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【日本人アーティストとコラボ楽曲を続々発表】タイの国民的アーティストSTAMPとは一体どんな人なのか??

2020.09.30
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若手音楽プロデューサーの顔も持つタイのトップアーティスト、STAMP。日本の音楽、カルチャーが大好きな親日家としても知られ、過去に何度も日本でのライブを行っています。そんな彼が、かねてから親交のあるSKY-HIとコラボした新曲『ジェイルハウスfeat.SKY-HI』を9月18日に配信リリース。この曲を皮切りに日本のアーティストとコラボした楽曲を隔月ペースで配信していき、来年夏には日本向けアルバムを配信リリース予定です。そんな彼にリモート取材を敢行し、新曲のこと、日本人アーティストとのコラボのこと、自身とタイ音楽界のことなどを聞いてみました!



日本人アーティストとのコラボは「日本に留学する感覚」


STAMP (日本語で)「お願いします、STAMPです!」

──日本語がお上手ですね! 世界中がコロナウイルスの影響で大変ですが、バンコクはいかがですか?

STAMP (日本語で)「どんどんよくなりました!」 1ヵ月ぐらい前から集まったりもできるようになりました。ただ、それでまた悪化するんじゃないかと危惧してるんですけどね(笑)。

──STAMPさんのお仕事にも影響は出てますよね?

STAMP 4~5ヵ月前までは、世界の他のところと同じように、全く仕事ができない状態でした。最近は戻りつつあります。

──さて、今回の新曲『ジェイルハウス feat.SKY-HI』についてお聞きしたいと思います。この曲は来年リリース予定の日本向けアルバムへの第1弾とのことですが、今、この企画を打ち出した意図を教えてください。



STAMP これまでは英語とタイ語の曲を歌っていましたが、日本語も勉強していまして、日本語を取り入れた曲も出したいと思っていました。今回のアルバムは私のプロジェクトの一つで、は日本のいろんなアーティストとコラボして日本語の曲を作ることで、まるで日本に留学するような感覚でいます。

──このプロジェクト自体が、STAMPさんにとって勉強ということでもあるんですね。

STAMP はい。もともと日本のカルチャーが好きなので、それを勉強するという意味合いもあります。

──日本のTV番組でも日本語で話されたりと、日本語はかなりお上手そうですが、日本語で歌うというのはやはり大きなチャレンジなのでしょうか?

STAMP 今回の『ジェイルハウス feat.SKY-HI』も日本語で歌っていますが、やはり歌うとなると、発音の大切さを感じています。これまでの日本語の勉強ではひらがなや漢字、文法の勉強が中心だったんですが、今は発音を中心に取り組んでいて、次以降の曲ではもっと頑張らないといけないなと思っています。

──英語・タイ語・日本語では、「歌う言葉」としてはやはり大きく違いますよね?

STAMP もちろんそれぞれの言語によって、いろいろ違いはあります。英語は腹から発音して歌う、などの違いはありますが、日本語の歌い方については、舌や口の使い方も含めて、これから研究していかないといけないところです(笑)。タイ語にない発音などもあったりしますからね。



──『ジェイルハウス feat.SKY-HI』ですが、かなりネガティブな感情を歌った曲ですよね。このような歌詞になった理由などはありますか?

STAMP 今回の歌詞は元恋人に対してのメッセージのようになってはいますが、実際は恋愛関係だけではなく、全ての人間関係に当てはめられると考えています。もちろん、元彼や元カノのことを思い続けてなかなか先に進めないというシチュエーションもありますし、タバコをなかなかやめられないとか、自分によくないと分かっていても依存し続けてしまうということについて歌っています。

──STAMPさんご自身にも、よくないと分かっていながら続けてしまう習慣などはありますか?

STAMP (通訳の言葉を聞く前に、日本語で)「たくさんあります」(笑)。今どきのことではありますが、携帯電話とSNSですね。それに使う時間がすごく多くて、いけないなと思っています。その時間を減らせばもっといろんなことができるはずですからね。

──すごくよく分かります(笑)。

STAMP (日本語で)「頑張ります(笑)」

──今回、SKY-HIさんとのコラボがこの曲になった経緯は?

STAMP この曲は去年、タイ語のバージョンを発表した曲なんですが、昨年末のSKY-HIさんの誕生日ライブで、この曲をリアレンジしてライブで披露したんです。その時、お客さんがすごく盛り上がっていたので、今回の曲に選びました。

──STAMPさんの歌とSKY-HIさんのラップの対比が印象的なコラボになっていますが、どのような過程で制作されたのでしょうか?

STAMP ちょうどコロナの期間になってしまったので、それぞれでレコーディングをしてやりとりさせていただきました。その中で、SKY-HIさんからいただいたラップに合うように、ところどころサウンドもリアレンジをしました。元のタイ語バージョンはもっとR&B寄りのサウンドになっていたんですが、SKY-HIさんのラップはもっとアグレッシブなので、それに合わせてドラムのビートやエレキギターの音を追加して、アグレッシブさを出すようにしました。



──今回のコラボで、改めてSKY-HIさんにどういう印象を持ちましたか?

STAMP 以前から交流はありますが、今回のコラボではSKY-HIさんがすごく頑張ってくれて、大変ありがたく思っています。特にこの曲のMV撮影では演出なども含めていろいろとアイデアを出していただきました。彼はとても気さくで、共同作業もすごくやりやすいですね。

──11月には第2弾としてTHE CHARM PARKとのコラボも決定しています。その後も様々な日本のアーティストとコラボされるとのことですが、コラボ・パートナーはどのようにして選んでいるのでしょう?

STAMP 一番の前提は、私が作品を好きなアーティストということです。その中で、コラボできる可能性があるかどうかという点も大事ですね。今、いろいろと調整してもらっているんですが、先方にオファーを受けてもらえるとすごくうれしいです。

──そうして制作された楽曲が、来年にアルバムとしてまとまるということですよね。そうすると、アルバム全体のイメージはこれからできていくということなんでしょうか?

STAMP まず大きなコンセプトとして決まっているのは、私が日本のアーティストとコラボするということです。これから作る曲がほとんどですが、どの曲にも私の要素が必ず入っているので、私のスタイルという軸は保てると思っています。

──コラボ・パートナーに求めるものというのは、何かありますか?

STAMP ただただ、私がその人の作品を好きということだけで十分です(笑)。


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──では、STAMPさんご自身のこともお聞きできればと思います。15歳の時にタイの「モダンドッグ」というバンドに影響を受けて音楽を始められたそうですが、最初はどのような音楽をやりたいと思ったんでしょう?

STAMP ちょうどオルタナティブ・ロックが流行っていた時期だったので、ロックのギタリストになりたいと思いました。その後、音楽性はいろいろと変わりましたが、ギタリストという点では変わっていないと思います。

──私事で恐縮ですが、2000年代前半頃、「LOSO」や「SMILE BUFFALO」といったロックバンドがタイで人気があるということを知り、音源を手に入れたりしたことがあります。

STAMP (「LOSO」、「SMILE BUFFALO」の名前が出ると、「LOSO!」「SMILE BUFFALO!」と声を上げ)彼らが一番人気があったのは、90年代後半頃ですね。ちょうど「モダンドッグ」に影響を受けたバンドだと思います。でも、彼らは今でもレジェンドで、彼らのことを好きな人は今もたくさんいますよ。私はLOSOのフロントマンのSekさんからはギターをいろいろ学びました。



──タイの音楽は、日本で言う歌謡曲のような世界が大変人気があり、また音楽界での力も大きいと聞きます。一方でロックやヒップホップの人気も時代を追うごとに増しているようですが、STAMPさんから見て、タイの音楽事情はどのように変化していますか?

STAMP 90年代はロック系の人気が増して、そういうバンドが多く出ました。最近ではヒップホップが人気で、そのように人気のスタイルというのは時代ごとに変わってきています。でも、いつの時代でもタイの人々が音楽に求めるものというのは、「楽しさ」や「聴きやすさ」なんです。それから、歌詞ですね。自分が感情移入できる歌詞の曲というのはいつでもすごく支持されるもので、その3点は常に変わっていないと思います。

──海外の音楽からの影響というのは?

STAMP 海外からの影響は時代によってけっこうありますが、タイでは流行が移り変わるのが早いんです。最近ではヒップホップだったりK-POPが人気ですし、そこからの影響も大きいです。ただ先ほどもお話ししたように、その中で求められているものは変わっていないと思います。

──その中で、STAMPさんは日本のカルチャーの影響を受けているということですが、どういった部分で影響を受けていると思いますか?

STAMP 私がタイ語で歌っている曲でも、「日本の曲っぽいね」と言われることもよくあるんですね。そう感じられるのは、オーケストラやストリングスの音を入れているからかなあと思います。タイではそういったアレンジの曲はないので、日本っぽく受け止められるのだと思います。「日本っぽくしよう」と思ったわけではないんですけど、もしかしたら日本の曲を聴いている影響で、無意識にそっちに近寄ったのかもしれません。

──特に影響を受けたアーティストは?

STAMP 特定のアーティストを挙げるのは難しいですが、日本のバラードは特に好きです。バラードの曲ではオーケストラが入ったものも多いので、そのせいかもしれません。

──何度も開催されていた日本でのライブも、なかなかできない状況です。早くまた日本に来たいのでは?

STAMP (通訳を待たず、日本語で)「はい! 早く行きたい(笑)」

──日本でのライブにはどのような印象がありますか?

STAMP 日本のお客さんは、すごく真面目に聴いてくれているという印象があります。ライブの最初は「みんなすごく静かだな?」と思うんですが、演奏が終わるとバーッと拍手して盛り上がってくれるので、「ああ、真剣に聴いてくれていたんだ」と思いました(笑)。



──欧米のミュージシャンも、日本の観客について同じような印象を話すことが多いんですが、タイの観客の反応ともまた違うということですか?

STAMP 場所によって、観客の雰囲気がかなり違うんですよね。タイではアリーナだけではなく、デパートやビアガーデンなど、いろんなところでライブをやっています。そういうところでは、お客さんは私の音楽を目当てに来ているとは限らないですから、興味を持ってもらうのに、すごくパワーが必要になるんですね。最近は日本の状況に近づいてきていて、ライブハウスとかフェスとか、音楽を楽しみに来る人が増えているので、少しよくなってはいます。

──これまでの日本でのライブで、特に印象に残っているのは?

STAMP 日本でも、ライブハウスやフェスなどいろんな場所でプレイさせてもらいました。ライブハウスではみんなが私の音楽のために来てくださるので、それはそれですごくありがたいんですが、フェスでは私の前後のアーティストが目当てでいらっしゃった方がそのまま残ってくれて私を見てくださることも多いのが、すごく印象深いですね。他の国では、目当てのアーティストの時間だけ来るとか、前のアーティストが終わったらすぐに去って行ってしまうということの方が多いんですが、日本ではそうではなく、それまで知らなかった私のことも見てくださるのがすごくありがたいですね。

──日本でお気に入りの場所はどこですか?

STAMP いろんなところに行きましたが、特に好きなのは下北沢ですね。ライブハウスも多いしカフェ巡りもできるし、あとヴィレッジヴァンガードのような日本のクリエイティブなものがたくさん置いてある店があるのも楽しいです。

──次に来日できたら行きたい場所、やりたいことは?

STAMP avexのスタッフの皆さんに、ぜひご挨拶に行きたいです(笑)。



──来年のアルバムが出たら、それをフィーチャーした日本でのライブも期待したいですが……。

STAMP 可能であれば、このアルバムの曲をライブでやりたいと思ってます。ただ、コラボしてくれたアーティストに全員出てもらうのはなかなか難しいと思うので(笑)、そのパートを自分で歌ったりなど、それを補う方法も考えたいと思います。


──では最後に、日本のファンの皆さんにメッセージをお願いします。

STAMP 今回、本当にいい機会をいただいて、avexからアルバムをリリースできることになりましたので、いい作品になるよう精いっぱい頑張ります。そして、状況がよくなったらぜひ日本のファンの皆さんとお会いしたいと思うので、その時は一緒に楽しんでいただければと思います。(日本語で)「早く日本に行きたい!」



STAMP
Official Website:https://avex.jp/stamp/
Twitter(JP):https://twitter.com/stamp__jp
Instagram:https://www.instagram.com/stampapiwat/
Youtube:https://www.youtube.com/channel/UCX8CoPcorL-apWj2JfKPwfA

『ジェイルハウス feat.SKY-HI』配信サイト
https://avex.lnk.to/STAMP_jailhousePR
高崎計三
WRITTEN BY高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。

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