『TOP JUNCTION』のleccaによる楽曲解説
1. RUNWAY
この曲を作ったときはまさかこれがアルバムトップにくるとは思いもしなかった。というわけで後付けで切り込み隊長にさせられた「RUNWAY」ですが、ロックフェスにちらほら出演させていただいたことにより、ヒップホップやダンスホールレゲエとはまた違うコード感たっぷりの楽曲に憧れてしまったため作りました。場所は、みんなそれぞれのいるその人生。その環境。その毎日。そこが、あなたのRUNWAY。ここで助走をつけて走り出していくもよし、スポットライトを浴びて光り輝くもよし。どう聴いても前向きにしかならない、はずの一曲!なので、あえてアルバムタイトルを冠する曲でもあるJUNCTIONなどをすっとばして第一曲目に成りました。冬でも夏でも春でも秋でも、灼熱の太陽と疾走する風を感じてくださいませ。
2. Sky is the Limit feat.RHYMESTER
お力を借りました。私ひとりで言うよりも、×4にとどまらず、×100くらいの強い説得力を出すことができたのはこの曲に参加してくださったRHYMESTERのみなさまのおかげです。私はRHYMESTERの曲を聴くと上がり、喜び、震えて、泣きます。それは彼らがいつも、歌詞の一行一行に自分の生き様をおとしこむからです。一言一言に人を奮い立たせる勇気を添えて差し出すからです。時に私たちを鼓舞するような、教育さえもなされるようなリリックが音に乗せて運ばれてゆくと、その歌はラジオの前、スピーカーの前、イヤホンの先ヘッドフォンの先にいる誰かの中にバイブルのように残っていくはず。私はそんな彼らに憧れて、自分も含めて迷い悩み続けている子羊(?)たちを今一度良い意味でブレインウォッシュせんと、この曲を作りました。
世界と頭脳がそこに対峙したとき、力を持つのは実は頭脳ではないのではないか。by lecca
頭脳も要るだろうがまずはwiki検索より先にやることがあるのではないか。by 宇多丸師匠(lecca解釈による)
つまりはleccaみたいにぶつぶつ言わずにとにかくまずは動いてみればいいんじゃあないか。by Mummy-D(lecca解釈による)
@@@@@@@ by DJ-JIN。
大人たちに子どもたちほど可能性がないと思われがちなのは、経験と知識先行で人生を選んでしまうからなのかもしれない。
自分の最大限や最高値を、知ったようなつもりになってそこより下の蠢きで満足しようとするのは、いつだって大人たちだ。
だからもう一度、自分のことをリミッターを取り払って作り始めてはどうだろう。
3. BLANK
私のくせに、「もう言いたいこと別にない」なんて言っております。弱音でしょうか。いいえ。本音です。あれこれ言いすぎて、言うためにまずはぐだぐだ考えすぎて、何をするにも理由が必要、目的が必要、果てには誰かの賛同が必要、後押しが必要。必要なものだらけで窒息寸前。そんなのはまやかしではないかと疑うところから書き始めたのがこの曲。アイデアやメッセージをさしおいても、やりたいことはここに残る。これだけは守りたい、残したいと心底思えるものだけは必ずここにある。それなのに勝手に自分を窒息させてくれるな。自分を擁護/弁護することに全ての労力を消費してくれるな。自分をまさか憐れむことなど決してしてくれるな。
例えば、業界が消えたとしても音楽はなくならない。だから、見失ってゆかないように。大事なものだけを残して、外側のいろいろなおまけは捨ててしまってもかまわない。そんな、ザ•断捨離なソング。柳ディレクターがこれをアルバムトップ曲に推していたのでそれをなんとかおしとどめるのに苦労しました。
4. ヤマトナデシコ
バンドメンバーでもあるMi3制作トラックによる一曲です。テーマに悩んでまず彼に相談を、と思い、この曲は何をテーマにするべきだと思うか聞いてみたところ、「男女の物語がいい気がする」というメールがきて、その数分後に「やっぱりよくわからない」という付け足しがきました。ので、あまり彼の意見は参考にしないことにしました。が、その何となくの男女の物語というイメージ=おそらく日常生活感の見え隠れする曲が合うのかも、ということでヤマトナデシコと呼ばれる日本古来の絶滅危惧種ともいえる女性たちの生活について歌いました。最初に言っておきたいのですが、大和撫子をディスっているわけでは御座いません。さらに言えば、女性に大和撫子を求める男性批判をしたいわけでも御座いません。ただ、仕事ももって子どもも産み多様化している現代女性の生活を鑑みてみれば、全部やるってそれ無理でしょ!無理だけど一生懸命がんばっちゃうから女性ってすごいわよねー!ねー!と、言い合いたいだけなのです。というわけで女性讃歌であります。
5.あいあん・はあと
DON CORLEON制作トラックによる一曲。これもまた女性讃歌ではあります。自分が感じたことがかなりダイレクトにストレートに入っております。10代、20代の頃の自分とは明らかに違う、いまの自分のもつ強さ。それをまだ持てない世代や感じられない子へも届けたいと思い、こんなおばさんからでよければ「年をとると人はどんどん図太く強くなるよ」と伝えたくこの曲を作りました。DONのトラックなのでだいぶレイドバックしてます。
多分、大人になってからのストレスをそのまま受けたら敏感で繊細だった頃の自分はぺしゃんこにつぶれてしまうかもしれない。でも、そのまま受け入れなくてもいいんだ、受け流していくこともできるんだというのを学び始めたおとなの余裕といいますか…おとなのずるさ、大きさ、おおらかさ、強さというのにフォーカスしてここに込めました。真面目すぎず、でもまっすぐに。風当たりは強くても、それを全て受けることなんてない。叩かれたぶんだけ、強くなります。鉄のように。
6. to be continued
これを書いたのは最初は、私以外のだれかのために。今とてもつらい状況にいて、こんな思いをするくらいなら、こんなところから離れてしまいたい、今自分がやっていることもやめてしまいたい、それくらい思い詰めてしまっているその誰かが、元気になるような曲を書きたくて書きました。けどだんだんとその受け手は私とかぶる。私もすぐに思い詰める。私もすぐにやめてしまおうかなんて弱音をはく。
何かを始めることは比較的簡単だ。そのとっかかりの気持ちと行動力さえあれば、人は何かを始められる。けれど難しいのは続けること。自分の尊厳を失うくらいの事態に陥ったとしても、自分の存在意義を疑うぐらい自信を失ったとしても、それを続けるというのは、余程信念があって忍耐力のある立派な人間でないとできないのではないかとすら思える。だからこの曲は、何かをやめてしまおうかなんて心が疲れきっているだれかのために、その人がやめないでもう少しこのまま続けることができるように、そう祈りをこめた曲。何かをやめることも比較的簡単かもしれないが、やめてしまったらその後自分はやめなかったかもしれない自分の重みに耐えることができるだろうか。
別に、いやなのに続けろっていってるわけではないんです。ただ、本当はやめたくないのに、状況や風評や流れのせいでやめることなんてない、そう私は思います。トラックはWolfJunkによる制作。
7. 恋初め
DON CORLEON制作トラックによる一曲。DONの真骨頂ともいえるのが秋から冬を思わせるこの色合いのバラードでしょう。しかもラブ・バラードでしょう!ラブ!まずい、私はしばらくラブというものから遠ざかっている気がする!ので、あえてこの曲はかつて在りし日の自分が抱いたことのある自分の成長の一つの時期“junction which came to me as I met my first LOVE,”というイメージで書きました。つまり過去の話です。オムニバスです。なんのこっちゃ。
ひねくれた子どもが、いつしか芋虫が脱皮して蝶になるように、自分の醜さや弱さよりも美しさや強さを見つめて成長することによって やがて立派なひねくれた大人… いや、立派な自立した大人になることができる。そしてそのストーリーに欠かせないのは、自分以外の誰かが自分を信じてくれる、認めてくれるのだという確固たる自信から得られる勇気。これは残念なことに、家族じゃあダメなんですね。家族はやっぱり家族なので、信じてくれて 認めてくれて 愛してくれて当たり前でしょ!という傲慢が私のような立派なおばさんの中にもがっつり根付いているため、こういう場合必要なのは異性の愛になります。ただ、初恋というものは淡くはかないもので…。たくさん一緒に歩んだ、たくさん物を教えてくれたその人がいつか、思い出になった頃に後ろで流れてる曲。そんなイメージです。
8. MOVE
実はこのアルバムに入ってる曲達のもつメッセージはなかなか一貫している、と楽曲解説を書きながらそう思えてきました。要するに私たちは怠惰に成り始めているのかもしれないです。指先で物事を知り尽くしたような気になって、自分の足で動いたり 自分の言葉を発したり 自分の目で見て自分の頭で悩んでいるだろうか?自分はちゃんと、行動しているだろうか?そう疑う私は、実はここ最近はひどく実践主義。10代のころはアイデアを探しまわり、哲学やスピリチュアルに何か答えが書いてあるのかもしれないと読みあさっていたけれど、そうやって集めた知識や考え方も自分の中で消化して前向きな行動に移さねば何の意味もない。知ったからには、実践しなくては。道があるからには、歩かなくては。山があるなら、のぼらなくては。否応なく過ぎ去って行く時間のなかで、決して失うことのできないのは自分だけの貴重な毎日の選択がもつかけがえのない価値。それ以外に価値のあるものなんて、実はそんなにないだろう。と信じる私は 自分の軸とは何か、自分の最も大切な核のようなものとは一体どのようなものか、を日々自分自身に問いかけつつ、それを見つけたと感じたときはそれ以外のものをキレイに一度取り払ってもそこにエネルギーを集約させたいと考えます。自分らしく、より活き活きと生きたもん勝ち。それしかないと思われます。
9. SOLA
梅雨が終わって夏がくると、いつもどうしてか何かすばらしいことが起きるような気がしていた。
夏休みはただのモラトリアムじゃなくて、そこで何かすごい体験や冒険が待っているように思えた。
太陽の光と、深くて濃い緑の色、いろんなものの匂いや音がごちゃまぜになって自分の世界を改めて七色に彩ってくれる、
そんな夏という季節をウェルカム!できるような夏讃歌。を、作ってみたかったので作ってみました。
10. Back to U feat.TEE
TEEくんを招いて作らせてもらったのは、TEEくんのもつどこかカリブ海の空気というかジャマイカ人のような大きくてあったかい雰囲気をぜひ曲にプラスしていただきたい、と考えたからなのですが、一緒に曲を作ってみるとTEEくんは想像以上にジャマイカ風味の濃いお人で、とっても面白い人柄でもあるので最初はこの曲がバラードになるのかダンスチューンになるのかすら分からない深みを事態は見せておりました。話してみると、ほぼ同時期にカナダのトロントのジャマイカンコミュニティーにいたことがわかり、その当時の話やそこに至るまでの話をなんとなくするうちに出てきた曲のテーマが、この曲のそれです。何かに挑戦するために育った街、暮らした場所を遠く離れて旅立っていく恋人と、それを見送る自分の物語。みんなもしかしたら一度くらいは体験したことがあるかもしれない、自分か自分の大切な人の旅立ちに伴う、しばしの別れ。目の前からいなくなっても、きっと決して消えないであろうその人の笑顔や話す声。くれるアドバイスや言いそうな台詞。別々の場所に行っても消えない、二人の絆がテーマです。
11.100年の明日
『TOP JUNCTION』のテーマは「日々、これ、JUNCTION」。つまり何気ない一日の何気ない言葉や行動が、自分のいまを形取り、自分の明日へと向かわせる。自分が1年後、3年後、5年後、10年後にどんな自分になっているかの分かれ道は日々訪れており、その分岐点の真ん中に私は毎日浸っている。そんなアイデアの先駆けとなるような一曲がこの曲。トラックはMi3制作。とてつもなく広くて大きな世界を感じたトラックなので、「ヤマトナデシコ」とは真逆のベクトルで進めたいと思い、ずいぶんと大雑把なリリックになりました。100年先の世界のことなんて、本来ならそう気にしていないかもしれなくて 本来なら自分は今現在の自分にフォーカスするべき。けれどあえて、100年のとある一日にも、例えば私が切磋琢磨した何かの残り香のようなものがあるとするならば、私はただ今日を生きる以上に自分の理想を見失わない努力ができるように思う。自分のためだけでなく、自分以外の誰かのためにならもっと成熟したまともな暮らしが送れるようにも思う。この曲は私が、私の理想と現実のはざまでゆらいでいることを表しています。でもそれが、私が私としてここにいる醍醐味であるとも感じています。
12. 霧が晴れるまで
この霧のせいで、私にはこれからどこへ向かえばいいか分からない。すすみたくとも、迷ってしまう。すすみにくくて、悩んでしまう。そんなあなたに聞いてみたい。その霧って、誰がかけたと思う?それは、自然発生的なもの、それとも?私の場合で恐縮ですが、私の脳内の霧が増殖してこれからどこに行けばいいのかも分からないくらい視界が悪くなってしまうとき、それは大抵私自身の内面に端を発するものだったりします。いや、確かに時期もあるかもしれない。運やタイミングもあるでしょう。けれども実際にはそれを悪く取るか良く取るかは、自分にゆだねられている。それなのに、悪いほうにばかり考えて事態をより難しくしてしまうのは、他でもない自分なのではないかと。私の場合は大抵がそうなので、この曲ではそんな事態に陥ってしまいがちな考え込む質のもがきあがく人へ向けて、その霧を晴らしてみせよう一緒に、と歌いかけています。
13. JUNCTION
アルバム最後に書き足した曲。ジャンクションというかモラトリアムといったほうがいいんじゃないかという内容に書いてるうちになっちゃった訳ですが、とはいえこのアルバムの締めくくりにふさわしい雰囲気だけはなんとなく持ってそうなのでこの場所にぱちっと入れてみました。ジャンクションは、そこを過ぎてみると実はあれ以上の選択なんてなかったんではないかと思えるくらいがきっといい。そう思うためには、選んだ道を後悔しないように精一杯力を尽くすのがいい。すすんだかもしれない他の道のことなんて頭をちらつくこともないくらいに、今の自分のいる場所を、いまの自分を愛せるほうがいい。生きてりゃ自然にそうなるわけではないので、それは失敗も反省もあるでしょう。けれど人生は前にしかすすまない。過ぎたことを失敗だっただのぐちぐちと言うのは大嫌い。失敗した理由を書き連ねるより、どうしたら成功するのかを考えるほうに時間を費やしたい。後ろに向かってすすんでいく生き方よりも、どうにか前へ前へと向かう生き方をしたい。そのための、ジャンクション。前を向いて生きていける、新しい自分に生まれ変わるための分岐点。それが今日なのだと意識してみること。それが、この曲のもくろみの一つでもあります。