先日、最終回を迎えたばかりの金曜ナイトドラマ『伝説の頭 翔』(テレビ朝日系)。高橋文哉さん演じるヤンキー集団の伝説の頭(ヘッド)、「伊集院 翔」とアイドルオタク「山田 達人」(一人二役)が、ひょんなことから入れ替わることになって……という物語でしたが、劇中では翔のライバルで、敵対するヤンキー集団「ブラッドマフィア」のボス「東城 真」のキャラクターが大きな話題になりました。その東城を演じたのが、カルマさん。さまざまな経歴を経て、YouTuberとしては登録者数180万人を超える成功を収めて俳優としてデビューしたという彼に、ドラマのこと、演技の上で考えていること、これからのことなど、いろいろとお聞きしました!
東城の特徴は掴みどころのなさ。演じていて「こうなんだな」と思えるようじゃ東城じゃない!
──ドラマを見て気になっていたところだったので、お話を伺えてうれしいです(笑)。今、いろんな人からそう言われるんじゃないですか?
カルマ そうですね。この作品がきっかけで、今まで僕のことを知らなかった層の人たちとか、あといろいろな関係者の方からも言われます。
──ですよね。どうしてそう言われるのかについて、いくつかポイントが思い浮かぶんですが、それを一つずつお聞きできればと思います。
カルマ それはうれしいですね。そういうのを聞きたかったので。
──原作はもともと知ってましたか?
カルマ 20年ぐらい前の作品ですよね。でも実は僕、全部読んでたんですよ。もちろん僕の世代ではないんですけど、全巻買って読んでました。
──そうなんですか!
カルマ だから話が来た時は、ムチャクチャ嬉しかったんですよ! 最初はこの作品をやるっていうことだけ聞いて、その時点でも超嬉しかったんですけど、最初から東城をやりたいと思ってたので、後から東城役でと言われて「マジか!」と思いました。
──それはすごいですね。
カルマ 主人公のライバルだし、カッコいいポジションだったので。「ウルァ~~ッ!」っていうタイプのヤンキーではないけど、メチャクチャ強え!みたいな。そこがカッコいいなと思ってました。
──そこからはどういう流れだったんですか?
カルマ 台本が来る前にイメージが届いて、それから監督とお会いしてお話を聞いて、いろいろすり合わせていった後に、台本が届いた感じでしたね。
──では、ドラマの中での東城がこんな感じだと分かった時は、どんな印象でしたか?
カルマ ドラマを見てもらったら分かると思うんですけど、掴みどころがなくて飄々としてるじゃないですか。それは僕自身もその感じだったから、すごく難しいなって思いました。
──えっ、自分と似ていてやりやすいというわけではなかったんですか?
カルマ いろんな側面はあるんだろうけど、「こういう感じかな?」「こういう感じかな?」とかってやってみて、「あ、こういう感じなんだな」って答えが出るようじゃ、まだ東城じゃないな、と思って。
──なるほどー。簡単じゃないぞと。
カルマ だからそこは、いろいろと今までに得た経験をそのまま落とし込むというか。自分の枠にはめに行こうとしたら、たぶん危ないなとは思いましたね。難しそうだなというのが最初の印象で、現にクランクインするまでは、ずっと東城のことだけ考えてやってました。もちろん身体作りから入って。
──この役のために10kg増量したとお聞きしました。
カルマ はい。そのために週5~6ぐらいでジムに行って、時間とともにどんどん染み込ませていったという感じはあります。
──今も増量した体をキープしてるんですか?
カルマ もうクランクアップはしたので、やっぱりけっこう落ちましたね。やらないと落ちるし、そもそも適正体重ではなかったので。
──無理に増やしていたわけですからね。
カルマ まだ戻りきってはないですけど、これからどんどん下がっていくとは思います。ただ、元の段階まで戻るか分からないぐらい鍛えたし、これを機にジムにも継続して通おうとは思うんですけど、さすがにちょっと落としたいなとは思います。
──体もですが、やはりドラマで見せるいろいろな表情が、すごく印象的でした。
カルマ うれしいですね。そう言ってくれる人がすごく多くて。同じセリフにしても、こういう感じに言うとか言わないとかじゃなくて、東城ってたぶん、表情を見られることがすごく多いと思うんですよ。パッと画面に映ったら、絶対みんな東城を見に行くと思うので。そこで視聴者の方々が見るのは、「絶対強い感じ」とか「オーラがある」とか、たぶんそういうところだと思うので、そういった意味で言うと、自分から何か変に仕掛けに行くという感じじゃなく、本当に東条になりきってやることが一番かなと思います。表情とか声色とか、そのへんは意識してなかったんですけど……
──そうなんですか?
カルマ はい、特別メチャクチャ意識したわけじゃなくて。より東城っぽい、はっちゃけたクレイジーな感じの時とかは意識してたんですけど、そういう場面以外の表情がよかったっていうのは、言ってもらって気づくことが多かったですね。
──髪型も特徴的でしたが、画面で見る限りは、常にテカテカして見えたんですよ。
カルマ テカテカ? それは初めて言われました。
──何というか、印象としてテカテカ感があったというか。
カルマ それはやっぱり、僕が輝いて見えっていうことですかね(笑)。
──そうかもしれません(笑)。
カルマ まあ、メイクのおかげなのか……あと衣装が人一倍暑かったからかもしれないですけど。毛皮だったので(笑)。
監督からは情報を“2”だけ渡されて、「これで“10”を作ってきてね」と……。
──役どころも、伊集院翔の正体に誰より早く気づくという、重要な役じゃないですか。その表現もよかったですよね。
カルマ それは、僕自身も台本が届くのを毎週心待ちにしていたので、その時の感情を乗せたというか、感情に従ってやった感じはありますね。そうすると、どんどん物語が進むにつれ、ただのおちゃらけじゃない感じとかも自ずと出てきたり、「怒らせたら怖い」とか、「敵に回すとヤバい」みたいな感じの雰囲気とかは、僕が台本を読んでいって自然にそうなっていったところはありました。
──台本が届いて、ストーリーが明らかになってくるのを、一緒に楽しんでたということですか。
カルマ メチャクチャ楽しんでました(笑)。毎週新しい台本が届くのを心待ちにしてましたから。
──しかも東城って、ただ主人公と敵対してるだけじゃなくて、ちょっと男気見せたりする場面もあるじゃないですか。
カルマ ドラマでの東城のキャラクターをあれだけ膨らませてくれたのは監督とプロデューサーなんですよ。それは本当にありがたくて、お二人にはメチャメチャ感謝しています。
──東城は最初に翔の正体に気付くだけあって、ものすごく勘が鋭いという設定ですよね。ご自身は勘は鋭い方ですか?
カルマ 監督はそう言ってましたね。勘の話になって、「たぶん、勘が相当鋭いからすごいお芝居をしてくれて、本当に東城をやってもらってよかった」って最後、言ってくれて。東城ってたぶん、作り上げようとして、勉強してできるものじゃないなっていうのは、監督も僕もすごく感じてたんですよ。今まで面白い経験をしてきてる人とかじゃないと、作ってるのがすぐバレる役だと思うんです。「サイコパスをやってます!」みたいになっちゃうじゃないですか。
──確かに。
カルマ 監督から言われたのは、「そういうのを作ってきてほしい」っていうんじゃなくて、「できるっしょ?」みたいな。「俺が見てても、カルマ君にはこういう一面があると思うんだけど、こういうところとこういうところをどんどん繋ぎ合わせて、なかなか調和するのが難しいラインだと思うけど、いけるっしょ?」みたいな。情報は“2”ぐらいだけ渡されて、それを“10”にしてきてほしい、任せたよっていう感じでしたね。そこはもう、最初にやって、監督の波長と合ってるんだなと思ってからは、すごく自信を持ってやれました。
──監督が「“2”だけ渡して“10”にしてもらう」というのも、ものすごく大物の俳優に求めるんだったら分かるんですけど、カルマさんにそれをするというのは、もしかしたら賭けの部分もあったのでは?
カルマ そうです。今回のキャスティングは「ベットした」って言われました。
──ああ、実際そうだったんですね。
カルマ 主演が高橋文哉じゃないですか。そのライバルが俺っていうのはけっこうなギャンブルですよ(笑)。でも、「信頼してるからね」っていうプレッシャーはけっこうありましたね、最初は。東城は僕がやるって決まってから、すごくセリフが増えたみたいなんで。当初は毎回出てくるキャラクターじゃなかったらしいんですよ。
──そうなんですか!
カルマ 僕も当初はそう聞いてたんですよ。そしたら、「どうやら監督がセリフを増やそうって思ってる」っていう話が聞こえてきてたんですけど、台本が届いて読んでみたら、「えっ、こんなに!?」みたいな。これ、キーマンじゃん!ってぐらいだったので、その想像を絶対120%超えてやりたいなって思ってましたね。
──でも先ほどのお話からすると、やっていくうちに手応えが掴めてきたって感じだったんですか?
カルマ ちょっとでも自信をなくしたら、たぶんできないと思ったので。僕、東城をやる時はアドリブばっかり入れてるんですよ。だから、「現場がこうだってなっても、それをぶち壊すぐらいの勢いで行こう」と思って入りました。
──それだけ気合いが入ってたんですね。
カルマ 僕が出てるシーンは、誰かに合わせにいくんじゃなくて、絶対僕がその空気感を作り上げるんだ、ぐらいの気持ちでいかないと、たぶん東城にはなれないなって思ったので。あの余裕感とか、突拍子もない感じとかは出せないなって。初日からもうアドリブを考えて来てたんですけど、初日から出すのって怖いじゃないですか。でも、「これが東城だから!」ぐらいの気持ちでウワーッとやって、「これでOKだな」っていう手応えは確かにあったので。
──それはすごい!
カルマ いやいや。僕が物怖じしてたらやっぱダメだなってのもあるし、周りには素晴らしい俳優さんたちがいっぱいいて、歴もそうだし、作品数でもやっぱ皆さんの方が経験も積まれてるわけじゃないですか。だったら絶対に、僕にしか出せないものを出しにいった方がいいなと思って。僕の感覚では、「上手い/下手」よりも、いかに入り込めるかが重要なので。
──でもそれって、ものすごい度胸が必要じゃないですか。その度胸って、これまでのさまざまな経験で積み上げられたものなのでは?
カルマ 経験は確かにありますね。こういうアドリブを入れようとかっていうアイデアはそういう経験から出てきたものでもあるし、あと事務所で部屋を一室借りて、ちょっと場所を変えて自分で動画を撮りながら東城のセリフを言ってみて、どうやったら違和感なく映ってるかとか、そういうテストはずっとやってました。
──そういうのも、今までYouTuberとして映像を作ってきた経験も全部生きてるわけですね。
カルマ そうですね。僕はこれでいいと思っても、それがエゴになっている可能性があるので、一応そこは確認して。これだったら東城に見えるなとか、こういうのを現場で出せるかとか。いざ現場に着いてみると、雰囲気とか全然変わったりとかするので。俺の東城が出る場面ではもう、全員の視線が東城に向くぐらいの雰囲気に俺が変えなきゃいけないと思ったし、そうすることによって、山田達人にみんな感情移入できると思ったんですよ。
──ほう。
カルマ 達人が、これだけ伊集院翔になりすまして、これだけヤバいところに来たんだっていうことが分かる空気に、僕がしなきゃなと思ったので。
──ですよね。確かに東城のあの表情があるから、翔の格好をしつつ、ずーっと困り顔をしている達人の表情が生きてましたよね。
カルマ だって、文哉がそこらへんを踏み外すわけがないと思ったので。だからけっこう面白い芝居をしないと、逆にこっちに合わせてもらわなきゃいけなくなっちゃうこともあるぐらいのキャラクターでもあるから、もうそこは僕が冷静に考えて、「出過ぎないようにしよう」とか、そんないろいろ考えちゃったら絶対ダメだと思って、思いっきりぶつかりにいこうと思いました。
──そうですか……。
カルマ もちろんプレッシャーも大きかったですよ。今、すごい人気の高橋文哉の相手役って、けっこうな重圧ではありますよね。ましてや1時間ドラマだし。
──しかしその状況で、しかも俳優としてはまだまだスタート時期というキャリアでこれができちゃっていて、だからこそ今話題になってるというのは、「やっぱりYouTubeチャンネルで180万人に見られている人は違うな」と思っちゃいますよね。実際、そこは大きいんじゃないですか?
カルマ YouTube界でも正直、異質だったというのはあると思いますね(笑)。だからやっぱり、自分の感覚に従ってるところはあります。YouTubeの伸ばし方とかも、誰かからアドバイスをもらったわけでもなく、自分で調べて分析して、自分で考えて、地に足をつけてやってる感覚ではありますね。
──しかも、エイベックスへの所属を決めたのもいろいろ考えた結果だったわけですよね。
カルマ そうですね。今やってる仕事とか俳優業が一番やりたいお仕事だったので、こういうお仕事をいただけている今はすごく楽しいですね。『伝説の頭 翔』、東城 真役を機に、今後お仕事が増えてほしいなというのはもちろん思います。
YouTuberとしての経験が、これだけ生きている!
──このインタビューが公開される頃には、ドラマはすでに最終回を迎えています。クランクアップもされたということですが、「やり切った感」はありますか?
カルマ ムチャクチャありますね! 最後のシーンまで僕、絶対に「もう終わる」という感覚は持たないでおこうと思っていて。最後の日まで、いつも通りの気合いを入れて現場に行きました。もちろん、そこで終わりだというのは分かってはいるけど、1ミリも気は抜かずに。「絶対にこの作品は思いっきりやり切る」って決めてたので。終わって、監督とかプロデューサーとかともいろいろ話していて、「正直、最初はすごく心配だったけど……」みたいなうれしい言葉とかもいろいろいただいたりして、「ああ、やってよかったな」って、すごく思いますね。
──そう思えるのはいいですね。
カルマ 放送回を重ねるごとに、ドラマ自体だけでなく、東城役への反響が大きいことに驚きました。インスタのフォロワーとかもメチャクチャ増えたし。でも、それが今までとちょっと違うのが、YouTuberとしてじゃなくて俳優としては増えたことなんですよ。僕は元から知ってくれてる人たちも、元YouTuberで、今は俳優として活動してるということを認識してくれて、この作品でそこの印象がガラリとそっちに向いてきたなというのも、けっこう肌で感じます。
──だからテレビで見ていた人も、「何だかすごく大物っぽい人なんだけど、あんまり見たことのない顔なんだよな……」みたいな。
カルマ そうなんですよ。上の世代の方もインスタとかに来てくれるようになったのが、うれしいなと思います。あと、周りから「この人が褒めてたよ」とか、いろいろ入ってきますし。それこそ、こういう取材を組んでもらえるのもそうだし、取材されてなくてもネットニュースに上がってたりとかするのもうれしいですね。YouTubeの時はネットニュースに勝手に上がることって、けっこう怖かったので(笑)。でも今はお芝居のことを評価してくれてのことなので、それはメチャクチャうれしいです。何社も取材してくれていますし。
──そんだけ注目されているということですよね。
カルマ 本当にありがたいですね。でも、何か強いなと思うのは、若い層は僕のことをYouTubeで知ってくれていたみたいで、テレビって「見たことある人」が強いけど、僕の場合は名前で認知されることがあったから、そういった意味ではYouTubeをやっていてよかったなと思う部分があります。
──両方から攻めている感じですよね。そして、これ以後はもう俳優としてどんどん上がっていきたいと。
カルマ そうですね。軸は俳優として。バラエティーとかもちろん出ていきたいですけど、軸は俳優に置きたいですね。
──「俳優として成功したい」という気持ちは、そもそもどこから来たものなんですか?
カルマ そのために上京してきましたからね。むしろ「ここに来るまで10年かかったな」という感覚ではあるんですけど。テレビに出たいとか有名人になりたいとかっていうのは、もう幼少期からですね。ずっとテレビの電源がついている環境で育っていて、「大人の人イコール、テレビに出る人たち」だと勝手に思っていたので。自分の親とかも出てると思ってたんですよ。
──そうですか(笑)。
カルマ それぐらい迷いがなかったというか。それが「有名になりたい」という思いになって、のちのちはYouTubeに変わったという感じですね。やっぱり何か作品に携わるということはすごいことだなと思うので、今後もいろいろな作品に出ていきたいなと思いますし、この作品みたいに僕にしか出せない、型にはハマらない俳優になっていきたいなと、メチャクチャ思います。
──で、9月27日には『ベイビーわるきゅーれ』シリーズの新作、『ベイビーわるきゅーれナイスデイズ』が公開されますね。
カルマ はい。このドラマが終わって3週間後の公開なので、『伝説の頭 翔』で知ってくれた人には、また違った一面を見てもらいたいなと思います。
──「フリーの殺し屋仲介人」という役柄を見ただけでも、また面白そうな役じゃないですか(笑)。
カルマ そうですね、またこれもキャスティングが面白かったですね。オーディションとかではなかったんですけど、「フリーの殺し屋仲介人」って知り合いにも、幸いにもいなかったので、役作りは……。
──いや、普通知り合いにはいないですし、もしいたらいろいろと怖いですよ(笑)。
カルマ そうなんですけどね(笑)。奇しくも僕の知り合いにはいなかったので、役作りは確かに難しいところはありました。この『ベイビーわるきゅーれ』シリーズって回を重ねるごとに話題になっていて、その影響でキャストもすごく豪華になっていて、規模感も大きくなってという感じで、そのタイミングで携われたのはすごく幸せなことなんですけど……その分演技としては不安もあったので監督とお会いする機会があったんです。
──ほう。
カルマ 阪元裕吾監督って、歳が僕の1つ上なんですよ。監督と会ってお話しさせてもらって、やるとかやらないとかっていう感じでは全然なく、「この役はこうこうこうで、カルマ君でやろうと思ってて、だからこういう感じでやってもらいたいんですよ」ととてもイメージが明確で、お仕事が決まる前に監督とお会いさせて頂くこともなかったので、クルーの皆さんに身を委て大丈夫だと確信しました。
──カルマさんへの熱い想いがあったんですね。。
カルマ キャストの方人たちみんな、「そこ突いてくるか!」っていう人とかも多いですよね。監督の感性でキャスティングも動かれているのを感じました。
そういうところがお芝居にも出てるだろうし、殻を破って演じてるので、ぜひそこも見てもらいたいなって思いますね。
──東城とはまた違った面白さが。
カルマ そうですね。違うんだけど、東城に負けないぐらい濃いキャラクターなので。
──劇中では池松壮亮さんと、一番絡みが多いとのことですね。
カルマ はい。僕がフリーの殺し屋仲介人で、池松さんがフリーの殺し屋というところで。僕が持ってきた仕事をきっかけに、池松さんもどんどん絡んでいく感じです。それでどんどんすごい男になっていって、この作品をかき乱すっていう感じなんですよね。
──池松さんもこのところ、さらに……
カルマ もう、すごいですよね! 池松さんのような方とご一緒することに最初はもう、「どうしたものかな」と思ったんですけど、あんまり考えていかない方がいいと思って。『ベイビーわるきゅーれ』という作品全体も、いい意味でみなさん演じてる感があまりないというか。あれを成立させるような作品作りになってるだろうから、「お芝居やってます!」という感じはほぼゼロにしていった方がいいなとは思ったんですけど、演じていて「果たしてこれで大丈夫かな?」というのは、最初は本当に思いました。特に、目の前に池松壮亮という人がいる場面が多いので、余計ですよね。終わったあと、池松さんから「すごくよかったよ」って言っていただいて、そこが自信に変わっていってたというところもありますし、「これでよかったんだ」と思いながらやったところもあります。
これからも俳優を軸に、型にハマらずいろんなことをやっていきたい!
──『伝説の頭 翔』にしてもこの『ベイビーわるきゅーれナイスデイズ』にしても、豪華キャストですよね。共演者とか周りの人たちから学ぶことというのは?
カルマ もちろんそうなんですけど、終わってみて思うことの方が多いかもしれないです。僕もその時は気持ちがガーッって入ってるので。特に東城はそうでしたね。例えば文哉を見ていて、「シンプルに役者としてすげえな、こんなに忙しいのに、どのタイミングでセリフを入れてるんだ?」とか思うことはあるんですけど、東城の役って、現場にいる誰かを参考にして出来上がるものではないので。
──そうでしょうね。
カルマ むしろ僕を指数に、「こういう風に演じようか」と思ってくれる人がいたらなと思うぐらい、本当にいい意味でぶち壊してやろうと思ってましたね。誰かの演じ方を気にしてとか、周りの目を気にするんじゃなく。そういう感じだったので、本当に終わってみて、あの環境でやらせてくれたことは感謝してます。たぶん、お芝居の経験が少ない僕が気を使ってたらよくないと思いますし。どうであれ、全力でぶつかってきてくれる方が、たぶん相手にとってもやりやすくなるのかなと。現場を見て、そういう風に感じていることの方が多いかもしれないです。
──演技のやり方そのものではなくても、取り組み方とか姿勢の部分ではどうですか?
カルマ そういうところも、すごくありましたね。文哉とは2人で話すこともけっこうあったんですよ。それは2人のシーンがすごく多かったから、大事なシーンとかではけっこういろいろ話ながらやってましたね。例えば初めて2人が握手するシーンで、東城の握力で達人が痛がる場面があったんですけど、文哉は「本気でやって」って言うんですよ。本気で力一杯握ったら痛くないかな、大丈夫かなと思うけど、そうか、本気でやらないと、相手も「痛い」という演技ができないよなと気付いて。「痛くなきゃいけないんだよな」みたいな。その方が、たぶん本物のお芝居ができるっていう意味で言ってるんだろうなとか。
──なるほど。
カルマ あと僕からは、すごく大事なシーンで、「ここでこういうアドリブを入れようと思うんだけど」っていうのは文哉に伝えました。普段は言わないんですけど、それを伝えておいた方がいいのかなというタイミングでは言ってましたね。
──それも重要なシーンでは、相手と息を合わせるのに必要ということですね。
カルマ あと、東城は達人のことにいち早く気づいたりするじゃないですか。でも、「どこまで気づいてるんだろう?」とか「何を考えてるんだろう?」っていうのは、逆に文哉から直接聞かれたりもしました。「今、どこまで気づいてる感覚?」とか、「もう確信持ってる? 持ってない?」とか。
──そんな感じで演じ合ってたんですか。
カルマ そこらへんは、僕が言うと「やっぱりそうだよね」みたいな感じで。たぶん文哉は、僕なんかが言うのはおこがましいぐらい器用だし、経験がすごく積み上げられてるんですよ。それはすごく感じましたね。経験があって、得たものがすごく多い人なんだろうなみたいな。
──高橋文哉さんは制作現場で経験をどんどん積み上げてきた方だと思うんですが、カルマさんはまた全然別のところで、たぶんとんでもない経験値を得ているわけですよね。
カルマ そうなんですかね。僕って、勉強とかは苦手なんですよ。自分で見て学んだり、感じたりしないと入ってこなくて。「これはダメです」って言われても、どうしてダメなのかを自分で理解しないと、本当に今後ダメなものなのかどうかも分かるじゃないですか。YouTubeとかも、俄然そんな感じです。僕の人生自体、本当に「自分のお母さんは自分」って感じだったし、お芝居は特にそうだと思ってて。「芝居に正解はない」って、みんな言うじゃないですか。
──よく聞きますね。
カルマ だとしたら、「俳優としてこうやるべき」とかっていう教科書を今さら僕が得ようととしても、他の人たちに追いつけなくなると思うんですよね。すっげえぶっ飛んだところから参戦する、ダークホースみたいになっていきたいなと思いますね。
──そうすると、今回の東城みたいな「ああいうものをまた」みたいに求められるのも、また違いますよね?
カルマ それは違いますね。でもそれより、僕が俯瞰で自分の今後の活動とかを見ていく時に、この東城という役をきっかけに、「俺はこれだけできるんだぞ」っていうのを世に知らしめたかったっていうのはありました。それだけ東城って、振り幅がすっごい大きい役だと思うので。自分が自信を持っていろんな方向に手を出せば出すほど、それだけプラスに働く可能性がある役だと思ったので、「あ、こういうお芝居ができるんだ」っていろんな方向で分かってもらいたいなというのを、東城に乗せていこうという感じで、今後のことも踏まえて気持ちが入ったところも、正直あります。
──なるほど……。プロフィールに載っているこれまでの経歴を見ていても思っていましたし、今のお話を伺ってさらに確認したんですが……すごく失礼な言い方になるかもしれませんが、「策士」ですよね(笑)。
カルマ まあまあまあ(笑)。YouTubeも、ほぼそれでうまくいったので。枠組みを自分で全部考えて、ロジックを組み立てて、そのロジックに迷いを持たないことですよね。そのロジックも俺用に組み立てるだけなので。「俺だったらこれができる」っていう感じでしたからね。
──それで実際に成功したわけですよね。
カルマ YouTubeはそうでしたね。だからすごくありがたいことに、ドラマや映画の現場で、終わった後に他の俳優さんとかから「どうやって演じてるの?」とか「どうしてそういう感じでできるの?」とか聞かれるんですよ。それはたぶん、学校とかで学んだような感じではないからだと思って。もちろんこれが正解ってわけじゃないし、正解なんて一言で言えないんですけど、自分でも何なんだろうと思って。ただ終わってみれば、好きにやらせてもらったからかなというのもあるし、もちろん東城として撮影に入る前はすごくいろいろ考えてたけど、どこかのタイミングからは、やっててもう楽しくて仕方がなくなったんですよ。撮影が終わっても東城の笑い方が抜けなかったりとかもありましたし。
──ここからの「策」はどのぐらい思い描けているんですか?
カルマ だいぶアバウトなんですけど、大枠で言うと、俳優を軸としてマルチに出ていきたいっていう気持ちが強いですね。タレントさんになりたいというよりは、俳優は絶対的な軸として、バラエティーに出ていったりして、よりカルマを認知してもらいたいっていうのあります。いいお芝居をしたから作品が見られるというわけではないじゃないですか。やっぱり「この人だから見る」っていう層が多いと思うので、もっともっと活躍の場を広げていきたいなと思っています。本当にそういった意味でも、風穴を開けにいきたいというのはすごくありますね。
──では俳優としての夢とか目標も、「●●シリーズに出たい」とか具体的なものではない感じですか?
カルマ そうですね。ただいい枠で出られたら、それだけ見てもらえる可能性も高くなるわけじゃないですか。美化して言うと「役は気にしない」とか「いい役だったら何でも」ってなるけど、正直、今の俺はそう言っていられるほど余裕を持たせるつもりもないですからね。もちろん、より多くの人に見てもらえる作品に出たいというのはあります。その上で、やってみたい役とかはあります。恋愛ものとかもやってみたいですし、逆にありがたいことに、普通の人があまりやらない役とかが多かったりするので、逆に王道のものもやってみたいなと思うこともあるし、もっともっと深みがあるというか、東城に近いような異質な役とかもやってみたいってのもあるし。経験を積みたいというよりは、ただ単に楽しくて、早くいっぱいいろんなことをやりたいという気持ちが大きいかもしれないですね。
──今はまさにその夢が広がっている時期なんじゃないですか?
カルマ ホントにそうですね。やりたい役もいっぱいありますし、俳優業でずっとやっていきたいというところはブレてないので。逆にここまで10年間、諦めが悪かったって感じですけどね(笑)。
──いやいや、だからこそ今があるわけで。カルマさんは上京してからの下積み期間が5年あったということですが、そこで諦める人も多いと思うので。
カルマ 「諦める」っていう感覚がなかったですね、そもそも。絶対いけると思ったし、僕はまだまだ挑戦者だから、ここからが楽しみですね。だから「仕事いっぱいください!」っていう感じです(笑)。
──未来の大きな夢みたいなものは、何かありますか?
カルマ いや……何て言うんですかね、このタイプのまま、全国区ので知名度が得られたら、けっこう面白いかなと思います。そこからのお仕事もあるだろうし。自分で何かの仕事を生み出すかもしれないし。型にハマらない人物としてやっていきたいなとすごく思います。
──すごく面白いお話でした。
カルマ 全国民にそう思ってもらえるように頑張ります(笑)。
『伝説の頭 翔』(テレビ朝日系 金曜ナイトドラマ)
https://tver.jp/episodes/epfc6xisb7
『ベイビーわるきゅーれナイスデイズ』
9月27日(金)全国ロードショー
https://babywalkure-nicedays.com/
【カルマ Instagram】
https://www.instagram.com/karuma3923/
【カルマ X】
https://twitter.com/karuma3960
【カルマ YouTube】
https://www.youtube.com/channel/UCUnLtMTXZfrSeTJfO-N5NfA
ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。