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19歳シンガーソングライター『みさき』、TikTokから飛び出して1年弱で辿り着いたCD発売

2022.09.14
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音楽
インタビュー
9月14日に1stEP『たんぽぽ』をリリースした、シンガーソングライターのみさきさん。
現在は、エイベックスが立ち上げるクリエイターエージェンシー「muchoo」(https://avex.jp/muchoo/)に在籍されていて、このavex portalコラムには昨年12月、「いろはにほへと」というプロジェクトの中で小説家の真下みことさんとのユニット「茜さす日に嘘を隠して」として以来、単独では初の登場となります。

顔出しなしで、切なく儚い歌声を披露し続けている彼女ですが、このEPの1曲目に収録されている新曲「Believe」はアニメ『キングダム』のEDテーマ曲ということで、一転して力強い楽曲に。この1枚の中でもいろんな顔を見せてくれている彼女に、楽曲のことを中心に、いろいろと伺いました!


全てが新しいチャレンジだった新曲「Believe」
 
 

──それではインタビューを……ん? すごく緊張してませんか(笑)。
 
みさき メッチャ緊張してます。こういう形でのインタビューは初めてなので。
 
──気楽にしてください(笑)。ではさっそく、6曲入りのEP『たんぽぽ』について伺いたいと思います。1曲目の「Believe」はアニメ『キングダム』第4シリーズ第2クールEDテーマ曲ということでもあり、バンドサウンドに乗って力強い歌詞が歌われています。これまでの作風とはかなり違いますよね?
 
みさき 全然違いますね。歌詞も自分が普段書くような歌詞では全然なくて、「己」とか「俺」みたいな男性っぽい言葉が自分の歌詞で出てくると思ってなかったので、ビックリでした。それに、その歌詞を歌いこなせるかなという不安もちょっとありました。

──作詞には時間がかかりましたか?
 
みさき アニメを観ていたら主人公の信の生き方とかが一瞬で入ってきたんですね。それで、けっこう早く書けました。
 
──そうなんですか。自分でも意外だったんじゃないですか?
 
みさき そうですね。普段、曲を作る時は実体験を元に歌詞にすることがほとんどなので、他の作品から感じたことを歌にするのは初めてだったんです。そこが難しくはありました。
 
──信の生き方を歌詞にする時に、柱にしようと思ったのはどういう部分だったんですか?
 


みさき 信はまっすぐ生きていて、常に前を見ている印象を受けたので「振り向くな」というフレーズが最初に出てきて、そこから作っていったという感じでした。

──また、この曲はヒヨリノアメのAKIさんが作曲、編曲と演奏もヒヨリノアメですよね。ここもこれまでとかなり違う部分ですが。

みさき 実際、ヒヨリノアメさんのレコーディングを見て、普段見られないような場面だったので、カッコいいなと思って。バンドは普段けっこう聴くんですけど、自分ではできないので、貴重な体験をさせてもらいました。
 
──そのサウンドに乗せて、いつもとは違うタイプの詞を歌ったわけですよね。
 
みさき 自分で作れるような曲調じゃないので、歌詞の乗せ方とかも違いました。力強く歌うという点は一番気をつけました。いつもは柔らかくきれいに言葉を出したいと思っているので、力強く歌うというのも新鮮でした。
 
──スムーズにできましたか?
 
みさき ちゃんと表現できてるのか分からなくて。でも歌詞に感情を込めながらというか、信になりきって歌ってみることを意識しました。
 
──いろんな面でみさきさんの新たな一面が出た曲だと思うんですが、今後もこういうタイプのものをやってみたいという思いになりましたか?
 
みさき そうですね。『キングダム』を見て私のことを知ってくれた人たちが、「すごくアニメに合ってる」と言ってくれたんですよ。しかも、「声にセクシーさもあるし儚さもある」みたいなコメントもあって、こういう系もいけるのかなと思って、また機会があればやってみたいなと思うようになりました。


──続く2曲目「気づいたら」はまた、本来のみさきさんの世界ですよね。2021年6月2日にリリースされた1stシングルで、その意味でも思い入れの深い楽曲なのでは?
 
みさき やっぱりこの1stシングルが自分を変えてくれたというか、また別の世界に一歩踏み出せた曲なので、一番好きな曲ですし、歌ってても一番楽しいです。
 
──この曲はいつ頃作られたものなんですか?
 
みさき リリースの少し前の時期なんですけど、最初からシングルのために作ったというわけではなくて、最初にサビだけTikTokに上げてみて、そこから「曲を出してみよう」ということになってフルバージョンを書きました。
 
──そうなんですね。
 
みさき この曲も実体験というか、その頃に好きな人がいたんです。その人に気づいてほしくてサビだけを作ってTikTokに上げたんですよ。本当にその時の気持ちをそのまま歌詞にして作りました。
 
──基本的に、「今、こう感じてる!」という気持ちを詞にすることが多いんですか?
 
みさき 最近は昔の経験を引っ張ってきて作ることがほとんどなんですけど、以前は今あったことをすぐ歌にしたくなって、歌詞を書いてました。
 
──なるほど。いずれにしても「自分の経験」をベースにしているわけですね。
 
みさき そうですね。自分の経験したことだからより深く書けるし、共感してくれる人も多いかなと思って。
 
──ただ、もっとたくさん曲を作らないといけなくなったら……。
 
みさき そうなったら、実体験じゃ足りなくなりますよね(笑)。その時は、周りの友達から受けた恋愛相談とかを元に作ってみたりしたいなと思ってます。
 
──ゼロから創作する、ということは考えてない?
 
みさき そうですね。何か元の話があって、そこから組み立てていくというのが私には向いてるのかなと思ってます。
 
──昨年、小説家の真下みことさんとのプロジェクト「茜さす日に嘘を隠して(アカウソ)」に参加されていましたよね。真下さんのような小説家は、ゼロから創作する人じゃないですか。そういう人と接して感じたことはありましたか?

みさき 想像力がすごいなとまず思いました。あの話の組み立て方は、自分ではまずできないので。普段は小説をあまり読んでこなかったので、小説を読んで、その世界を歌にしてみるというのもいいかなと思うきっかけにもなりました。


思い出したくない過去も、歌う時は思い出さないと……!?




──テーマとしてはつながっている気がするんですが、3曲目の「言えない想い(feat.珀)」でフィーチャリングされている珀さんは、『キングダム』などの作品から曲を生み出すタイプのアーティストですよね。そこの違いもまた面白いというか。
 
みさき 私は自分の実体験だからこそ、その時の気持ちを思い出しながら歌うっていうやり方ですけど、珀さんは作品の主人公やキャラクターになりきって歌うという部分で、全然違うとは思います。この「言えない想い(feat.珀)」の歌詞は私が全部書いたんですけど、珀さんは自分が書いたかのように気持ちを入れてくださって、迫力がすごかったですね。

──そこのタイプの違いも面白いですね。この「言えない想い(feat.珀)」は、どういう形で制作されたんですか?
 
みさき まず珀さんがフルのデモを作って送ってくださって、それに私が歌詞をつけて、珀さんに確認してもらったという感じです。歌割はスタッフさんが決めてくださったんですけど、お互いのいいところがうまく出る形にしてもらえたなと思います。Cメロとかは珀さんのよさがすごく出るところで、たぶん私が歌ってもあんな完成度にならなかったと思うんですよ。そういう感じで、すごくいい形になっていると思います。

──レコーディングは一緒にされたんですか?
 
みさき はい。珀さんはレコーディングさえもライブみたいというか、手の動きのつけ方もすごくて、見習いたいなと思いました。いろいろ勉強になりました。
 

──4曲目は「私じゃなかった?」。2021年12月10日リリースの3rdシングルということですが、切ない歌ですよね。
 
みさき これも実体験から作った歌ですね。うれしい時とかよりも、自分が落ち込んでる時の方が歌を書きたくなるんですよ。「歌にしてやるー!」という気持ちで書いてます。だから彼とケンカした時とかが一番曲ができるんです(笑)。
 
──歌にして発散するみたいな感じ?
 
みさき そうなんです(笑)。だから悲しい曲が多かったかなと思います。今の自分を歌にしてるみたいな感じなので。これからは、それだけじゃダメなので、もっと想像を膨らませながら作っていかないといけないですね。
 
──では「私じゃなかった?」を作った時も、切ない体験をしたわけですね。
 
みさき はい。過去で一番の失恋かなって思います。
 
──具体的に詳しくお聞きするのは遠慮しておきますが……この歌詞の中で一番、気持ちが入るのはどの部分ですか?
 


みさき 「でも君を幸せにできるのは私じゃない。私じゃだめだから…」というところですね。自分が歌ってるのを聴いてても悲しくなっちゃうぐらい、気持ちが入っちゃいますね。「もうこの時のことは思い出さない」って決めてるんですけど(笑)。

──でも、これからこの曲を歌うことも増えるでしょうし、それに限らず悲しかった時に作った歌を歌う機会はたくさんありますよね?
 
みさき 難しいですね(笑)。歌詞には感情を乗せなきゃいけないから、やっぱり思い出さないといけないですよね……。
 
──そうなりますよね(笑)。
 
みさき 思い出したくない過去なんですけど、歌う時だけは一生懸命思い出しながら歌うのが大事ですね、やっぱり(笑)。
 
──「もう歌にしたから」と割り切れるものでもないということですね?
 
みさき あー……割り切れてはいないですね(笑)。
 
──だから、もしこの先ライブをやって、例えば10曲歌ったりしたら……。
 
みさき 悲しかったりうれしかったり、感情がグチャグチャになっちゃいますね(笑)。でも、やっぱり自分が体験したことだからこそ気持ちがより入れられるので、聴いてる人たちからしたら、割り切ってただ歌うよりかは歌詞の意味が伝わるのかなと思います。そのためには思い出さないといけないですね(笑)。


「この1年あまりで、いろんな経験をさせてもらいました」



──頑張ってください(笑)。5曲目は上野大樹さんのプロデュースによる「まだ会えてないのに(Prod.上野大樹)」(2022年6月17日リリース、4thシングル)ですね。歌詞は上野さんとの共作になっていますが。

みさき この歌詞は、まず私が「こういうテーマにしたい」というのを伝えて、歌の形を気にせず、作文みたいな形で書いて、上野さんに送ったんです。それを元に上野さんが曲を作って、その曲に乗せて上野さんが新しく歌詞を書いてくれたんです。その歌詞と、私が「もっとこうしたい」というところを組み合わせて、完成しました。最終的には私が書いちゃった部分が多くなったんですけど、「上野さんのこのフレーズは残したい」と思ったところは残してます。
 
──上野さんらしさが出ている部分ということですか?
 
みさき そうですね。自分じゃ出てこないかなという言葉とかでした。私は難しい言葉とか使わずに、ただあったこととかをまっすぐに書く方なんですけど、上野さんは表現の仕方がすごく素敵なので。
 
──造語が得意だったりする人ですからね。そういう部分は、またみさきさんと大きく違うところですね。1stシングルから今回の新曲まで1年強の間に、いろんなアーティストといろんな経験をしてますね。
 
みさき そうなんです。ただ、いろんなことをやっているので、「みさき」というイメージが今はどう思われているのか、というのは気になります。私はもともと、恋愛をずっと歌っていきたいと思っていて、まさか『キングダム』の楽曲をやるとは思っていなかったし、アップテンポの曲も絶対やらないんだろうと思ってたんです。「気づいたら」みたいな曲が一番「みさき」らしいスタイルだと思うので、こういう曲を増やしていきたいという気持ちはあります。
 
──とは思いつつ、この1年あまりのいろいろな経験で、自分の幅が広がっている感じも強いのでは?
 


みさき そうですね。いろんなことに挑戦させてもらってるので、すごくいい経験だと思ってます。たまには気分転換で、恋愛から離れたテーマの曲を書いてみるのもありだなと思うようにもなりました。
 
──上野さんの曲についての印象は?

みさき 上野さんには、上野さんらしい完成された世界観があると思っていて、私が歌ったらどうなるんだろう?って感じでした。
 
──ただ、その「上野さんの曲」にみさきさんの歌声が乗っかっている面白さ、みたいなものはありますよね。
 
みさき そうですね。普段自分が作るのとは全然違う曲なので、自分で聴いてても楽しいなって思います。
 
──ちなみに、自分で作曲する時はどういうやり方なんですか?
 
みさき ギターでコードを決めて、「ラララ~」でメロディーを作ってから、最後に歌詞をつけます。ただ、「私じゃなかった?」とかは歌詞とメロディーが一緒にできたところもあります。
 
──ご自分で作る時はそういう感じなんですね。あと「まだ会えてないのに(Prod.上野大樹)」は、アレンジが深根さんですね。

みさき 深根さんは「アレンジをやったのは初めて」ってことだったんですけど、初めてなのにここまでのクオリティーで、すごいなって。深根さんもそうですけど、ここまでいろんな人と関わりが持てると思ってなかったので、いいつながりが持ててうれしいです。
 

──最後の6曲目が「僕はいつでも」ですね。2021年9月22日リリースの2ndシングルで、カンコ―委員会5期生オーディション テーマ曲ということですが。
 
みさき 自分が落ち込んでる時にかけてもらった、元気の出る言葉たちを歌詞にしました。
 
──ではこれも、ある意味で実体験が元になっているわけですね。作曲・編曲がイノイタルさんで、「Believe」とはまた違った疾走感のある楽曲ですね。歌うにあたって意識したことは?
 
みさき 歌詞に「強がらなくてもいい」とか「そう、大丈夫だよ」という言葉があって、これは自分がかけてもらった言葉でもあるんですけど、自分も他の人にかけられるようになりたいので、そういうことをイメージしながら歌いました。


これからの活動で、一番やってみたいこととは?



──この6曲がまとまったEPのタイトルが『たんぽぽ』。このタイトルの意味は?
 
みさき たんぽぽって、道端に咲いてるのを偶然見かけるじゃないですか。私の曲にも偶然出会ってもらえたらいいなという気持ちを込めて、決めました。
 
──たんぽぽは好きなんですか?
 
みさき 綿毛をフーッとするのは好きです。今も見かけたらやっちゃいます(笑)。
 
──これがEPとして、CDという形になるわけですが。
 
みさき 今までリリースはしてましたけど、「物」になってなかったので、CDになって聴いてくれる人の手元に届くと思うと、鳥肌が立ちますね(笑)。聴いてくれる人にとっても、CDというかたちで聴くのは、たぶん全然違うと思うんですよね。だから感想が楽しみです。

──さて、今後の活動については?
 
みさき ファンの方と実際に会ってみたいんですよね。ライブもしたいですし、CDを手渡ししたいという気持ちもあるんですよ。ただ、顔出ししてないので難しいんですけど……。
 
──そうですよね(笑)。
 


みさき 今は、ライブに来てくれた方にだけは見せてもいいかなと思ってます。撮影は絶対ナシで、その場所だけでとどめておいてもらえるなら。
 
マネージャー そうなんだ!(笑)
 
──えー、そこは協議していただくということで(笑)。聴いてくれる人の目の前で歌いたいという気持ちが強くなったということですね?
 
みさき そうですね。スマホ越しだと雰囲気も違ってくるので、やっぱり生で届けたいと思って。理想としては、バンドメンバーがいて、マイク1本で歌えたらいいなと思います。
 
──そこはバンドなんですね。
 
みさき ピアノだけとかの方が、私の歌声が映えるのかもしれないですけど、1回だけでもバンドと一緒に、というのをやってみたくて。憧れですね。
 
──それは「Believe」のような曲じゃなくても、ということですか?
 
みさき はい。私の曲全部、バンド・バージョンにしたらどうなるのかなと思って。あと、バンドだとずーっとただ立って歌っているわけにもいかないので、パフォーマンスを覚えなきゃとかも思ってて……。
 
──それもまた楽しみですね。実現できるかどうかも含めて、楽しみにしています。あとこのEPとは別に、8月24日に6thシングル「生まれ変わっても」がリリースされました。こちらについては?
 

みさき もう長く付き合ってるカップルを描いた曲で、同棲とか結婚とかも考えてはいるんですけど、長く付き合っていると「好き」という気持ちよりも家族みたいな感じになってくるじゃないですか。でもそこで、「本当にこの人は私にとって大切な人なんだ」っていう気持ちを思い出してほしいという気持ちを込めた歌詞にしました。
 
──それは創作多めな感じで書いたんですか?
 
みさき 長く付き合っているカップルの気持ちを想像しながら書いたんです。

──なるほど!では最後なんですが、これからの自分に一番期待してほしいことは?
 
みさき いろんな人がもっと共感できるような曲をもっと作っていくので、これからも成長していく姿を見ていってほしいです。
 
──期待してます! ありがとうございました!
 
撮影 長谷英史



1stEP『たんぽぽ』
2022.09.14 ON SALE


 


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公式サイト:https://avex.jp/muchoo/
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高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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