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アーティスト・作品

杉恵ゆりか

杉恵ゆりかの世界とは? 本人が尊敬する方々からの声をピックアップ

ライター さえり

恋をしているすべての女子の 味方であり敵である

彼女の音楽は危険だ。ポップな曲調と、スッと体に馴染む声。なんだかイイ感じ、と思ったら最後、彼女の詩はだんだんと自分の中へ中へと潜りこんでくる。

「Help me 嘘ついてまでも 心配されたい」
「どんなにいたみをおぼえていても うまれたこの愛はほんものよ」
「きずついてもいいの」
「ここで泣いたらかわいいだろうな」

隠していた気持ちが自分の口をついて出てきたのか? と錯覚する感覚に、時に耳を塞ぎたくもなる。それは言わないで、隠してたんだからと言いたくなる。心がツンと痛んで、恥ずかしさにぎゅっと目をつぶって。……でも本当は少し嬉しいのだ。誰にも言えなかった秘密をわかってくれる音楽があったことが。

—彼女が歌うのは、「恋する女子そのもの」。

彼女は「思春期こじらせ系SSW(シンガーソングライター)」と名乗っているが、恋愛をこじらせていない女子なんてイマドキいるのだろうか?

たくさんの人がいるこの世の中で、好きな人からはいちばんに愛されたい。愛してくれる人を愛せれば楽なのに、本能はそんなに簡単じゃない。

綺麗なだけの恋ばかりじゃない。好きな彼は振り向いてくれないし、愛しているのに愛されなくて、それでも側にいたくて傷ついて。友人に呆れられても、自分すらも呆れても、それでもやめられない。誰かに言いたい、言えない、やめたい、やめられない。

そんな荒れた心の中や綺麗と言えない恋愛の悩み、誰にも言えない火照る気持ちや、まっすぐに走りすぎて傷いた気持ちの数々をぜんぶぜんぶ隠して、わたしたち女子はかわいいふりをして生きている。

「なんでもありません、毎日元気です」そういう顔をして、精一杯に。そうやって強がらないと生きていけないのだ。

なのに、だ。なのに、その置いてきたはずのぜんぶを、彼女はポップなメロディに乗せて簡単に歌ってしまう。それも心の奥まで届くような、透き通っていて強い声で。

かわいいふりしたあの子とあの子の心の底が、歌にのって溢れてくる。「どうしてわかるの」「わたしもそれなの」誰にも打ち明けられなかった恋が、音楽にのって会話をはじめる。彼女の音楽はたくさんの女子の“リアル”なのだ。

—強がっていた気持ちが溢れ、追い風に変わる

聴くうちに好きな人への気持ちが溢れて苦しくなる。大人なふりして諦めた恋が過去から蘇ってくる。傷ついて惨めな気持ちも好きで仕方ない気持ちもぜんぶぜんぶ溢れていく。

パワフルな歌声は、わたしたちに「そのまま走り抜けてしまえ」と呼びかけてくる。少しの不安や迷いを気持ちだけではねのけ、思うように突進して傷ついてもいいじゃない、と。

彼女の歌に励まされるかもしれない。もしかしたら逆に心の奥底までえぐられて涙がでてしまうかもしれない。

でもいずれにしても、聴き終わった後はちょっと強くなれる。自分の情けない姿すら愛おしくなる。

こんなの、女子の味方であり、敵だ。

 

写真家 大村 祐里子

女の子っぽくて、可愛いくて、甘いなあと。
だけど、その裏側に強烈な「激しさ」みたいなものを感じて、
ああこの人はきっと普通の女の子とは違うんだろうなと思い、
そこにものすごく惹かれました。

 

恋愛コラムニスト LISA

痛い。彼女の曲を初めて聞いたときに感じたこと。おそらく、この世に数多く存在するラブソングの中で、これほどまで女心に鋭く突き刺さり、胸をえぐる歌はそうないと思う。

恋する女性の中には、自分が一番になれない恋愛ほど夢中になり、のめりこんでしまう人もいます。『待ってる』の歌詞にある、【友達は言うだろな「彼だけじゃないでしょ 次の恋に踏み出そうよ」だからもう誰にも言わない】はまさに恋愛にのめりこむ女心そのもの。

本気の恋をしたら、きれいごとを並べたラブソングや恋愛コラム、女友達のアドバイスなんかは耳に入らないんです。信じられるのは、彼に対する自分の気持ちだけ。そんな恋愛中の心のモヤモヤをありのままの言葉で表現し、赤裸々に語っているからこそ、彼女の曲は女性の心に痛いほど突き刺さるのです。

なにより、軽快なメロディーと繰り返される言葉の歌詞、そして遠くまで伸びる透き通った歌声は、一度聞くと耳から離れることはありません。頭の中で自動的にリピートされ、そのたびに恋愛のほろにがさを思い出します。

10代の初恋、20代の失敗、30代の葛藤。杉恵ゆりかの曲は、恋愛を経験した女性なら誰もが一度は通った道を鮮明に思い出させてくれます。そして、「恋愛ってつらいけど楽しい。でも、やっぱり苦しい」。今現在、そんな思いをしている女性はきっと、彼女が作り出す世界に救われるはずです。