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【Yamato】バックボーンや経験が反映された自身初の「歌もの」EP『Essentials EP』に迫る

2022.05.27
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インタビュー
5月13日に、4曲入りdigital EP『Essentials EP』をリリースしたYamatoさん。世界を股にかけるDJとして活躍していた彼が、コロナ禍で世界が混乱する中で、長く我慢を強いられた世界中の音楽・ダンスミュージックファンに少しでも活力を与えたいと願い、そんな人々の“Essentials”=必需品 になれたらという想いを込め制作した1作だという。4曲全てが歌ものの楽曲で構成されているこのEPについて、またこれからの活動などについて伺いました!
 

自身初の全曲「歌もの」EPを制作!



──前回のインタビューの後、世界的にコロナ禍に突入したわけですが、その期間はどんな感じで過ごされていましたか?
 
Yamato 配信ライブの収録だったり、家で動画を撮ってYouTubeに上げたりもしていましたし、西川貴教さんのツアーもあったりしましたけど、最初は無観客の配信で、最近はお客さんが着席の状態でやってましたね。
 
──では、止まることなく進むことはできていた?
 
Yamato いえ、止まりましたね。海外での予定が全部なくなりました。それ以前はDJの現場も半分かそれ以上が海外だったんですけど、それが全部なくなって、海外ツアーとかの予定も飛んでしまって。

──その期間で得たものは?
 
Yamato 普段の日常がどれだけよかったかというのを再認識できたことだと思います。今回のEPとかにも通ずることなんですけど。
 
──EPの1曲目「Essential feat. Mike Macdermid」はまさにその思いが込められている曲なんですよね。「歌詞」のある楽曲という形でのリリースですが、そうなった経緯は?
 
Yamato そもそも歌ものをあまりやってきていなかったので、もっとやりたいというのは以前からあったんです。自分が目指しているところとか出演するフェスとかでは、歌ものはつきものなので。最初から最後までインストだけでDJすることって、自分はないですからね。インストの割合が多いDJではあるんですけど、インスト曲で見せつつも、ドンと歌ものを入れたり、流れを作ってから歌ものをかけたりはします。自分の場合は歌ものばかり連続でかけると、それでダレちゃったりもするので、インストでグルーヴを作った後に、皆で合唱できるような歌ものをかけたり。あとは夜遅い時間のDJとかでは、エモい時間帯に自分のDJセットでかけられる自身の曲があったらいいなという思いもありました。

──この曲では歌唱と作詞がマイク・マクダーミッドさんですね。制作はどのように進められたんですか?
 
Yamato まず歌が入ってない状態のトラックを作って、誰に歌ってもらおうかというのをスタッフの人たちと相談しながら、ボーカリストを探していって。海外でも通じるものにしたくて、英語で歌ってくれる人がいいかなと、海外のボーカリストなどを探しました。曲のコンセプトは全部こちらで決めていて、歌詞のイメージももともとあったので、そのイメージをマイクに伝えて、一緒に作っていった感じですね。マイクはアジアも含めて、いろんなアーティストに作詞提供していますね。

──そもそもなんですが、ご自分の作品の中で「ボーカル」「声」というのはどういう位置づけですか?
 


Yamato それこそ、なくてはならないものだと思います。DJセットの一部として必要なもの、という感じですね。
 
──声質とかもいろいろあると思うんですが、例えば今回で言うと、どういう声の人がいいというのはあったんですか?

Yamato ありました。この曲は男性、この曲は女性、というのは決めてましたし、「こういう歌声の人で」というイメージを持ってボーカリストを探していました。マイクに関して言えば、デモや歌を聴いたりして「この人、いい感じじゃない?」っていう話をしていて、実際に歌ってもらったら「いいな!」となって、制作を進めていったという感じです。

──ソフトな歌声がよかった?
 
Yamato この楽曲のコンセプトが、コロナ禍の暗闇から抜け出そうというものだったんですね。自分自身もDJの現場でお客さんが踊れなくなってる様子とか見てきましたし、それを表現するのに、彼の優しい声がイメージにピッタリでした。
 
──歌い方なども細かくディレクションされたんですか?
 
Yamato この曲に関してはほぼお任せでした。曲によっては細かくディレクションをしていきながら制作したものもあったのですが、マイクに関しては最初からイメージにピッタリ合うものが届きました。

──歌詞については?
 
Yamato これは細かくやりとりしました。暗くなりすぎないようにとかも含めて話して。
 
──全体の作業はスムーズに進みましたか?
 
Yamato 曲によっては何回かやりとりを重ねたものもありましたけど、「Essential feat. Mike Macdermid」に関してはわりとスムーズだったなと思います。このEPでは4曲をほぼ同時進行で作っていて、特にメッセージ性の強いこの曲を柱にしたEPにしようということになったので、この曲は全体の柱という感じにはなりましたね。
 
──なるほど。
 
Yamato あとこの曲に関しては、レーベルのスタッフとセッションして楽曲のバランスなんかを細かく詰めていきました。その上で、この曲を軸にしていこうという感じになって。
 
──DJの中で歌ものをプレイするのと、自分の作品として歌ものを作るのは、やはり全然違いますよね。
 
Yamato 違いますね。それに、歌ものの中でもコンセプトが分かれてる感じなんですよ。今回の収録曲で言うと、この「Essential」や「Reflection」はクラブとかフェスでかけたいなというもので、後半の「YOU」や「Neon Lights」は、それよりはサブスクのプレイリストに入れて日常の中で聴いてもらいたいなという感じで。


ストリートダンス、社員としてCDJの開発……全てが今につながっている




──今後、ライブで生歌とともに披露という可能性はあるんですか?
 
Yamato できたらいいなと思ってます。みんな海外に住んでる方たちなので、まだ具体的な予定はないですけど。

──西川貴教さんのバンドでのステージなど、ボーカリストがいる中でのプレイは経験があると思うんですが、自分のステージでボーカルが入るのはまた違うでしょうね。
 
Yamato 全然違うと思います。西川さんの現場では5人なので、自分のポジションというか役割があるという感じなんですよね。だからある種の安心感とかもあるんですけど、DJのイベントとかフェスに出る時は、ステージに立つのは自分一人じゃないですか。だから全部自分の責任というか。その中に登場してもらって歌ってもらったことは今までにもあるんですけど、この先も歌ってもらう機会があるといいなとは思います。
 
──生で歌ってもらう場合、「では次は『Essential』という曲を」という感じになるんですかね。
 
Yamato いや、DJの中で例えばマイクがMCしながら入ってきて、歌うという感じでしょうね。海外とかでも、事前告知とかもなしで登場して歌うというケースが多いですし。
 
──この曲はMVも公開されました。MVの制作にはどのように関わられたんでしょうか。
 
Yamato 曲のコンセプトなどを監督さんにお伝えして、イメージを伝えました。撮影する前にも一回お話しして、あとはプロの方にお任せした感じです。

──MVという形になるのは初めてですよね?
 
Yamato 初めてですね。出来上がりを見た時はうれしかったです。avexの方々をはじめとして、関わってくれた人たちには感謝しています。MVという形になるのが新鮮でしたし、一瞬ですけど参加もさせてもらって、それもすごく貴重な経験をさせてもらいました。「あ、こうやって撮るんだ」とか「撮った映像がこんな風になるんだ」という過程を見ながらそれが実際に世の中に公開されて、うれしかったですね。
 
──『Essentials EP』は5月13日に配信リリースされていますが、反響はいかがですか?
 
Yamato ありがたいことに、身近な人からもそうですし、SNSやYouTubeなどでのリスナーのコメントからも良い反応を頂いています。
今回はMVと、EPの中から2曲使ったDJパフォーマンスビデオを公開していて、聴いてくれる人が日に日に増えていってるのも実感しているので、ここからもっと浸透させることができたらうれしいなと思っています。
 

──歌ものという点で、普段とは違ってどう受け止められるかを意識したりは?
 
Yamato それは自分が決められることじゃなくて、決めるのはお客さんとかリスナーの方たちだと思っています。ただ、作品に込めた自分の思いだったりはSNSを通じて発信しているので、それを見て聴いてくれれば、さらに嬉しいなとは思っています。あと歌詞が英語なので、YouTubeでは日本語でも字幕を表示できるようになっていて、日本のリスナーの方にはそれを見て聴いてもらえたら嬉しいです。さらに作品の魅力を感じてもらえるかなと思います。

──そこも含めて受け止めてほしいと。
 
Yamato そうですね。歌詞を理解して聴くとまた全然違うので、それはぜひお願いしたいですね。
 
──そこは、DJの中での歌ものの歌詞とは、また役割が違いますよね。
 
Yamato それはそうですね。こういう形の曲だと、自分たち、つまり自分と歌ってくれた人っていうことですけど、そこから発信できるものなので。
 
──これからもこういう形の楽曲をやっていきたいですか?
 
Yamato もちろん。もともとやりたかったことですし、それは今後も変わらないですね。


──2曲目は「Reflection feat. Poe Leos」。これも制作過程は同じような感じですか?
 
Yamato 入り口はマイクと同じような形だったんですけど、ポーとはレコーティングの日にビデオ通話でセッションをして、リアルタイムでディレクションをしながら進めました。

──この曲の歌詞に関して、ポーさんに伝えたイメージというのは?
 
Yamato 大学の時にストリートダンスをやっていたんですけど、踊ること……フェスとかでの踊りではなくて、ストリートダンスの踊りですね……をイメージしていたので、それを伝えて。ストリートダンスはけっこうガッツリやっていたので、挫折した時に諦めないということとか、力強さとか……
それに加え、大切な人を失ってしまう経験をして覚醒し、荒廃した世界からの脱却を目指す…自分が世界を変えてやる、というようなストーリーも込めたいということを伝えました。
それから「Reflection」というタイトルなので、ドロップの音は反射するようなイメージだとかを伝えていきました。
 
──ストリートダンスの経験が、今のDJの活動に生きている部分はありますか?
 


Yamato 生きている部分はたくさんありますね。ダンスでは音に合わせて踊るし、DJって、お客さんを目の前にして動くじゃないですか。だからリズム感とか小節の概念とかもそうなんですけど、音楽をかけるという中で、例えばスクラッチだったりとかいろんな曲を混ぜたりとかする上で、リズム感も大事ですし、あとは音をどれだけ聴いているかとかも大事になってくるので、生きてくることがほとんどだと思います。それに、自分はダンスをやっていなかったらDJにはなっていなかったので。
 
──そうでしたね。

Yamato ダンスの現場でDJの機材を初めて見て、「あ、パイオニアのCDJなんだ」というのを知ったというのもあるし、クラブのオーナーに頼んでちょっと触らせてもらったら面白かったとかもあって。あと、ダンスのショーとかで、音源をCDJからかけるのをやらせてもらったりもしていて、それらの経験を経てパイオニアに入社したので、そこからDJになって全部がつながった感じですね。
 
──パイオニア社員としてCDJの開発に携わられていた時代のお話は、以前のインタビューでも伺いましたが、最近ではプロフィールにも加えられるなど、以前よりもその情報を発信されているんですね。

Yamato 今まで、SNSなんかで言ってはいたんですけど、英語の記事とかでは出してなかったんですよ。DJの大会で、日本チャンピオンになり世界大会に出た時に、スペインのイビサでパイオニアの現地法人の社員としゃべっているのを見られて、他の国の代表の子に「パイオニアで働いてるの?」って言われたりしてたんですね。社員だからって何か思われるのがイヤで。例えば、社員だから上手にできるとか。だからあんまり言わない方がいいのかなと最初は思ったりしてたんですけど、今まで自分がどう生きてきたかを伝えていく必要があるのかなとも思ったし、自分の経歴を知ってもらえることにも意味があると思ったので出そうと思いました。

──ただ、その会社員時代に得たものはすごく大きかったんですよね?
 
Yamato はい。自分のテクニックの部分とか、全部つながってますね。やっぱり、機材がどう動くかを知ってるし、それを開発してきたから、練習してきたから、思うようにプレイできるようになったというのはありますね。これは以前のインタビューでも話しましたが、「アイアンマン」の感覚に近いのかなと。自分で作って、それを装着して自分で戦って……という感じに。
 

DJプレイに加えて楽曲でも注目されれば、唯一無二の存在に!




──マイクさんもそうでしたが、ポーさんも若いシンガーですよね。そういう人たちとの作業で刺激を受けた部分は?
 
Yamato マイクもポーも、刺激しかなかったというか。今まで歌ものをやったことが2回ぐらいしかなかったし、日本に住んでない方とやるのが初めてだったので。直接会ってないという状況でやったのも初めてだったんですけど。
 
──それが可能になって、作品にまでなるというのは面白いですよね。
 
Yamato そうですよね。まあでも、会わないままやるというのもよく聞く話ではあるので、そんなに特殊なことではない気はしてますけどね。ネットがあればどうにでもなる気はしています。
 
──3曲目は「YOU」ですね。女性ボーカルの曲ですが。
 
Yamato 強く生きる女性を描いた曲なので、女性がいいかなと。

──4曲目の「Neon Lights feat. Mike Macdermid」は、資料によれば「まだ想いを断ち切れていない異性への複雑な心情を歌った、“大人な”1曲」とのことですが、ご自身の恋愛経験などがベースになっているんでしょうか。
 
Yamato そうですね。どの曲もですけど、自分の経験とかバックボーンからキーワードとかを設定している感じです。この曲はBPMも緩めで、チルな感じになってるんですけど、自分が日本での優勝を経て、スペインのイビサ島での世界大会に出た時に、チルアウトのセットをやってほしいと言われてやった経験があるのですが、そういうのもあって、こういう曲が1曲ほしいなというのもあって作ったという感じですね。

──ちなみに、ご自身で作詞をするということはないんですか?
 
Yamato 日本語で作詞して、それを英語にしてもらったというのは、昔あります。この先は、興味があるかないかと言ったらあるんですけど、だいたい歌う人が歌詞も考えてくれたりするので、そこは任せようかなという感じではあります。ただ、歌ってくれる人と共有しながら作っていくのが好きなので、「自分のイメージはこうなので、こういう感じにしてほしい」と伝えて作詞してもらうというやり方がわりとよかったというのはありますね。
 
──この曲はオーディオビデオが公開されていますね。
 
Yamato 1年半前(2020年12月)に渋谷wombで「クロストーキョー」というイベントに出たんですが、その時に「XR Live」と言って、グリーンバックの前でプレイして、VJの方に3Dの映像を同期してもらったんですね。その時の映像の一部を使っています。自分がいつもサマソニとかULTRAとかに出る時の映像チームの方にやってもらってます。
 

──このEPもリリースされて、コロナもだいぶ明けてきた感じで海外との行き来も徐々に戻りつつあります。ここからはどうしていきたいですか?
 
Yamato 今までと変わらずですね。自分は世界的に見てもトップDJになりたいという思いがあるので、そうなれるように進んでいくだけというか。このEPを出した後も、次も頑張りたいというのもありますし、いろいろ出していく中で、これももっと多くの人に聴いてもらいたいとも思っています。
 
──歌ものが4曲収録されて「EP」という形では初めてになるわけですよね。これをきっかけに、聴く人が広がるという期待はありますか?
 
Yamato まだそんな実感はないですけど、身近なところで言うと、リリースしたら同級生とか周りの人たちが曲を買ってくれたりとか、「聴いたよ」って連絡をくれたりというのはありましたね。あとは、日本だけでなく外国のリスナーの方がもたくさんコメントを入れてくれたりしています。自分はDJから入ったDJ/プロデューサーなので、どうしてもDJプレイの方に目を向けられがちではあったんですが、今度は楽曲の方でも注目されたいという思いはあります。DJプレイと楽曲の両方で注目を浴びることができるような、唯一無二の存在を目指していきたいです。
 
──ありがとうございました!
 
撮影 長谷英史



『Essentials EP』
2022.5.13 デジタルリリース


 


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高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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