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【澤野弘之楽曲プロデュースでデビューのNatumi.】ミステリアスな素顔を紐解く

2022.06.01
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音楽
インタビュー
シングル「pARTs」でメジャーデビューを果たしたシンガー、Natumi.さん。アニメが好きな彼女にとって、デビュー曲がTVアニメ「境界戦機」第二部のエンディングテーマとなり、また楽曲プロデュースは以前から大ファンだった澤野弘之さんということで、デビューからいくつもの夢が叶った形になりました。そんな彼女に、楽曲のことやMV撮影のこと、これまでの経歴などを伺いました!


デビュー曲がアニメのタイアップ……「これは現実なのかな?」



──「pARTs」はNatumi.さんにとってメジャーデビュー曲であり、「境界戦機」第二部のエンディングテーマにもなっています。最初、このお話はセットで聞いたんですか?
 
Natumi. 去年の夏だったんですけど、お話があるということで事務所に呼ばれたら「メジャーデビューが決まりました」「タイアップ曲です」「『境界戦機』というアニメです」「澤野弘之さんの楽曲プロデュースです」って一度に聞かされました(笑)。
 
──その時点では、「境界戦機」第一部はまだ放送されていませんよね。そこで知った感じですか?

Natumi. そのお話と同時に、1話の特別映像と、公式サイトの情報を見せていただいて。それぐらいしかなかったですね。
 
──もともとアニメがお好きだと伺っています。だから、デビュー、アニメのタイアップ、そして澤野さんと、いっぺんにドカン!と来ちゃった感じですね。
 
Natumi. そうですね(笑)。一応、その前に澤野さんに送るデモを作ってはいて、アンケートのようなものをつけてお送りしてはいました。でもそこから特に何もなかったので、「あー、話はなくなったのかな?」みたいに思っていたら、急にそのお話が来た感じでした。最初は本当に「これは現実なのかな?」みたいに思って、プチパニックになりました(笑)。その後、徐々に実感が湧いてくる感じでしたね。

──では、最初に曲を受け取った時はどんな印象でしたか?
 
Natumi. お話をいただいてから1~2週間後に、歌詞がまだついてない、打ち込みのデータをいただきました。私自身が澤野さんの1ファンだったので、いただいた時は「あ、澤野さんの曲だ……」と思って光栄でうれしくて、聴きながら一人でニヤニヤしちゃいました(笑)。聴いてるだけでアニメのエンディングの映像が浮かぶような、スケールの大きい楽曲で、“澤野節”みたいなものが感じられる壮大な楽曲でした。

──歌詞については?
 
Natumi. 作詞のcAnON.さんもよく澤野さんとタッグを組まれていて、私も好きだったんですが、今回の歌詞もちょっと抽象的で、よく読んでみるとストーリー性が感じられる詞になっていて、いいなと思いました。私はその時点では番組の情報は少ししかいただいてなかったんですけど、そこに通じる言葉があったりする一方で、アニメを見ていない人にもいろいろと刺さるものになってるなと思いました。
 
──歌詞も曲も、前半で抑えていたものがサビで一気に解放される感じになっていると思うんですが、ご自分で歌うにあたっては、どういう表現を心がけましたか?
 


Natumi. 私自身は、曲にどんどん引きつけられて、気づいたら終わっているような、「あ、また聴きたいな」と思ってもらえるような曲にしたいと思っていたので、声色や抑揚での表現方法で、声から伝わってくるものを意識してレコーディングをさせていただきました。
 
──レコーディング自体はいかがでしたか?

Natumi. レコーディングの経験自体がほとんどなかったですね。レコーディング形式のオーディションと、デモテープを作る時に少しやった程度で。もちろん自分の作品としてのレコーディングは生まれて初めてなので、すっごく緊張しました。すごいプレッシャーの中、自分の出せる精一杯を出そうと思って頑張りました。
 
──その中で特に気をつけたことは?
 
Natumi. レコーディングの時にベストの自分を出せるようにということですね。当時はまだちょっと波があって、事前に澤野さんに送るために録ったキーチェック用のレコーディングでは不調だったこともあったので、「本Recの時にこういうことがないようにしよう」と、特に思っていました。楽曲も毎日繰り返し聴いて、こうしたい、こう歌いたいということを突き詰めて考えてはいたんですけど、当日は澤野さんも立ち会われるので緊張で歌えないというのが一番の不安要素だったので、加湿器を買ったり、前日にはマヌカハニーを舐めたりして、ノドの調子にはすごく気を使っていました。

──実際のレコーディングではどうでしたか?
 
Natumi. 自分にとってはギリギリなところの低音があって、調子のいい時は出るという感じだったんですよ。当日、メロディーラインを変えていただいたりもしたんですけど、澤野さんに「息を多めで歌ってみて」とディレクションしていただいたりしました。それから「サビ部分はもっと強めで」とか。あとは、私がやっぱりすごく緊張していたので、いろいろ雑談したりもしてくださって。
 
──ただでさえデビュー作なのに、憧れの方との作業だから、余計に緊張しますよね。
 
Natumi. そうなんです(笑)。澤野さんの作品の中で、私の声がその一部になると思うと緊張が止まらなくて。でもベストを尽くさないといけないので、「練習してきたんだから、私はできる!」って切り替えて挑みました。ベストは尽くせたと思います。
 

初のMV撮影は……「実はすごく頑張りました!」



──実際にそのエンディングがオンエアされているわけですが、自分で見てどんな気持ちでしたか?
 
Natumi. もう言葉にできないぐらいうれしくて。本当に光栄だなと思うのと、素敵なエンディングのアニメーションを作っていただいて、楽曲も映像も素敵なので、幸せだなと思って。見ていて、本当にうれしかったです。

──自分の歌が映像付きで、好きなアニメの中でテレビから流れてくるというのも、普通はできない体験ですよね。
 
Natumi. そうですよね。今でも「夢なんじゃないかな」って時々思うぐらいで。いきなりいろいろ叶いすぎちゃって、幸せ者すぎて。「いいのかな?」と思うぐらいでした。
 
──エンディングではちょうどサビのところで鯉のぼりの場面になるのがいいですよね。
 
Natumi. はい。優しさがにじみ出ていて、ジンワリくる感じがすごく好きですね。
 
──ただ「境界戦機」って、作品自体はけっこうハードなストーリーですよね。
 
Natumi. そうなんです。日本が支配されている近未来が舞台で、自分たちの国を取り戻すために戦うというお話で。人間性に深く問いかけくるようなテーマなんですけど、その中で優しさもあって、心に深く刺さる物語だと思います。私はもともとファンタジー系の戦闘もののアニメが好きで、「アルドノア・ゼロ」(2014~15年に放送)という作品がすごく好きだったんですよ。なので「境界戦機」も戦闘シーンとかがすごく好きで、自分の好みから言ってもバッチリでした(笑)。
 
──反響はいかがですか?
 
Natumi. この前のイベントで、アニメから私を知ったという方が見にきてくださったというのがありました。また、私はもともと広島出身なんですけど、以前に広島で応援してくださっていた方がまた来てくださったりしたのもうれしかったですね。ツイッターやインスタで反応があったり、YouTubeでMVの再生回数が増えていたりするのを確認すると、すごくうれしいです。


──ちょうど話が出たところで、「pARTs」のMVは切り立った崖の上で演出も印象的ですが、ロケ地はどこだったんですか?
 
Natumi. 千葉県銚子市の屏風ヶ浦というところです。
 
──あ、そうなんですね。てっきりもっと遠くかと思ってました。
 
Natumi. ですよね!(笑) 海外なんじゃないかと思うようなロケーションで。すごく日本離れした景色の中で撮影させていただきました。曲のスケール感にピッタリだし、アニメの第一部が崖のシーンで終わるんですよ。主人公が崖から転落して、海に落ちるというシーンがあって。そこにもちょっとつながる部分があって。

──なるほど。
 
Natumi. 撮影が1月だったんですけど、前日は天気がよくなくて、翌日にはトンガ沖で海底火山が噴火した影響で立ち入りできなくなっていたらしくて、偶然その日だけが撮影できる状況でした。すごくタイミングがよかったです。
 
──運にも恵まれたんですね。撮影はスムーズにいきましたか?



Natumi. MV撮影も初めてのことだったので表現の仕方がわからず、それもあってスタッフの方がダンスの先生を当日のロケにも呼んでくださって、見せ方や手の振り方、体の動かし方とかを曲に合わせてその場でレッスンしてくださったんですね。そのおかげですごく楽しく進めることができました。ただ、寒かったのが大変だったぐらいで(笑)。

──1月に海のすぐそばの崖ですよね。そりゃ極寒じゃないですか!

Natumi. すごく高いところで風もあって、寒さと戦いながら撮りました(笑)。
 
──それが分かってもう一度見ると、全然見え方が変わりそうですね。
 
Natumi. しかもレースみたいな衣装だったので、直前までたくさん着込んで、「はい、撮りまーす!」って言われたら脱いで、みたいな。次は暖かいところがいいです(笑)。


いずれは日本武道館でワンマンライブができるアーティストに!



──カップリング曲の「Activation」はどんな曲でしょう?
 
Natumi. 「pARTs」よりはリズム感があるんですけど、アップテンポというほどではなくて、後ろノリな曲調です。歌詞は恋愛で、好きな人に夢中になっちゃって依存するみたいな内容です。メロディー自体も、歌詞に合わせて中毒性がある楽曲になってます。「pARTs」とはまた違ったNatumi.が見られますね。

──「pARTs」と合わせて楽しめそうですね。
 
Natumi. 私は、声色から歌詞が伝わるような歌い方をしたいと思っているのもあるんですけど、この曲はリズム感があって後ろノリの曲でもあるので、伝わるか伝わらないかぐらいの、「よく聴いたらそう聞こえるかもしれない」ぐらいのラインを目指して歌わせていただきました。パッと聴いた感じだとラブソングだとは分からないというか、深く聴いてもらえると若干感じ取ってもらえるかも……ぐらいな感じで(笑)。
 
──cAnON.さんの詞は、英語と日本語がかなり混ざり合ってますよね。
 
Natumi. そうなんですよ。恥ずかしながら英語が苦手で、高校の時は赤点取るぐらいのレベルぐらいだったんですけど(笑)、澤野さんの楽曲が好きでよく歌っていたというのもあって、英語の歌詞が来るだろうなとは思っていました。できる限りイントネーションとかは気をつけて歌いたいなとは思ってたんですが、澤野さんはそこも考慮してくださったのか、「そこまでネイティブっぽさは求めてないけど、楽曲に合った感じでグルーブ感を出してほしい」と言ってくださって。あと、cAnON.さんからは「pARTs」の英語の歌詞に「こう発音するといいよ」というのをカタカナで書き添えたものを送っていただきました。

──それはすごいですね。
 
Natumi. そのおかげもあって、乗り切れました。英語が堪能な方からすると「どうかな?」という部分もあると思うんですけど、今できるベストは出せたかなと思います。英語はこれからも頑張りたいと思ってます(笑)。
 
──さて、プロフィールを拝見すると、幼少期から地元の広島で活動されていたんですね。
 


Natumi. そうですね。いろんなステージに立ったりとか、イベントで歌わせていただいたりとか、歌のコンテストみたいなのに出演してました。テレビに出させてもらったり、スタジアムで国歌斉唱をさせていただいたこともあります。
 
──高3の時にそう思ったのは、何かきっかけがあったんですか?
 
Natumi. 実は怪我をして、高1から高2まで、1年ぐらい歌を歌えなかった時期があったんです。正直、歌を続けるかどうかも悩んでいたんですけど、また歌えるようになって実家で歌ってみた時にすごく楽しくて、やっぱり自分が今まで活動してきた中で、歌というものがかけがえのないものになっていたことに気がついて、「期限を決めて頑張ってみよう」と思ったのが高3の時でした。

──そこから頑張って、上京につながった?
 
Natumi. はい。2020年に東京オリンピックが決まってたじゃないですか。それが終わったタイミングで上京しようと思ったんですけど、金銭面で両親に迷惑をかけたくなかったので、それまでは地元でガッツリ仕事をしながら、土日はイベントに出てという活動をして上京資金を貯めて上京しました。
 
──憧れたり目標にしているアーティストは?
 
Natumi. ステージに立って歌いたいというのがあったので、LiSAさんのステージングがものすごく魅力的で、憧れてます。あとAimerさんは、ライブを見に行かせていただいた時に歌の表現が深くていいなあと思いました。
 
──東京で夢が叶って、このたびメジャーデビューとなっていろんな夢も一気に叶ったわけですが、ここからはどうしていきたいですか?
 
Natumi. すごく素敵なデビューをさせていただいてうれしいんですけど、アーティストとしてはスタートラインなので、これから自分の夢に向かって頑張っていくと同時に、たくさんの人に歌を届けていきたいなと思ってます。いずれは日本武道館でワンマンライブができるようなアーティストになるというのが今の目標です。
 
──これから多くの人に知ってもらう上で、一番注目してほしいのはどういう点ですか?
 
Natumi. やっぱり生での歌唱ですね。歌声というのがNatumi.を構成する一番の強みだと思うので、そこを一番見ていただきたいなと思ってます。ライブで自分の音楽を表現した時に、見てくださった方が「あれは誰?」となって聴いてくれるきっかけになればと思ってます。
 
──これからが楽しみですね。ありがとうございました!
 
撮影 長谷英史




「pARTs」
2022.6.1.ON SALE

アニメ『境界戦機』第二部エンディングテーマ

 
 

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高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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