『lecca LIVE 2017 People on the High Street』 official interview
そうです。そこから「いろんな人が交わる場所」という思いを込めていて。アーティストってときに表現がひとりよがりになってしまうことがあると思うんです。自分の体験、自分が見たもの、自分に見えてる景色を発信する方に重きを置きがちで、聞いてくれる方との接点が見えにくくなってしまうことを私は懸念していたんですね。だから、いつも曲を作るときは、聞いてくれる方にできるだけ「私のストーリーだ」と感じてもらえるよう意識して歌詞を書いていて。特に今回のアルバム『High Street』は、ジャンルもそこまで特化してないし、普通に日本に暮らしていて「J-POPも好き、洋楽も好き」っていうような人が聞いてくれたときに入りやすいものであるといいなと思っていたんです。自分が通りに出てみて、いろんな人と言葉を交わして感じたことやもらったパワーを曲にしたつもりだったんで、そのツアーに来てくださる方にも人と交わることで得られるものが大切さだって伝えることを最優先に考えていたんです。
あの映像は私の中で今流行っている「ウォーキング・デッド」をモチーフにして作ったんです。私はそこに出てくるミショーン役(笑)。かつてない困難とか想定外の事態にも対応していく主人公たちの姿に感銘を受けていたんですよ、「メンタル強いなぁ」って。今回のように一貫した物語で本人が出演してる映像をつくったのは初めてですけど、映像も使ってお客さんを引き込みたかったんです。「ZOOLANDER」のときは小さいライオンが成長する物語を見せましたけど、今回は自分が主人公の映像をつくって、でも、みなさんにも「これはもしかしたら自分にも当てはまるのかもしれない」って思って欲しかったんです。
私が撮った一週間後にライムスターがあの場所で「マイクの細道」のミュージックビデオを撮影してました(笑)。同じ監督と同じ制作チームなんで、あの森と岸壁が使える場所だということがわかってしまったみたいで。もう完全に流用ですよ(笑)。
2回目の映像を挟んだあとにマントを着て出ていくところです。映像でも持っていた懐中電灯で、紗幕越しに客席を照らしながら「believe」を歌い始めるっていう。今回は自分の中でいろいろ決意をした上でのアルバムとツアーだったので、ミショーンが抱えてるくらいの(笑)、不安だったり、そこで感じた覚悟だったり、「自分がやらなきゃいけないんだ」という決意だったり、そういう感情を曲と一緒に伝えられる効果的な演出だったなと思ってます。
ありがとうございます。私も自分でやっていてボルテージが上がる場面でした。ライブをやっていると、お客さんの気持ちがリラックスしてるときと、「あ、今、本当にみんな感じてくれてるな、聴いてくれてるな」っていうのが伝わってくるときがあるんです。今回は「believe」から入り込んで、そのあとの「ど真ん中」で、「あ、一緒に感じてくれてるな、自分のものにしてくれてるな」っていうのをすごく感じたんです。
まずは「現状認識」から始まるんです。今、自分が抱えている問題や課題を知るところから始めないと先に進めないと思うので。自分は今どんな状況にいるんだろう? 何をしてるんだろう? 何かを探しているのか、見つけたのか。どこに行きたいのか、どこからスタートしたのか。今楽しいのか、悲しいのか、苦しいのか、怖いのかっていう。そういう混沌から自分を探していくっていうスタンスで、わりといつもライブの始まりには自分の中でもハードコアな曲を置くんです。前回だったら「つまづいて転べ」とか、結構ゴリっとした曲でブツブツ自問してるっていう(笑)、そういう曲を頭に持ってくるんです。
そこで自問自答を繰り返して、現状把握が済むと、1回、人ってスッキリするんですよね。今回のライブも自分の精神状態を明かしてるような流れだと思うんですけど(笑)、1回スッキリして自己肯定に入るんです。これだけ悩んで苦しんだから、次はきっといいことがあるんじゃないかって1回ほんわかしちゃう。それでいつも足元を掬われるんですけど(笑)。
そう。なので、ちょっとユルい曲だったり、ハッピーな曲だったり、自分を認めて上げるような曲を歌うんです。それが「きっと大丈夫」の辺り。で、そこからもっと元気になっていこうということで、ダンスチューンを入れたり、お客さんと一緒に遊ぶようなレゲエの曲が入ってくる。
で、一通り体を動かしたあとは、「さあ、じゃあ、どうしよう」って自分の身の振り方を建設的に考えていく局面に入る。それが「believe」と「ど真ん中」。今、悩んでることとか自分の現状認識が終わりました。分析もしました。1回スッキリして、体が元気になるラジオ体操もしました。じゃあ、どうしようか?っていう。もうね、長いんですよ、前段が(笑)。
1時間かけてフリですからね(笑)。
そうなんです。そこで「本当に言いたかったことはね……」っていうのが出てくるんです。「実はね」って。そこで、今いちばん自分が感じてること、伝えたいことを言わせてもらって、そこから先は、それって実は今まで伝えてたメッセージとリンクするんだけどね、っていう思いでまとめに入っていくんです。
チームが団結してきたのは広島くらいでしたね。「最初はガチガチに決まってなくても、徐々に合わせていけばいいか」みたいな雰囲気があるとマズイなと思っていたんですけど、そこは今回、KUUBOさんとかMi3とか、長年やってくれているバンドメンバーがお互いに監督しあってくれたんですね。とはいえ、最初の札幌はまだまだ反省点が多すぎて。正直終わったあとに「ちょっと今日はあそこが……」っていうのがあったんです。
「Higher」を1曲増やしたのと、あとアレンジや曲の繋ぎ、アウトロの長さとか結構細かく変えて。モヤモヤしたまま続けるのは良くないし、納得いくものにその都度変えていかないとと思っているので、全箇所、毎回煮詰めていたんです。それが広島のときにカチッとはまった手応えがあったんです。ライブをやってて、演者もスタッフも全員が納得をしたんだなっていうのを感じて、「これでひと安心」って。
そのあとの福岡、熊本は、みんな飲み過ぎました(笑)。
ハイ。みんな伸び伸びと羽を伸ばして(笑)。残り公演も少なくなってきて寂しくなってきたのもあって、熊本で飲んだのはよく覚えてます。
前回のツアーではアプリの「SNOW」が流行ったんです。今回は恋バナかも(笑)。熊本公演のMCで、熊本限定だよって、私がかつて恋に落ちかけたジャマイカ人のドラマーの話をしたんです。それが誘い水になって、ダンサーの間で恋バナをしたいモードが高まっちゃって(笑)。打ち上げのときは大抵、恋バナで盛り上がってた気がします。
正直、ゴミしか見つけてないですね。でも、心の持ちようだと思うんですよ。そのゴミから学ぼうと思えるかどうかによって、それが光に見えるかどうか変わってくる。ゴミだと思ってそのままにしておく、放ったらかす、自分は何もしない、そこに埋もれていくという方に選択の舵を切るのか、それともこのゴミをどうにかしようと思う方に舵を切るのか。その意識の転換を「GARBAGE」でも伝えたかったんです。正直、自分も今、どこに光があるんだろうって探す方が難しいくらいのものを毎日見てるんですけど、そこで見たものをゴミじゃなくすることは自分次第だと思ってるんです。それはやりたいし、やっていけるかなと思ってます。
BESTツアーがつまらなかったわけじゃないんですけど、今回のツアーはBESTツアーのときより楽しかったですね。BESTってどうしても予定調和になっちゃうというか、挑戦がしづらいというか。「自分としては今、これを伝えたい!」っていうのがあるので、そこに特化できるアルバムツアーはやっぱり面白い。意識が変わったというより、その面白さを再確認した感じですね。
あります。BESTツアーは、年齢的に私が25から35くらいまでの間に作った曲たちをライブでもう一度という感じだったんです。その当時と今の自分は違って当たり前だと思うし、1回BESTツアーで区切らせて頂いたことによって自由になれたような感覚もあるので。ここからは何にも縛られず発信していきたいし、今回のツアーでその第一歩が踏み出せた感覚はあります。
曲にしたいネタはいっぱい溜まってきてますね。歌いたいテーマはメッチャあるんです。タイトルや歌詞もある。それを曲にするまでの時間がなかなか取れないのが現状なんですけど、やりたい気持ちは常に持ってます。
原点回帰していく方に近いんじゃないかなと思います。ゴリゴリな方というか。日本のレゲエってシーンが大きくなるにつれて柔らかくなってきたじゃないですか。でも、その核になっていた最初の時期の方々は結構ハードコアで、その人たちに憧れて私もこのシーンに足を踏み入れたので。やっぱりレゲエとかレベルミュージックとかが一番カッコイイなと今、改めて思ってるんですよね。
インタビュー・文/猪又 孝