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【スカパラ】メキシコの空の下で鳴り響かせた“トーキョー・スカ”にオーディエンスも大熱狂!12年振り出演の中南米最大のフェス「Vive Latino 2023」ライブレポート

2023.03.24
東京スカパラダイスオーケストラ



2011年以来12年振りの出演となった中南米最大のフェス「Vive Latino(ヴィヴェ・ラティーノ)」(開催地:メキシコシティ)で、スカパラがこれまでの自己記録を更新するかのような素晴らしいライブを披露した。

会場はメキシコシティの「Foro Sol(フォロ・ソル)」で、これまでローリング・ストーンズ、U2、マドンナなど数多くの世界的ビッグアーティストが単独公演を開催してきている巨大スタジアムだ。今年もビリー・アイリッシュ、BLACK PINK、The Weekndらのワールドツアー開催地として名を連ねている。

スカパラは6つあるステージのうち、メインステージで2番手に出演することとなっており、スカパラの3組あとにはレッド・ホット・チリ・ペッパーズも控えている。

メインステージのトップバッターのライブが終了後も暫くはオーディエンスの人数も少なく、「12年前のように果たして観客は集まってくれるのだろうか?」という緊張感がスカパラスタッフにも走るなか、サウンドチェックを進めていくにつれアリーナのスタンディングエリアにオーディエンスが続々と増えていく。

開演時刻が近づくにつれ熱狂的なメキシコのスカパラファンから「オーレ―、オレ、オレ、オレー、トーキョー、トーキョー♪」と大合唱が幾度となく沸き起こる。ステージ裏にスタンバイしているスカパラメンバーからは緊張感と気合と9人それぞれがメキシコに懸ける想いが混沌とし、不思議な空気感に包まれている。

スタジアムのアリーナには明らかに12年前以上のオーディエンスが詰めかけるなか、SEとして「Free Free Free」のインストが流れ、スカパラメンバーが颯爽とステージに登場すると、すべての音をかき消すかのようなオーディエンスの大歓声が9人を迎えいれる。

そして、NARGOのトランペットからスカパラの新たな歴史の1ページに刻まれる記念日の幕が明けられた。オープニングナンバーは「ゴッドファーザー 愛のテーマ」だ。世界中の誰もが知る大傑作映画の主題歌であり、スカパラ流にアレンジされた楽曲が、会場中のオーディエンスのハートをがっしり掴む。

間髪入れず加藤隆志がステージセンターのお立ち台でギターを掻き鳴らし「5 days of TEQUILA」へ。
インストナンバーであるにも拘らず、メキシコのオーディエンスはメロディを「ラララ♪」で大合唱する。
早くも会場中のあちこちで沸き起こっているサークルモッシュが激しさを増していく。

谷中敦(Baritone sax)のスペイン語によるMCのひと言ひと言がオーディンスをさらなる熱狂へと誘っていく。さらに、12年前、東日本大震災の1か月後に初めてメキシコを訪れ、「Vive Latino 2011」がメキシコ初ライブとなったときに、メキシコの人たちからの励ましとともに「エスタモス コンティーゴ(We are with you)」と投げかけてもらった言葉を、12年の時を経た今、ステージ上から谷中がメキシコのオーディエンスに向けて投げ返す。谷中の必殺のフレーズである「闘うように楽しんでくれよ!」だけは日本語でシャウトし、3曲目の「スキャラバン」へ突入。大森はじめ(Percussion)がステージ前方でモンキーダンスをしながらオーディエンスを煽っていく。

いつにも増して谷中の気合が籠ったタイトルコールとともに「DOWN BEAT STOMP」がスタートする。日本のフェスのアンセムとも言える「DOWN BEAT STOMP」であるが、メキシコのフェスにおいてもアンセムになるのかもしれないと思わせるくらいの熱狂を生み出していく。

川上つよし(Bass)の口上とともに、スカ好きなら誰もが知るマッドネスの「ONE STEP BEYOND」をスカパラ流にカバーして披露すると、会場中が大合唱となる。

ここで谷中がスカパラにとって盟友であり、日本を代表するシンガーのハナレグミ(永積 崇)をステージに呼び込む。
ハナレグミは「チャンスがあればメキシコでスカパラと一緒に同じステージに立ちたい」とこれまでずっと願ってきており、その願いが遂に実現し、スカパラのメキシコツアーに帯同することとなった。

今回のメキシコでのライブ用にスカパラと同じピンクのスーツを新調したハナレグミは、軽やかにステップを踏むかのようにステージセンターへと登場。スカパラの歴史のなかでいちばんと言っても過言ではないほど大きなターニングポイントとなった「めくれたオレンジ」を披露。ハナレグミの歌声がメキシコのオーディエンスの心を揺さぶり、「めくれたオレンジ」を歌い終えたハナレグミに対して割れんばかりの拍手が沸き起こる。続けて披露されたのは2005年にスカパラのゲストボーカルとしてハナレグミを迎え入れてリリースされた「追憶のライラック」だ。ハナレグミの優しく包み込みながらも時に力強いボーカルが会場中のオーディエンスにも沁み渡っていく。

歌い終え、ステージ袖へと向かうハナレグミを現地メキシコのステージスタッフがサムズアップで迎え入れる。
続いて披露されたのは沖祐市(Keyborads)の美しいピアノの旋律と狂気を孕んだかのような超絶テクの「水琴窟」だ。海外でも人気の高いインストナンバーであり、沖のプレイに魅了されたメキシコのオーディエンスからも拍手喝采が沸き起こる。

茂木欣一(Drums)のMCとともにメキシコの人々にとってメキシコを象徴する曲である「Cielito Lindo(シエリト・リンド)」が披露されると、会場中から大合唱とハンドウェーブが沸き起こり、演奏の終わりとともに大歓声に包まれる。

そして、この日のラストナンバーとして披露されたのは「Paradaise Has No Border」だ。
完全なインストナンバーでありながら、スカパラが登場する日本のフェスでは「DOWN BEAT STOMP」同様にアンセム的な楽曲となっているが、メキシコの地でもオーディエンスは大熱狂だ。

国内ではGAMO(Tenor sax)による「どこがいちばん盛り上がってるんだ!」の煽りに対して、場内のオーディエンスが自分がいちばん盛り上がっていることをアピールするために、腕を振り上げたり体を揺らしたり、コロナ前は大きな歓声を上げて呼応していたが、メキシコの地でGAMOによるスペイン語での「ドンデ エスタン マス プレンディドス!(どこがいちばん盛り上がってるんだ!)」の煽りに対して、日本と同様に大歓声が沸き起こる。盛り上がっているステージ下手側に対して、GAMOが「バモス パラ アヤ!(よし、いくぜ!)」と、NARGO(Trumpet)、北原雅彦(Trombone)、谷中敦(Baritone sax)、加藤隆志(Guitar)、川上つよし(Bass)、大森はじめ(Percussion)を引き連れ、「Paradaise Has No Border」のメインテーマを鳴り響かせる。

スカパラメンバーの真後ろに付いてきたハナレグミはスーツのポケットに忍ばせていた紙吹雪を絶妙なタイミングで撒いている。会場中のオーディエンスがこの日いちばんの盛り上がりを見せるなか、ステージ上手側のオーディエンスに対して「イ ウステデス?(そっちはどうだ?)」とスペイン語で投げかけると、上手側のオーディエンスもさらなる熱狂で「こっちにも来い!」と言わんばかりの盛り上がりを見せる。

GAMOがふたたびメンバーを引き連れ今度は上手側に向かい、熱狂するオーディエンスに向けて「Paradaise Has No Border」のメインテーマを鳴り響かせる。

最後はステージセンターで綺麗なフォーメンションを組んだかたちでメインテーマを思い切り鳴り響かせ、GAMOの大きなジャンプで12年振りの「Vive Latino」のステージは締めくくられた。

終演後も鳴りやむことのない「オーレ―、オレ、オレ、オレー、トーキョー、トーキョー」の大合唱に背中を押されながらスカパラメンバーとハナレグミはステージをあとにした。
40分という限りある持ち時間での演奏であったが、新たなメキシコでの記念日となったこの日のライブが、3年半もの間止まっていた海外展開の道を間違いなく切り開き、スカパラに“夢の続き”の“始まり”を示してくれるライブとなった。

終演後、スカパラメンバーとハナレグミは現地のマスコミによる単独の取材を10本ほど受け、さらには20社ほどによる合同記者会見を行うなど2時間に渡る取材攻勢や、関係者からも完全なプライベートの撮影攻めにあうなど大人気であった。
現地のマスコミによる取材後も興奮冷めやらぬなか、スカパラを代表して谷中・加藤・茂木、そして、ハナレグミによるライブ後のコメントも掲載しておく。

ハナレグミ(永積 崇)
言葉じゃなくて体で音楽を伝えるスカパラと、それを受け取って体で返すメキシコの人達のエネルギーの交換を見ることができて、幸せな気分になれましたね。ボク自身も、音楽の力を信じるエネルギーをメキシコからもらうことができました。「追憶のライラック」をスカパラと披露したときは映画を観ているような気持ちっていうんですかね、自分が本当にここに立っているのかと、ふと画面の向こうを見ているような気持になりました。
メキシコの人たちの音楽の受け取り方がカッコイイなとも思いましたね。ダンスミュージックに慣れているオーディエンスなんですかね、タテにグイグイとサークルとかで熱く盛り上がっていた人たちが、緩やかなイントロとか歌がはじまると、スムースに横揺れになって、じっくり味わいながら踊りながら聴き入ってくれている感じがしました。本当に気持ちよかったので、下手すると客席の雰囲気に引き込まれて頭が真っ白になりそうだったから、歌に集中しようと思いました(笑)。今日の朝会場に来て、お客さんが入ったこのあまりに大きなステージにどういう気持ちで立つんだろうって思っていたんですけど、本番が始まって、スカパラの演奏に対するオーディエンスのとんでもない盛り上がりを見ていても、スカパラの音は日本もメキシコも関係なくいつも通りの音を出しているんですよね。ボクもこれまで何度もスカパラのステージに出させてもらっているんですけど、そのときの音と本当に一緒だったんですよ。日本で出す音もメキシコで出す音も、何ら変わらず繋がっているから、いつものままステージに出て歌えばいいんだなっていう気持ちになりました。こんなに熱いオーディエンスの前でも、いつもと同じようにアクトできるスカパラの懐の深さや大きさにも感動しましたね。

谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)
何年もの間、コロナ過でちゃんとした春を迎えられない感じだったのが、ここにきてメキシコの人たちと春を迎えられた気持ちになれたのは嬉しかったですね。メキシコでの初ライブは12年前の「Vive Latino 2011」ですが、そのときは東日本大震災の1か月後ということもあり、震災で傷ついた日本やボクらのことを「エスタモス コンティーゴ」と言ってメキシコの人たちがすごく励ましてくれました。「We are with you=私たちはあなたたちと一緒にいます」という意味ですが、当時、この言葉に勇気をもらえてすごく心強かったので、今日はこの言葉をステージ上で言わせてもらいました。
ライブが終わったあとステージ上からお客さんをみたときは、泣きそうなくらい嬉しかったですね。メキシコの人たちといると人生楽しむってこんなにファンタスティックなことなんだなって思えるんですよ。
スカパラとしての夢の続きは、スペイン語で言うと「El paraíso no tiene fronteras(エル パライソ ノ―ティエネ フロンテラス)」、つまり「Paradise Has No Border」ということなんですけど、スカパラとコラボしてくれるアーティストを日本だけでなく海外でももっと増やして、さらに、ファンの人たちの輪もどんどん広げて、
そうやってボクらと一緒に楽園に住んでくれる人たちを増やし続けていくことが、これまで以上にスカパラのサウンドでハピネスを世界中に届けていけることに繋がるのかなと思いました。

加藤隆志(東京スカパラダイスオーケストラ)
Vive Latinoのステージに立つのは12年振りだったので、どれくらいのお客さんが待っていてくれるのかなっていう不安もありつつ、楽しみでもありましたね。結果として12年前以上のお客さんが集まってくれて、ステージに出る前からトーキョー・コールが聴こえたときに、またメキシコに来ることができて本当に良かったと、幸せな気持ちを噛みしめながらステージに立ちました。ライブが進んでいくなかで、12年前よりもさらにスカで楽しみたいっていうお客さんが増えている感覚がしましたね。スカパラにとっての盟友であるハナレグミと「めくれたオレンジ」を演奏したときに、メキシコのファンの方がすごく歓声をくれたことも、すごく勇気になりました。ずっと記憶に残るようなこういう大きなフェスは、スカパラにとってもボク個人にとっても節目節目となる大きな出来事なんですけれど、実は終わった直後はそんなに実感がないんですよ。終わってから振り返って、時間が経てばたつほど「こんなにスゴイことができたんだ!」ってジワジワと実感できるんですよね。今はただただ興奮が治まらない感じなんだけど、これからじっくりと今日のライブを見返したりして実感が湧いてくるんだろうなって思います。

茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ)
終わった直後は異様な興奮に包まれていて、自分でも珍しいくらい大きな声を出してましたね。
3年以上に渡って世界中がパンデミックになって、メキシコの人たちとも約3年半会えていなかったので、僕たちのことを忘れないでいてくれているかなっていう気持ちがすごくあったんですよ。だけど、サウンドチェックのとき、客席から「トーキョー、トーキョー」のコールが聴こえたときは本当に鳥肌がたって、とにかく声を出してくれている人たちに、会場に集まってくれている人たちに、今まで会えなかった分の気持ち、みんなと会えてホントに嬉しいという想いを全部音に込めなきゃって気持ちでいっぱいになりましたね。だから、終わったあと、その達成感から叫ばずにはいられなかったのかな。
ステージに向かって歩き出した瞬間、2011年のVive Latinoで初めてメキシコで音を出したときのことが走馬灯のようにバキッと自分の目の前に蘇って「あのときの感じだよな」と思ったんですね。
東日本大震災のあと、いちばん最初にライブをやったのがこのVive Latinoだったので、「音楽やってる場合なのか」っていうムードもあったから、このフェスに出てもいいのかなっていう感じだったけど、Vive Latinoのステージに立って演奏して「やっぱり自分たちがやるべきことをやるっていうのがいちばん正しいんだ」と思わせてくれて、普段自分がやっていることを続けられることがどれだけ大事かってことを教えてもらったんです。
ボクのドラムの位置からだとスカパラメンバー全員を通してお客さんがすべて見えるので、今日その景色を見たとき「12年前、背中を押してくれたメキシコのみんな本当にありがとう!」っていう感動と感謝の気持ちでいっぱいになりました。
世界ではまだまだネガティブな話がいっぱいあるけれど、スカパラが奏でる音楽やパフォーマンスの姿勢を通して、みんなにポジティブな心を持ってもらえるような、そんなきっかけになる存在であれたらと思います。
スカパラってそういうパワーを持っているバンドだし、「スカパラが発したパワーやエネルギーをもらった人もみんなスカパラなんだよ」って思うので、もっともっと世界中いろいろなところで、スカパラの音楽でみんなの心に花が咲くようなことをしたいなっていうのが最大の夢ですね。

Vive Latino 2023
SET LIST
ゴッドファーザー 愛のテーマ
5 days of TEQUILA
スキャラバン
DOWN BEAT STOMP
ONE STEP BEYOND
めくれたオレンジ(w/ハナレグミ)
追憶のライラック(w/ハナレグミ)
水琴窟
Cielito Lindo(w/ハナレグミ)
Paradise Has No Border(w/ハナレグミ)


Photo by. Elfego Becerra Photography
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