今年、40回目の開催を数える『足立の花火』。東京の夏の大規模花火では一番早く行われる花火大会としても有名ですが、2016年からエイベックスが演出を担当しているのです!
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【夏の風物詩「足立の花火」とエイベックスがコラボ!! 夏を彩る花火師さんと演出担当者にインタビュー】http://avexnet.jp/column/detail.php?id=1000108
PR映像もエイベックスが制作しています。
今年は40回大会ということで、例年以上の楽しい演出が計画されている聞き、満を持して足立区の近藤やよい区長と、2016年から演出を担当しているエイベックス・エンタテインメント株式会社 レーベル事業本部企画開発グループ ゼネラルマネージャー猪野秀碧さんに、大会へ向けての展望や「足立区とエイベックスの協力」の意義について聞いてみました。
──今年は40回目、節目の大会ということで、企画段階から気合いが違ったのではないですか?
近藤 気合いというより、やはり皆さんからの大きな期待がありますから。それに応えないといけないというプレッシャーは、スタッフにも相当あったんじゃないかと思いますね。
──その中で、今年の大会で一番のウリというのは?
近藤 まずは打ち上げ発数が違います。13600発ですね。
──13600発、ですか。
近藤 半端な数でしょう?(笑) 「14000とか20000とか、キリのいい数にできなかったの?」という声もあると思うんですが、なにぶん時間が決まっているものですから。1時間という時間の中で、限界に近い数字だということは聞きましたので、さすがに私も引き下がったんです(笑)。
猪野 一番、打ち上げ密度の高い花火大会だと思いますよ。この時間でこの数を上げるというところは、他にないですから。
近藤 余韻とか何にもないんですよ(笑)。トイレに行くヒマもないぐらいで、ほぼほぼノンストップなんです。ただ、間に迷子の放送とかを入れなきゃいけないという事情もあって、どうしても幕間を入れないといけないんですが、その時間ではトイレにも行けないですからね。
──花火大会というと、のんびり見るものというイメージのところもあると思いますが、足立区は違うんですね。
近藤 一つには交通規制の問題もあります。高速道路の規制もかかっていますし、駅に流れる人の波もあります。近年は、従来の木曜から土曜開催になりました。「ウィークデーに通勤客のラッシュとこれ以上重なると、安全が確保できないだろう」ということで、警察からも助言があったようです。
──かなりな人数になりますからね。
近藤 それから、私の数少ない経験から言うと、幕間に時間が空くと、どうしてもそこでテンションが下がるんですね。高まったテンションを一度下げると、また上げるのに苦労することを考えたら、ある程度テンションを保ったまま、最後まで突っ走るというのが『足立の花火』の醍醐味と言えるのかもしれませんね。
──なるほど。また今年は、新たにレーザー光線の演出が予告されていますよね。
近藤 一昨年でしたっけ、話がでたんですよね?
猪野 そうですね。以前に「演出をエイベックスでどうでしょう?」というお話をいただいた時に、一度見に行かせていただいたんです。その時に、確かに密度がすごかった。これは『足立の花火』の個性であり特徴であって、「演出する要素なんてないんじゃないですか?」という話が実はあって。
──入れるスキがないぞと。
猪野 それが3年前なんですけど、もしあえて演出する要素があるとすれば、それこそ“間”なんですね。“間”をさらにギュッと埋めれば、もっと密度が上がる。そうすれば個性がその方向に、より特化していく。でも、その“間”すらほぼないような、すごく迫力のある花火大会で。そこで何を使って埋めるのかというときに、いくつか提案させていただいたのが、レーザー光線とサイリウムの演出でした。光を使って、みんな一体になって応援しましょう、その光が余韻の間をキレイに埋めていけばいい、と。
近藤 あのサイリウムはよかったですよね。
猪野 花火の美しさを保つためには、うるさく埋めちゃいけないと思うんですよ。
他にもいろいろアイデアは出たんですが、安全面の問題や経費の問題など、いろいろあって。その中で、すごくリーズナブルで、派手で、なおかつ老若男女が素直に受け入れることができるのは、サイリウムだろうと。
なのでサイリウムから始めて、いつか、ある程度定着したところでやりたいなと思っていたのがレーザー光線だったんです。
それを今回、区長が掘り起こしてくださった感じですね。
近藤 いやいやいや(笑)。
──満を持してという感じですか?
猪野 何しろアノ場所では初めてですからね。会場周辺には車も走っているし、高速にも車がいるわけで、レーザーがドライバーの目に入って、事故でも起きたら大変じゃないですか。だからこの演出でケアしなきゃいけないところはしっかり詰めないといけない。
──初めてだから分かりませんでした、では済まされないですからね。
猪野 集まっているのはファンだから、ある程度は許してくれるという、僕らが普段いるアーティスト系ライブの関係性の中とは、全然違いますからね。
一般のお客様、しかもお子さんからご老人まで、全ての世代の方々がいらっしゃる中で、いろいろ勝手が違うなというところは、たくさんあります。
近藤 やっぱり事故が一番怖いですよね、どんな小さなものでも。来年以降の開催にも関わってくるものですから。天気と事故は常に心配ですね。
猪野 レーザーも、地味に始めていきますから(笑)。
近藤 サイリウムを入れていただいたことで、ただ単に見て帰るという受け身の大会ではなくて、参加型の能動的な大会になったと思うんですよ。そういう意味では、唯一の花火大会だと思っています。ここも重要なポイントですね。
──そこに音楽演出も加わるということですね。
近藤 私は『足立の花火』しか見たことがなかったもので、どこでも音楽がかかるものだと思っていたんですよ。でも、隅田川の花火でさえも、音楽がかからないというのを聞いて「えっ」と思いました。
猪野 音楽がないところもけっこうありますね。
近藤 あの「ドン!」と腹に響く音こそが花火の醍醐味で、音楽は邪道だとおっしゃる方もいれば、さらに感情を高めるために音楽は効果的なんだとおっしゃる方もいる。まぁ半々ですから、最初から最後まで音楽をかけっぱなしというわけにもいかないんですけど、最後の「威風堂々」がかかる中で上げる『黄金のしだれ桜』を見ていただければ分かるように、音楽の相乗効果ってかなり重要なんだなと思います。どういう音楽が花火に合うのか、また場面場面の演出にも合った音楽を選曲・提案していただくという点でも、私たちはエイベックスさんに、非常に大きな期待をかけているんです。
──しかも音楽も老若男女、様々な世代に響くものが必要ですよね。
猪野 僕らはあくまで決める立場ではなくて、一案として提案させていただいているというのが、まず基本です。その基礎案に入れた僕らのエッセンスの一つが、今回は40回大会なので、10年ごとに区切って、その10年の代表的な曲をかけていこうというプランでした。さらに、様々な年齢、立場、職業の人に響くには、大ヒットじゃなきゃいけないだろうと。そうすれば、40周年という演出の意図はすごくスッキリ通るんじゃないかということで、提案をさせていただきました。
近藤 過去の経験から、いくら大ヒット曲でも、あの場でかかってみると、花火の迫力に負けてしまう曲もあるということが分かりました。だから流行っていればいいというわけではなくて、難しいものだなというのは実感してましたね。
──区長は音楽がお好きだと伺っていますが、選曲にも参加されたんでしょうか?
近藤 私の案は一つも入らなかったんですよ!(笑) 「区長の提案のところだけで1時間分の花火玉が必要になってしまいます」って言われて。演出も含めて提案したんですけど、全部これ(手で×を作る)でした。
──それは残念でした(笑)。
近藤 それはいいんですけど(笑)、ただ、お客様のリクエストに応えるには、難しいところもあるんです。例えば、ナイアガラという仕掛け花火がマンネリだという声が出たので変えようとしたら、「あれがないと足立じゃない」という声が出たり。
──人によって思い入れが違いますからね。でも今年はナイアガラが復活するんですよね?
近藤 はい、復活します。しかもダブルで。そこは楽しみにしていただきたいですね。
──この花火大会は、足立区の年間行事の中でもかなり大きな位置付けなんですよね?
近藤 集客で言えば最大ですからね。これ以上のものはないわけですから、やっぱり区でも頂点のイベントですよね。
──そこにエイベックスとして関わるというのはどういうことですか?
猪野 勿論、僕らは民間の会社ですから、自治体と関わらせていただくという難しさは痛感していますね。自分たちの趣味性をそのまま表せるわけではなくて、“公”に対して、最適なものにするために何かを削っていく作業だなと。去年はサイリウム以外はほとんど関わっていなかったんですが、一昨年と今年はパートを一ついただくので、そこには削るという作業と、“公”に対する難しさというのを、常に感じています。「これ、いいじゃん、わーい!」っていう、普段のノリではやっていけないので(笑)。
──逆に自治体として、エイベックスのようなエンタメ企業と組むことの効果というのは?
近藤 私たちが求めているのは差別化です。7月21日に足立が今年の花火シーズンのスタートを切りますが、翌週からはほぼ毎日、都内のどこかで花火大会をやってらっしゃって、いろんなところに見に行かれる方もいるわけです。その中で、印象に残る大会にできるか、どれだけとんがれるか。とんがることがいいかどうかはまた別ですけどね。これも自治体間競争ですよ。
──足立区はとんがる方向を志向しているのでしょうか?
近藤 守りと攻めと両方だと思います。40回という歴史はありますが、マンネリに流れず、毎回来ていても「何らかの新しい発想で勝負してるね」と思われるような形のものを、常に投げかけたいという気持ちはあります。それは単に演出だけじゃなくて、花火の質とか、玉の色とかも含めてですが。
──伝統と革新のバランスを取るというのも違うんでしょうか。
近藤 アンバランスの中のバランスではないですかね。
猪野 このイベントは成長していますよ。私はこの3年しか関わっていませんが、区長さんの思いが全てのスタッフさんに届いているというのを感じています。最初の年、3年前は55万人という動員発表だったんですが、次の年が63万人、去年が66万人。たった3年で10万人以上増えているんですよね。おそらく、都内の花火大会でこれだけ動員が伸びているところはないと思うし、花火大会として常に成長しているということじゃないですか。また、常に進化もしている。この動員の伸びは、正しい進化をしているという証明でもあると思います。去年の圧倒的な人混みに、本当にそれを感じましたね。
近藤 土手に人が貼り付いてるんですよ! いえ、本当に!
猪野 帰りたくなかったですもん(笑)。テント持ってきて泊まろうかと思ったぐらいで。もう収容人数的には限界に達してるんじゃないですかね?
近藤 本当に限界なんですよ。江戸川の花火と比べると、川幅も細いですし。だから上げられる花火の玉の大きさも制限されてしまうんです。その、本当に限られた中で、これ以上人が入らないというぐらいに来ていただいてます。
──それだけ増えているということは、区外からもたくさん来られているということですよね?
猪野 ですよね。『足立の花火』はソーシャルメディアでの評判がすごくいいんですよ。
近藤 ああ、そうなんですか。
猪野 今のメディア特性としては、ソーシャルの評判がいいと、既存のメディアよりも効果が高いんですね。だから3年で10万人以上増えているんだと思います。
──PRにはどのような取り組みをされていますか?
近藤 もちろんポスターは毎年製作しています。また、区外からどれだけ呼び込めるかというのも一つの勝負ですから、エイベックスさんにPR映像もお願いして、カフェや北千住の駅などで流して、不特定多数の方の目に触れるようにしています。今年は東武線の電車の正面に、『足立の花火』のヘッドマークをつけて走るという話もありますし。
──さて、お客さまにはこの花火大会を、どんな風に楽しんでほしいですか?
近藤 参加してほしいですね。手を振ったり声を出したり体を動かしたりすることによって、ただ上を見上げてるだけでは得られない、エキサイティングな感覚や興奮というのを得られるんじゃないかと思うんです。私はいつも北千住側から見ているんですが、ふと見ると、対岸からもサイリウムや携帯を振っている方がいらっしゃるんです。川をはさんでこちらとあちらで、コミュニケーションが図れる場面があるんですね。そういう楽しみ方というのは『足立の花火』ならではじゃないかなと思いますので、できればその一員になって参加していただきたいなと思います。もちろん、静かに語らいながら見ていただいてもいいんですけど。
──演出という点からは?
猪野 職業柄、僕はいろんな自治体の方とお仕事させていただいているんですね。花火大会という形では足立区さんだけなんですが。その中で、足立区さんの特徴というのは熱さと、仕事に対するプライドの高さ、熱量。そのへんが素晴らしいなといつも思うんですよ。できることの最大限をいつもやっているというか。今持てるものの中で、最高のものは何かということを常に考えてらっしゃって、それが足立区の花火大会にはいつも出ている気がします。その皆さんの熱い思い、区民に対する誠実さや姿勢というのが、全てなんじゃないかと思います。
──今日、近藤区長のお話を伺っていても、感じます。
猪野 だから、僕らが感じるプレッシャーもすごいんです。ムダなことは一切できないし、レーザーにしても花火を殺してはいけない。何発も何発も打つことはできるんですけど、それで花火を殺すことは絶対にやっちゃいけないんですよ。下品になるし。そう考えると、足立区の皆さんの、仕事や区民に対する思いがハンパなく重いということを僕らも、気がつくと背負っている感じで。それがこの花火大会の一番の個性なんじゃないかと思いますね。だから今年もそれが、きっと進化した形で出ると思うんです。それをふっとした時に感じてもらって、「この区に住んでいてよかったな」と思ってもらうのが、僕らが一番やるべき仕事だと思っていますね。
近藤 レーザーのリハーサルって、できるんですか?
猪野 ぶっつけ本番ですね。花火を上げられないので。ただ、タイムラインに沿ったバーチャルなリハーサルはやりますが。
近藤 ああ、そうなんですね。
猪野 これは全くの余談なんですけど、ライブで関わっている業者さんの中から推薦を受けて、あるレーザー業者さんに発注のご相談をしたら、足立区の業者さんだったんですよ。
近藤 ええっ!
猪野 子供の頃から『足立の花火』を見ていて、いつかこの花火大会で自分のレーザーを打ちたいと思ってたらしいんです。
近藤 もっと早く聞いていればよかったですね!(笑)
猪野 最初は全然知らなかったんですけど、初めてのセッションの時に、「いや実は……」という話になって。だから会場の地形も図面がなくても分かっているし、演出の話をしていても「子供の頃から見てるから頭に入ってます!あの川に反射させるのは、緑色のレーザーがいいんです!」って言われたりして
──巡り巡って、地元の企業がまた一つ貢献されることになったわけですね。では最後に、区長から当日のお客様にメッセージをいただけますか?
近藤 本当に、楽しみにしていただければと思いますね。期待して会場へ足を運んでいただければ。東京の夏の大規模花火ではスタートを切る花火大会ですから、その名に恥じない演出を揃えて、お客様をお迎えしたいと思います。
──区長ご自身も楽しみでいらっしゃいますよね?
近藤 いや、申し訳ないですけど、楽しむ余裕なんてないんですよ。最後の「威風堂々」がかかると、「これで今年も無事に終わったな」と思って、ようやく緊張がとけてハラハラと涙が出てくる感じです。またそこから2時間ほどは、お客様が無事に帰宅されることを祈るばかりです。
観客動員も増え続ける中、さらに様々な試みがなされようとしている今大会。そこには近藤区長をはじめとする足立区スタッフの熱い思いがありました。さらに進化を遂げる『足立の花火』にご期待ください!
第40回 足立の花火
2018年7月21日(土)
午後7時30分~午後8時30分
荒川河川敷(東京メトロ千代田線鉄橋~西新井間)
荒天の場合は中止
http://adachikanko.net/event-hanabi40
ライター
高崎計三
1970年2月20日、福岡県生まれ。ベースボール・マガジン社、まんだらけを経て2002年より有限会社ソリタリオ代表。編集&ライター。仕事も音楽の趣味も雑食。著書に『蹴りたがる女子』『プロレス そのとき、時代が動いた』(ともに実業之日本社)。