京わーすた流の8人全員で披露された、デビュー当時から東京女子流が大切に歌い続けてきた「おんなじキモチ」では、そのあまりにピュアでキラキラした音楽とパフォーマンスに涙する人の姿も。
今から13年前。アイドル戦国時代と呼ばれるほどのムーヴメントが起きた時代。アイドル現場に行けば当たり前のように見かけるアイドルがたくさんいて、あたりまえのように耳にしていたアイドルソングもたくさんあって、その現場の帰りにアイドルについて語らう仲間たちもたくさんいて。今ではそのほとんどが入れ替わり、会えなくなったアイドルも、聴けなくなったアイドルソングも、語り合えなくなった仲間も挙げればキリがないほどだ。13年という時間はそれぐらい多くを変えてしまう。しかし、それでも東京女子流はあの頃と変わらず「おんなじキモチ」を今もステージで歌っていた。わーすたの「いぬねこ。青春真っ盛り」もそうだが、どんなに時が流れても生でその曲を聴き続けられることがどれだけ奇跡的か、アイドルファンであればよく知っている。ゆえの感激、圧倒的な多幸感。
Let’s get together now おんなじキモチ
Let’s get together now 明日も元気
Let’s get together now すぐ会えるよね
このマインドで活動し続け、13年目のアニバーサリーライブに辿り着いた東京女子流。その記念すべき公演に全身全霊のライブと大きな愛情で華を添えたわーすた。アイドルの対バンは星の数ほどあれど、これほど有意義な2マンライブはそうそうあるまい。東京わーすた流はこの日の為だけに結成されたスペシャルユニットだが、メンバーたちも再結成を望んでいるようなので、ぜひまたいつか実現してほしいものだ。
◎東京女子流 13th Anniversary Live 東京女子流×わーすた 2マンライブ【東京わーすた流】
2023年05月03日(水・祝)SHIBUYA PLEASURE PLEASURE セットリスト:
[東京女子流]
01.コーナーカット・メモリーズ
[わーすた]
02.マッシュ・ド・アート
[東京女子流]
03.大志を抱け!カルビアンビシャス!(わーすたカバー)
04.ミルフィーユ
05.ストロベリーフロート
06.ガールズトーク
[東京わーすた流(小玉梨々華/三品瑠香/中江友梨/庄司芽生)]
07.完全なるアイドル(わーすた楽曲)
[わーすた]
08.リフレクション(東京女子流カバー)
09.タピオカミルクティー
10.萌ってかエモ
11.清濁あわせていただくにゃー
[東京わーすた流(山邊未夢/新井ひとみ/廣川奈々聖/松田美里)]
12.Viva La 恋心(東京女子流楽曲)
[東京わーすた流(全員)]
13.いぬねこ。青春真っ盛り(わーすた楽曲)
14.おんなじキモチ(東京女子流楽曲)
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ライター
平賀哲雄
インタビュアー、ライター、MC、コメンテーター。1999年に音楽情報WEBサイト「hotexpress」を立ち上げ、2012年より「Billboard JAPAN.com」の編集長として活動。現在は様々なメディアで活躍している。ジャンルレスにこれまで1000組以上のアーティストを取材。小室哲哉、安室奈美恵、TM NETWORK、中島美嘉、倖田來未、大塚 愛、Do As Infinity、MINMI、モーニング娘。、BiS、BiSHなど様々なアーティストのイベントや番組の司会、解説も担当している。