COLUMNコラム

アーティスト
宇野実彩子×山田裕貴

【人生史上一番のケンカ!?】宇野実彩子×山田裕貴 直撃インタビュー!

2020.11.04
アーティスト
話題
音楽
インタビュー
本日11月4日、宇野実彩子(AAA)のソロ最新曲「最低な君にさっきフラれました」が配信リリースされました。
 
今作は宇野自ら作詞を手がけたラブバラード。ピアノ、ベース、ドラムというシンプルな編成のトラックに乗せて、〈汚い欲に 食べられて捨てられて〉〈素敵な王様にでもなったつもりなの?〉と、強い言葉を投げかけつつも〈悔しいよね 嫌いになりたい〉と恋人への思いを引きずる、失恋間もないヒロインの心情をリアルなリリックで切り取っています。


 
そして新曲のリリースに合わせて、この曲のMVも公開されました。今回、宇野は自らも出演したドラマ『会社は学校じゃねぇんだよ』でもメガホンを取った藤井道人監督とともに、キャリア初のドラマ仕立てのMVを制作。俳優・山田裕貴を共演者に迎え、恋人同士の出会いから別離までの様子を逆再生のように追いかけるユニークな映像を作り上げています。
 
そこで今回avex portalコラムでは宇野さんと山田さんを直撃。新曲「最低な君にさっきフラれました」、そしてMVの聴きどころ・見どころや制作秘話を聞きました。
 

宇野実彩子インタビュー「ファンの皆さんと共感できたからこそできた歌」




──かなり刺激的な新曲ができあがりましたね。
 
宇野実彩子(以下、宇野) フラれた直後の傷ついた乙女心の本音を言葉を選ばずに吐き出してみました(笑)。だから確かに今までの私の曲にはない、だいぶん切なくて心をえぐられるようなラブバラードになったな、と思ってます。
 
──なぜここまでリアルな心情を切り取るバラードを作ろうと?
 
宇野 ファンの方のいろんな声に耳を傾けていたら、ラブソングやバラードが好きというお話がたくさん聞こえてきて。ちょうど来年1月から始まるソロツアーに向けて楽曲制作を進めていたときだったので、ステージで歌ったときにみんなの心がキュッてなるようなバラードを極めたかったんです。特に女性は……いや、男性もそうだと思うんですけど、別に失恋したわけでもない、幸せハッピーなときでもバラードに酔いしれたい瞬間ってあるじゃないですか。
 
──はい(笑)。
 
宇野 だからバラードってたくさんの方の心に寄り添えるのかな? という思いがまずあって。しかもキレイな言葉じゃない……ウソや隠しごとのない言葉だからこそ余計に共感してもらえるかもしれない。そういう思いがあってパワーのあるバラードを作ってみました。
 
──フラれた直後の恋人たちには、その“パワー”が潜んでいる?
 
宇野 時間が経つにつれていい思い出になっていくというか、だいぶん過去の恋愛を表現しようとするとどうしても言葉がキレイになっていくと思うんです。でも別れた直後、今まさに好きな人がここからいなくなったときの人の心ってそんなにキレイなもんじゃないじゃないですか(笑)。ものすごく痛々しいし、毒が混じっているし。それが逆に人間らしいし、体温を感じられるんじゃないかな、って思っています。
 
──作詞はスムーズでした?

宇野
 苦しかったし、大変でした(笑)。「最低な君の最高なところはもちろん、最低なところまでなんで愛してしまったのか?」「なんで終わりに向かってしまったのか?」ということとしっかり向き合わなきゃいけなかったので。そしてその上で「そのとき私はどういう気持ちになるのか?」「どういう気持ちでパートナーのことを思うんだろう?」っていうのをワーッと書き出して、そこからストーリーを編むように作っていったんですけど、愛した人のことを最低って呼ばなきゃいけないことや、それでも最高に愛していたこと、そして相手が一方的に悪いわけじゃなくて、自分が手放した恋でもある、みたいなことを考えたら本当に苦しくて。でもその苦しいという感情を言葉にしないとパワーと毒のあるバラードにならなかったのでがんばってみました。でもホントに自宅のリビングで書いてるあいだ、何回やめてやろうと思ったか(笑)。
 
──でも苦心なさっただけのことはあるというか、さすがのリリックですよね。毒っ気のある言葉ももちろんなんだけど、〈履歴も消したし フォローも外して〉ってすごく現代的な恋愛模様だよな、っていう印象を受けましたし。
 
宇野 私は、自分の曲を聴いてくれる人がどんな生活をしているのか? どんな洋服を着ていて、どんな人と仲良しなのか? みたいなことをすごく知りたいタイプなんです。だからライブのときにはお客さんをしっかり見るようにしているし、その声を聞くようにしているんですけど、今は新型コロナの影響もあってみなさんと会えない時期が続いているので。だからオンラインサロンを立ち上げて、コアなファンの方と密に繋がろうと思ったんです。そのサロンでLINEをするみたいに「どういう服を着てるの?」「どういう曲を聴いてるの?」「というか、今なにしてる?」って聞いてみたり、逆に「今、私はリビングのソファーに座っててね」みたいなやり取りをしてみていたんです。
 
──それが作詞の種になった?
 
宇野 はい。みんなはこういうリズムで生活していて、こういうことが好きで、こういうことを考えていて、こんなYouTubeの動画を観てるんだな、っていうことをキャッチできたからこそ書けた詞だとは思ってます。私がみなさんと共感できたからこそ出てきたフレーズというか。
 
──一方、レコーディングはいかがでした? グループとしてはもちろん、ソロとしてもこれまでにはない、シリアスでセンチメンタルなボーカルを聴かせていますけど。
 
宇野 これまでたくさんレコーディングをしてきたんですけど、今回初めて録り直しをさせてもらいました。
 
──へっ? ボーカルのテイクを重ねるのって当たり前のことでは?

宇野 いや、レコーディングは済んでいたけれどアレンジの変更をお願いしたんです。すごく繊細なバラードを作りたかったからこそ自分が納得いくまでやりたかった。本来だったらアレンジは1回で終わらせるべきだと思ったんですけど、私自身こだわりたかったし、今世界を見てみても、日々状況は変わっていて、それに合わせて音楽をはじめとしたエンタテインメントの楽しみ方も変わっていると思うんです。そういう難しい状況だからこそ、後悔なく自分の伝えたいことを伝えたい温度で繊細に伝えたい、って強く思っちゃったんです。別れた直後の声にもならない声、もう独り言ともいえないため息みたいにあふれてくる言葉を震えるような声で表現したくて。だから実はMVを録り終えたあとにもボーカルレコーディングをやり直していたりするんです。
 
──ちゃんとそのご苦労が音源に刻まれてますよね。
 
宇野 声にならない声を歌にできた自信はあるので、ぜひ聴いてもらいたいですね。みなさんのリアルな失恋体験……たぶんみなさん、心の奥のほうに眠らせている色々切ない思いがあると思うので、その気持ちを曲に乗せてもらえばスッキリできるかもしれないですし。自分の失恋に思いっきり、どっぷり浸って酔いしれてみると、ちょっと気持ちよくなれるはずだし、楽しめるかな、と思っています。


宇野実彩子×山田裕貴インタビュー「ケンカの場面では本当に心がキツくて(笑)」



──まず、なぜ「最低な君にさっきフラれました」のMV制作において、藤井道人監督とタッグを組もうと?
 
宇野 以前ドラマでご一緒させていただいたとき、藤井監督の創る映像にどこか優しい冷たさみたいな雰囲気が漂っていたので。ちょっと闇があるんだけど、でもそれを含めて人間っぽい印象を受けたので、この曲をMVという映像作品として表現するのにピッタリだなと思ったんです。人間の表と裏をきちんと表現したキレイすぎない映像を作りたいな、と思ったときに、監督に撮って頂けたら素敵なアートになるだろうなって。しかも監督と私は同い年だから、共通言語も多かったんです。楽曲自体は私にとってかなり挑戦的な作品なんだけど、そういう監督にご一緒してもらえたら、スムーズに作れるんじゃないかと思ったので。

──一方、その“挑戦的”なMVにキャスティングされたときの山田さんのお気持ちって?
 
山田裕貴(以下、山田) すごくうれしかったです。僕、AAAさんのことをデビューのときから知ってるんですよ。『頭文字D』のテーマソング(「BLOOD on FIRE」)とか……。
 
宇野 ふふふふふ(笑)。
 
山田 しかも僕の出ていたドラマの主題歌も担当なさっていたので、当然宇野さんのことは知っていました。MVに出演するはけっこう久しぶりです。しかも、そのMVの中で男女のリアルなドラマを撮りたいっていうコンセプトも面白いから、ぜひ参加させてもらいたいな、と思っていました。ただ、2日で撮影したんですけど、その初日、最初のカットが始まるときに宇野さんが「緊張する」って言っていて。「えっ? 宇野さんってMVはよく撮ってるんじゃないですか?」って聞いたら「ドラマ仕立てでセリフもあるMVはなかなかない」と返ってきたから、一気に「ヤバい。おれ、俳優だし、引っ張らなきゃ!」って焦りはしました(笑)。
 
宇野 プレッシャーを与えてしまった……(笑)。
 
山田 でも実際に共演してみたら、宇野さん自身、そのシーン、シーンに自然と立っている印象を受けたし、その宇野さんが作る自然な環境に僕も自然にいさせてくれる空気感を作ってくれるから、なんの心配もなく、2日間限定の恋愛模様を描けた気がします。本当にただただこの場にいる感覚でいられましたから。
 
──ところで、そもそもの話なんですけど、なぜ別れの場面から始まって、出会いまでの恋愛模様を遡っていく構成に?
 
宇野 最初に切ない上にショッキングなシーンを見せることで、みなさんに「この2人はお別れするんだな」ということを知ってもらった上で、それまでの恋愛模様……幸せな2人の様子を観てもらったら、より曲に込めた切なさが伝わるのかな、と思ったので。曲が進むごとに「ああ、この2人は今は幸せそうだけど、結局別れちゃうんだよな」って。
 
──確かにMV冒頭のおふたりのケンカのシーンは迫力満点で圧倒されました。
 
宇野 あれは本当に壮絶で……。
 
山田 でしたねえ(笑)。
 
宇野 しかもしっかりとした台本があったわけじゃなくて、私たち自身「2人はどうやって壊れていくんだろう」と思っていたというか。とにかく演じてみないとわからない、というシーンだったんです。
 
山田 ある程度の設定しかなかったから、全部アドリブ。セッションみたいでしたよね。
 
宇野 本当に生の掛け合いでしたもんね。
 
──それをぶっつけ本番で?
 
宇野 一応、監督も含めて撮影前に「実際、どういうふうにケンカする?」「どういう感じで取り乱す?」「ケンカするときってこうなるよね」「ああなるよね」ということは話し合ってはいたんですけど、私と山田さんの2人の場合、どういうケンカになるんだろう? ということはやっぱり本番になるまでわからなくて。最終的に山田さんが出て行っちゃうっていうことだけは決まっていたので、その終わりに向かっていかなきゃいけない作業をしているとき、本当に心がキツくて(笑)。リアルな言葉のやり取りをしていたから、お互いの気持ちを感じ取れちゃうから、本当に苦しかったんですよね。
 
山田 あのとき上げた声はリアルですよね。本当にケンカをしているときのトーンというか。

宇野 ちょっと震えたりしたり……。
 
山田 逆に急にガッと熱が上がって大きな声を出したり。だからあんまりお芝居だとは思わなかったですよね。宇野さんとケンカをして部屋を出て行くという設定だけを背負って、あとは自然と出てくる言葉を信じていたというか。宇野さんの声と言葉をちゃんと受け取った上で「いやいやいや、そうじゃないでしょ!」って返すキャッチボールを15分間にわたって積み重ねていました。結局4テイクくらい撮りましたよね?
 
──つまり15分×4テイク=1時間ケンカをしていた、と。
 
宇野 やりました(笑)。あれが人生史上一番のケンカだったかもしれないってくらい激しかった……。
 
山田 ほんとですか!?
 
宇野 だってあんなにツラいケンカってしたことあります?
 
山田 確かにあそこまでのはなかなかないかも。あんなに自分の気持ちをストレートな言葉でぶつけ合うことってそうそうないですよね。
 
──ほかに印象的なシーンってあります?
 


山田 イチャイチャしているところ……って、イチャイチャっていうと宇野さんのファンの方に怒られそうですけど(笑)、料理中の宇野さんにちょっかいをかけるシーンや歯磨きのシーンみたいな2人の距離が近い場面はやっぱりドキドキしますし、楽しかったな、という印象があります。台本では歯磨きのシーンって横並びで歯を磨く設定だったんですけど、宇野さんがうしろに立って、僕の頭にアゴを乗せてみたらより距離の近さを見せられるかな、と思って……。
 
宇野 そういうリクエストをいただいたので、「ぜひお願いします」ってお答えしました(笑)。でもあれはホントにカップルにやってもらいたいですよね。楽しいから(笑)。
 
山田:鏡越しに相手の姿が見えるのがまたいいんですよね。
 
宇野 なんかその客観的な感じがちょっと照れくさかったりするし(笑)。なんか「壁ドン」みたいに、あれにも名前がほしいですね。「アゴ乗せ歯ブラシ」みたいな。
 
山田 いや、それそのまんまですよ!(笑)
 
──宇野さんは気になるシーンってあります?
 
宇野 出会いのキャンプのシーンは「私もしたいなあ」って思いました。友だちやそのまた友だちとみんなでどこかに出かけていってっていうことをやったことがないので、ああいうアクティブなグループデートは夢ですね。
 
──あと素朴な疑問なんですけど、あれって最初にケンカのシーンを撮って、最後に出会いのシーンを撮るというように、映像の時系列順に撮影したんですか?
 
山田 いや、バラバラでした。最初はオフィスのシーンでしたね。
 
宇野 最後がケータイでテレビ電話をしているシーンでした。
 
──じゃあ、それこそさっきまで「アゴ乗せ歯ブラシ」をやっていたかと思ったら、次には真顔でデスクワークをしなきゃならなかった?
 
山田 しかもあれだけのシーン数を2日で撮ったから感情はけっこうグチャグチャでした(笑)。でも、そう考えると、僕と宇野さん、ちょっとすごくないですか?(笑)
 
──スゲーっす!(笑) 最後に完成した映像をご覧になった感想は?
 
山田 まず「最低な君にさっきフラれました」みたいなしっとり系のバラードがすごく好きなんですよね。人のことを好きにならない人ってたぶんいないじゃないですか。だから誰もが感じたことのある苦しさや悲しみを歌っているあの曲はみんなに寄り添える曲だと思うし、MVもそういう映像になったな、と思っています。僕自身、観ていて「切ない!」ってなりますし(笑)。多くの人に共感してもらえる曲であり、MVだから、そこに参加させてもらったのは本当にうれしいな、と思っています。
 
宇野 本当にありがとうございました!山田さんや藤井監督をはじめとしたみなさんのおかげもあって、失恋の経験がある人にとっては乗り越えるきっかけになってくれるんじゃないか? そうじゃない人にもそのセンチメンタルな世界に浸ってもらえる映像になったんじゃないかな? と思っています。
 
山田 たとえば友だちが失恋しちゃったときなんかに観たり、聞いてもらいたい映像になった自信はあります。そういう人たちを励まして、寄り添える曲とMVだと思うので。……あっ、あと、僕自身、失恋したときには必ず観ますっ!(笑)
 



「最低な君にさっきフラれました」
2020.11.4 配信スタート





【宇野実彩子 official website】
https://avex.jp/uno/

【宇野実彩子 official Twitter】
https://twitter.com/uno_uno_0716

【宇野実彩子 official Instagram】
https://www.instagram.com/misako_uno_aaa/
 
山田裕貴 衣装
ニットブルゾン、シャツ、パンツ(トゥモローランド:0120-983-522)
シューズ、ネックレス(エドストローム オフィス:03-6427-5901)
成松哲
WRITTEN BY成松哲
1974年、大分県生まれ。フリーライターから音楽ナタリー編集部を経て、再びフリーライター。著書に『バンド臨終図巻』(共著。河出書房新社/文春文庫)など。
もどる