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マンツーマンで自宅にいながらダンスレッスンできる 「カラダンス!」 とは?   <前編>

カラダンス!

マンツーマンで自宅にいながらダンスレッスンできる 「カラダンス!」 とは?   <前編>

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今年5月から展開されている子ども向けオンライン・ダンスレッスン「カラダンス!」。これは英会話などオンライン教育事業を展開している株式会社ハグカムと、全国でダンスアカデミーを展開するエイベックスのコラボレーションによって実現したもの。オンラインならではの特徴を生かし、ハグカムの「夢中メソッド®」にエイベックスが「カラダンス!」のために開発したカリキュラムを合わせることによって、子どもたちが夢中になって、楽しみながらダンスを学ぶことができるサービスとなっています。

このサービスの内容や開始までの開発過程を、株式会社ハグカム 代表取締役CEOの道村弥生さん と、エイベックスマネジメント株式会社マネジメント本部 アカデミー事業グループ ゼネラルマネージャーの鎌田博さんのお2人に語っていただきました。前編の今回は、「カラダンス!」の概要と、サービス誕生までの経緯についてのお話です。

互いの求めるものが一致して始まったプロジェクト!

──まずお2人それぞれ、この「カラダンス!」における役割や、どういった関わり方をされていらっしゃるかというところをご説明いただけますか?

道村 弊社は株式会社ハグカムという名前で子ども向けのオンライン教育事業をずっと手がけておりまして、2015年創業なので丸7年以上やっています。ですのでオンライン上での子どもたちがどうやったら楽しくなるかというのと、そこにおけるシステム開発とオペレーションを全て構築をしてきたので、開発や運営など事業主体は我々の方でやっているという形ですね。

鎌田 私は普段はエイベックスの中でスクール事業全般を見ているんですが、この事業に関しては、教材とかコンテンツ作りのご協力をさせていただいております。

──ということは、ハグカムさんのオンラインレッスンのノウハウと、エイベックスの持つダンスレッスンのノウハウが融合されているということですね。ハグカムさんは2015年創業ということでしたが、コロナ禍が始まる以前からオンライン教育事業を手がけられていたわけなんですね。

道村 ハグカムという会社は、子どもの好奇心を育てたいという想いで創業しました。創業時から「GLOBAL CROWN」というオンライン英会話スクールを展開していて、コロナ前はなかなか伸びなくて苦労していたんですよ。いろんなサービスがオンラインにシフトしていくのであれば絶対教育もシフトしていくだろうし、その時に質がいいものがないとユーザーさんはオンラインに流れてこないので、質がいい、つまり継続率が高いというところにずっとこだわって作ってきました。

──エイベックスにはダンスアカデミーがあり、その中でアプリを使った施策なども展開されていて、やはりオンラインの重要性も重視されていたと思いますが

鎌田 そうですね。コロナがきっかけではあるんですが、いわゆるリアルなスタジオを使った教育の場というのは限界があって、商圏がだいたい3kmから5kmと決まっています。なので我々も、47都道府県に必ず作っていこうという拡大戦略は取ってるんですが、それでも地元にダンススタジオがないという子どもたちも非常に多くなっているというのが一つ。あとは少し前ですが、10年ほど前に中学校のダンス必修化が始まり、それから3年前に始まったダンスのプロリーグ「D.LEAGUE」など、さまざまな形で野球人口を超えるぐらい、ダンス人口が増えてきているんですよ。これからは更にスイミングと同じように子どもの8割、9割がダンスに触れる社会が来るだろうなという点でいくと、リアルな場だけではなかなか対応しきれないので、オンラインの可能性については、この3年間、いろんな形で着手してきています。

──水泳とか野球に比べると、オンラインでやりやすいですよね。
 
道村 水がいらないですからね(笑)。
 
──「カラダンス!」の発端は、どちらから動かれたんですか?

道村 もちろんハグカム側からアプローチさせていただきました。創業時から、英会話を軸にして、いろんなジャンル展開をしていきたいという思いはあったので、そういう時に出てくるのはダンスとかプログラミングとか、習い事として人気が出てきているジャンルだったんです。実際、周囲からも期待されていました。ただダンスとなると自分たちでカリキュラムを作りきれないので、となるとエイベックスさんしかいないだろうと思っていて、創業の1年後ぐらいから、いろんな方向でエイベックスさんにアプローチをしていたんですね。最初はなかなか進展できなかったんですけど、英会話事業の方もぐっと伸び、我々も数年間かけてオンラインレッスンのノウハウがたまってきたというタイミングだったので、改めて本腰を入れてアプローチして、交渉させていただきました。

鎌田 厳密に言うと、この間にもう一つ新規事業開発の担当者がおり、その担当と話をしていた期間が、たぶん1年ぐらいありました。ちょうど我々も会社全体でグループ構造改革とか大きな組織変更があって、新規事業として一緒にやりましょうと。我々も、ダンスの動きを動画で撮って点数化するという、AIチックな分析ツールを作ったりしていたので、そこの担当者と道村さんたちが話をしていて、コロナ禍をきっかけに「こういう形でどうですか」という相談を受けたのが1年半前ですかね。そこからスタートしていきました。もともとこのオンライン授業に関しては、我々も手探りで始めていたことがあったり、アプリも自分たちで作ったりというのがあったので、わりと決断するまでの話は早かったですね。

──お互いが求めてるものが一致したと。
道村 そうですね。我々がオンラインの部分を担当してエイベックスさんがカリキュラム設計というところは初期から決まっていて。ただそれをどう合わせるのかについては、けっこう議論してきました。

──このサービス自体はいつから始まったものなんでしょうか?

道村 プレスリリースを出したのが5月のゴールデンウィーク明けだったので、今はちょうど半年が経過したところになります。

講師にとっても新しい、オンラインならではのメソッド!

──改めて、このサービスの一番のコンセプトというのは?
道村 まず「カラダンス!」の対象年齢が4歳~12歳で、特に注目している年齢層は小学校に入る手前ぐらいの5~6歳ぐらいのお子さんたちなんです。その時期って体作りにすごく大事な時期ですし、ダンス、体操、スイミングも含めてスポーツ系の習い事は人気のタイミングなんですね。そこにフォーカスして、オンラインでも体作りできますよというコンセプトで提供してます。

──サイトでは「初心者に安心」「オンラインで送り迎え不要」「1回20分で集中できる」という3つの特徴が紹介されています。まずオンラインというところで、これまでにも送られてきたDVDを見て行うという通信講座みたいなものはよくあったかと思うですが、そういうものとは全く違うわけですね。

道村 弊社の「GLOBAL CROWN」では画面越しに登場するリアルの先生が、英語を教えるだけじゃなくて子どもたちのモチベーションアップの声かけだったり褒めたりと、そういうことをしっかりやっていくからこそ、子どもたちにとって楽しいレッスンが毎回続くということが実現できていました。そこを我々の強みとして軸にしていこうという形で、まずオンラインでのリアルタイムのコミュニケーションがあるレッスンの設計にしています。

鎌田 そこにハグカムさんの「夢中メソッド®」というコンセプトを加えて、子どもたちがより夢中になれるダンスレッスンはどういうものだろう?ということを考えました。我々もこのダンスプログラムをやる時に、夢中になれる子どもを育てたいというコンセプトがあり、「どう夢中にさせるか」というところで、今までにないコンテンツ作りにチャレンジしました。なので、「他にないものを作るためにはどうしたらいいだろう」というところは、かなり時間をかけましたね。

──そのための方法の一つが、20分という時間設定ですか?

道村 そうですね。20分というのは我々からご提案させていただきました。子どもが集中するには20分ぐらいが限界で、長すぎると楽しくなくなってしまって、続けにくくなっちゃうんです。ダンスの観点で言えば、45分とかいろんなパターンがあったと思うんですけど、45分やって「疲れた!」となってしまうよりは、20分で定期的にやるという方でどうですかと。

鎌田 最初20分と聞いた時には、「短いな!」と思ったんですよ(笑)。やはり我々の中では45分から60分が普通で。習い事は親御さんの目線でいくと成長イメージというか、ある程度の成果を示してあげないと、なかなか継続しないと思っています。今も基本的にはそう思っています。ただ、ダンス人口がとにかく増えていく中で、みんながスタジオに通ってダンスをやりたいというわけではなく、テレビの前でちょっと音楽が鳴ってる時にダンスだと思っていないけど体を動かしている子どもたちって、相当いると思うんですよ。この子どもたちにターゲットを絞った時に必要なのは、今の我々のダンスクラスの形じゃないなとおもいました。そこで逆にハグカムさんの目線を入れて、新しいダンスレッスンの形を作った感じです。僕らだけだと、たぶんこの発想は出なかったので。

──なるほど。

鎌田 あとコンテンツの中身として工夫した部分というと、通常、先生と生徒1人のクラスでは、先生がひたすら教えています。そうなると、先生の数が課題になってきます。また最初、ハグカムさんの方では価値を高めるためにプライベートレッスンにこだわりがありましたので、生徒1人に対して先生1人となると、かなりの先生の数が必要になります。ここの課題をどうクリアしようというところから、映像教材を元に先生は画面内で動かずに口頭で説明しようなど、新しい概念が生まれていきました。そういうことが結果的に、話し合いの中で生まれていったという感じですね。

道村 プロジェクトが始まった時点で、それぞれの課題とか向かっていく方向性を話し合っていた時に、ここを目指しましょうと言っていたのが、オンラインならではとか、オンラインだからこそできることを考えましょうと。あんまり固定概念にとらわれずに、オンラインだったら何がベストなのかということを考えていきましょうということですね。あと鎌田さんがおっしゃったように、スタジオに行かないと教えられないみたいな、講師の人数の限界値も外していきたかったので、講師に依存しないということも考えていきましょうと。そこでさっき言ったように映像教材を組み合わせて、先生は画面の前でちゃんと教えるという形が、いろいろ議論されていく中で生まれてきました。

鎌田 そこは本当に、議論の中から生まれてきて形になったという感じでしたね。

道村 あと昨年12月にトライアルというか、試しにやってみたんですよ。マンツーマンで先生は自宅、子どもも自宅で、どんな感じになるのかと。先生がスタジオじゃなくて家でレッスンしようとすると、パソコンと、全身を映そうとする距離感って、3mから5mぐらいになるよねと。ここでダンスの先生が動いたら下の階に響いて、マンションの人だったらたぶんできないよねというのがけっこう分かってきたんです。あと、実際に先生が踊るために後ろに下がったりパソコンを操作するために前に行ったりすると、タイムラグが発生したり、離れると子どもの様子が全く見えないというようなことが障壁として出てきて。その中で、「動画を流して子どもたちに真似してもらうのはどうか」というのがアイデアとして出てきて、それを何回か試してみたりもしました。

──そうなると、講師の先生も今までとはまるっきり意識を変えないといけないということですよね。

鎌田 そうですね。意識を変えるというよりは、オンラインで教えようとすると、画面のそばに寄っていき、指示を出していました。小さい子どもさんだと、そんなに複雑なことはやらないので。Zoomで20人ぐらいいる中で1人1人を呼んで「OK!」みたいなことをやってるわけです。それって、端から見ていると踊らずに教えている状態でした。

──ああ、そういうことですね。

鎌田 オンライン上で指導するとなると、けっこうなストレスが溜まるんです。音が止まったりディレイが発生したりということもあります。それを、ダンスを教えるのに先生は一切ダンスをしないで、画面上で教えられるよということは、先生にとっては渡りに船というか、先生側もうれしい仕事のやり方だったと思います。これは僕らだけなら、なかなか発想として生まれなかったですね。

道村 実際、その後にリリースを出して講師募集を始めてみたんですけど、ダンスの仕事だけで仕事で食べていくというのはなかなかまだ難しい状況の中で、過去ダンスをやってて今は主婦でお子さんもいるという方とか、専門学生でこれからトレーナーになっていきたいからこういう仕事を探してましたとか、一般企業に就職したけどダンスには関わりたいですみたいな方とか、いろんな方が講師として入ってくれるようになったんですね。皆さん、何かしらダンスに触れたい、関連するお仕事をしたい、あと自分がダンスをやっててよかったという経験を次世代に伝えていきたい、みたいな思いがある方がけっこういらっしゃって、これは先生としてのニーズがあるんだなと思いましたね。

ダンス以前の運動感覚が学べる!

──もう一つ、「初心者でも安心」というところなんですが、ダンスや運動が苦手な子って本当に苦手だったりするじゃないですか。そういう子でも大丈夫なんですか?

鎌田 ダンスをどう捉えるかだと思うんですよね。ダンスって、分解していくと一つの動きでしかないんですよ。例えば歩いてる時にリズムを入れるとステップに変わったり、横にただ移動しているだけでも、かかとでトントンとリズムを入れるだけでサイドステップに変わったりなど。なので、どこからがダンスで、どこからが運動かみたいなことって、たぶん子どもたちも保護者も知らない人は知らないと思うんです。出来上がったものがダンスだと思っていて、あれが踊れないとダメだと。

──そういう感覚はありますね。

鎌田 でも、例えばサッカーや野球は、今の親御さんたちがやってきたものじゃないですか。だからバットさえ振れたらOKで、ボールが来たら打つだけだって言いますよね。そこでいちいち、ヒジの畳み方とかヒジの高さとかまでは言わないと思うんです。プロ野球選手をイメージして少年野球に入れたりもしないと思います。ダンスが日本に入ってきて約50年ぐらいなのですが、今の親世代だと、ちょうどダンスをやってる人たちが相当増えてきてるんです。たぶんそういう意味で、この10年ぐらい、親御さんたちの中でダンスを習わせるということへのハードルがすごく低くなっていると思います。そういう意味で子どもたちは恥ずかしがることもなく、すこしステップができたらすぐ拍手がもらえるんですよ、ダンスって。

──ああ、分かります。

鎌田 他の習い事だと、何らかの成果が出ないといけないですよね。でもダンスは今言った通り、動きを分解してその分解されたものを繋げるだけなので、意外とできたりするんですよ。なので、そういうことに気づいて、子どもが最初にやる運動なんだよといった概念が生まれてくるといいなと思っています。なので、ダンスは子どものうちにやっておいた方がいいよと。あとコーディネーション能力といって、子どもの運動神経を構成している7つの要素というのがあります。このうち5つから6つは、ダンスに含まれているんですよ。運動神経が悪い子は、この7つ要素のバランスが悪いだけだということが、ここ数年の研究で解明されているんですね。ダンスにはそれらの要素がしっかりと入ってるので、ダンスをやっておいた方がいいですよと。その上でプロになるかどうかはまた別です。そういう意味でいくと、家でちょっと踊ってるような子たちにダンスの楽しさや体の動かし方をレクチャーしながら小学生ぐらいまでやってくれると、中学生ぐらいから専門的に何かのスポーツをやった時に、いい影響が出てくるんじゃないかなと思いますね。

──体の動かし方を自然と学べるみたいな。

鎌田 オリンピックにも出ているような体操選手の話なんですが、両肩を水平に上げて自分の角度がずれてるかどうかをテストしてみた時に、自分の感覚だけでやると、真っすぐだと思っていても上に上がってるらしいんですよ。鏡を見ると、これだけずれがあるということが分かるわけです。自分の動きを頭で想像するということが、ほとんどのスポーツ選手はできていないと。それでいくとダンサーは、最初から鏡で自分の角度をとにかく研究している人たちなので、無意識的に自分の動きを空間的に捉える能力が身に付いていて、バランス感覚のようなものはすごく身につくと思います。ダンサーって、ゴルフがうまいんですよ。

道村 体幹がしっかりしてますからね。

鎌田 同じ動きをひたすら繰り返しますから。逆にバスケとか球技は苦手な人が多いですけど。

──フォームをしっかり守ればいいみたいなものには強みがあると。

鎌田 それと、自分の動きをちゃんと空間で捉えられるという点が、いろんなスポーツに反映されていると思いますね。ステージの上でも50cmぐらいしか離れてない隣の子と基本的に当たらないで踊れます。後ろに人がいて、向きを変えて移動しても、誰ともかぶつからないようにする感覚は、自然に備わっていく感覚なんですよ。そういうところを、もっともっと知ってもらえるといいなと思いますね。

道村 事前に親御さんにいろいろヒアリングした時にも、スポーツとかダンスをやってる方だと、今、鎌田さんがおっしゃってることが何となく分かってるんですよ。リズム感覚がすごく大事で、それがあるから運動神経がよくなると。だから幼少期に体操とかダンスやらせたいと言っていましたね。子どもって、リズムとか歌とかダンスが好きじゃないですか。幼少期に絶対、保育園や幼稚園でやってるはずなので。だからその流れで、それを体系立ててバランスとかステップとかというのを学べた方が、実は子どもたちの身体発達にはいい影響を及ぼすだろうなと思っています。

──ありがとうございます! 後編では、実際にレッスンを始めるのに必要なものとは?というところから伺いたいと思います。

 

撮影 長谷英史

子ども向けオンラインダンススクール【カラダンス!】
https://www.karadance.me/

 

記事情報

高崎計三

ライター

高崎計三

1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。