夏はやっぱり花火大会!
ということで昨年も花火大会特集をしたのですが、
今年はなんと!エイベックスが、足立区観光交流協会と足立区主催の花火大会「足立の花火」をプロデュースしちゃうのです!!!
今回は7/23に開催される「足立の花火」が作られてゆく過程を花火師さんに、音楽と花火をレコード会社として演出する演出担当者にインタビューを敢行しました。
他のメディアでは見られない花火大会が作られる製作過程を是非、ご一読ください。
そもそも花火って!??
秩父に本社工場を持ち、様々な花火大会を手掛ける花火師 金子花火株式会社の金子 明(かねこ あきら)さんに話をお伺いいたしました。
–金子さん、本日は宜しくお願いします。
金子)宜しくお願いします。
–早速ですが、花火の大雑把な種類って、どんなバリエーションがあるのでしょうか。
金子)大きく分けると花火って2種類なんですよ。割物(わりもの)、ポカ物。大きく「ドカン!!」と丸く開くのが割物。運動会の花火なんかに使用される音だけのものをポカ物。
そこに色んな種類が出てくるわけです。割物であれば、丸いものとか、何か形を描くものとか、そう考えていくと20か30くらいですかね。で、ポカ物が10強ですかね。
組み合わせによってはいくらでもできてしまうし、色を言い出したらきりがないんですよ。
–金子花火さんのホームページを拝見したのですが、パステルカラーでまとめた花火演出がありました。色味で言うと何種類くらい作れるのでしょうか。
金子:紅、青、緑、黄色、紫、金、銀。こんなのが主流ですかね。パステルカラーのものになってくると、ブルー、ピンク、イエロー、エメラルドグリーン、あとオレンジ。基本はその12色ですかね。
厳密に言えばみんな同じ紅でも違っていて、業者によって火薬の配合が違うんです。そこまで言い出すときりがないんですけどね。
–花火の技術というのは何年くらい前からあるものなのでしょうか。
金子)明治の終わりくらいにはほぼ確立したみたいです。
–江戸時代からあるものだと認識していましたが…。
金子)江戸時代のものは線香花火の色ですよね。あれしか色がなかったんです。当時は火薬の種類が違っていて、温度が低いんですよ。燃える金属が限られてしまう。オレンジっぽい色の鉄を燃やすしかなかったんです。
–そうだったのですね。そうして明治になって技術革新が来ると。
金子)外国から塩素酸カリウムというものが入ってきて、これで火薬を作ると温度が高くなります。温度が高くなるといろんな金属が燃えるので、紅、青、緑という色が出来るようになったというわけです。
–花火の先進国はどこなのでしょうか。
金子)日本でしょう。火薬は中国が早かったですけど、花火で世界一と言ったら日本でしょうね!!
恐らく、消費量も技術も世界一だと。
–金子花火さんでは年間どのくらいの数を何人で作られているのでしょうか。
金子:具体的に作っているのは16名ですかね。弊社全体の年間製造数は60,000発くらいです。そのうちの2割くらいが「足立の花火」になります。
花火への想いとは!?
–花火職人になったキッカケはなんでしょうか。
金子)親父がやっていたんです。その後、兄貴の代になったのですが「お前もやれよ」となって始めました。
小さい時からその火薬の匂いは嗅いできたから、自然だったかな。
–正式に職人になられたのは何歳くらいですか。
金子)会社に入ったのが29歳です。それまでは学校出て他の会社にいて、その後です。
–花火職人になってよかったなって思う瞬間や出来事はありますか。
金子)改めてそう考えたことはないけど…。でも、その打ち上げ現場に行っているというのは、怖くて熱くて苦しいという大変な職場なんですけど楽しいんですよ。
うーん、何の魅力なのかなぁ(笑)
–お手紙もらったりしますか。
金子)ありますよ。花火の感想を書いてくれたりね。普通はハガキでもらいますが、封書でいただいたことがありますね。
兄が音楽とのジョイントを始めたのが1975年頃からで、1995年位からコンピュータで点火できるようになり、その頃から段々反応が来るようになりました。その頃は「初めてこんな花火大会を見ました」「すごく感激しました」とか、あとは「曲が好きになっちゃった」とか「あの曲はなんていう曲なんですか」とかね。
そういう普段と違うので印象に残ったのかな。随分喜んでもらえたみたいで私も嬉しかったです。
花火大会「足立の花火」は、どうやって構成されているのか!?
–「足立の花火」は全編音楽の花火というのを平成18年から行っていたとお聞きしています。今回エイベックスとコラボレーションでやるということで、何か新たな想いはありますか。
金子)これまで私がやってきたことと、あんまり変わらないです。ただ、やはり音のプロだけあって、面白い組み合わせや構成になって「楽しそうだなぁ」と思いましたね。面白そうなものが出来ました。
–構成はもう決まっているんですか。
金子)もう全部決まっています(取材時は6月の後半)
–どれくらい前に構成を決定させるのでしょうか。
金子)6月の初めくらいから工場が「足立の花火」として動きますから。それまでは全体で動いていて、構成を決めるわけです。作っちゃったらどうしようもないですからね(笑)
なので、それまでに「この音楽のこういう音に合わせて、この花火を打たなきゃいけない」っていうデータを工場に送付して制作にかかります。
–ところで、花火と音を合わせる場合にはどういう手順を踏むのでしょうか。
金子)花火は点火時間を前もってプログラミングしておきます。音楽の波形上というんですかね、時系列で置いていく感じです。
花火って地上から現象が直ぐ見えるものと、3秒間経ってから見えるものがあるので、それをシステム化するのにきちんと組み込んでいかないと合わなくなってしまうんです。
–音に反応してオートマチックに上がったりは出来ないのですね…。
金子)ただ発射することだけであれば出来るんでしょうけど、ドンって火をつけてドンって上がっていて現象が始まるわけでしょう。それと下から始まっていくのもあるじゃないですか。現象の時間は花火それぞれみんな違うんですよ。
それを想像しながら行うので、知識と経験が必要になりますかね。
–なるほど。やはり「職人」である金子さんだからこそのお仕事なんですね。では最後に、その素晴らしい花火を見るのに最適な場所を教えてください。
足立区観光交流協会担当者)場所に関しては私からお答えします。綺麗な写真を撮りたい方や、ゆったり花火をお楽しみいただきたい方は、堤防の北側(梅島駅側)がオススメです。全体的にワイドな画角で撮れることもありますし、東京スカイツリーをバックに花火をご覧いただけるのは北側ならではの楽しみ方ですよ!!
–スカイツリーが花火とともにフレームに入るのは嬉しいですね。金子さんからも最後にメッセージをお願いします。
金子)一番は安全に。係員の人の言うことを聞いてください。花火を中止しなくてはならないこともありますので。
まず、安全に見てもらうということですね。
それと風向きによってはゴミも降ってくるんですよ。風下の人が気をつければいいですよね。煙の話もあるし、風上で見るのがいいでしょうね。写真を撮る人は特に。
「足立の花火」でお待ちしています。
–ありがとうございました。
エイベックスが花火大会「足立の花火」を演出するというハードル!?
次にインタビューしたのは、エイベックスとして花火の演出を担当している猪野秀碧(いの ひでみ)さんです。
猪野さんは元々ディレクターやプロデューサーとして音楽制作の現場にいらっしゃった方。そんなエンターテインメントを知り尽くした猪野さんには、こんなチャレンジと苦労があったそうです…。
–今回の「足立の花火」とのコラボレーション。どのような流れで現実になったのでしょうか。
猪野)そうですね。足立区さんとは足立区公式アプリ「アダチさん」を作るというお仕事がキッカケだったのですが、ちょうど昨年の「足立の花火」を見てアドバイスがほしいということで「足立の花火」にも関わることになりました。
【足立区公式アプリ「アダチさん」】
http://www.city.adachi.tokyo.jp/hodo/ku/koho/application.html
–猪野さんはディレクターやプロデューサーという立場からライヴ演出で花火を使用したことがあったかと思いますが、「足立の花火」を見てどう感じましたか。
猪野)初めて見たのですが、「色んなトライをしていて、約1時間で12,000発も惜しげもなく打ち上がる花火大会に言うことなんてない」と思いましたよ(笑)それくらい、盛大な花火大会でした。
–確かにライヴで上げる花火とはボリュームが違いますからね。
猪野)そうなんですよ。それで「僕たちエンタテインメント、もしくは音楽のプロが出来ることってなんだろう」という視点に立ってみたんです。
で、土手やスピーカーの位置などを考慮して5案を提案してみました。
その中で1案に絞ってもらって、今回は第2幕とサイリウムの演出を任せていただくことになりました。
–第2幕は具体的にどのような演出になるのでしょうか。
昨年「足立の花火」を拝見した時に音楽のプロとして、花火とともに流れる音楽の繋ぎ方やアレンジはもっと良く出来ると確信しました。
例えば、DJがクラヴを盛り上げるように「抑揚のある楽曲を使用しつつ、他の曲との繋ぎも自然にする」とか「イントロを数小節長くして、期待感を煽った上で花火を上げる」といった工夫です。
–確かに花火でもクラヴのような抑揚や一体感があると、より楽しめそうですね。
猪野)そうですね。ただし、我々も初めてのことで、大きく戸惑ったことがありました。
–どのようなことでしょうか。
猪野)例えば、消防などへの申請・許諾といったことです。僕たちはライヴに向けてギリギリまで楽曲のアレンジや尺の調整を行います。ですが、「よりシッカリとした、細かい申請と許諾」が必要なので、思ったより早い段階で申請の締め切りが来てしまって…。
–もう一つの演出、サイリウムはどのような提案なのでしょうか。
猪野)「全体の演出として」いらっしゃった区民の皆さん全員が関わることを目的にサイリウムを提案しました。そして、一人でも多くの方に持ってもらって参加していただきたいので5万個を用意しました。
-5万個のサイリウムが花火を彩るというのは、とてもキレイな演出になりそうですね。
猪野)はい。横浜スタジアムと同じぐらいの人数ですからね!! サイリウムが土手一面を埋め尽くす光景を写真に撮ったら画になるでしょうね~。
ただ、サイリウムにも苦労がありました…。ゴミ問題と注意書きです。
–あぁ、確かに…。
猪野)スティック型サイリウムだと手に持っているからどうしても邪魔になって捨てる方が出てしまう。そんな話がありまして、ブレスレット型サイリウムになりました。
–なるほど。
猪野)注意書きは「お子さんが食べたりしたら…。」というようなリスクを少しでも回避したく必要なのですが、注意書きにもゴミ問題は出てくるわけです。
頭抱えましたよ(笑)こういうことにも対応しなければならない大変さをとことん学びました。
–どうやって解決したのでしょうか。
猪野)裏面を「メッセージカード」にしました。その日の夏の想い出を書けるようにしたんですよ。そうすれば記念になって捨てませんからね。
これは、屋外ライヴなどでも使えるアイディアだなと確信しています。
「足立の花火」で伝えたいこと、楽しんでほしいこと
–猪野さんや関わっているスタッフの方々が「足立の花火」へ込めた想いは、どのようなことでしょうか。
猪野)もうね、徹頭徹尾一つだけ「みんなの作る花火大会」というのがテーマなんです。
エンタテインメントのプロが行う演出のトレンドは「観客が演出の一役を担う参加型」です。ソーシャルやネットだって双方向のコミュニケーションですよね。
–確かに。最近のライヴは確かに双方向コミュニケーションが多くなっていますね。
猪野)昨年、「足立の花火」を見た時に「打ち上げる側からの一方通行感」があって。「打ち上げる側」と「見る側」、「制作する者」と「お客様」を、「お客様も一緒に作る花火大会」に変えませんかというのが一番大きな提案でした。
だから、「お客様自身も会場全体の演出に一役買っている」というマインドになってもらうために、サイリウムを使用した提案をしました。
–とても良い話ですね。
猪野)さらに、足立区の行政指針は「協創(きょうそう)」というコンセプトを掲げてらっしゃって、今回の提案はピッタリ合致するというお話させていただいて決定を頂戴しました。
–そうなると「誰もが分かる音源」でなければならないという難しさがありますよね。
猪野)「足立の花火」の楽曲はリクエストで選ばれているそうです。ただし、第2幕だけは我々が演出を受け持ったので我々で決めさせていただきました。もちろん、最終ジャッジは足立区さんにしていただいてですが。
その2曲が映画「アナと雪の女王」の「Let it go」と、“SEKAI NO OWARI”の「Dragon Night」です。
歌詞の構成、楽曲の顧客の広さ、認知度から選んだのですが…。この2曲にした最大の理由は、大サビがあったり、突然音がなくなったりと1曲中にアレンジの幅広さがあるからなんです。
これが演出の肝です!!
応募されてくる楽曲は「花火とのマッチング」と関係なく、「個人の思い出」だったりで楽曲が選ばれますよね。なので、強弱の付けづらい平坦な楽曲を使用することになってしまっていました。
昨年、そこに気付いたんですよね。
–うん。さらに、いい話です。ありがたいです(笑)最後に来場者の方にメッセージをお願いします。
猪野)先程も申し上げましたが、とにかく今回の「足立の花火」は「みんなの作る花火大会」です。来場される皆さんにはめいっぱい手を振っていただきたいです。
一人一人の振りが雰囲気を左右します。一人一人が花火の演出家です。それを是非実現させてください。お願いします。
–猪野さん、ありがとうございました。
いやー。今回のインタビュー、お二方ともどこを切っても良い話でしたね!!
お二人とも「職人」というか「プロ」として一貫した想いを突き通されているのが、カッコ良かったです。
「足立の花火」は2016/7/23(土)に開催です。ぜひ、足を運んでください。
【足立の花火 公式ウェブサイト】
http://hanabi.adachikanko.net/38hanabi/
【足立区役所 公式ホームページ】
http://www.city.adachi.tokyo.jp/
【足立区役所 公式Twitter】
https://twitter.com/adachi_city/
【足立区役所 公式Facebook】
https://www.facebook.com/adachi.event
取材協力・一般財団法人 足立区観光交流協会
http://adachikanko.net/
金子明氏撮影・名鹿祥史
猪野秀碧氏撮影・重岡幾太郎
ライター
雜賀信之助(サイカシンノスケ)
プロデューサー。PRイベントや映像制作、キュレーションサイト『和食ラボ』等の運営・進行管理を担当。