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高野洸

【高野洸】自分を支えてくれている人について行きたいと思ってもらえるような背中を見せていきたい

2024.01.31
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音楽
インタビュー
高野洸がアーティスト活動5周年を記念して自身8枚目となるシングル「ex-Doll」をリリース。これまでアーティストとして楽曲制作や作詞、ライブ制作にも積極的に携わってきた彼が「自分に従順でいい 解き放つ 自由に」と歌うのは、まさにアーティストとしてより自由に、自らの意志で突き進んでいくという意志表示でもある。昨年から7箇所11公演を巡ったツアーを完走したばかりの彼に話を聞いた。


「ex-Doll」は「自分らしくパフォーマンスすること」がテーマ
 
 


──いよいよ8枚目のシングルですが、今回はデビュー5周年を記念してのシングルになります。高野さんにとってどんなシングルになりましたか?
 
高野 曲調も含めて、大人っぽくなったように思います。今回のシングルに収録した3曲を通して、自分と照らし合わせるような歌詞とテーマが多いので、そういう意味ではより今の自分が出すシングルとしてふさわしい、自分を体現するようなシングルになっていますね。

──収録曲について一曲ずつ詳しく伺おうと思います。まず表題曲でもある「ex-Doll」について。
 
高野 まず曲を選んでからテーマを作ったんですけど、5周年という節目に出すシングルというのもあって、自分に問いかけるような内容にしたいなという風に思ってて。今の自分に必要なもの、大事にしたいものってなんだろうと考えた時、自分らしくパフォーマンスすることだと思ったので、それをテーマにしました。曲を聴いて浮かんできたワードを作詞家さんに渡して歌詞を作っていただきました。
 
──タイトルの「ex-Doll」は、その単語が持つ意味も含めてインパクトが強いですよね。
 
高野 個人的にはめちゃくちゃいいなと思って気に入っています。「人形にならない」というワードも希望として作詞家さんに送っていたので、それをサビにハマる形にしてくださった上に、文字面がもうかっこいい、美しいじゃないですか。自分のイメージにぴったりのワードを出してくださったなって、感動しましたね。
 
──今までの高野洸というアーティストのイメージとはまたガラッと変わった曲が出てきたなという印象があったんですけど、「ex-Doll」を意図するきっかけみたいなものはあったんですか?
 


高野 今まで活動してきた中でずっと考えてきたことではあるんですよ。特にライブって、ある程度は自分で作った上で臨むとはいえ、自分のパーソナルな部分や今の実力がモロ見えする場なんですよね。そういう場で、今の自分だからできるパフォーマンスってなんだろうと考えたら、つまるところ自分らしさを理解してないといいものは作れないと思ったんですよね。周りからの見られ方とか気にしててもしょうがないなって。音楽って好き嫌いがあるものだからこそ、自分の好みややりたいこと、目指しているパフォーマンスやアーティスト像を突き詰めたいなと思って。そういう想いがこの曲には込められています。
 
──歌詞からも「自分はやりたいことやっていくんだ」という強い意志が感じられました。
 
高野 そうですね、自分もそこは強く思ってます。たぶん「ex-Doll」という字面だけ見るとちょっと強すぎるように感じられるかもしれないんですけど、僕なりの考えを表現してくれていると思っていて。日本語の歌詞が少し強い言葉でも、曲にハマるように落とし込んでくれたのでメロディにうまくハマってるし、曲としてはリラックスして聴けるよさがあるので、いい塩梅だなと思いました。
 


──5周年を迎えるアーティスト活動の節目にこの曲が生まれたということにもすごく意味を感じたんですけど、ただ、高野さんは今までもやりたいようにやってらっしゃったような気がしていたんですね。なのでこの曲を聴いた時、それでも足りなかったのかなって思っちゃいました。
 
高野 いや、違うんですよ(笑)。別にそんなことはなくて、全然不満があったとかじゃないんですよ!
 
──5年を経て、アーティストとしていい意味での欲というか、もっとやりたいことが出てきたり、もっと表現してもいいんだと思うようになりました。
 
高野 僕には今まで支えてくださっている方がたくさんいて、その全員に恩があって、それを返していきたいという気持ちはもちろんあるんですけど、その人たちがどれだけ自分のために尽力してくれるかって、結局は自分がどれだけいい背中を見せられるかだと思うんですよ。みんなについてきてもらえるような自分である必要があるので。この仕事は人と人との対等な立場ではあるけど、まずは自分が自分と戦わなきゃいけないというのは思ってますね。
 
──「ex-Doll」の歌詞から自由でありたいという思いを感じたんですけど、高野さんが一番自由を感じる瞬間はどんな時ですか?
 
高野 次の日がオフな時ですね(笑)。アラームをかけずに寝れる時は自由ですよね。いつもはアラームによって時間を制限されてるから、それがない前日の夜は楽しいですよね。そういう時はお酒飲んだりしますね。あとはゲーム。そんなに飲み過ぎないので、普通に飲みながらゲームできます(笑)。
 

自分の特徴“優柔不断”を詞に盛り込んだ「チクタクタ」



──2曲目の「Paradise」はまた軽やかで、ステップが似合いそうな曲だなと思いました。
 
高野 ほんとに軽やかな曲ですよね。「ex-Doll」はベースが効いてる曲なので、その次の曲としてぴったりだなと思いましたし、サウンド的にも軽くて重低音が少ない分、ふわふわしてるじゃないですか。それをテーマにしてみようと思って、飛んでる感じとか、次元をまたぐ感じとか、浮遊感をテーマに提案させてもらいました。それをKanata Okajimaさんが解釈してくださって、歌詞を書いてくださりました。
 
──曲としてはさらっと聴けるけど、レコーディングはすごく難しかったんじゃないですか?
 
高野 そうですね、この曲は特に考えましたね。2人で歌ってるみたいな聴こえ方が素敵だなと思ったので、メロディをさらっと歌う人と、ラップの方はなるべく喉声で歌う、みたいな。ラップはどのくらい音程をつけるかも考えて、英語を話す方の特徴を踏まえてやってみましたね。個人的にはアウトロの「LA Phuket Doha Bruges キミとだと All brand new」というパートがすごく気持ちいいですね。最初は歌詞を見てもしっくりこなくて。で、よく見たら、都市か!って思って(笑)。最初LAって何のことを言ってるんだろうとか、プーケットもこの綴りを見たことなかったし。でも、ふわふわ旅してる感じというか、いろんなところをまたいでいくっていうイメージが僕の中にもあったので、都市の名前を言っていくっていうのはすごくおしゃれだなと思いました。
 
──「Paradise」というタイトルにちなんで、最近感じたパラダイスはなんですか?
 
高野 ライブツアーはきれい事じゃなくパラダイスでしたね。いろんな地方を回らせてもらったんですけど、ライブで行くことに加えてその地方のおいしいものを食べる機会があるというのはまさにパラダイス! 本当にどの地方のごはんもおいしかったんですけど、今回はツアーの前にテレビの仕事で仙台にお邪魔したんですね。その時、一人でごはんを食べに行ったんですけど、そこがまたパラダイスでした。仙台のお店を知らないからGoogle map頼りで、めちゃくちゃよさそうなお店を見つけて行ってみたら、しっぽり系の割烹っていうんですかね? おじいちゃんがやってる素敵なお店で、筑前煮とかお刺身とかあったんですけど、メニューが置いてないんですよ。その代わり、メニューを書いた紙が壁に貼ってあるっていう。今日のおすすめメニューも、聞かないとわからなくて。だから「今日は何があるんですか?」なんて話をしながらメニューを決めて、「これに合う日本酒ありますか?」って聞いておすすめを出してもらったりして、すごくいい時間でした。牛タンも出してもらいました。
 
──3曲目の「チクタクタ」は高野さんが作詞をされてるんですよね。性格を詳しく知っているわけではないですけど、すごく高野さんらしい曲なのかなって思いました。
 


高野 僕、けっこう優柔不断なんですよ。たとえば晩ごはん何にしようってなった時もまずジャンルで迷いますし、いざお店に行ったらそこでまたメニューで迷っちゃう、みたいな。どれも捨てがたいと思うからこそ迷っちゃうんですよね。悩む時は基本的にいいものの中から選ぶ時なので。消去法で選べる時はスパッと決まるんですけど。服を買う時も「この服、めっちゃいいな」って思うけど、買わないでお金を使わないという選択肢ももちろん“いい”わけじゃないですか(笑)。それも迷いますね。
 
──じゃあじゃあ、どうしても決めなきゃいけない時に決断する方法はなんですか?
 
高野 一番後悔しなさそうな方を選ぶようにしますね。悩んだ末に、ですけど。服とかは、買わなくて後悔したことはあんまりないですね(笑)。決めたら後悔はしないタイプなんですけど、ただ、服とかは気に入ってもその場ですぐには買えないです。違うお店も見たりして、戻ってきてから買う、みたいな。
 
──「チクタクタ」はメロディもおしゃれで面白い曲ですよね。
 
高野 最初に聴いた時は、ちょっとボカロPっぽい曲だなって思いました。そのジャンルは純粋に好きで、ただ自分がやりたい方向性ではないかなと思ってたんですよね。けど今回のシングルはバランスを見た時にこの曲が入ると面白いと思ったし、いい意味でボカロPっぽいだけじゃないというか。聴き方によってはR&Bでもあるし、あとは作詞でいいバランスを見つけられればいいんじゃないかなと思って決めました。音色が面白いんで、ぜひシングルに収録したいなって思ったんですよね。
 
──たしかにこの曲が入ることで幅が広いシングルになったと思います。独特の可愛らしさがある曲ですよね。
 
高野 歌詞の段階でどこまで振り切ってやるか、というのも考えたんですけどね。もっと分かりやすく振り切ってもよかったんですけど、そこはちょっと優柔不断を発揮しながら悩んだ結果、こうなりました(笑)。
 
──今回のシングルには今の自分に照らし合わせて作ったという話がありましたけど、この曲でいうとご自身が作詞もしているので、特に自分が反映された曲になったんじゃないかと思いました。この曲で気に入っているところはどんなところですか?
 
高野 “優柔不断”というワードは絶対に入れたいとは思っていて、語呂があからさますぎてどこに入れようかなって思ってたんですけど、サビ前がめちゃくちゃちょうどよくて、ハマってよかったかなって思いました。あとはサビの韻ですね。韻を踏んでる感じがちょっと神がかっていて、うまくハマったと思います。特にサビは基本、韻を踏んでます。
 
──優柔不断でも「良いとこが見えすぎる」というところが高野さんの人柄を表しているなと思いました。
 
高野 優柔不断になる理由はそれだという確信があったんですよね。 “優柔不断”というテーマもいつか曲にしたいなと思っていて、この曲を聴いた時、時計っぽい音がちょうどいいなと思ったんですよ。優柔不断のせいでチクタク時間が経ってるというのは面白いなって。
 
 
今年、一番やりたいことは……
 
 

──1月8日でついに5周年目突入を記念したツアー 【高野洸 5th Anniversary Live Tour「mile」-1st mile-】が終了しました。どんなツアーになりましたか?
 
高野 一体感があって楽しかったですね。LIVEでお客さんの歓声を聞くのが初めてだったのと、今回は追加公以外は会場がライブハウスだったので本当に距離が近かったですし、一緒にライブを作れたという感じがすごくあって楽しかったです。それに今回は生バンドのみなさんが強力にバックアップしてくれたので、すごい贅沢でしたね。パフォーマンスする意味もより出るし、本当に素敵でした。音楽の素晴らしさを自分も感じたし、お客さんにも届けられるっていう嬉しさがありました。生の音って後ろから押し出される感じがするんですよね。背中から追い風が吹いているみたいな。僕が遅どりとかしてちょっと遊んでもまったく慌てる様子もなく、プロすぎて次元が違う感じでした(笑)。
 
──ツアーで印象に残っていることはありますか?
 
高野 初日はやっぱり新鮮でしたね。お客さんに見せるのが初めてなので、「ここでこれが来るか!」みたいなのもあって、そういう声を聞くと僕もうれしいです。そういう声があるからこそ、次はこうしようと思ったり、いろいろ変えていったりしたので。でも、もちろんどこの会場の思い出も僕にとっては宝物ですね。ファイナル公演にはダブルアンコールが起こったんですけど、ステージに出てやる曲が決まってなかったので、みなさんに聞いてみたんですよ。それが僕が思ってたのと違ったというか、「それがあったか!」みたいな曲をリクエストされたんですよね。「ASAP」をもう一回観たいという拍手が一番大きくて、それで僕もたしかにこの曲が一番いいわと思ったっていう(笑)。「ASAP」でツアーを締めさせてもらったのが僕としてもすごく気持ちよかったですし、お客さんからもらったアイデアでもあるので、それもうれしかったですね。僕はなんとなくもう一度新曲をやって終わりかなと思ってたんですけど、みんなが求めていたのは「ASAP」でしたね。どの曲が選ばれてももちろんうれしいんですけど、「ASAP」はその時、その瞬間の自分にはなかった発想だったので、うれしかったですね。普通は悔しいと、自分がなんでそれをわかってなかったのかって恥ずかしく思うはずなんですけど、僕はそれが気持ちよかったです。
 
──5周年目突入を記念したツアーということで、今までのアーティスト活動を振り返るきっかけになったのでは?
 
高野 なりましたね。僕にとっても集大成というか、今までやってきた中で、今の自分がやれる一番のライブにしたいという思いが、もちろん毎回そう思ってるんですけど、今回特に強く思いまして。より音楽に浸ってほしいなという想いがあったので、それを大事にして作っていきました。照明の色味とか、曲のつなぎ方とかにもこだわって、それをオーダーしたらすぐにやってくれるバンドメンバーもすごいですよね。アンコールの時は1st Singleの曲、2nd、3rdってメドレーを披露して、5周年記念ライブっぽい感じでやらせてもらいました。
 
──アーティストとして活動してきた今までの5年は高野さんにとってどんな時間でした?
 


高野 毎回、新たに更新されていくものではあるんですけど、どの瞬間を切り取っても素晴らしい時間でしたし、本当にみなさんのおかげだなって思いますね。最初の頃と比べると考えてることややりたい方向性も違っていますし、「ex-Doll」でも歌ってますけどやっぱり好みの世界なので、自分のやりたいことを信じて突き進むっていうことを大事にしてやってます。それをいいと言ってくれる人がいることがうれしいですね。さっき話したように、ダブルアンコールで「ASAP」が選ばれたのもすごくうれしかったですし。自分が関わっている部分が多ければ多いほど、やりがいと喜びがあるので、5年という時間を経た今、ますます自分のモチベーションとやりがいが高まりました。僕自身、最初の頃からやりたいと思ったことを提案してはいたんですけど、その頃はプロデュースしていただいている部分は多かったですね。ただ、いいものを作らなきゃいけないので、自分がどこまでやるかはその時一番ベストだと思うものをその都度、考えたいですね。全部自分でやるぞって意気込むのではなく、冷静に判断して。今回のシングルも1、2曲目はお任せした方がいいなって自分で割り切れたものがあったので。けど、アーティストである以上、作品ときちんと向き合って、自分が作れるものは作っていくっていうのは、変わらず続けたいところではあります。
 
──アーティストとして一番成長を実感する部分はなんですか?
 
高野 今言ったような部分ですかね。あとは、やりたい方向性がしっかり見えてきたっていうか、自分の好きなジャンルがわかったっていうのはありますね。世の中のトレンドと自分の好みがある中で、多くの人に刺さるものではないかもしれないんですけど、それでもいいと言ってくださる方に応援して欲しいなと思いますし。「tiny lady」ぐらいから自分の中で明確に「こういう方向で行きたいです」って主張させてもらっているかもしれないです。そこから「ASAP」、「zOne」、そして「ex-Doll」に続くっていう感じで。
 
──今までも自分の目指す方向に向けて活動を続けてこられたと思うんですけど、まだやり残していることはありますか?
 
高野 ずっと作曲をやりたいと思っいて、高いソフトも買って、作曲できる環境は作ったんですけど操作にまだ慣れてないというか、使い方が難しくて(苦笑)。まだちょっと手つかずなんですよね。でも、さすがにずっと言い続けてきたことだし、節目でもあるので、今年は勉強したいなと思ってます。まずはメロディーラインの制作からでもいいから、やりたいですね。
 
──それでは最後に、2024年の抱負を聞かせてください。
 
高野 今も言ったように今年は作曲を進めるっていうことですね。あとはアーティストとして音楽番組に出たり、主題歌をやりたいですね。それが叶う1年になるといいなと思います。チャンスを掴む1年にしたいです。

 
撮影 長谷英史



8thシングル
「ex-Doll」
2024.01.30 ON SALE

 



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尹秀姫(ゆんすひ)
WRITTEN BY尹秀姫(ゆんすひ)
出版社勤務を経て、現在はフリーの編集・ライター。たまに韓国語の通訳・翻訳も。K-POPを中心にさまざまなアーティスト・俳優にインタビューしています。
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